作品解説
作者は熟練紳士。
「小説家になろう」で掲載されていたダークファンタジー小説であり、アルファポリスから書籍化されている。既刊は4巻が発売されている。
「小説家になろう」で掲載されていた分は削除されているが、アルファポリスに移籍されているため、書籍化されていない話が読める。『やられたらやりかえす』を行動理念とするダークヒーローが悪辣なギルドを始めとした自分に都合の良い理屈で好き勝手する悪党達を蟲の餌にする勧善懲悪物である。
あらすじ
生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。
冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。
登場人物
レイア・アーネスト・ヴォルドー
特殊属性『蟲』の魔法の使い手であるBランク冒険者。16歳の時に戦争での功績から『神聖エルモア帝国(通称:エルモア帝国)』の貴族となる。職務には真面目だが、冷酷非情な報復主義者なので周囲から怖れられている。種族や血縁よりも心の繋がりを大事にするタイプである。
転生者で前世は本人曰く「そこそこ」の企業で働く30代の男性。
エリステル・マーガレット
ギルドの受付嬢でいい意味でも悪い意味でもレイアの理解者。義姉がレイアが幼少時にお世話になった受付嬢だった。強欲で腹黒い性格。褐色の肌でモデル体型をした美人で冒険者に金品を貢がせたり、危険な依頼を受諾させたりとやり手のキャリアウーマンである。
ガイウス・アルドバルド・エルモア
レイアが住む『神聖エルモア帝国』の皇帝。神器『プロメテウス』の使い手。Bランク冒険者でもあり、レイアと一緒にダンジョンに潜った事もある。豪快な女好きで度量の広い人物だが、上に立つ者の厳しさも持っている。他人の性質を理解し、その人に合った付き合い方が出来る。レイアにとって父親的な存在であり、お互いに実の肉親よりも強い絆で結ばれている。実の子供である皇子達には放任主義を貫いている。
ジェラルド・ホーエンハイム
Bランク冒険者。種族はエルフで隣国『ウルオール』の出身。2m近い体躯を持つスキンヘッドの巨漢だが、基本4属性の魔法を精密に操作して使いこなす凄腕の魔法使い。攻撃魔法の威力では帝国で最高の使い手(レイア談)。伴侶であるエーテリアとペアで行動している。若い頃は美少年だったが、モンスターソウルの吸収率の良さから現在の姿となってしまった。真面目で丁寧な口調で喋る紳士だが、レイアによると自分に粗相をした相手は女子供でも魔法で殺害する一面を持っているらしい。
エーテリア・エスメラルダ
Bランク冒険者。ジェラルドの伴侶。細身の美女だが、古今東西の様々な武器を使いこなす天才戦士。『火』『水』『土』の魔法を使う。特に『水』の魔法である身体強化の上昇幅が凄い。得物は身の丈程のオリハルコン製の大剣。基本的にレイアに対して友好的で蟲達にも理解を持っている。男性口調で喋る。レイアに対する態度と裏腹に自分に非礼を行った相手は女子供でも容赦しない一面を持っているらしい(レイア談)。
ゴリフターズ
Aランク冒険者であり、エルモア帝国の隣国『ウルオール』の王族でもある双子の姉妹。種族はエルフ。二人共、特殊属性『聖』の使い手である。元々は絶世の美少女だったが、ジェラルド同様にモンスターソウルの吸収率の良さから現在の姿となってしまった。料理や裁縫といった様々な女性として必要な事をプロ級にこなす才女である。
ゴリヴィエ
ゴリフターズの従姉妹でメディアル公爵家の令嬢。重度の筋肉フェチでゴリフターズに非常に懐いている。特技は関節技。登場当初は『ウルオール』の近衛騎士団副団長だったが、自分の好みと違う男性との縁談を執拗に勧める父親と喧嘩して家を飛び出し、『ネームレス』で冒険者となる。幼馴染で従者であるタルトとパーティを組んでいる。
タルト・ルーベン
サポーター→Bランク冒険者。猫耳亜人の女性で『ウルオール』の出身であり、実家はゴリヴィエに仕える従者である。常識人で場の空気を読む処世術に長けている。登場当初はミーティシアのパーティにサポーターとして雇われていた。後に『ネームレス』に来訪して冒険者を始めたゴリヴィエとパーティを組む。腐女子。レイアと出会ってから彼に振り回される事が多いが、彼と出会った際に一緒にいた二人が何れも悲惨な末路を遂げた事に比べると最後まで生き延びた上に冒険者として栄達しているという恵まれた境遇にある。彼女がレイアと関わっても生き延びたのは、他の登場人物にも言えるが、低レベルな善悪や感情に捉われずに状況把握して自分にとって最適な判断が出来る賢さを持っているからと推測される。
瀬里奈
レイアの育ての親であり、彼同様に転生者。元日本人女性で腐女子。フルネームは『結城瀬里奈』。現在はセンチネルという蟻のモンスターである。アルビノが原因で今生の両親に山に捨てられたレイアを拾って育てた。
グリンドール・エルファシル
Aランク冒険者であり、作中最強の人物。特殊属性『闇』の使い手である。50代の老紳士であるが、レイアが魔法で強化した以上の身体能力と圧倒的な魔力を誇る。実力相応の品格を持っており、高いカリスマ性を有する。レイアに警戒心を抱かれながらも交流を持っている。
ローウェル・タークス
初登場時は冒険者育成機関の生徒。作中で数少ないレイアの理解者であり、彼から教わった「冒険者の最大の敵は無能な味方」「人助けは必ずしも良い事ではない」を強く受け止めて冒険者生活を送っている。平民だが、成績が良くて聡明な性格をしている。書籍版ではWEB版と収録されている話の順番が違うので出番が削られている。
ミーティシア・レイセン・アイハザード
第一章三話に登場した新人冒険者。アイハザード伯爵の娘でクォーターエルフの美少女。パーティリーダーであるアーノルドのミスで迷宮で遭難してレイアに助けられる。容姿と生まれから甘やかされて生きて来たので世の中を甘く見ている一面を持っており、おまけに状況把握能力も低い。優しく芯の強い性格っぽく描写されているが、誰かに何かをする場合は他人が手伝ってくれる前提で誰かにお金を払って何かを手伝って貰う場合は親の金で報酬を払うとナチュラルに他力本願なので様にならない。その愚鈍で悪い意味で頑固な性格から、基本的に他人を減点形式で見るレイアと相性が悪く、妹の不始末と父親が汚職をした事で関係が悪化した末に彼に父親の共犯として処理される(最初は殺すつもりは無かったが、状況を把握せず彼を逆恨みして復讐を宣告したので殺害)。本作の「温室培養された使えない女性」一号であり、典型的なヒロイン像を持つキャラクターから自分に都合の良いチート主人公を除いた人物でもある。
レイアからジェラルドの若い頃といった他の登場人物の美貌を表現する為の引き立て役として扱われる事が多いが、キャラクターデザインすら無い。
シュバルツ・アイゼン・アインバッハ
『神聖エルモア帝国』の第四騎士団副団長。レイアの従軍時代の上司であり、その時の彼に対する仕打ちからレイアに嫌われている。嫌味で陰湿な性格の人間のクズ。その性格から妻子を喪い、偶々、国からの依頼で近くに居たレイアに責任を押し付けて彼の邪魔をする等非常に身勝手な性格をしている。私腹を肥やした挙句に部下諸共にレイアに抹殺される。上記の妻子や部下達を巻き添えにした挙句にレイアに粛清された厄病神にして『神聖エルモア帝国』の恥。
アーノルド
Cランク冒険者。侯爵家の四男。皇族の女性『アメリア』と恋仲である。身分の高い女性を不幸する能力を持っており、彼女らに関わるとトラブルを起こして自分を含めた周囲に迷惑を掛けている(作中には死人も存在している)。第一章三話にミーティシア達と一緒に登場した。彼女らとダンジョンに潜っていた際にミスを連発し、全滅する寸前でレイアに助けられる。その後、本人は登場しないが、彼と結婚する為に皇族を除籍して冒険者になったアメリアとダンジョンの中で逢瀬をしている最中にモンスターに襲撃されて死亡している。凡人の最高ランクであるCランク冒険者とはいえ、それなりにキャリアを積んだ冒険者として非常に情けない最期である。
ロイドとオルハ
近隣の国『ヘイルダム』からやって来た元冒険者の夫婦。ロイドは元Cランク、オルハは元Dランク。息子の『ギュオ』がアルビノだったので子育てに音を上げ、アルビノは遺伝しないという事を知らないのと高ランクの冒険者なら女性関係も豊富という自分に都合が良い考え方からレイアに押し付け様とした。その事が今世の両親から捨てられた経験を持つレイアの怒りを買い、彼からクズ呼ばわりされた末に始末される。彼らの息子はレイアによってギルドに預けられる(その後は察して欲しい)。レイアに息子の治療を頼めば、家族三人で幸せに暮らせた可能性も存在したのも知らずに終わってしまう(料金を払えばの話だが)。息子の為に言いながらも自分達の都合を優先して手放した時点でレイアの両親同様にクズなのだろう。最期までそれに気付かずに自分に酔いしれたままに終わった。
用語
モンスターソウル
モンスターを倒すと得られるソウルでこの世界の住人をこれを吸収する事で身体能力といった基礎能力を上昇させる事が出来る。エルフを始めとした亜人をソウル吸収率に非常に良く、それ故に各国で大切にされている。
セル
本作に登場する貨幣の単位である。
神聖エルモア帝国
レイアが貴族として所属する大国。
ネームレス
レイアが冒険者としての活動拠点としている街。『神聖エルモア帝国』の東部に存在する『モロド樹海』に潜る冒険者達が集まる街である。
ウルオール
『神聖エルモア帝国』の隣国。多数の亜人が住み、王族はエルフである。
ギルド
冒険者と依頼者を仲介し、冒険者達に仕事を斡旋する組織。だが、組織内部で腐敗が進んでおり、その権力を利用して様々な悪事に手を染めている。本作の悪の組織的存在。
冒険者育成機関
世間的にはモンスターを駆除出来る人材を育成して誰もが平和に暮らせる世の中を作る為に頑張ろうという理念から設立された教育機関だが、実際は家督を継げない貴族の子供を冒険者にする為の牧場であり、国家の役人やギルドの天下り先で引退した冒険者の再就職先である。冒険者の実践的な処世術といった後ろ暗い部分を除いて教えているので優秀な成績で卒業した事で増長した卒業生が先輩冒険者に無礼を働き、彼らから制裁を受けて行方不明になるのが多い。