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交響詩「モンタニャールの詩」の編集履歴

2021-01-10 21:17:44 バージョン

交響詩「モンタニャールの詩」

こうきょうしもんたにゃーるのうた

ヤン・ヴァンデルロースト作曲の吹奏楽オリジナル曲。

概要

交響詩「モンタニャールの詩」(Poème Montagnard)とは、ベルギーの作曲家ヤン・ヴァンデルロースト(Jan Van der Roost)の作曲による吹奏楽曲。

イタリア北西部のヴァッレ・ダオスタ州アオスタにあるヴァル・ダオスト吹奏楽団(Orchestre d’Harmonie du Val d’Aoste:オルケストル・ダルモニー・ドゥ・ヴァル・ダオスト)の委嘱(いしょく)により1996年に作曲され、翌年の1997年に出版された。楽曲のグレードは6。

初演は1997年1月26日、同楽団のコンサートで作曲者の客演指揮によって演じられ、作品は同楽団の指揮者であるリノ・ブランショー(Lino Blanchod)に献じられている。


この作品の舞台となっているヴァッレ・ダオスタ州の州都アオスタ(Aosta)は、紀元前25年に初代ローマ皇帝アウグストゥスが造った街であり、アルプス越えの要衝(ようしょう)の地として歴史のなかで重要な役割を果たしてきている。また、フランス国境にほど近く、イタリアとフランスの文化が混在しているため、日常会話のなかでもイタリア語よりむしろフランス語が使われている。

作曲者のヴァンデルローストはアオスタの豊かな自然や文化、多くの侵略と戦いの歴史、そしてかつてこの地を統治したひとりの女性の名がつけられている一枚の歴史的絵画『カトリーン・ドゥ・シャラン(Catherine de Challant)』の気高いムードから得たインスピレーションをもとに曲を書き上げている。

なお、曲名はフランス語で「山の詩」を意味するが、題名のニュアンス的には「山の民の詩」のような、アルプスの急峻(きゅうしゅん)な山々のイメージに加え、その地に生きる人々の育んだ歴史と文化のエッセンスも含めている。


曲の構成

冒頭

山朝

やまとほらあなどっこいしょ、ここは寒いなぁ。(左上の人のつぶやき)


曲の導入部分は、Lento misterioso

ウインドマシーンによる遠くから聴こえる風の唸(うな)り、ときおり顔を出す銅鑼などのサウンド・クラスター(自由な演奏)のなかから、トランペットがこの曲全体を支配する5つの音型を奏する。

クラリネットをはじめとする木管楽器が低くうねる連符を並べるなか、フルートのソロとともに暁闇(ぎょうあん)に隠れていた山々が次第にその姿を現し始める。低音楽器や鍵盤楽器のロールも加勢してより鮮明になった曲は、ウインドマシーンを伴ったトロンボーンの轟きと木管楽器の鋭い下降を経て、ふたたび霧がかったような静かな姿を取り戻していく。


クラリネットがピアノピアニシモでささやく静謐(せいひつ)な雰囲気のなか、フルートのファーストとセカンドがユニゾンの旋律を歌い上げる。その時々にハープの爪弾きと木管楽器の連符を見え隠れさせながら曲は進んでいき、視界は徐々に晴れ渡っていく。


やがて現れるホルンの雄々しいメロディが、”ヨーロッパの屋根”とうたわれるマッターホルンモンブラン)に代表されるこの地の厳しい自然の姿を描き出す。このムードは木管楽器群やチャイムを加えながらさらに発展し、作曲者をして「サングラスが必要なくらいに雪が輝いている」と語る最初の全合奏部へと向かっていく。

巻き上がる連符の木管楽器を乗せてウインドマシーンが轟々と吹き荒れるなか、金管楽器とグロッケンがまばゆく反射する山々の頂きを映し出し、次第にその照り輝く銀嶺(ぎんれい)の姿はデクレッシェンドとともにフェードアウトしていく。


アオスタの戦いと文化の歴史

迎撃knight

ひつじかい落書き


senza misuraで、オーボエをはじめとする木管楽器がのちに現れるルネッサンス・ダンスの断片を提示する。トライアングルの一打ののち、サックスがそれに続くフレーズを継ごうとするが、途中から割って入ってきたティンパニのロールによって強引に主導権を奪い取られてしまう。


Allegro marzialeで力を得た音楽は、ティンパニとスネアドラムの先導によって軍隊の行進を再現し、後から加わったホルンが力強く吠え立てる。やがて、Piu allegroの指示によって曲調は一気に加速し、木管楽器とトランペットによる緊迫感あふれる8分音符と3連符の連続の上で低音楽器とホルンが躍動を見せ、大軍勢同士の激しい衝突の様相を呈する。


この戦いのシーンが過ぎ去ると、トライアングルとコンガのリズムの上でオーボエとクラリネットが3連のリズムで舞い踊る平和な情景が映し出される。途中で金管楽器による力強いモチーフを挟みながら奏でられる木管の民族舞踊は、古代ローマの時代から続くアオスタの長く豊かな歴史を聴く者に思い起こさせる。

舞踊の最後では冒頭で示された5音の音型が低音楽器により再現され、トランペットの強烈なフラッターの不協和音で曲の流れを遮られる形となる。


ルネッサンス・ダンス

夏の丘に響くスイスっぽい風景


先刻の強烈なフラッターからがらりと雰囲気を変え、Allegro comodoリコーダー・カルテットが素朴なルネッサンス・ダンスを軽やかに奏でる。

途中からタンバリンコントラバスのピッチカートを織り交ぜながら演奏されるそのメロディは、クラリネットサックスフルートオーボエなどバンド全体へと受け継がれていく。そしてリタルダンドを挟み、トランペットによってより強く再現されたメロディは、木管楽器のきらびやかな対旋律とともに緩やかに減衰していき、銅鑼とチャイムによる新たな舞台転換のうちに消え去っていく。


カトリーン・ドゥ・シャランの愛

どこかの国の姫君


Andante maestosoによって深く沈み込んだ雰囲気のなかから、ユーフォニアムが優しく叙情(じょじょう)的なメロディーでカトリーン・ドゥ・シャランのテーマを歌い上げる。どことなく憂いと儚(はかな)さをはらんだその旋律には、アオスタの領民から慕われたカトリーン・ドゥ・シャランの生涯のなかで大きな役割を果たしたであろう「愛」が深くこめられている。トランペットのきらめくハイトーン、クラリネットの情感を深めた旋律によってテーマは紡がれていき、曲の最初の全合奏部と同様の展開によって終息を見せる。


クラリネットとフルートが曲調の静まりをかもし出すなか、ホルンのソロがハープの爪弾きを伴いながら再度カトリーン・ドゥ・シャランのテーマを大らかに奏でる。ティンパニによる強打をピークとして緩やかに減衰しながら、ピッコロらに導かれる形でホルンが最後のフレーズを飾り、テーマは冒頭の5音の音型の再現のなかに沈み込んでいく。


フィナーレ

高山鉄鎖の誓い

山脈000021


ふたたび現れる木管楽器の民族舞踊のテーマを皮切りとして、アルプスの山々の輝き、ルネッサンス・ダンス、カトリーン・ドゥ・シャランのテーマなど、曲中で登場したさまざまなテーマが卓越した対位法の技巧のもとに混じり合い、アオスタの地の豊かな自然、そしてそこに生きる人々の歴史と文化を振り返る。

最後はティンパニスネアドラムホルンらによる戦いのテーマで劇的な高まりを聴かせたのち、曲全体を通して登場する5音の音型を力強く奏して幕を閉じる。


主な演奏団体(関連動画)

大阪市音楽団(Osaka Municipal Symphonic Band)


バンダ・カシーノ・ムシカール・デ・ゴデーリョ(Banda Casino Musical de Godella)


オランダ王国陸軍軍楽隊(The Royal Military Band of the Netherlands)


フィルハーモニック・ウインズ大阪(Osakan Philharmonic Winds)


なにわ《オーケストラル》ウインズ(Naniwa Orchestral Winds)


土気シビックウインドオーケストラ(Toke Civic Wind Orchestra)


尚美ウインドオーケストラ(SHOBI Wind Orchestra)


国立音楽院ウインドオーケストラ(Kunitachi Music Academy Wind Orchestra)


関連タグ

音楽 吹奏楽

イタリア フランス アルプス モンブラン マッターホルン

 高山 雪山 山脈

フルート ホルン リコーダー ユーフォニアム


外部リンク


参考文献

  • 樋口幸弘(解説) ヤン・ヴァンデルロースト指揮・大阪市音楽団『交響詩「スパルタクス」』CDブックレット フォンテック 2002年11月5日リリース 5~6ページ
  • 秋山紀夫『吹奏楽曲プログラム・ノート』 株式会社ミュージックエイト 2003年6月18日発行 535~536ページ
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