概要
2009年に生まれ、2012年に3歳を迎えた競走馬たちの世代。
「ゴールドシップ世代」あるいは「ジェンティルドンナ世代」と言われる世代。この2頭が合わせてGIを13勝しており、牡馬牝馬共に活躍した世代と言える。また、現役時代当時のメディアに目を向けると、ジャスタウェイのWBRR世界1位を筆頭に海外での活躍が国内以上に注目を集めており、内外共に活躍した世代と言える。
主な戦績
平地GⅠ
迷馬っぷりですっかり芸人枠扱いされるゴルシだが、ずば抜けたスタミナを武器にGⅠ6勝・クラシック2冠・4年連続GI勝利・史上初宝塚記念2連覇・GII阪神大賞典3連覇と紛れもない名馬でもあり、そのライバルたちの強さ(と個性の濃さ)もかなりのものだった。
- 牝馬三冠を達成した後は牝馬限定戦を脱して王道路線で戦い続け、ジャパンカップを連覇しドバイシーマクラシック、有馬記念も勝ちGI7勝、年度代表馬を2回獲得、引退後はJRA顕彰馬にも選出された女傑ジェンティルドンナ
- 古馬になってマイル〜中距離でGI3連勝、ドバイデューティーフリーでの圧勝劇により日本馬初の世界ランキング1位となったジャスタウェイ
- クラシックで好走を見せた後、天皇賞(春)を連覇したステイヤーフェノーメノ
- 牝馬クラシックでジェンティルドンナと鎬を削り、彼女が牝馬路線から抜けた後ヴィクトリアマイルを連覇したヴィルシーナ
- 5歳夏まで条件馬だったが6歳で本格化を迎え、ヴィクトリアマイル連覇(7歳牝馬初のGI勝利)とスプリンターズS勝利を上げたストレイトガール
- 東京大賞典連覇をはじめ、GIで3勝・Jpn1で7勝とダートを荒らし回ったホッコータルマエ
- クラブ牝馬ながら6歳春の引退規定を蹴っ飛ばし、牡馬が圧倒的に強いダートで牡馬を蹴散らしG1を獲ったサンビスタ
クラシックでもさることながら、古馬としての活躍も目覚ましく、中央平地GIを複数回勝利した馬が7頭、そのうち同一GIを連覇した馬が6頭もいるのが特徴(特にヴィクトリアマイルは2連覇×2である)。上位陣の層の厚さ・息の長さが目立ち、1つ上の三冠馬オルフェーヴルも含め98世代をも凌ぐ最強世代を現出させたと評価する声も多い。
07世代の26勝を超える中央平地GI28勝を挙げ、史上最多数を更新した世代である(現在は歴代2位。1位は32勝(12世代現役時にはないGIの勝ちを抜けば30勝)の18世代)。
特に古馬王道GI計11勝をあげており、これは大阪杯がGI昇格した現在でも歴代1位の勝利数である。
障害競走
障害競走においては、飛越の美しさで知られ中山大障害と中山グランドジャンプを連勝したアポロマーベリックを筆頭とし、レッドキングダムも中山大障害を制覇。また、距離の壁に泣いてJ・GⅠ制覇はならなかった馬にも、圧倒的なスピードと鋭い飛越センスで「天才」と称され、引退後は馬術競技で活躍するサナシオンや、重賞6勝を挙げたオースミムーンなどの活躍馬が出た。
平地重賞馬・OP馬
GI未勝利の重賞馬・OP馬にも個性派が揃っている。
サマーシリーズチャンピオン
サマーシリーズとは夏競馬振興を目的に開催されている重賞シリーズで、優勝者は報奨金を獲得できる。優勝回数は全世代トップの5回。特に2014年はスプリント・2000・マイルの全部門を同世代が独占した唯一の年である。
- ハクサンムーン:13年スプリントシリーズ優勝。重賞3勝・GI2着2回/3着1回。ロードカナロアにセントウルSで土をつけ、年間無敗阻止。本馬場入場で旋回する癖があり、回れば回るほど調子がいいとファンからは評判。
- トウケイヘイロー:13年2000シリーズ優勝。重賞4勝・香港C2着。武豊騎手への乗り代わりで開花した逃げ馬ということでサイレンススズカの再来と謳われ、特に札幌記念では6馬身差の圧勝を収めている。
- リトルゲルダ:14年スプリントシリーズ優勝。重賞2勝。アメリカ産の○外。
- クラレント:14年マイルシリーズ優勝。重賞6勝・NHKマイルC/マイルCS3着。獲得賞金額は同世代9位、報奨金込みで8位でGI未勝利組の賞金王。
- マーティンボロ:14年2000シリーズ優勝。重賞2勝。ヴィルシーナの75%同じ叔父で同厩。ディープインパクト産駒の南半球への輸出の実験を目的に意図的に8月に誕生させられた「最も遅生まれの内国産重賞馬」。フランスで種牡馬入り。
その他の重賞馬・OP馬
- ワールドエース:重賞2勝・皐月賞2着。ワールドプレミアの全兄。サンデーレーシングで1億円で募集された(同世代1位タイ)。皐月賞では最終直線で最後方から怒涛の鬼脚で2着。ダービー(4着)後に故障し、長期休養に入るもマイラーズカップで京都芝マイルのレコード勝利を収める。
- トーセンホマレボシ:重賞1勝・ダービー3着。トーセンジョーダンの半弟。落札価格1.55億円の高額馬。京都新聞杯でマークした芝2200mの日本レコードの所持者であった。
- フィエロ:重賞未勝利・マイルCS2年連続2着。インドで種牡馬入りし、産駒が現地のローカルGIを勝利している。
- シゲルスダチ:NHKマイルCで他馬の斜行で転倒するも、落馬した後藤騎手に寄り添う姿を見せ、人々の心を打ったことで知られる。隣の馬房はハクサンムーン。その後、再度の故障によるリハビリ生活から復帰する後藤騎手と再び組む予定であったが、その直前のレースで予後不良となり、この世を去った。2015年の優駿の「未来に語り継ぎたい名馬」では重賞未勝利馬では唯一ランクイン(95位)している。
当時の反響・影響・位置付け
谷間の世代?
このような輝かしい成績を収めたのだから現役当時はさぞ注目されたのだろうと思いきや、必ずしも主役というわけではなかった。1つ上に金色の暴君と称された三冠馬オルフェーヴルが、1つ下に武豊復活のダービー馬キズナなどがいたことが一因で、リアルタイムでは「スターに挟まれた谷間の世代」という声もあった。
クラシック組の早期離脱
牡馬クラシックレースで掲示板入りした11頭のうち4頭(ダービー馬ディープブリランテを含む)が菊花賞前に屈腱炎、4頭が翌年の春天前に屈腱炎で引退もしくは長期休養を余儀なくされており、牡馬はクラシック時点でかなり淘汰されてきたことが窺える。ディープブリランテやワールドエース、トーセンホマレボシの離脱により、古馬GIを勝ち取ったディープインパクト産駒の牡馬はスピルバーグただ1頭のみであった。
クラシックからの生き残りのフェノーメノとコスモオオゾラも最終的に屈腱炎で引退したのだが、ゴールドシップは屈腱炎どころか非常に綺麗な馬体で引退。頑丈すぎるだろお前…
ジェンティルドンナの快進撃の裏で、2歳女王のジョワドヴィーヴルが故障で桜花賞後に長期離脱、復活の兆しが見えてきた矢先に調教中の事故で予後不良という悲劇も起きている。
日高の快進撃
2012年の牡馬三冠レースは日高生産馬が独占したが、これは10年ぶりの快挙。社台による独占が続いていた中で、この快挙は日高の生産者・関係者を喜ばせ、馬産地の重大ニュース1位に同年選ばれている。また、同年のゴールドシップの有馬記念はダイユウサク以来の日高町生産馬による制覇となり、日高町で祝福されている。クラシック戦線ではないが、同じく日高生産馬のサンビスタもクラブとしてサンドピアリス以来のG1勝利を果たしている。
世界に羽ばたいた2014年
彼らが主役として舞台に立ったのは2014年。まず、国内ではゴールドシップが宝塚記念ファン投票で遂に1位となり、その後のグランプリファン投票においても2015年の引退まで4回連続で1位に輝き続けた。海外では日本馬が当時、過去最多となる海外GI4勝(内3勝がこの世代によるもの)をあげ、以下のような世界への挑戦が各メディアで重大ニュースとして取り上げられる等、国内以上に大きな関心を集めた。(当時、ヴィクトワールピサのドバイワールドカップ制覇を皮切りにロードカナロアの香港スプリント連覇と、毎年、日本馬による海外GI勝利があり、オルフェーヴルらの凱旋門賞挑戦が各紙で2012-13年の重大ニュースとして騒がれるなど、上下の世代が注目されていたことにも海外遠征がある)
- 12世代5頭を中心に日本勢8頭で参戦し、2頭がレコード勝利を収めたドバイワールドカップデー
- 各紙でも競走馬のニュースとしては最も大きく扱われたジャスタウェイの日本馬初のワールドベストレースホースランキング年間世界1位
- ドキュメンタリー化もされたハナズゴールの日本馬史上初豪州短距離GI制覇
- 勝利こそしなかったものの12世代2頭含む3頭が挑戦した凱旋門賞
以上は大ニュースとして馬産地から始まり、競馬ゲーム、果ては国会に至るまで駆け巡った。勿論、活躍の場となった海外においても、翌年のドバイワールドカップデーのガイドブック等の表紙に2頭が選ばれる、上下の世代と共に活躍が目に止まったことでオイシン・マーフィー騎手の来日のきっかけとなる、といった出来事もあった。
海外GI勝利数こそ勝る世代は他にあり、年間海外GI勝利数も後に塗り替わるものの、ホッコータルマエの三度に亘るドバイワールドカップ挑戦に対して苫小牧市での市をあげた応援があったことなど、当時、人々が彼らの世界での活躍を願い、勝利に歓喜していたことは記憶されるべきであろう。
海外馬
海外馬は米で二冠馬アイルハヴアナザー、欧州ではデクラレーションオブウォーや、前世代のフランケルの全弟ノーブルミッションなどが活躍した。
代表的な競走馬
※斜字は交流GⅠ
馬名 | 性 | 主な勝利レース | 備考 |
---|---|---|---|
ジェンティルドンナ | 牝 | 12'桜花賞・優駿牝馬・秋華賞、12'~13'ジャパンカップ、14'ドバイシーマクラシック(UAE)・有馬記念 | 12'JRA賞最優秀3歳牝馬、12'年度代表馬、13'~14'JRA賞最優秀4歳以上牝馬、14'年度代表馬、JRA顕彰馬 |
ゴールドシップ | 牡 | 12'皐月賞・菊花賞・有馬記念、13'~14'宝塚記念、15'天皇賞(春) | 12'JRA賞最優秀3歳牡馬、21'ネット流行語100(5位) |
ジャスタウェイ | 牡 | 13'天皇賞(秋)、14'ドバイデューティフリー(UAE)・安田記念 | 14'ロンジンワールドベストレースホース、14'JRA賞最優秀4歳以上牡馬 |
フェノーメノ | 牡 | 13'~14'天皇賞(春) | |
ヴィルシーナ | 牝 | 13'~14'ヴィクトリアマイル | |
ストレイトガール | 牝 | 15'~16'ヴィクトリアマイル、15'スプリンターズS | |
スピルバーグ | 牡 | 14'天皇賞(秋) | |
ハナズゴール | 牝 | 14'オールエイジドS(豪) | |
ディープブリランテ | 牡 | 12'日本ダービー | |
カレンブラックヒル | 牡 | 12'NHKマイルカップ | |
ジョワドヴィーヴル | 牝 | 11'阪神JF | 11'JRA賞最優秀2歳牝馬 |
アルフレード | 牡 | 11'朝日杯FS | 11'JRA賞最優秀2歳牡馬 |
ホッコータルマエ | 牡 | 13'かしわ記念、13'JBCクラシック、13'~14'東京大賞典、14'チャンピオンズカップ、13'・15'帝王賞、14'~16'川崎記念 | 14'JRA賞最優秀ダートホース・13'~15'NARグランプリダートグレード競走特別賞 |
サンビスタ | 牝 | 14'JBCレディスクラシック、15'チャンピオンズカップ | |
ハタノヴァンクール | 牡 | 12'ジャパンダートダービー、13'川崎記念 | |
オーブルチェフ | 牡 | 11'全日本2歳優駿 | |
アポロマーベリック | 牡 | 13'中山大障害、14'中山グランドジャンプ | 13'~14'JRA賞最優秀障害馬 |
ポアゾンブラック(道営) | 牡 | 12'菊水賞、15'グランシャリオ門別スプリント、17'道営スプリント | 15'NAR最優秀短距離馬 |
勝利した古馬GI
※ダートは地方GI含む
芝短距離 |
|
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芝マイル |
|
芝中距離 |
|
芝長距離 |
|
牝馬限定 |
|
ダート |
|
障害 |
|
海外 |
|
海外馬
馬 | 性別 | 主な勝利レース |
---|---|---|
ノヴェリスト | 牡 | 13’サンクルー大賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス他 |
デクラレーションオブウォー | 牡 | 13’インターナショナルステークス |
ノーブルミッション | 牡 | 14'サンクルー大賞、14’英チャンピオンステークス |
アイルハヴアナザー | 牡 | 12'サンタアニタダービー、ケンタッキーダービー、プリークネスステークス |
繁殖成績
牝馬ではジェンティルドンナが2022年のエリザベス女王杯を制したジェラルディーナ(父モーリス)の母となったのを筆頭に、秋華賞の上位3頭(ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、アロマティコ)がそれぞれ重賞馬を輩出している(現役時代は重賞未勝利であったが、ケイティーズハートはエフフォーリア、ショウナンマオはショウナンナデシコを輩出している)。牡馬ともに今後の産駒の活躍に期待がかかっている。
ウマ娘プリティーダービー
以下の競走馬がウマ娘として登場している。12世代(ウマ娘)も参照。
この世代のウマ娘は長らくゴールドシップ1人のみ状態が続いていたが、22年にホッコータルマエ、23年にヴィルシーナ、24年にジェンティルドンナが登場。ジェンティルドンナは、正式発表以前からアニメやゲーム内イベントでヴィルシーナやゴールドシップから名前が出ていた。
その他にもトーセンジョーダンのホーム画面会話ではトーセンホマレボシと思われる存在がほのめかされている。