『祝杯をこの手に』
過信と油断はなかったが
運もまたなかった。
悔しさが、無念が、怒りがつのる。
勝利の美酒をあびるのは
自分だったはず、と。
今日こそは酔おう。
感情を余すことなく
全力で芝に叩きつけよう。
すべてを出し尽くした先には
きっと祝杯が待っている。
【2017年日本ダービー】
概要
タニノギムレットは1999年5月4日生まれの競走馬。
父ブライアンズタイム、母タニノクリスタル。通算8戦5勝。所属は松田国英厩舎。
2001年デビューし、2002年シンザン記念で重賞初制覇を飾り、アーリントンカップも圧勝する。
その後鞍上の武豊が負傷したため、スプリングステークスでは四位洋文に乗り替わりとなったが、テレグノシスやローエングリンを差し切り3連勝。
皐月賞ではただ1頭後ろから追い込んできたが、大外を回った際のロスが響き3着に終わる。
その後は松田調教師の判断でNHKマイルカップへ出走することとなり、鞍上は急遽復帰した武豊に戻る。
1番人気を背負って出走したが、直線で勝ち馬のテレグノシスから不利を受けて3着となり、武豊は激怒したがテレグノシスは降着にならなかった。
再び1番人気で迎えた日本ダービーでは豪脚で直線を一気に駆け抜け1着。
武豊騎手に史上初のダービー3勝をプレゼントし、ついにGⅠ馬となった。
このときの2着は後に2年連続年度代表馬となるシンボリクリスエス、5着は後のダート王者ゴールドアリュール、6着も後のダート王者アドマイヤドン、7着にも後の重賞7勝馬バランスオブゲームという豪華メンバーだった。
春GⅠ3連戦の過酷なローテーションを耐え抜いて走りぬいたが、9月に故障し引退。種牡馬となる。
種牡馬としては初年度に生まれたウオッカが64年ぶりの牝馬のダービー馬となり、父娘でのダービー制覇という前代未聞の記録を達成し、さらにGIを7勝した。
ちなみにウオッカがダービーを勝ったときの枠番は、奇しくもタニノギムレットと同じ2枠3番だった。
その他にも重賞を3勝したスマイルジャックなどを輩出したが、当たり外れが大きく牡馬の大物は出なかったため、サイアーラインの存続は現状厳しい。
それでもブライアンズタイム産駒の多くが種牡馬として振るわない中、ウオッカを輩出した時点で成功した方である。
カントリー牧場の救世主
タニノギムレットが生産されたカントリー牧場は多数のGⅠ勝利馬を輩出した名門牧場であったが、牧場規模に対して過剰な馬を抱え込んだことで牧草地の土地痩せを招き、1980年代に入るとかつての隆盛は見る影もないほど没落していた。1990年代に数々の改革に着手した結果、ようやく実を結び当牧場の生産馬として28年ぶりのGⅠ制覇を果たした馬がタニノギムレットであった。
引退後
現在は種牡馬も引退しヴェルサイユリゾートファームで功労馬として繫養されている。
老いた今もとにかく非常に元気で、興奮した拍子に牧柵を蹴り壊してしまうことが度々あり、牧場スタッフからは「牧柵破壊王」「柵破壊神」の異名をとっている。その破壊力たるや同牧場に繋養されているローズキングダムやエタリオウがびびってしまうほど。
馬のおやつとして定番であるリンゴ嫌いとして知られていたが、2021年の3月になって初めてリンゴを食べたことがヴェルサイユリゾートファームの動画にて報告された。