世界一の称号、父子の覇道。
≪ヒーロー列伝No.77≫
その道の彼方に
いま爆発の機は訪れた。
すべてを烈風で吹き飛ばし
紅蓮の炎で焼き尽くせ。
そうだ斬り込む時は来た。
銀の刃を振りかざし
魂の咆哮とともに突き進め。
もう立ち止まることはない。
坂を駆け上がった
その道の彼方にある
はるか世界の頂点を目指せ。
≪「名馬の肖像」2018年天皇賞(秋)≫
ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない。
概要
生年月日 | 2009年3月8日 |
---|---|
英字表記 | Just a way |
性別 | 牡 |
毛色 | 鹿毛 |
父 | ハーツクライ |
母 | シビル |
母の父 | ワイルドアゲイン |
競走成績 | 22戦6勝 |
獲得賞金 | 9億939万8000円 |
管理調教師 | 須貝尚介 |
調教助手 | 榎本優也 |
ジャスタウェイとは、日本の競走馬。馬主はアニメ版『銀魂』の脚本家・大和屋暁。
父は日本馬で唯一ディープインパクトを降したことがあるハーツクライ。(大和屋氏本人も一口馬主になっていた)
成績は22戦6勝。直線一気の末脚が持ち味であり、22レース中12レースで上がり3F(残り600mからゴールまでの時間)最速を記録している。
名前の由来
勿論、名前の由来は馬主の代表作『銀魂』に出てくる携行型爆弾ジャスタウェイである。
ただし、JRA公式発表では、この馬の名前の由来は「Just a way」(その道)となっている。
まぁ、上記の名馬の肖像に縦読みを仕込む辺り、「分かっている」感じはするが…
何でこんな名前を付けたかと言うと、購入当時、大和屋氏は自身の製作した作品のキャラクターから名前を因もうとしており、その際に「あまり洒落が利いてない感じ」という理由で主要キャラクターの名前は付けたくなく、「一見カッコ良さげで、ちょっとアホくさいキャラクターって何だろう」と考え、この名前を選んだことを明かしている。
ちなみに、日本語のカタカナ表記だとどうしても銀魂のアレが思い浮かんでしまうが、英語にすると…
- Just a way…“その道”は俺の道だ。誰も邪魔をするな。
- Just away…"すぐに逃げろ"。逃げ切れるものなら(どこからでも差し切ってやる)
また、後述の実況で完全に火がつき一時期just〜というウマが非常に増えたとか
見出しの台詞であるジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない。は、銀魂にてジャスタウェイを紹介した時の台詞だが、後述の活躍にもある通り、競走馬としてのジャスタウェイの在り方も端的に示した名言でもあり、天皇賞優勝記念のフォトブックでも引用され、ドバイDF&安田記念優勝記念フォトブックでは馬名意味とされている。
異名・あだ名
爆弾という異名が新聞で使われることもあったが、最終的には世界一という称号がそのまま異名のように使われるようになった。
須貝厩舎関係者やオーナーからはジャスというあだ名で呼ばれている。また、担当する榎本調教助手からは若い頃、ジャスたんと呼ばれていた。
デビュー前
誕生
2009年3月8日、北海道浦河町にて生を受ける。
生産は社台コーポレーション白老ファームとなっているが、実際には白老ファームから母馬を預託された浦河町の何処かの牧場で誕生したと推測されている。
父ハーツクライは前述の通り。
母シビルは現役時代、サンデーレーシングのクラブ馬(募集価格2400万円)として5戦するも未勝利に終わる。母父は米GIBCクラシック初代覇者ワイルドアゲイン、母母は米GICCAオークス覇者シャロン。なお、シビルはシャロンがアメリカから輸入される際に受胎していた持ち込み馬である。
この配合について大和屋氏は「社台グループは全体的に(ハーツクライ産駒の)最初の内の1~2年で、短いところを使っている肌(繁殖牝馬)にハーツクライを付けているんです」「ハーツクライは晩成血統と言われてるじゃないですか。それに合わせて、スピードを出したいという意図があるのかなと」と推測している。
中期育成(早来ファーム)
離乳し、母の元を離れたジャスタウェイは早来ファーム(現・白老ファームYearling)にて中期育成を受けることになるが、翌2010年5月に母シビルは結腸捻転で亡くなってしまう。
中期育成時のジャスタウェイについて、育成主任は「トニービンの特徴がよく表現された馬でした。独特の柔らかさがあって、いかにも伸びしろのありそうな雰囲気がありました」と語っている。一方、裏を返せばやや晩成型という意味でもあり、そこに苦悩があったという。
セレクトセール
2010年7月、日本競走馬協会の主催する日本最大のセリ市、セレクトセール一歳の部にて、大和屋氏が1260万円で購入。億単位で取引される馬もいる中、かなりの安値だった。
大和屋氏は、父ハーツクライの一口馬主であったこともあり、「牡馬でも牝馬でも買えるものなら」とハーツクライ産駒が上場するたびに入札しており、結果としてシビルの2009(ジャスタウェイ)、翌日の当歳の部でデライトポイントの2010(オツウ)を競り落とした。
この価格で落札された理由としては
- 当時、種牡馬としての父の評価が定まっていなかった(ジャスタウェイは2年目の産駒)。
- 母方の血統が古く、当時は母母シャロン一族からは活躍馬が出ていなかった。
- 父からの遺伝で脚が外向していた。(その後も脚の外向による特徴的な歩き方は変わっておらず、後に福永騎手はこの落札価格については「それもそうだろうな」と評している。)
その場で場長に調教師の紹介を希望したところ、「新米馬主なので若い調教師の方が良いだろう」との配慮からJRA栗東トレーニングセンターの開業2年目の須貝尚介厩舎を紹介され、入厩が決まった。
(なお、場長との交流はその後も続いており、2013年の天皇賞(秋)の前日に須貝師も交えて飲み会を開くなどしている)
余談だが、2010年セレクトセール出身のもう1頭のGI馬として2日目の当歳の部で3150万円で落札されたラキシスがいるが、彼女もまた漫画のキャラクター由来の名前であり、結果的に2010年セレクトセール出身のGI馬2頭が共に漫画由来の珍名馬になるという珍事となった。
後期育成(ノーザンファーム空港牧場)
2010年秋に早来ファームからノーザンファーム空港牧場のC-1厩舎に移り、須貝厩舎入厩まで後期育成を受ける。デビュー前に空港牧場で福永騎手が乗った際には「G3ぐらいは勝てそう」と感じる程にはここで成長することとなる。(その後、「須貝厩舎のハーツクライでいいのがいるんですけどねー」「名前は覚えてないです」と語っており、この段階では名前を覚えてもらうまでには至らなかった。)
なお、同じC-1厩舎の同期の育成馬には後に天皇賞(春)を連覇するフェノーメノや無敗のNHKマイルカップ覇者カレンブラックヒルがいた。特にカレンブラックヒルとは集団調教で併せ馬をすることもあった。また、道路を挟んでC-1厩舎の隣にあるC-3厩舎には後の三冠牝馬のジェンティルドンナがいた。
同期のライバルたちとの因縁は既にこの時から始まっていたのである。
現役時代
デビューから重賞制覇まで
2011年6月、後期育成を終えたジャスタウェイは須貝厩舎へ入厩。当時3年目の若手だった榎本優也氏が厩務員兼調教助手としてジャスタウェイを担当。隣の馬房には、5月に入厩し現役引退まで共に過ごすことになるゴールドシップがいた。
入厩当初の印象について須貝師は「バランスがよく、マイナス要素がないが、膝を曲げない歩き方が気になり、父ハーツクライを見に行ったところ、同じ歩き方だったので安心した」と語っている。
2011年7月に新潟競馬場でデビューし、2着馬ラパージュに5馬身差をつけての圧勝で見事デビュー勝ちを飾る。
その後は重賞に挑戦し、入着はするもディープブリランテやワールドエースに及ばず3連敗。
榎本助手はゴールドシップよりも先に重賞を勝ち、厩舎初の重賞馬となることを目指していたが、ゴールドシップがディープブリランテを破り、G3共同通信杯を制したことで、この戦いは今浪隆利厩務員とゴールドシップが勝者となる。
その2週間後の2012年2月25日、阪神競馬場で行われるG3アーリントンカップに出走。
最後方に位置したまま外を回って直線に入ったが、直線に入ると一気の末脚で最後方から12頭をまとめて差し切るというド派手な勝ち方で重賞初制覇を飾った。
大和屋氏は既にこの時には父ハーツクライに続くジャスタウェイのドバイ挑戦を夢として口に出していたという。
ちなみに、ジャスタウェイがまだ「シビルの2009」であった2009年4月30日に放送されたアニメ「銀魂」第155話「裏の裏の裏は裏」には「ジャスタウェイ」と言う名の芦毛馬が登場しており、右回りのレースで馬番13番のジャスタウェイが大外からごぼう抜きして1着入線というアーリントンカップに酷似したレース運びをやってのけている。「予言」と言われる事もしばしば。
なお、1着入線するも審議となった末に降着というオチがついた(結果、チープインパクトが繰り上げ勝利)。
GIの壁《VSカレンブラックヒル》
NHKマイルカップ
その後はG2ニュージーランドトロフィーに出走する予定だったが、感冒から念のため、回避。
このレースを制したのはC-1厩舎での僚馬カレンブラックヒルであり、彼はジャスタウェイ同様、NHKマイルカップへ駒を進めた。
そしてカレンブラックヒルとの初対決となったNHKマイルカップ。手がけた馬たちが最高の舞台で激突するということでC-1厩舎のスタッフたちが応援に駆けつける中、結果はカレンブラックヒルがデビューから無敗の4連勝でNHKマイルカップを制覇。榎本助手が「ゴールドシップだけじゃないってところを見せたい。簡単にはいかないと思うけどチャンスはあるから」(既にゴルシはワールドエースを破り皐月賞馬となっていた)という思いを抱く中、ジャスタウェイは6着という結果となった。
東京優駿(日本ダービー)
続いてオーナーの強い希望(レース選択は須貝師に一任しているが、この時は「わがままを言った」とのこと)から日本ダービーに出走。ゴールドシップそしてフェノーメノとの初対決となったが、ディープブリランテの11着と惨敗を喫した。ダービー時はフォームが未完成であり、榎本助手は「思い返せばもっと僕にできることがあった」と振り返る。
ダービーの二桁着順を受けて、距離延長は不向きと判断した陣営はより長距離となる菊花賞の回避を決断し、古馬と直接対決となる中距離戦線に的を絞ることとなった。
毎日王冠
古馬との初対決となった毎日王冠では、3歳馬としてはジャスタウェイとカレンブラックヒルのみが参戦。
カレンブラックヒル、エイシンフラッシュ、リアルインパクト、グランプリボス、エイシンアポロン、ストロングリターンGI馬6頭を筆頭に出走16頭のうち13頭が重賞馬という豪華布陣。競馬ファンの間ではサイレンススズカ・エルコンドルパサー・グラスワンダーが対決した1998年の毎日王冠以上の名勝負になるのではないかとも囁かれ、古馬を抑えて1番人気に迎えられるブラックヒルに対し、ジャスタウェイは12番人気。
レースでは逃げるカレンブラックヒルを出走馬最速の末脚で猛追するもクビ差及ばず、カレンブラックヒルが無敗の5連勝、12番人気からのジャスタウェイ2着と、3歳馬のワンツーフィニッシュという決着となった。
天皇賞(秋)
続く2012年の天皇賞(秋)。カレンブラックヒルに加え、フェノーメノも参戦し、C-1厩舎の育成馬3頭が揃うことになったが、毎日王冠で9着であったエイシンフラッシュが復活Vを決め、フェノーメノはダービーに続き2着、カレンブラックヒルは初の敗北となる5着、ジャスタウェイは6着という結果となった。大和屋氏は須貝師から勝った時に必要(※)と言われ、白手袋を用意して観戦していたものの、使うことはなかった。
なお、この天皇賞はエイシンフラッシュ鞍上のミルコ・デムーロ騎手の天覧競馬での最敬礼で有名なレースであるが、榎本助手は「エイシンフラッシュが勝って、天覧競馬の中でああいう光景を見て、“ああいうものをいつかはしたいな”という思いがありましたから。」と後に語っている。
(※)天皇賞の盾は天皇陛下より下賜された唯一無二のモノであり、そのため、持ち回りで例年の表彰式に使われるため(その代わり、3/2サイズのレプリカが馬主には贈られる)。
走っても走っても銀銀銀の銀魂(ぎんたましい)
出走を予定していた朝日チャレンジカップは熱発で回避し、僚馬ゴールドシップがエイシンフラッシュらを破り有馬記念を制覇(大和屋氏もちゃっかり口取りに参加)する中で3歳シーズンを終える。
この頃はまだ体も弱く、レース前後の発熱や蕁麻疹、レース後にガクッとくることがしばしばあり、胃が弱いのか競走馬用の濃いめの飼料は体に合わない様子でもあった。精神的にも弱い面があり、環境の変化に敏感で、国内遠征でも食欲を失い、馬体が減ったことで力を出し切れなくなるという弱点があった。また、デビュー以前からの馬体が緩いという課題も解決していなかったが、「新馬戦のあの姿をもう一度見たい」という思いを胸に厩舎スタッフが馬体のケアを怠らず馬体が締まるまで辛抱強く待ち続けたという。
4歳シーズンを迎え、天皇賞(秋)への出走を目指し、獲得賞金を増やすため、G2・G3へ出走するも、中山金杯3着→京都記念5着→中日新聞杯8着と、なかなか勝利に恵まれない日々を過ごす。
ドバイデューティーフリーへの予備登録(その後のインタビューから察するに招待状は届かなかった可能性が高いが)、シンガポール航空インターナショナルカップの一次登録も行っていたが、そこで陣営は秋に備えて短期放牧に出すことを決定。これが功を奏して10㎏増の成長をすることとなる。
しかし、エプソムカップ2着・関屋記念2着、更にエイシンフラッシュとの再戦となった2013年毎日王冠でもエイシンフラッシュ1着に対し、ジャスタウェイは2年連続2着という結果に。(エプソムCをテレビ観戦していた今浪厩務員は「アッ、勝ったわ」と思い視聴を終えたが、後で結果を知り「エッ」となり、榎本助手には同様に誤認した記者から祝勝のメールが送られてきたという)
また、重賞3連続2着という成績から、競馬マンガ「馬なり1ハロン劇場」でも「走っても走っても銀銀銀の銀魂(ぎんだましい)」と元ネタに引っ掛ける形でネタにされたりもした。
この頃について、榎本助手は
- 「本当はもっと大きいとこを獲れる馬なんじゃないかと思っているので。毎日反省というか、今まで何がダメだったのか、ずっとそんなことを考えてますね。僕じゃなかったら、もっと走ったんじゃないかとか……。」
- 「(同期で同厩舎の)ゴールドシップばかりが目立って悔しい気持ちがあった。新聞で人気がないのを見て、自分の馬はもっと強いのに…と思っていた」
覚醒《天皇賞・秋》
溜息すら歓声に。ぶっちぎりを魅せつける。
《東京競馬場ポスター》
そして1年ぶりのGI出走となった2013年の第148回天皇賞。
このときは現役最強とも呼ばれた三冠牝馬ジェンティルドンナや、前走で惜敗した前年覇者エイシンフラッシュといった錚々たるメンバーが揃い、対抗馬としては札幌記念など重賞3連勝中のサマー2000シリーズチャンピオントウケイヘイローが挙げられていた。そんな中、収得賞金額が微妙だったジャスタウェイだが、回避する馬が出たため何とか出走に漕ぎ着けた。そんなオマケのような扱いのジャスタウェイだったが、近走の成績が安定していたためか、5番人気で本番を迎える。
直前のゲート練習の甲斐あり、好スタートを切る。レースはトウケイヘイローがややハイペースで引っ張る展開。福永騎手は「エイシンフラッシュが道を作ってくれる」と道中の目標と想定していたエイシンフラッシュを目の前の位置につけた。結果、想定通り、エイシンフラッシュのすぐ外に道ができ、外に切り替えることが可能になった。外のポジションをキープしたまま、スムーズにレースを進めていく。そして、最終直線でジェンティルドンナが先頭に立とうとした瞬間…
トウケイヘイロー!トウケイヘイロー!粘る粘る!
ジェンティルドンナ!外からジェンティルドンナ…
外 か ら ジ ャ ス タ ウ ェ イ!!!
やや後方にいたジャスタウェイは直線半ばで一気に、それも他馬が止まって見えるほどの爆発的な末脚(上がり3ハロン34.6という出走馬最速の末脚だった)で抜け出した。
一時、先頭に立ったジェンティルドンナに居合抜きの如く、鍔迫り合いをする暇すら与えず、置き去りにする。
外からジャスタウェイ!一気に躱したぁ!!
ジャスタウェイ先頭!ジェンティルドンナ2番手!
ジャスタウェイ先頭!ジェンティルドンナ2番手!
3番手、コディーノ!外からエイシンフラッシュ!
ジャスタウェイだ!ジャスタウェイだ!
突き抜けた、突き抜けた!!
ジェンティルドンナ2番手!
ジャスタウェイ、この破壊力!!!
GIまで届きました!!!
2着ジェンティルドンナとは4馬身差、3着エイシンフラッシュとは6馬身差の圧勝。
長い雌伏の時を経て有馬記念で無敗の三冠馬ディープインパクトを下し、悲願のGI初制覇を果たした父のごとく、ディープインパクト最高傑作ジェンティルドンナを破り、まさかの天皇賞馬となった(鞍上の福永にとっても天皇賞秋初制覇であり、福永が2023年2月で騎手を引退、調教師に転向することが決定したため、この一回が福永唯一の天皇賞秋制覇となった)。
また、2勝馬が天皇賞(秋)を制覇するのは史上初の展開である。
ちなみに、これは馬主の大和屋氏と父親のハーツクライにとって初のGⅠ馬となった。そして大和屋氏は1年間眠らせていた白手袋をはめ、天皇賞の盾を手にすることとなった。
レース後、榎本調教助手は「やっとG1をひとつ使って(ゴールドシップに)近づくことができた」と更なるタイトル獲得に意欲を見せた。また、タイテエムに騎乗し、天皇賞(春)を制覇した須貝彦三騎手を父にもつ須貝調教師は「天皇賞は一番勝ちたかったレース。ほろっと自然と涙が出ました」と語っている。
抜かれた際に思わずジャスタウェイを二度見した岩田騎手(ジェンティルドンナ鞍上)だけでなく、大和屋氏も福永騎手も榎本助手も角田場長も皆、一様にジャスタウェイの圧勝にびっくりしていたが、須貝師だけは「自分はびっくりなんかしてない」と言い切っていたという。
世界3位浮上《中山記念》
天皇賞前日の飲み会で大和屋氏、須貝師、角田場長で決めた通り、疲労を考慮し、年内は休養し、4歳シーズンを終える。
2014年1月、陣営はドバイデューティーフリーへの出走を表明。
海外では収得賞金ではなくレーティングで出走可否が決まるが、天皇賞(秋)でI(中距離)123(当時の日本馬のI区分でルーラーシップと並ぶ歴代1位タイ)をマークしていたことで2月に今度こそ無事に招待状が届いたため、受諾し、大和屋氏待望のドバイ遠征が遂に実現することとなった。
2014年初戦はそのステップレースとして、3月のG2中山記念に出走。
レースにはジャスタウェイと同じくドバイDFへ出走するトウケイヘイローと皐月賞馬ロゴタイプが参戦。前走の天皇賞(秋)を圧勝したものの、フロックと見られた部分があったことや福永騎手の騎乗停止により横山典弘騎手に乗り替わったこともあり、1番人気は前走香港C2着のトウケイヘイローに譲り、2番人気(これに対し榎本助手は「いつになったらジャスタウェイの強さを認めてもらえるんだ」と思っていたとのこと)。しかし、今回は差しではなく先行で勝負を挑み直線の短い中山競馬場であるにもかかわらず直線で突き抜け三馬身半差の完勝を果たし、重賞3勝目を飾った。
レーティングは当初、121と判定されたが、正式発表で上方修正され、天皇賞(秋)に続き、123をマーク。これによりロンジンワールドベストレースホースランキング(LWBRR)(2014/1/1~3/9)でジャスタウェイは暫定世界3位タイにランクインする。
世界のジャスタウェイ《ドバイDF》
3月21日、ジャスタウェイはジェンティルドンナ、トウケイヘイロー、ブライトライン、ロゴタイプと共に関西国際空港から出国し、22日にドバイ国際空港に到着。一足早く到着していたホッコータルマエ、ベルシャザール、デニムアンドルビーと合流し、遂にドバイワールドカップデーに出走する日本勢8頭がドバイの地に集結した。
その中でもジャスタウェイは天皇賞(秋)と中山記念の完勝によりメディアからは日本の総大将として扱われることもあった。
今回はゴルシのような帯同馬は不在であるが、代わりに他に日本からの遠征馬が多くいたことから精神的に大丈夫だったという(現地での調整ではブライトラインと一緒にいる光景もあった)。なお、ジャスタウェイのドバイ到着翌日の23日、ゴルシは阪神大賞典を連覇し、連敗から復活。須貝厩舎に弾みがついた。
また、ジャスタウェイは元々、須貝厩舎共通のNSの文字が入ったメンコを着用していたが、GI馬になったことでこの遠征からゴルシ同様、馬名入りの専用メンコを着用。単なるデザイン変更だけでなく、耳部分の防音機能が強化されている。(なお、以前同様レース本番ではメンコを外す)
現地で順調に調教メニューをこなしつつ、迎えた3月29日ドバイWCデー当日。
日本勢の初戦はドバイWCデー第2レースG2ゴドルフィンマイル。出走馬はジャスタウェイとは過去に3度、対戦し、同じく福永騎手が騎乗するブライトライン。結果は南アフリカの年度代表馬にして後の14年LWBRR年間3位タイバラエティクラブが1着、ブライトラインは健闘の5着。福永騎手そして日本の初戦は南アフリカのワンツーフィニッシュにより黒星に終わる。
そして日本勢2戦目の第7Rドバイデューティーフリー。待ち受ける世界の猛者たちは…
- 同条件の前哨戦も快勝、ここまで6戦無敗の南アフリカの怪物ウェルキンゲトリクス🇿🇦
- そのサポートを務める、前哨戦3着のアルゼンチンGI3勝馬アナエロビオ🇿🇦
- 次走POWSで凱旋門賞馬トレヴをも破るYオークス・愛チャンピオンS覇者・中距離世界No.1ザフューグ🇬🇧
- ビヴァリーD.S・BC F&Mターフを制し、GI連勝中のエクリプス賞芝牝馬チャンピオンダンク🇬🇧
- 香港スチュワーズカップ覇者ブレイジングスピード🇭🇰
- ローマ賞・マクトゥームCR3勝者ハンターズライト🇦🇪
レースではスタートはやや遅れ気味で後方からの競馬となったが、福永騎手は瞬時に作戦を切り替え、ウェルキンゲトリクスを追うことに。第4コーナーで外へ持ち出し、直線を向き、ウェルキンゲトリクスに騎乗していたスミヨン騎手が「勝った」と思った瞬間…
Just A Way for Japan sprinted!!
(日本のジャスタウェイが飛び出した!!)
Coming to the 250m mark and
(ゴールまで残り250m!)
Just A Way!! Dashed away!!
(ジャスタウェイ!!疾走!!)
from Vercingetorix!!
(ウェルキンゲトリクスを突き放した!!)
They’re clear of Anaerobio and Mshawish!
(両者アナエロビオとムシャウィッシュを引き離す!)
But Just A Way was hyped and the hype is right.
(レース前、ジャスタウェイの話題が
過熱していました。しかし、それは当然でした)
Just A Way is a big big winner
of the Dubai Duty Free from Vercingetorix!!
(ジャスタウェイ!ドバイデューティーフリー!
ウェルキンゲトリクスを破り大、大勝利です!!)
またしても異次元の末脚が炸裂。2着以下を完全に引き離し、コースレコードを2秒以上更新する大勝でGI2勝目、そしてアドマイヤムーン以来の日本馬によるドバイデューティーフリー制覇を成し遂げた。父・ハーツクライはドバイシーマクラシックを勝っているので、親子でのドバイ制覇も達成し、大和屋氏の「今度は自分の馬でドバイを制覇する」という夢を実現した。
ちなみに6馬身と1/4離した2着ウェルキンゲトリクスもレコードを更新するタイムだった。
ジャスタウェイの1分45秒52というレコードは未だに更新されておらず、1分45秒台を出した馬さえ2022年(1着同着のパンサラッサとロードノース、ハナ差3位ヴァンドギャルドの3頭)まで現れなかった。
続く第8RドバイSCもジェンティルドンナがレコード勝利を果たし、第9RドバイWCには届かなかったものの、2014年のドバイWCデーは日本馬2頭のレコード勝利という形で幕を閉じた。
更にその勝ちっぷりが評価され、その後発表されたロンジンワールドベストレースホースランキングにおいて130ポンドの評価を獲得し、同ランキングにおける日本馬初の単独トップという栄冠に輝いた。
この130ポンドという評価は、日本調教馬ではエルコンドルパサーに次いで歴代2位、内国産馬に限定すればディープインパクトやオルフェーヴルといった名馬たちをも超える歴代1位の評価であり、名実ともに「現時点での世界最強馬」と認められたという事でもある。
4歳秋に覚醒、そして5歳春!ドバイの地で
世界にその名を知らしめる!
まさに父ハーツクライそのもの!
圧巻でした、ジャスタウェイ!
日本のジャスタウェイが
世界のジャスタウェイとなりました!
世界一の意地《安田記念》
休養を挟んで帰国初戦の第64回安田記念(GI)。主戦の福永騎手が騎乗停止となったため、柴田善臣騎手に乗り替わっての参戦となった。(余談だが、東京競馬場の出張馬房では同じく出走するミッキーアイルが隣となり、「隣がNo・1ホースだから、夜のうちに走り方を教えてもらえるのでは」などと担当する平井助手は冗談を飛ばしていた。)
GI馬9頭が出走するという豪華布陣で単勝1.7倍の1番人気。
小雨が降る中、迎えたレースでは直線入り口から徹底的にマークされ馬群に飲まれかけるというピンチに陥ったが、坂を超えると馬群を抜け出し加速。先に抜けていたグランプリボスとの一騎打ちへ。
ドロドロの不良馬場に何度も足を取られ体勢を崩しながらも、激しい叩き合いを写真判定の末にド根性でハナ差(9cm)で制し、GI3連勝の快挙を成し遂げた。
3歳時に3戦全敗していたカレンブラックヒルからの唯一の勝ち星になったほか、覚醒前に辛酸を嘗めさせられたライバルたちへのリベンジも果たした。
榎本助手は「見ているこっちのほうが先に諦めてしまいそうになる競馬でした。でも、馬は最後まで諦めていなかったと善臣さんは言っていました」と語っている。
レース後の写真撮影では新馬戦、アーリントンC、天皇賞、ドバイ(中山記念では忘れてきた)と、名前の由来となったジャスタウェイ人形を掲げてきた大和屋氏だが、今回は遂に発売されたジャスタウェイのアイドルホースぬいぐるみを持って撮影を行った。ジャスタウェイが名馬の仲間入りをしたことを示す象徴的な出来事と言えるかもしれない。
終わりなき旅
凱旋門賞
そして、「世界最強馬」の称号と日本中の期待を背負って、ジャスタウェイは世界最高峰のレース、第93回凱旋門賞への出走のため、フランスへ遠征。
ゴールドシップとは互いが互いの帯同馬として遠征。また、2歳下の桜花賞馬ハープスターも加わり、日本のマスコミからは最強トリオとして謳われ、海外メディアからはドバイに続き、ジャスタウェイが日本の総大将として認識された。
しかし、レースではスタート後は内を突いてレースを進めたものの、結局はあの爆発的な末脚を見せる事無くゴールイン。8着という失意の結果に終わった。
なお、ワールドベストホースランキングでは世界トップの130を未だキープしているが、この130はM(マイル)区分のドバイデューティーフリーでのレーティングであり、凱旋門賞はL(中長距離)区分であるためである。
ジャパンカップ
その後、帰国初戦としてGIジャパンカップへ出走。
結果はエピファネイアに4馬身差ちぎられての2着だったものの、国内外のGI馬総勢12頭が集まった豪華メンバーの中で2着を確保しているため、実力は未だ日本馬の中でもかなり上位にあったと言えるだろう。
また、エピファネイアはこのレースで最終的に2014年のL区分で世界1位、全体2位となるL129というレーティングを獲得しており、結果的に2014年のマイルNo.1の世界1位と中長距離No.1の世界2位が激突したレースとなり、単年のレースレーティングもこの年の世界1位となった。
なお、エピファネイアは大和屋氏からキャロットクラブを紹介された競馬仲間が一口馬主として母シーザリオの代から出資しており、互いに親の代から互いの馬を応援していた(後述するイイナヅケが笠松に移籍する際には地方馬主の資格がない大和屋氏に代わり彼が馬主を務めた。また、名探偵コナンの大和屋脚本回には彼をモデルにした一族が登場している)。そのため、ゴール後、複雑な表情で顔を見合わせたが、気を取り直して、ジャスタウェイ残念会兼エピファネイア祝勝会ということで一緒に飲むことになった(競馬仲間の奢りで)。
大和屋氏曰く「とまあそんな訳で今回は完敗です」
有馬記念
そして12月28日に行われた有馬記念に出走。出走馬には相棒ゴールドシップに加え、共にドバイを戦ったジェンティルドンナ、デビュー前に同じ育成厩舎で鍛えられたフェノーメノ、そしてこれが最初で最後の対戦機会となったヴィルシーナと当時、芝GIレースを複数勝利していた同期が一堂に会することになった。馬番・枠番のドラフト抽選では既に内枠が埋まっていたことから、陣営は「はまりがいいんじゃないか」との理由でゴールドシップの隣の8枠15番を選択。結果はジェンティルドンナ1着、ゴールドシップ3着、ジャスタウェイ4着と、入厩からゴルシの隣であったジャスタウェイは着順も隣で現役生活を終えた。
ラスト2戦(凱旋門賞を含めると3戦)は、かつて大敗を喫し長距離走の菊花賞断念に繋がったダービーと同等のクラシックディスタンスに挑んだ訳だが結果的に勝てず、中距離競走のスペシャリストという位置付けのまま現役生活を終えた。しかしジャパンカップ、有馬記念と連続で入着を果たしており、ダービーの頃と比べればある程度距離延長に対応できたと見ることも出来るであろう(大和屋氏はジャパンカップ2着で距離延長への対応を証明できたことには喜んでいた)。
実際にレーティングは、ジャパンカップはL121、有馬記念はL120をマークしており、これによりM130、I123と併せ、3区分で120以上をマークすることになった。(アドマイヤムーン、ヴィクトワールピサ、オルフェーヴルに続き日本馬史上4頭目)
現役引退
彼は有馬記念を最後に引退、2015年1月4日には、京都競馬場で引退セレモニーが行われた。
1月7日付けで登録抹消、社台スタリオンステーションにて種牡馬として供用される事となった。
なお、引退セレモニーでは大和屋氏はBGMに自分で作った曲(本人曰く酷い曲)を流すことも考えていたが、それは考え直し、榎本助手がBGMのセレクトをすることになる。
榎本助手が選んだのはMr.Childrenの『終わりなき旅』
その歌詞には次の一節がある。
誰の真似もすんな 君は君でいい
現役引退後
反響
ドバイ圧勝劇及びそれによる日本馬初の世界1位戴冠は2014年最大の競馬ニュースとして人々の記憶に残ることになった。netkeiba.comが集計した2014年の最も注目した競馬ニュースでは全体の31%もの得票で2位以下に大差をつけて、1位にランクイン。また、2014年の重大ニュースとして、各メディア(競馬ブック、スポニチ、競走馬のふるさと案内所等)で取り上げられ、特にスポルティーバ(競馬では唯一)・日刊スポーツ(他には凱旋門賞挑戦)・週間レース(競馬単独のニュースでは唯一)等では他のスポーツ・公営競技・芸能の話題と共に取り上げられている。
JRA公式サイトでは騎手志望者向けの日本の海外挑戦に関する特集で、ドバイの地を激走するジャスタウェイの様子がトップに掲載されている。
更には競馬法改正をめぐる国会審議で、海外で顕著な活躍をした日本馬として、複数回、ジャスタウェイの名前が挙げられるまでに至っている。
表彰
国内においてはJRA賞最優秀4歳以上牡馬を受賞。
また、IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表したロンジンワールドベストレースホースランキングの2014年版において年間1位を獲得。
名実ともに2014年内において世界一のパフォーマンスを見せた馬として認められたのであった。
なお、2位にはエピファネイアが入り、日本馬がワンツー達成と言う快挙も達成された。
加えて、ジャスタウェイがM区分で1位(130)、エピファネイアがL区分で1位(129)、ゴールドシップがE区分で1位タイ(120)となり、2014年はSMILE区分の内、MLEの3つの距離の区分で日本馬が1位となった年となった。
2015年1月20日にロンドンで行われた表彰式ロンジンワールドベストレースホースセレモニーには、大和屋氏、須貝師、福永騎手、エピファネイアが所属するキャロットファームの高橋二次矢代表、JRAの後藤正幸理事長らが招待され、出席。
クリスタルのトロフィー「エクウス」にジャスタウェイの名前が刻まれた。
当初は馬名からネタ馬扱いだったものの、突然の覚醒で一躍世界にその名を轟かせた、まさに爆弾のような競走馬生活だったジャスタウェイ。
生涯戦績で言えば比較的地味な部類であるが、記録以上に記憶に残る勝ちっぷりと、何よりも世界最強の称号を手に入れたと言う実績から、日本競馬史における中距離最強馬として推す声も多い。
彼の血統を引く産駒も、良くも悪くもジャスタウェイの性質を引き継ぐ事が多く、何やかんやでGⅠも狙える馬として活躍する事も多く、間違いなく日本が誇る名馬の一頭として未来まで記憶されるだろう。
種牡馬入り後(脱DT)
そして種牡馬となれば言うまでもなく脱DT。
最初の頃は「少々ヘタクソ」だったらしく、こんなところでも親友ゴルシと正反対である。
ちなみに父ハーツクライはかなり上手く、牝馬に対し「雄だぞ」という雰囲気を全面に出し、情熱的に接したという。(上達後もジャスタウェイはその辺は普通とのこと)
それでも回数を重ねて上達し、多数の種付けを経て2018年、彼の産駒がデビュー。
ところが、7月の函館2歳ステークスで早速重賞2着と言う好スタートを切りながら、重賞DTの脱出はなんと翌年11月30日のチャレンジカップ(ロードマイウェイ)。
この間1年4か月もの間、重賞2着4回(しかもうち2回はG1)を記録し、父親として再び「銀魂」を見せつけてしまう事に。
(それでも2018年のJRAファーストシーズンチャンピオンサイアーとして表彰されている。)
2020年になると重賞5勝。
2020年11月にジャスタウェイは社台スタリオンステーションからブリーダーズスタリオンステーションへ移動することとなったものの、直後の年末にはダノンザキッドがホープフルステークスを勝ってG1も制した。
「ジャスタウェイ産駒は父や祖父とは逆に早熟・早枯れ」という評価も付きかかっているが、2021年には5歳馬テオレーマがJBCレディスクラシックをレコード勝ちし、交流G1を初制覇した。
本番はこれからだ!
後継種牡馬としては、JpnII名古屋グランプリ等を勝利したマスターフェンサー(ジャスタウェイが現役時代に放牧に利用していた吉澤ステーブルの代表が所有)がイーストスタッドにて種牡馬入りし、2023年より供用されている。
血統
ジャスタウェイは5代アウトブリード(5代血統表の中に同じ馬がいない)なので種牡馬としては都合が良さそうだが、実は現代だと結構特殊な血統である。
父ハーツクライは置いておくとして、母シビルはワイルドアゲインが19歳のときの産駒で、そのワイルドアゲインも母親が22歳という高齢出産だった。
なのでジャスタウェイは5代前の先祖に1930年代の馬がいるという、世代を考えれば『血統の古文書』『化石血統』などと呼ばれるほどの珍しい馬なのだ。
参考までに同期ゴールドシップの5代前の先祖だと、コズミックボムという1944年生まれの馬が最も古い。(ゴールドシップの曽祖父ヘイロー(1968年生)の母父に当たる馬。というかジャスタウェイもヘイローの直系曾孫の為血統表自体には名前がある)
対してジャスタウェイはネアルコ(1935年生まれ)やハイペリオン(1930年生まれ)の名もあり、この2頭はジャスタウェイの父父たるサンデーサイレンスの5代前の先祖でもある(ちなみにネアルコは直系の先祖)。
さらにシビル自身がネアルコとハイペリオンのクロスを持っており、ハーツクライも遡ればそれらの血を引いていて、そこへネイティヴダンサーなども含めるとかなりややこしいクロスが発生している。
ジャスタウェイが種牡馬として苦戦しているのはこの辺の事情もあるのかもしれないが、逆に当たれば大物が出るかも……?
性格・特徴
性格
「優等生」と評される性格。
- 大和屋氏曰く「真面目な良い子」
- 須貝師曰く「優等生」「お坊ちゃん」「歌手にたとえるならフォーク歌手」。
- 榎本助手曰く「おとなしく、競馬に行くとスイッチが入る」「(最大の長所は)競馬で一生懸命に走るところ。疲れていても、負けたときも、最後までバタバタになることがなかった。勝とうという気持ちを常に持っていた」「マイペース」
- 福永騎手曰く「とても真面目な馬で、(脚が)痛くてもその素振りを見せなかった」
種牡馬時代はボス意識が芽生える他の多くの種牡馬同様、性格に変化があった。
社台スタリオンステーションへの取材によると、段々と立ち上がったり、主張をするような仕草も見せるようになったことに加え、種付け前の鳴き声も当初の頼りなさそうなかわいい声から自信に満ちた、“オス”の雰囲気の声に変わっていったとのこと。
なお、基本的には「いい意味でポワ~っとしていて、すごくかわいい馬」とのこと。
「名馬堂々。」の記事で聡明な鹿毛と表現されたこともあるように頭は良い様子。
福永騎手が乗るとスイッチが入る賢い馬という榎本調教助手から表現されている。
また、カメラを向けると静止するとの体験談や放牧地でカメラマンを見つけると近寄って行く目撃談があるなど、写真撮影を理解している節がある。
好き嫌い
好きな食べ物はニンジン、ヘージ、乾草等あっさりめのものとのこと。逆に胃が弱いのか濃いめの飼料は体に合わない様子。他の一流馬と比べた食事の重さの程度は榎本調教助手も分からないようだが、ゴールドシップよりは軽く、飼葉を完食した際には「珍しく」と表現されている。中山記念前には太り過ぎないように初めて飼葉の量を加減する程度には食べるようになってきた様子。引退後には腹痛をしたことがないと思われるなど、胃腸も強くなったようだ。
引退後、犬、子供、カラス等、小さな存在に強い関心を示す様子がしばしば目撃されている。特に犬には興味津々になっていたという。
嫌いなことはG1レースで掲示板にパドックの映像が映されることや口に何かされることとのこと。
外見
顔は十字型の流星が特徴的。
体型は脚が短めで体高が低い(引退直後は162cm、現在は164cm)胴長体型。コンパクトに見えるが、現役時代の馬体重は500kg前後あった。社台SSの徳武氏は「インナーマッスルの固まりで骨密度が高く、見た目よりも体重があって力強い。陸上界で言えば多田修平選手ですかね。見た目のさわやかな印象よりも速くて切れ味があるよね」と評している。
新馬戦の頃は「体は子ども」と福永騎手評。
社台SSスタッフによれば、3歳時の天皇賞(秋)でも「薄手で華奢」、5歳時にはシャープなタイプではあるが、幅が出てメリハリが付いて、少しずつ逞しくなっていったという。種牡馬入りした当初はまだ幼い顔(20歳弱の青年の感じ)だったが、種牡馬2年目を終えると、段々“オスらしさ”も出てきて、アゴや頬が張り、風格が出てきたとのこと。なお、今でも目付きなどは優しい雰囲気なので、かわいらしいとのこと。
前述の通り、父ハーツクライからの遺伝で脚は外向している。この外向が原因で誤って人の足を踏んでしまうこともある(なお、ハーツクライはむしろ積極的に踏みに来るという…)。
ゴールドシップほか他馬との関係
ゴールドシップ&ジャスタウェイ
暴れん坊と優等生、最強のふたり
(NumberPLUS「Number競馬ノンフィクション傑作選 名馬堂々。」より)
ジャスタウェイでまず語られることと言えば、現役時代には須貝厩舎の隣の馬房にいたあの天上天下唯我独尊なゴールドシップと大の仲良しだったことだろう。
あちらが「暴走インテリヤンキー」なのに対しこちらは「真面目優等生」であり、調教でもジャスタウェイが宥める関係だったらしい。
- 普段調教を嫌がるゴルシが、ジャスタウェイと一緒に訓練する際には互いに闘争心を駆り立てる(出典:うまレターVol.169、名馬堂々。)
- ジャスタウェイが前にいるとゴルシの落ち着きが全然違う(出典:名馬堂々。馬三郎、あの馬を訪ねて)
- トレセンで離れ離れになると互いの姿を探し合う(出典:名馬堂々。)
- 有馬記念のパドックで他馬に後ろを歩かれるのが嫌いなはずのゴルシがジャスタウェイの前を楽しそうに歩いている
- ゲート裏への移動中に先を行くジャスタウェイにゴルシが小走りで駆け寄るとぴったりくっついて歩く
- 「(ゴールドシップは)寂しかったんじゃないかな。ジャスタウェイが先に引退してしまって」と須貝調教師(出典:2015年ジャパンカップ前の須貝厩舎見学動画)
なお
- フランスでの調教中に進行方向に崖があることに気づいた騎手の指示に反抗したゴルシが崖に突っ込みそうになる一方で、自分は途中で停止する
- 凱旋門賞入場時のゴルシの奇行から顔を背ける
- ゴールドシップはジャスタウェイにも時々吠えていたが、ジャスタウェイは特に気にしてない
- ゴールドシップなど、他の馬が近くで暴れていても気にせず食事をしたり寝たりしていた(出典:名馬堂々。)
また、ジャスタウェイは右前脚に爆弾を抱えており、左回り中心に使ったり長い休みをとる必要があった。
これができたのはゴルシの存在が大きく「ジャスタウェイ以外に期待馬のいない厩舎だったら、無理な使い方をして成長しきれなかったかもしれない」とは厩舎関係者談。つまりゴルシが須貝厩舎のエースとして活躍してくれたからこそ、ジャスタウェイはその間にしっかり休養を取りつつ調整し、覚醒の時を迎えられたのだ。
加えて、14春天後に肉離れとなったゴルシの放牧中には調教で負荷をかけられるだけ走る馬を他厩舎から探したこともあるなど調教パートナーとしても重要であり、大和屋氏は「ゴールドシップが須貝厩舎にいてくれたからこそジャスタウェイもここまで強くなれたとも思っています」と語っている。
須貝師はAsian Racing Reportのインタビューで、「ジャスタウェイは扱いやすかったが、最大の学習曲線はゴールドシップからで、ゴールドシップと同じくらい気性の激しい馬がいるとき、調教や厩舎では馬をコントロールできる必要があるが、その能力を消すことはできない。だから、彼が落ち着くように、必要なときに集中し続けると同時に、彼を阻害せず、レースでベストを尽くすようにしようとして、本当にバランスが取れていた」と語っている。
もちろん当のゴルシはそんなことは意識していないだろうが、親友同士で支え合う間柄だったのだ。
競走馬の友情エピソードの中では知名度の高いコンビであり、ゲーム『Winning Post 9 2022』の新システム「優駿の絆」の紹介でもこのコンビが1番手として採用され、馬なり1ハロン劇場でお馴染みのよしだみほ先生とのコラボ企画の4コマ漫画でも1コマ目に登場している。
オルフェーヴルとの関係
ゴルシと仲が良かった一方、同じステマ配合で一歳年上のオルフェーヴルとは仲が悪いとの噂もあった。
- 種付け中のオルフェーヴルがわざわざ種付けを中断して、後ろを通ったジャスタウェイを威嚇した(2015年)
- 放牧地が隣になったが、不仲故に結局、ジャスタウェイは放牧地を引っ越した(2017年)
もっともオルフェーヴルはゴルシと違い、元々他の馬と仲良くするタイプではないようであり、幼少期は虐められっ子だった彼も社台SSでは「オルフェーヴルに立ち向かえる馬はそういませんよ。」とスタッフに言われるほどになっている。(ゴルシはジャスタウェイ以外にもタイセイモンスターや、引退後に知り合ったグラスワンダーやウインブライトなど、意外と友達がいる。
なお、イスラボニータはオルフェーヴルとの威嚇合戦の末にオルフェーヴルとの仲が改善した。)
一方で2017~2018年に、隣の放牧地のオルフェーヴルが柵越しにいななくと、ジャスタウェイが同じ方向へ疾走するなど、併せ馬をして遊んでいる光景が目撃されており、スタッフはそれについて
- 「いつも競り合うように遊ぶんです。オフシーズンで元気をあり余しているし、いい運動になっていますよ」(福田将己氏・出典:2017年天皇賞秋前の日刊スポーツ)
- 「ごく自然のことだと思いますね」
芦毛フェチ疑惑?(キャプテントゥーレ、クロフネ、ディープブリランテとの関係)
ジャスタウェイは、ゴールドシップより約1年早く引退すると、社台スタリオンステーションにスタッドイン。そこで隣の放牧地の芦毛馬(キャプテントゥーレとクロフネ)と仲良くしていた、じっと見ていた、付いて行ったという目撃談が多かったことから、「ゴールドシップを懐かしんでいる?」「芦毛のほうから寄って来る?」とどんどん話が広がり、「ジャスタウェイは芦毛好き」疑惑が持ち上がった。実は反対側の放牧地に同期のディープブリランテがおりジャスタウェイを威嚇しまくっていたため、その反対側に寄って過ごしていた(なお、しばらくすると慣れ、威嚇を気にせずにディープブリランテを眺めることもあった)。
入舎1年後にキャプテントゥーレが別のファームに去り、クロフネが亡くなり、ジャスタウェイ自身も2021年に芦毛が一切いないブリーダーズスタリオンステーションに移動したため、疑惑は疑惑のままであるが、現役時代に特にこの手の逸話がなかったことや他の毛色の馬とも仲良くなっている(クロフネの他にキンシャサノキセキの3頭で見つめ合うこともあった)ことを考えると、当時、仲良くなった隣人がたまたま芦毛だっただけである可能性が高い。
なお、ジャスタウェイはクロフネの娘である芦毛の名牝カレンチャンに2回種付している。(2014年のセレクトセールでカレンの鈴木オーナーが大和屋氏に何やら「凄い約束」をしたそうだが…)
しかし1回目は死産、2回目は不受胎という残念な結果に終わった。
ジャスタウェイの全体の受胎率は悪く無いはずなのだが、不運としか言いようがない。
余談だが、ゴールドシップはビッグレッドファームスタッフから芦毛牝馬好き(基本的に芦毛・白毛の牝馬は種牡馬から人気である)なことが明かされ、須貝調教師は自身が芦毛馬好き(理由は切実なものであるが)なことを語っており、信憑性の薄いジャスタウェイに対して、親友と恩師は実際にそうであるという何処か奇妙な状況となっている。
他の種牡馬たちとの関係
2016年の社台スタリオンステーションへのインタビューによれば、隣の放牧地のハービンジャー(2010年度ワールドベストレースホースランキング1位の英国馬)と相性がいい一方、2015年に一時期、隣の放牧地になったキズナとは互いに対抗心を燃やしたのか、併せ馬で競い合っていたという。
2018年10月頃は、同期でジャスタウェイの翌年の天皇賞(秋)覇者スピルバーグの隣の放牧地になっていたという。現役時代はダービーとジャパンCで対戦した彼らだが、見学者たちが隣のジャスタウェイを見学する中、スピルバーグは「こっちも見てくれないかなぁ?」とでも言いたげな様子であり、見学者を見送ってくれたという。
2019年に見学した見学者のブログには、リアルインパクトと相性がよさげな目撃談や、放牧地が近いキタサンブラックが走る度によく見える位置に移動し、走る様子を覗いていたとの目撃談がある。
馬房に関してはスタッドインした2015年当初は父ハーツクライの向かいの馬房を用意され、使用していた。
2015年10月初めには、同年8月に亡くなったマンハッタンカフェが使用していた馬房・放牧地に引っ越した様子。11月に訪問した大和屋氏曰く、奥まった厩舎にあり、馬房と放牧地を自由に行き来できるため、快適に過ごせる馬房とのこと。
2016年2月に訪問した大和屋氏のコラムによれば、ディープインパクトが向かいにおり、隣の馬房にはエピファネイアが引っ越してきた様子。(なお、ジャパンカップから始まったエピファネイアとの奇妙な縁は息子たちの代に至るまで続くことになる)。
エピソード
大和屋暁と所有馬
勝負服の由来
勝負服の柄は緑、黒うろこ、袖黒縦縞。元々、大和屋氏は青い勝負服を希望し、須貝調教師経由でデザインを提出したものの、審査に通らなかった。次は競馬ゲームで10種類ほどサンプルを作り、再提出したところ、4つほどが通り、その中から須貝調教師が選び、大和屋氏が賛同したのが現在の勝負服である。あまり使われていないということで鱗柄を狙ったとのこと。
馬主になるまで
大和屋氏は高校時代のオグリキャップブームをきっかけに馬主になることを夢見るようになった(なお、大和屋氏曰く競馬の魅力は終わらないことであり、今後の夢はオグリキャップの時のような競馬ブームを再現することとジャスタウェイ引退後にラジオで語っている)。大学時代には有馬記念で徹夜でスタンバって、開門ダッシュし、トウカイテイオーの単勝を購入し当てたこともあった。大学卒業後に父の後を継ぎ、脚本家になったのも馬主になれる職業であったことが理由の1つである。
ハーツクライの一口馬主であったことは上述の通りだが、その理由の一つは柴田善臣騎手と彼が主戦騎手を務めたアイリッシュダンスのファンであり、ハーツクライがアイリッシュダンス産駒であったためであった。
シアトルデライターの2008
ハーツクライ引退で遂に決意し、馬主免許を取得した大和屋氏だったが、2007年のセレクトセールでは大金が動くという恐怖で入札できず、2008年は勇気を出して1回入札したものの競り負け、2009年にようやく(知人に「お前、いい加減落とせよ」と言われ、)ハーツクライの初年度産駒のシアトルデライターの2008を1680万円で落札できたが、デビュー前に心臓麻痺で急死してしまった。そのため、ジャスタウェイは正確には(デビューできた)1頭目の所有馬である。大和屋氏はシアトルデライターの2008を「人生最初の愛馬」と振り返っており、彼の急死が2010年のセレクトセールでの意気込みに繋がっている。
ジャスタウェイだったかもしれない馬
ジャスタウェイを落札した2010年セレクトセールでは、カタログで見たサビアーレの2009を元々狙っていたが、4095万円という価格では手が出せなかった。サビアーレの2009はカポーティスターと名付けられ、2009年のハーツクライ産駒ではジャスタウェイ以外で唯一のJRA重賞馬となり、何の因果か2013年の京都記念でジャスタウェイと対決し、ジャスタウェイが先着している。
オツウ
大和屋氏の2頭目の所有馬はオツウである。母父トウカイテイオー、母デライトポイント(トウカイポイントの全妹)という血統で、逃げ馬のマイラーである。新馬戦快勝後、ジャスタウェイと同じく勝ち切れない時期が続いたが2014年に3連勝で1600万円以下条件まで昇格(レースで怖い思いをしたことで走りたがらなくなってしまったが、須貝調教師が一緒に遊んでメンタルケアに努めたり、ブリンカーを装着させたり、ダートを試したりと須貝厩舎や騎手の努力の賜物とは大和屋氏談)。その後またも停滞が続いたが、2015年の多摩川Sで1年弱ぶりの勝利、遂にオープン入りを果たした。
しかしその後は重賞3着など時折好走はするも2桁着順の大敗が多く、オープン特別リゲルSでの12着を最後に引退し、繁殖牝馬となった。
しかしジャスタウェイほどじゃないが1050万円で買われて1億2000万円以上稼いだんだから本当に馬主孝行な馬である。(生涯獲得賞金額は母父トウカイテイオーの中では5位)
(初仔マジカルステージがデビューから3着・2着と「銀魂」ムードなのはさておきとしても……)
その後、マジカルステージは準オープンに昇格、脚の外向が酷く競走馬になることが危ぶまれていた2番仔キングロコマイカイも未勝利戦を勝ち上がっている。
なお、3頭目のパンデモニウムは喘鳴症の影響で現役時代は未勝利に終わり、繁殖入りとなった。
イイナヅケとマダムジェニファー
その後はハーツクライ産駒の値上がりで、大和屋氏はハーツクライ産駒を落札できなくなった。
言うまでもないが、値上がりの理由の一つはジャスタウェイの活躍である。
(須貝調教師曰く大和屋バブル)
これにより、ジャスタウェイやオツウの産駒を自家生産する方向に舵を切った大和屋氏はジャスタウェイの許嫁を4頭目・5頭目の所有馬として購入した。
第一夫人は「イイナヅケ」という名前である。父ワークフォース・母父アドマイヤベガという血統。大和屋氏曰く僕にとっての夢の配合。おそらくアドマイヤベガの血統がハーツクライと4分の3同じことを意識してのものと思われる。2018年の繁殖入り後は、計画通りジャスタウェイを配合し、2019年に鹿毛の牝馬が誕生。ジャスタウェイの仔なので「ジャスコ」と名付けられた。イオンになったショッピングモールではない。
パワー型の体型でダート向きとされるが(上述のテオレーマ以外にも、ジャスタウェイ産駒にはダート向きの馬が多く出ている)、デビュー戦は芝となった。
また、2020年に出産した牡馬は、長男なのでエルデストサンと名付けられた。
第二夫人はマダムジェニファーという名前である。2020年に出産した牝馬はプリティジェニーと名付けられ、2022年7月に父同様、福永騎手を背にデビューしている。母娘共に大和屋氏が携わったアニメが名前の由来である。
カリボール
2016年のセレクトセールではジャスタウェイの初年度産駒が上場されたが、大和屋氏は上場産駒第1号のレイズアンドコールの2016を5076万円で落札し、カリボールと名付ける(大和屋氏が脚本に携わったイクシオンサーガDTに登場する聖剣が由来)。母父サクラバクシンオー同様にスプリンターであり、2022年4月の芦屋川ステークスを制し、6頭目(デビューできなかった馬も含めると8頭目)の所有馬ながらジャスタウェイ、オツウに続く3頭目のオープン馬となった。
オープン入りできるのは競走馬全体の約3%であることを考えると、ジャスタウェイ抜きにしても強運の持ち主と言える。
エオスモン
大和屋氏は2018年のセレクトセールでは2916万円でジャスタウェイ産駒のショアーの2017を落札し、エオスモンと名付けた。公式には「エオス(暁の女神)+もの」が名前の由来とされているが、実際には大和屋氏が脚本家として参加した劇場版「デジモンアドベンチャーLASTEVOLUTION絆」に登場するエオスモンが由来。
ジャスタウェイな本~世界最強馬との1640日
馬主になって最初に走った馬が世界一強い馬になった!14年春、ドバイDFを制して世界ランク1位となったジャスタウェイ。世界最強の馬を持った馬主が明かす、引退までの奇跡のエピソード集。
2015年2月出版。大和屋暁が自ら綴る、新米馬主と世界最強馬のサクセスストーリー………と言うより、大和屋氏と須貝調教師の飲み歩きリポートである。それを除けば、右も左も分からない新米馬主の馬主体験エッセイである。
須貝厩舎マニアの大和屋氏によって須貝厩舎やその看板馬ゴールドシップについても書かれている。
本著の中で大和屋氏は運を引き寄せ、夢を叶える秘訣は夢を口に出し続けることと振り返る。「口に出せば何か考えるようになりますし、考えていれば何か見つかることがあるじゃないですか。」とのこと。
現在、電子書籍化しておらず、再販もないため、値上がりしている。この他に大和屋氏はジャスタウェイとオツウの賞金約7億円が入ったことで節税のため、ふるさと納税(計800万円)へ挑戦したエピソード(群馬県中之条町の一日町長体験、人間国宝の壺等)を書いた、藤村恵子氏との共著「ふるさと納税完全制覇読本」を2015年11月に出版している。
ドバイのジャスタウェイ人形
ドバイ遠征では、大和屋氏は爆弾の方のジャスタウェイ人形を2つ(金色の特別仕様と通常のものを1つずつ。金色の方は天皇賞の祝勝会でテレビ東京のプロデューサーからもらった一番くじのラストワン賞用のグッズ。元々、銀色のものとセットだが、銀色の方の行方は大和屋氏のみぞ知る)持参したが、通常仕様のものは馬主席においていた際、一瞬目を離した隙に紛失してしまった。
大和屋氏曰く「あのジャスタウェイは自らドバイに永住することに決めたんだと思います(笑)」とのこと。
金色の方は優勝カップのお礼として大和屋氏からプレゼンターに手渡され、プレゼンターを大いに困惑させた。
大和屋氏「顔をしかめて『What's this?』と言ってきたので、『Just A Way!』と言っておきました。」
なお、最終的にプレゼンターもノリノリで金のジャスタウェイを掲げている。
もしかしたら、ジャスタウェイ人形は今も、ドバイのどこかでひっそりと生きているのかもしれない。
にわかなジャスト◯◯人気
冒頭でも書いている通り上記のドバイでの「Just a Way! Dashed away!」のお陰かは分からないが、一時期英語圏において「Just〜」という馬が急増していた模様。
英語圏ではカッコいい字面なのであんな活躍を見せられれば確かにあやかりたくなるのも分からなくもない
ちなみに、日本馬でもジャスタウェイ産駒を中心に「◯◯(冠名)ジャスタ」という馬名が時折登場しており、現在
- アドマイヤジャスタ
- テイエムジャスタ
- ゼンノジャスタ
ヒーロー列伝
ジャスタウェイのヒーロー列伝は、洋楽のCDのジャケットのようなデザインになっているが、これは父ハーツクライのヒーロー列伝と揃えたもの。なお、ハーツクライのヒーロー列伝の写真の背景には何の因果かドバイデューティーフリーの看板が写っている。
府中本町と東京競馬場を繋ぐ連絡通路には親子お揃いのヒーロー列伝のポスターが並べられて飾られている。(社台SSの2015年の種牡馬紹介の冊子の表紙もドバイ制覇時の親子の姿が重なるような粋なデザインになっている)
また、ゴールドシップとジャスタウェイが現役時代に放牧に利用していた吉澤ステーブルWESTのクラブハウスには2頭のヒーロー列伝のポスターが並べられている。
三冠馬キラーの血統
彼が三冠牝馬であるジェンティルドンナを破ったことを皮切りにしたわけでもないが、ハーツクライ産駒はオルフェーヴルやアーモンドアイといった三冠馬と一緒に出走したレースで妙に強い傾向がある。
これも無敗の三冠馬・ディープインパクトを下し、国内唯一の敗戦の立役者となった父・ハーツクライの血だろうか。
もっともオルフェーヴルの場合、ギュスターヴクライに負けたのは自滅したレースであり、またクラシックからの付き合いだった別のハーツクライ産駒には勝ち越している。
またアーモンドアイも中山競馬場との相性の悪さなどで惨敗しており、リスグラシューがいなくても結果は変わらなかっただろう(リスグラシュー自体は間違いなく強かったが)。
なので三冠馬キラーの称号はこじつけとまでは言わないが、本当に三冠馬相手に実力勝ちしたのはジャスタウェイくらいだろう。
終わりなき旅
前述の通り、引退式のBGMはMr.Childrenの終わりなき旅。選曲の理由は、担当する榎本助手がMr.Childrenの大ファン(ジャスタウェイの現役時代のブログでもライブに行ったことなどを語っている)であったため。大和屋氏も「競馬の魅力は終わりのないこと」等と語っていることからピッタリと言えよう。なお、知人たちから「きっと何かふざけたことをやってくるだろう」と思われていた大和屋氏は引退式で真面目にしていたことを驚かれていた(「僕だって真面目にやろうと思えばできるのです」とは本人談)。
それから8年あまり後の2023年3月4日、主戦騎手の福永祐一騎手もまた騎手を引退することになり、引退式が行われた。BGMには2011年のインタビューで自身のテーマソングとして語っていた曲が選ばれた。その曲もまた、初めて引退式に参加した馬であるジャスタウェイと同じ終わりなき旅であった。
サブカルチャーにおいて
銀魂
前述の通り、名前の由来が由来であることから
- 名馬の肖像で縦読みを仕込まれる
- 「ジャスタウェイ、この破壊力!」(フジテレビの吉田伸男アナウンサー)
- 記念品のQUOカードで主人公坂田銀時と共演。
- 東京競馬場のターフィーショップで販売されているグッズぱかぱかばっじやステッカーのジャスタウェイ(競走馬)の目が労働意欲が失せるような目をしている。
- 種牡馬展示会で社台スタリオンステーションから配られたジャスタウェイどら焼きにジャスタウェイ(競走馬)にジャスタウェイ(爆弾)が騎乗する絵が焼き印されている。
- 日刊スポーツの2013年有馬記念のファン投票をテーマにしたイラストでジャスタウェイ(競走馬)がジャスタウェイ(爆弾)を所持している。
- 実写版銀魂公式サイトのミニコーナー「ジャスタウェイを回収せよ」でジャスタウェイ(爆弾)に加えて、ジャスタウェイ(競走馬)が隠れている。
空知英秋氏の反応
ジャスタウェイが天皇賞馬になった際、銀魂の原作者空知英秋氏は週刊少年ジャンプの巻末で 「J(ジャスタウェイ)天皇賞おめでとう。こんな事なら名前使用を許可する時金とっとくんだった…」とコメントした。
またその刊の銀魂本編では主人公が競馬で金をスったことを責められ、「ち、違うんだ。まさかジャスタウェイが将軍賞を取るとは…あんな駄馬もうとっくに馬刺しになってるもんだと…」という酷い言い訳をするシーンがあった。
アニメ銀魂スタッフの天皇賞(秋)の祝勝会には空知氏本人の代理として、空知氏からのメッセージを携えた空知英秋ぬいぐるみが参加。大和屋氏がメッセージが書かれた紙を開いたところ、そこに書かれていたのは
「こちらにも権利がありますので、お金待ってます!」
銀魂ファンの反応
天皇賞(秋)やドバイデューティーフリーを制覇した際には話題となったのは勿論である。
銀魂を通じて競走馬ジャスタウェイを知った人間も多いが、中には遥々ドバイまでジャスタウェイを応援に行った銀魂ファンや、ジャスタウェイをきっかけに競馬に嵌った銀魂ファンもいる。
烈車戦隊トッキュウジャー
ザラム「牧場へ帰れ!」
「ジャスタウェイが、ファラウェーーーーイ!?」
烈車戦隊トッキュウジャーでは怪人管理人ナイトの武器として競走馬ジャスタウェイをモチーフにした斧ナイト系ジャスタウェイが登場。トッキュウジャーに大和屋氏が脚本として参加している縁からである。
実は大和屋氏ではなく、スタッフ主導で話が進み、大和屋氏が気が付いたらジャスタウェイになっていた。上記の台詞に込めた願いは、「無事、終わってくれること、引退してくれること」とのこと。
ちなみに、柄の部分の色は緑と黒を基調としており、大和屋暁氏の勝負服を意識した色遣いになっている。
劇中の活躍?については管理人ナイトを参照。
余談だが、流石に仮面ライダーへの出演はないジャスタウェイだが、仮面ライダー1号を演じた藤岡弘、氏からは「世界に挑戦する姿勢に共感する」という理由で応援されたこともある。
馬なり1ハロン劇場
よしだみほ著馬なり1ハロン劇場では、ジャスタウェイ(爆弾)型のパワードスーツに身を包むと爆弾になるというキャラ付けで登場。最初にスーツを持ち出したのはカレンブラックヒルだが、ゴールドシップが多用。天皇賞(秋)ではジェンティルドンナ、ドバイでは他の遠征馬がゴールドシップによる爆撃の被害に遭うことになる。
ウイニングポスト
競馬ゲームウイニングポストシリーズでは「ウイニングポスト7 2013」より登場。当然、2014年のドバイワールドカップデーの2日前の3月27日に発売された次作「ウイニングポスト8」にも登場するのだが、24日の完成発表会にはゲーマーでありシリーズ全作をプレイしている福永騎手が出席した。そこでドバイデューティーフリーをウイニングポスト8でシミュレートしたところ、1着ジャスタウェイ、2着ウェルキンゲトリクスという結果となった。レース展開や3着は現実と異なるが、1-2着を的中させている。プロデューサー曰く「調子は絶好調にしているが、パラメータはいじってない」という。
翌年発売の「ウイニングポスト8 2015」では新長編イベントとして「世界頂上決戦」が追加されたが、その紹介ではジャスタウェイのドバイ快勝・世界1位について言及されている。
「ウイニングポスト8 2016」からは公募で夢の配合を実現した架空のスーパーホースが27頭登場するが、その中には父ジャスタウェイ・母テイエムプリキュアというタマキュ…ではなく、アニメ配合を実現した架空馬スタコラサッサが存在する。日本初のサウジカップ覇者ではない。
前述の通り、「ウイニングポスト9 2022」の「優駿の絆」の紹介ではゴールドシップとの友情がクローズアップされている。
ダービースタリオン
競馬ゲームダービースタリオンシリーズでは現役時代の2014年12月4日に発売された3DSソフト「ダービースタリオンGOLD」より登場。本作では2009年生まれの競走馬が最も新しい世代として登場するのだが、発売前の新要素紹介ではこれまたゴールドシップ共々、目玉として紹介されている。
また、ドワンゴが2016年12月に発表したダビスタを現実で再現するプロジェクト『リアルダービースタリオン』のイメージ映像に大和屋氏が出演するなどしている。
ウマ娘
競走馬を擬人化したメディアミックス作品『ウマ娘プリティーダービー』では、元々銀魂繋がりで認知度が高かったことに加え、屈指の人気キャラクターであるゴールドシップの親友と言う立ち位置、万年二位の優等生が覚醒して世界一になったというストーリー性から登場を望む声が多い(ねとらぼの『【ウマ娘】あなたが「育成ウマ娘」で実装してほしいウマ娘は?』の人気投票で未登場の競走馬では2021年から3年連続1位)のだが、元ネタを含めた権利関係の複雑さなどから、ファンからは実装は厳しいのではないかと言われている。
一方で、ゴールドシップはゲーム的に重要な要素であるルームメイトの詳細が未だに明かされていないことから、運営側も将来的な実装の見通しは捨てていない可能性はあり、また漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」が、ジャスタウェイの元ネタである漫画が連載されていた集英社の雑誌で連載されている為、少なくとも集英社との版権関係は既に問題無いとも噂されているが、その辺の事情も不明瞭のままとなっている。
元々12世代の競走馬はゴールドシップ以外に登場していなかったが、2022年にホッコータルマエがウマ娘として登場。
ダート馬なのでゴルシともジャスタウェイとも対戦経験は無い(一緒にドバイへ行ったという接点はあるが)ものの、これを機にジャスタウェイの実装にも期待がかかっている。
競走馬としては関連企画で名前は出ており、スナックズンコとウマ娘のコラボ動画でフェノーメノ共々、エピソード(GI未勝利であった頃のジャスタウェイにゴールドシップが併せ馬で負けてしまい、1週間ほぼ食事を摂らなくなった結果、20kg痩せた)が紹介されている。
なお現時点の二次創作では、ゴルシが(元ネタの方の)ジャスタウェイの立体物を大事にしていたり、原作さながらに組み立てているといった物が多い。
擬人化やオリジナルウマ娘(ジャスタウェイ(ウマ娘))のイラストもある
————と、思っていたら2021年10月8日にウマ娘と同じCygamesのアプリゲーム『グランブルーファンタジー』が銀魂とのコラボイベント開催決定を発表した。
この事により、Cygamesが『銀魂』に関するキャラクターおよびアイテムに関するものの利用許可を得ることができたのではと受け取られ、ジャスタウェイのウマ娘参戦の期待が1層強まったとSNS上では話題になり、ネットニュースにもなった。
現に元ネタ(爆弾)の方はジャスト・アウェイという名で登場しており、これも競走馬の方と区別するためではないかと考えられる。
なお、この件に関してグラブルと銀魂側はノータッチ…かと思いきや我らがアホの坂田はグラブルの印象を聞かれて「ああ、あれだ、ウマを走らせるヤツだろ?」と渾身のボケをかましてくれた。なお、中身の方は「来てほしいんだよね…アイツが」「俺で頑張れることがあったら頑張るよ」と自身の動画で発言したり、願いを込めて一番くじのゴルシのキーホルダーと一緒にジャスタウェイ(爆弾)のキーホルダーを付けたりする等している。
2022年2月8日にはなんとウマ娘とグラブルがコラボ。
これが実装フラグとなるか否か・・・・・
関連イラスト
関連タグ
須貝厩舎
ゴールドシップ:隣の馬房の親友。1勝2敗。
ソダシ:後輩。何気に誕生日が同じ。
なお、須貝調教師曰く、自身をプロデューサーとするなら、ゴルシはドラッグをキメたロックスター、ジャスタはフォークシンガー(シンガーソングライター)、ソダシはJPOPのアイドルとのこと。
ライバル
- カレンブラックヒル:同じ育成厩舎出身。父同士も同世代。1勝3敗。
- エイシンフラッシュ:どちらの秋天でも隣の馬番で対決した。2勝2敗。
- ジェンティルドンナ:共にドバイ遠征に参加。父同士が因縁の相手。2勝1敗。
関係者
大和屋暁・須貝尚介・福永祐一
関連キャラクター
ジャスタウェイ(銀魂)
管理人ナイト(烈車戦隊トッキュウジャー)
アニメ・漫画由来の珍名馬かつ名馬
ナムラコクオー・テイエムプリキュア
ラキシス・オニャンコポン
※ラキシスは同じく2010年セレクトセール出身馬でもある。
外部リンク
ジャスタウェイ|名馬メモリアル|競馬情報ならJRA-VAN
ジャスタウェイ | 競走馬データ - netkeiba.com
ジャスタウェイ|JBISサーチ
ジャスタウェイ-Wikipedia
ジャスタウェイ(2009年生、母シビル) - AI競馬
ジャスタウェイ-ニコニコ大百科
ジャスタウェイ-アニヲタWiki(仮)
ニコニコ大百科とアニヲタWikiは元々、爆弾のジャスタウェイの項目だったが、いつの間にか競走馬ジャスタウェイの記述がメインになってしまった。なお、pixiv百科事典も元々は同様だったが、2021年に競走馬の記事が独立した。ニコニコ大百科の掲示板では現役時代当時のリアルタイムでの反応を振り返ることができる。
大和屋暁のコラム「通暁暢達」 | 競馬ラボ
大和屋氏が不定期に執筆しているコラム。馬主としての近況等が語られている。
ドバイ勝利後、「競馬ラボ」による大和屋氏へのインタビュー