※メイン画像は2010年の優勝馬ダノンシャンティ。
概要
3歳マイル王を決める中央競馬の重賞競走。
1996年創設。5月上旬に、東京競馬場芝1,600mのマイル戦として開催される。格付けは、GⅠ。
1953年以来開催されていた2000m戦のダービートライアル・NHK杯を前身とするレースであるが、競走条件的にはGⅡニュージーランドトロフィー(現在もトライアルレースとして中山競馬場1600mのレースとして存続)のG1昇格とも言える。ニュージーランドトロフィーは開催時期が5月下旬~6月上旬から4月上旬に繰り上げられ、NHKマイルカップのトライアル競走へと移行した。
ダービートライアルは、従来のNHK杯のかわりにプリンシパルステークスが新設された。
NHK杯の回数は引き継がれず、第1回NHKマイルカップとして開催された。
創設された当初は、短距離路線の充実だけでなく外国産馬(マル外)が全盛を迎えていた時期であり、これらの馬は当時この後に控える日本ダービーやオークスなどのクラシックに出走できなかったため、そういった外国産馬の大一番としての性格も持ち合わせていたことから「マル外ダービー」の通称を取った。後にクラシックに外国産馬の出走が可能になると純粋にクラシック世代短距離路線の王者決定戦に近い扱いとなった。
また創設当時NHKは衛星放送を設立したこともあり番組ソフトの確保に悩んでおり、それを乗り切るためとしてスポーツ中継を拡大した一環として、競馬ファンだった当時の会長・川口幹夫の元競馬中継の拡充にも乗り出し、その(競馬方面での)集大成がNHKマイルカップ創設であった。このためNHKとしてもかなり力を入れており、例年は牡馬八大競走以外では例外的にNHK総合で放送されており、ゲスト兼プレゼンターとして大河ドラマまたは連続テレビ小説に出演する俳優を迎え、ファンファーレをNHK交響楽団(N響)が演奏する。
一方フジテレビはライバル局ということで、数年間はマイルカップと呼んでいた(逆にフジテレビ賞スプリングステークスは「フジテレビ賞」を強調していた)。
3歳馬にとってマイルGⅠは消耗が激しいためか、本レース勝ち馬でもその後低迷するのもおり、酷いのだとこのレース勝ちが最後の勝利となるという馬もいる。
変則二冠
NHKマイルカップと日本ダービーなど他の3歳GⅠ競走を優勝することを「変則二冠」と呼び、2004年のキングカメハメハと2008年のディープスカイがダービーとの、2005年のラインクラフトが桜花賞との変則二冠を達成している(その他の3歳GⅠとNHKマイルカップの組合せは達成馬なし)。
皐月賞は2000m戦だが、マイル適性や東京競馬場の適性を考慮して皐月賞を回避してこちらに出走してから日本ダービーに向かう馬もいる(ちなみに英国のクラシック三冠レースの第1戦の2000ギニーステークス、牝馬三冠レースの第1戦1000ギニーステークスは1マイル戦である)。ただしGⅠ三連戦を行う馬も少なからず存在し、2002年のタニノギムレットは皐月賞3着→NHKマイルカップ3着→日本ダービー1着のローテーションだった。また基本的にはマイラーであるが距離適性が広めで1800~2000mの中距離までならギリギリ対応可能、しかし2400mは明らかに長いという馬が皐月賞と本レースの両方に出走しダービーを回避するというケースがある(例・アドマイヤマーズ、ジャンタルマンタル)
桜花賞からの場合は1600mの連戦となるため、距離適性を重視して出走するという考えがある。一方でオークスは中1週とローテーションが厳しく、ダービーとは逆に回避される傾向にある(2007年のピンクカメオはこのローテーションを走り、本競走を勝利している)。
競走条件
出走資格:サラ系3歳牡馬・牝馬(出走可能頭数:最大18頭)
JRA所属馬
地方競馬所属馬
外国調教馬(優先出走)
騸馬(去勢した牡馬)は出走できない。
負担重量:定量(牡馬57kg、牝馬55kg)
出馬投票を行った馬のうち優先出走権のある馬から優先して割り当て、その他の馬は通算収得賞金の総計が多い順に割り当てる(出走申込馬が出走可能頭数を超え、かつ収得賞金が同額の馬が複数いる場合は抽選)。
トライアルレース
NHKマイルカップへの優先出走権が付与されるレースは以下の通り。
競走名 | グレード | 競馬場 | 距離 | 必要な着順 |
---|---|---|---|---|
ニュージーランドトロフィー | GⅡ | 中山競馬場 | 芝1600m | 3着以内 |
アーリントンカップ | GⅢ | 阪神競馬場 | 芝1600m | 3着以内 |
歴代優勝馬
馬の太字はJRA賞最優秀3(4)歳牡馬受賞、クロフネのみ最優秀ダートホース。
施行年(回次) | 馬名 | 騎手 | 備考 |
---|---|---|---|
1996年(第1回) | タイキフォーチュン | 柴田善臣 | 初代勝ち馬。外国産馬。基準タイム1.32.6は長らく破られなかったレコード。 |
1997年(第2回) | シーキングザパール | 武豊 | 初の牝馬。外国産馬。1998年フランスGⅠモーリスドゲスト賞勝利。 |
1998年(第3回) | エルコンドルパサー | 的場均 | 外国産馬。同年ジャパンカップ・1999年サンクルー大賞優勝、凱旋門賞でも2着。顕彰馬。 |
1999年(第4回) | シンボリインディ | 横山典弘 | 外国産馬。シンボリ牧場は1985年シンボリルドルフ以来の平地GⅠ勝利。 |
2000年(第5回) | イーグルカフェ | 岡部幸雄 | 外国産馬。2002年ジャパンカップダート優勝。 |
2001年(第6回) | クロフネ | 武豊 | 外国産馬。同年のジャパンカップダート優勝。 |
2002年(第7回) | テレグノシス | 勝浦正樹 | 初の内国産馬勝利かつ勝浦正樹初GⅠ勝利。トニービン産駒最後のGⅠ勝利。 |
2003年(第8回) | ウインクリューガー | 武幸四郎 | 9番人気での制覇。 |
2004年(第9回) | キングカメハメハ | 安藤勝己 | 同年日本ダービー勝利。史上初の変則二冠馬。顕彰馬。 |
2005年(第10回) | ラインクラフト | 福永祐一 | 同年桜花賞勝利。2頭目の変則二冠馬。 |
2006年(第11回) | ロジック | 武豊 | アグネスタキオン初年度産駒。 |
2007年(第12回) | ピンクカメオ | 内田博幸 | 牝馬。17番人気で制覇、3連単約973万円の超波乱。 |
2008年(第13回) | ディープスカイ | 四位洋文 | 同年日本ダービー勝利。3頭目の変則二冠馬。 |
2009年(第14回) | ジョーカプチーノ | 藤岡康太 | 藤岡康太初GⅠ勝利。 |
2010年(第15回) | ダノンシャンティ | 安藤勝己 | レースレコード(1:31.4) |
2011年(第16回) | グランプリボス | クレイグ・ウィリアムズ | 前年の朝日杯馬。 |
2012年(第17回) | カレンブラックヒル | 秋山真一郎 | 秋山真一郎初GⅠ勝利。 |
2013年(第18回) | マイネルホウオウ | 柴田大知 | 柴田大知平地GⅠ初勝利。 |
2014年(第19回) | ミッキーアイル | 浜中俊 | 2016年マイルCS優勝。 |
2015年(第20回) | クラリティスカイ | 横山典弘 | クロフネとの親子制覇達成。 |
2016年(第21回) | メジャーエンブレム | クリストフ・ルメール | 前年の阪神JF馬。 |
2017年(第22回) | アエロリット | 横山典弘 | クロフネ産駒の牝馬。 |
2018年(第23回) | ケイアイノーテック | 藤岡佑介 | 代打騎乗で藤岡佑介初GⅠ勝利。 |
2019年(第24回) | アドマイヤマーズ | ミルコ・デムーロ | 前年の朝日杯馬。同年香港マイル勝利。 |
2020年(第25回) | ラウダシオン | ミルコ・デムーロ | ※新型コロナウイルス感染拡大及び緊急事態宣言発令の為、無観客開催。NHK中継の俳優ゲスト出演も中止。 |
2021年(第26回) | シュネルマイスター | クリストフ・ルメール | 20年ぶりの外国産馬勝利。前年同様無観客開催。スタート直後にバスラットレオンが落馬により競走中止。 |
2022年(第27回) | ダノンスコーピオン | 川田将雅 | 3着にシンガリ人気が入り3連単約150万円の波乱。 |
2023年(第28回) | シャンパンカラー | 内田博幸 | 内田博幸は約5年振りのGI制覇。 |
2024年(第29回) | ジャンタルマンタル | 川田将雅 | 前年朝日杯馬。前年阪神JF馬アスコリピチェーノとの2歳王者初対決となった。 |
関連項目
3歳クラシック三冠レース
3歳牝馬三冠レース(秋華賞以外はクラシック)