概要
元々は
「強装.45口径弾薬を使用、サウンドサプレッサーも着脱可能、悪条件下に耐えられて主兵装となる拳銃を創れ」というアメリカ特殊作戦軍の要求に完璧に応えた銃だった。
その完璧さを今から述べる。
完璧さ
- 「3,000発撃っても壊れない(当初は6,000発)」という要望に対し、最大で15,122発、最低でも6,027発での無故障連続射撃に成功。
- フルメタル・ジャケット+強装弾である.45ACP+Pを使用できる。
- 泥や砂を被る、凍結や油切れといった悪条件下でも正常に作動する。
- 約20mの水深の海水に2時間放置しても正常作動。錆の出にくい素材・処理を採用。
- 銃口にネジが切ってあり、サプレッサー(ナイツ・アーマメント製)の装着も簡単。
- 競技銃に迫る精密性を実現。3万発射撃後も性能を維持。もちろんアイアンサイトは調節可能。
- 可視光/不可視光レーザーサイトや可視光フラッシュライトが内蔵されたLAMの着脱するためのレールをフレームに持ち、トリガーガードにもLAM固定用ネジ穴が存在(何故かは分からないが、Pixv内ではLAM装着VerのMk23の画像は少ない)。
という、ある人いわく「ほとんど無限に思える要求性能」を達成するという、要望以上に応える結果とはなった。
欠点
- 大きく、重い
一応サイズや重量も要求された範囲内である。
『特殊作戦では拳銃が主兵装になる状況があるだろう』という想定のもと、この拳銃は計画された。
具体的にはライフル・カービンでは取り回しに難のある車内・室内での戦闘や、敵の歩哨や軍用犬をひそかに排除する必要があるようなシチュエーションである。実際イラク・アフガンでは車両移動中に襲撃された特殊部隊員が、小銃の代わりに拳銃で応戦する例も多かった。
しかしそういった状況があることに鑑みても、ライフルなどを装備した上で、そのサイドアームとして持ち歩くには重くて嵩張りすぎた。
これは通常の軍用拳銃の運用、すなわち予備火器としての面で致命的な欠点である。
ウィルコックス製のLAM(当時は現在の拳銃用タクティカルライトやレーザーモジュールほど小型軽量ではなかった)とKAC製フラッシュ・アンド・サウンド・サプレッサーも付ければ更に大きく重くなる。
そんな予備火器として携帯するには不便な銃の代わりにはM1911やMK24、M11などの銃が使われた。
とにかく、玄人…いや、変態向けの銃である事に間違いはない。実際、かつて米陸軍特殊部隊に勤務していたというとあるオペレーター曰く、「この銃を武器庫の外で見かけたのは、長いキャリアの中でも一度きり(ある将校がホルスターに挿していたという)だった」そうだ。
- 高価
高いと軍最大の敵の総攻撃を受けるという問題がある。これはかの「さいきょうのせんとうき」も抱える問題である。
一挺で2,000ドルを超え、サウンドサプレッサーやナイロンホルスター、そして高価なLAMまで入れたフルセットとなれば相当な価格となる。
民間型も同様の値段であり、映画「マーキュリーライジング」等で値段がネタにされたほど。
初期の規格乱立期のアンダーレールという事もあり、現在の主流である20mmレールとは違う独自規格のため、多く売られているモジュールの装着がそのままでは出来ないという欠点もある(これはメーカーがその気になれば直ちに是正可能であり、実際に汎用の20mm幅に変える部品がある以上は欠点の内には入らないが)。
そのオーバースペックな性能から、とかく悪評ばかり取り沙汰されがちなソーコム・ピストルだが、実はその性能を高く評価した部隊も存在する。かの有名なネイビーシールズと、その小型潜水艇(SDV)チームである。
潜水作戦・上陸作戦に従事する頻度の高い彼らの装備は、必然的に海水や砂泥へ著しく曝されることになる。他の武器ではともすればアキレス腱となりうる過酷な水中・海上環境において、Mk.23はその優れた精度・信頼性・隠密性、そして複列マガジンとレーザーモジュールから来る高い致死性を遺憾なく発揮したという。
なお、開発に当たって複数社によるトライアルが行われ、参加社の一つであるコルト社が用意した銃はコルトSOCOM(ダブルイーグルベース)とオールアメリカン2000(ユージン・ストーナーとリード・ナイツが設計)だった。
スペック
要求内容 | ||
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重量 | マガジン無しで1.2Kg | マガジン無しで1.3kg以内 |
全長 | 245mm(マズルアタッチメントなし) | 250mm以内 |
口径 | .45口径 | .45ACP+Pの使用が可能 |
M1911で重量およそ1.1kg、デザートイーグルが全長269mmなので、元々結構なオーバーサイズの銃が必要とされていたことが分かる。
後継銃
MARK23に続く.45ACP弾を使うH&Kの拳銃はUSP45が登場した。
これはドイツ連邦軍特殊部隊でP12として使用されたほか海外でも使用されている。
その後しばらくHKピストルでは.45AUTOのものは出なかったが、HK45が最近登場した。
両方ともMARK23と比べると軽く普通の大きさで、値段も普通であり、これによりMARK23は.45口径の主力製品の座から降ろされた(特にUSPはMk23の原型の為、代替わりといえば聞こえが良いか)。
軍用銃としては計画のみであるがUSP45CTをベースとした銃をMk23Mod1として採用する案があったが白紙化、MK24として市販品のHK45C V3にアメリカ製銃身を組み込んだものを使用している。
また近年(2020年現在)の米国特殊部隊では、グロック系列を筆頭として拳銃に各種の光学照準器(ダットサイト)・サプレッサーやコンペンセイター・レーザーサイト・タクティカルライトおよびそのマウントなどを装着し、まるでプライマリ・ウェポンのように扱う使用例が多数見られている。
アメリカ陸軍を筆頭に四軍でM17及びM18として採用されたP320に至ってはフラッシュライトやサウンドサプレッサーの搭載だけでなく、スライドへ直接マイクロダットサイトの搭載が可能となっており、一般の兵士も同様に扱う事も可能となっている。
ソーコム・ピストルの目指した「攻勢拳銃(Offensive Handgun)」のコンセプトは、現代に至るまで脈々と受け継がれていると言えるだろう。
使用者
同作品に登場する人物は一項目に複数表記する。