概要
誕生日 | 2009年2月19日 |
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英字表記 | Curren Black Hill |
性別 | 牡 |
毛色 | 青鹿毛 |
父 | ダイワメジャー |
母 | チャールストンハーバー |
母の父 | Grindstone |
競走成績 | 22戦7勝 |
獲得賞金 | 3億3284万7000円 |
生産者 | ノーザンファーム |
馬主 | 鈴木隆司 |
管理調教師 | 平田修(栗東) |
厩務員 | 西口修治郎 |
無敗でNHKマイルカップを勝利し、2012年の毎日王冠まで5連勝を飾る。
馬名の意味は、冠名(オーナーの娘の名前が由来)にネパール原産の知的で勇敢な猟犬種より。
デビュー前
誕生
2009年2月19日にノーザンファームで誕生。
父は喉鳴りから奇跡の復活を遂げたGI5勝馬ダイワメジャー。ブラックヒルはその初年度産駒である。
母チャールストンハーバーは現役時代は未勝利であったが、姉に海外GIII3勝ペニーズゴールドがいた血統背景等から現役引退後は吉田勝己氏が28万ドル(約3000万円)で落札し、アメリカから輸入した。ブラックヒルの他にはGIII馬レッドアルヴィスを輩出している。
2009年7月開催のセレクトセール当歳の部で税抜3400万円で冠名「カレン」の鈴木オーナーが落札。同セレクトセールの出身者には同期のダービー馬ディープブリランテ等がいる。
育成
2009年秋頃に離乳し、ノーザンファームYearlingにて中期育成を受けたものと推測される。
中期育成終了(2010年秋頃?)後、ノーザンファーム空港牧場C-1厩舎へ入厩。高見厩舎長の下でデビューに向けた後期育成に励むことになる。高見厩舎長はこの頃のブラックヒルについて、「目立ったトラブルもなく、順調に調教をクリアしてくれました。手応えが良くて押さえるのが大変な馬ではありましたが、乗り役を選ばない素直さも持っていましたし、無事に厩舎へと送り出せたときには、上のクラスにいける馬になってくれるとの期待もありました」と評し、乗り始めから評価の高い馬だったという。また、C-1厩舎の同じ屋根の下で育成された同期には現役時代にライバルとして激突することになるジャスタウェイ、そして後の春天連覇フェノーメノがおり、特にジャスタウェイとは集団調教での併せ馬をすることもあった。
ジャスタウェイやフェノーメノが2011年の夏にC-1厩舎を卒業し、トレセンへ巣立っていく中、ブラックヒルはゲートに苦戦し、2歳戦は見送られ、C-1厩舎に残ることになる。この頃のブラックヒルについては「昼寝ばかりしていた」とのこと。
後期育成を終えると、栗東トレセンの平田修厩舎へ入厩する。
現役時代
2012年《無敗の王者》
1月21日の京都の芝1600mの3歳新馬戦でデビューし、2着に3馬身差、2着と3着の差は大差という逃げ切り勝ちを果たす。
2戦目の500万下特別のこぶし賞も、降雪で発走時刻が遅れるという事態も影響せず4角で先頭に立つとそのまま押しきり、追撃してきたニシノビークイックを封じて2勝目を飾った。
初の関東遠征となった中山のニュージーランドトロフィーでも1番人気に推される。レースでは先行から抜け出して3勝目を重賞初制覇で飾った。なお、このレースではC-1厩舎での僚馬ジャスタウェイも出走するはずであったが、感冒で回避となり、かつての僚馬同士の対決はGINHKマイルカップに持ち越しとなった。
そして育てた馬たちが最高の舞台で激突するということでC-1厩舎のスタッフたちが応援に駆けつける中、迎えたNHKマイルカップ。
1番人気に支持されたブラックヒルは好スタートからの逃げを決め、逃げ切りが至難と言われる府中1600mで、そのまま2歳王者アルフレードに3馬身2分の1の差をつけてGI初制覇(ジャスタウェイは6着)。ダイワメジャー産駒、秋山真一郎騎手、平田修調教師にとってもGI初制覇であり、またエルコンドルパサー以来の無敗の、かつ4戦目というキャリア最短で年明けデビュー馬としては初という記録づくめのNHKマイルカップ制覇でもあった。
余談だが、このレースには、ブラックヒルやアルフレードの他に後のGI馬としてジャスタウェイそしてハナズゴールが出走している。
ダービーには出走せず、秋は毎日王冠から始動。エイシンフラッシュ、リアルインパクト、グランプリボス、エイシンアポロン、ストロングリターンらブラックヒル含めGI馬6頭を筆頭に出走16頭のうち13頭が重賞馬という豪華な布陣で、ブラックヒルは古馬を抑えて1番人気に迎えられる。レース前、競馬ファンの間ではサイレンススズカ・エルコンドルパサー・グラスワンダーが対決した1998年の毎日王冠以上の名勝負になるのではないかとも囁かれていた。
レースでは、好スタートを決めると、軽快に飛ばすシルポートを見ながら、離れた3番手を追走。直線では早めに動いて先行勢をかわし、猛追するジャスタウェイをクビ差抑えて勝利。デビュー以来の連勝を5に伸ばすとともに、グレード制導入以来、初となる毎日王冠無敗制覇を達成した。
無敗制覇、シンボリクリスエス以来の3歳制覇、ダイワメジャーに続く父仔制覇がかかる中、迎えた天皇賞(秋)。ジャスタウェイに加えて、フェノーメノも出走し、C-1厩舎の育成馬3頭が集結することになった。
レースでは先行しながら直線伸びず前走で下したエイシンフラッシュの5着に終わり、初めて土がついた(フェノーメノは2着、ジャスタウェイは6着)。レース後、秋山騎手は「自分の競馬はできていたが、距離が長かったのかも」と、平田師も「距離かもしれません」とそれぞれ敗因を「距離」と分析していた。レース後は状態を崩し気味であり、登録のあった年末の香港国際競走は回避して2012年の残りは休養に充てられることとなった。
2013年《狂った運命の歯車》
初戦にダートGIフェブラリーステークスを選択。この選択には、想定出走馬中に絶対的な主役がいなかったということや、秋山騎手が天皇賞の頃から「ダートではもっとすごいパフォーマンスを発揮できるかもしれない」と発言していた背景もあった。「ダート未経験馬による、JRAダートGI初制覇」がかかり、初ダートながら1番人気に推されたが、スタートで他馬を気にして失敗し、3番手には取り付けたものの直線では余力が失われ、ブービーの15着と大敗。
次走のマイラーズカップでは、他馬にマークされ馬群に包まれながらレースを進める展開となり、直線で一旦先頭に立つも最後は外からグランプリボスとサンレイレーザー、内からダノンシャークに交わされ4着に敗れる。続く安田記念は、シルポートの作ったハイペースの中を3番手で秋山騎手の意に反して折り合い、直線を向いても反応悪くロードカナロアの14着に終わった。
安田記念の後はかつての学び舎C-1厩舎に戻り、休養。前哨戦を挟まずマイルチャンピオンシップへ直行し、デビュー以来の秋山騎手から岩田康誠騎手へと乗り替わり、レーススタイルも中団に控える形を試みたが、最下位の18着に敗れた。レース後は筋肉痛を発症し、放牧に出された。
2014年《あの輝きをもう一度》
前年は極度の不審に陥ったブラックヒルだが、ファンの間で「フェブラリーSでの大敗で精神的ダメージを受けたのではないか?」という説が囁かれるようになる。小林調教助手は「少なくとも表面的には、どこが悪いというわけではないんですけど、馬自身どこか違和感があって走っていないんだろうなと思います。」「フェブラリーSを使ったから精神的なダメージを受けたという見方もあるかもしれませんが、物言わない馬のことだから、決してそれだけではないだろうと思います。」と語っている。
また、安田記念後にC-1厩舎でブラックヒルと再会した高見厩舎長は「平田先生からは、この調整期間の間に気持ちを入れてくれるようにも頼まれましたが、確かに以前のような元気の良さが無く、精神的にも疲れているのではないかと感じられました」と語り、2歳時に感じた覇気が今のブラックヒルから薄れているのを感じたという。以前の覇気を取り戻すため、ブラックヒル自身が走る気になることを優先して、決して焦ることなく、結果がすぐに現れてなくても、馬のペースを優先させながら調教メニューを組んでいったという。
2014年初戦阪急杯は11着となるも、続くGIIIダービー卿チャレンジトロフィーでは、追い切りの動きも良く、復活の予感を関係者は感じ取っていた。
レースでは好スタートから先頭に立ち、3コーナーで一旦後方に下がるがインコースから再び伸び、2着カオスモスらの追撃をクビ差抑えて勝利、2012年の毎日王冠以来1年6か月ぶりの重賞4勝目を挙げた。秋山騎手は「関係者が本当によく立て直してくれた。復活したと言っていいでしょう」と喜び、平田師も「死んでいなかったね。追い切りも目いっぱいにやって、だいぶ(体調が)戻っているとは思ったけど、きょうの勝ちっぷりにはびっくり」と頷いた。
そして、この春の最大の目標である安田記念に参戦。かつて共に育成され、3歳時には3戦全勝していたジャスタウェイとの久々の再戦そして最後の戦いとなったが、2013年天皇賞(秋)、2014年ドバイデューティーフリーを制し、世界王者へと成長していたジャスタウェイの9着に敗れる。
2014年後半は中距離路線を進むも、オールカマー7着、天皇賞(秋)は9着、金鯱賞5着という結果となる。
2015年《最後の勝利》
GIII小倉大賞典から始動。最終追い切りでは、この日の1番時計を計時しており、万全の状態。
そして本番では重馬場の中、トップハンデの58キロを背負いながらも、序盤は逃げたメイショウナルトの2番手追走から向正面で仕掛けて先頭に立ち、直線でコスモソーンパークとダコールの猛追を振り切り、最後まで粘り切る自分の競馬で重賞5勝目を挙げた。レース後、高見厩舎長は「先頭に立ってからがしぶとかったですね。秋山騎手もこの馬の力を信じる騎乗をしてくれましたし、本当に嬉しい勝利です」と喜びの声をあげた。
その後は産経大阪杯8着、秋山騎手の落馬負傷で武豊騎手に乗り替わった安田記念は7着、中京記念7着、富士ステークス8着、そしてマイルチャンピオンシップは13着に終わり、これを最後に11月26日付で登録を抹消、現役を引退した。
現役引退後
引退後は優駿スタリオンステーションで種牡馬となった。種牡馬としては父同様に短距離主体で芝・ダート兼用。産駒は2019年にデビューし、5月16日門別競馬場のJRA認定フレッシュチャレンジ認定競走でダリルが勝ち、産駒初勝利。7月21日福島競馬場第5レースの新馬戦ではオヌシナニモノが勝ち、産駒のJRA初勝利を挙げた。
外見・性格
平田師は「ブラックヒルは、めちゃくちゃカッコいい馬やったんやで」と常日頃から語っており、記者からも「まるで鋼のように黒光りする馬体。ズバリ、イケメンです!」と評されている。また、引退後については西口厩務員曰く「体も一緒やな。筋肉もあまり落ちてへんやん」とのことで現役時代から変わらない肉体を維持している様子。
性格については「相変わらず〝俺様な感じ〟やな~。ここにいるときも偉そうで偉そうで…。全然、言うことを聞いてくれへんかった。」とのことで現役時代も現在も俺様気質である様子。
関連項目
同馬主
カレンチャン:配合相手で間にカレンユアンメンを設けている。
カレンミロティック:同厩。併せ馬のパートナー。
ノーザンファーム空港牧場C-1厩舎
ダイユウサク:平田師が調教助手時代に担当。有馬記念制覇時には歓喜のあまり、バスの天井を殴り続けてしまい、手が腫れ上がった。
エルコンドルパサー:初代無敗NHKマイルカップ覇者。