クロフネ
くろふね
扉を叩く者
未知なる生命や
理解を超えた存在に
人々は恐れを抱く
どこからやって来たのだ
なぜそんなことが可能なのだ
だがその異端が
新たな価値観を掲示し
固定観念を打ち壊したとき
畏怖から生まれた希望が
明日への扉を叩くだろう
「名馬の肖像」2022年NHKマイルカップ
父フレンチデピュティ、母ブルーアヴェニュー。母の父Classic Go Go。
調教師はキングカメハメハやダイワスカーレットも管理した松田国英。
クラシックシーズンとなる2001年から外国産馬も日本ダービーに出られることが決まったため、馬主の金子はアメリカから来たすごい馬という願いを込めて、マシュー・ペリー提督率いる黒船に肖って「クロフネ」と名付けた。…芦毛なので、名に反して白っぽい馬なのだが。
2000年(2歳・旧3歳)
※この年まで馬齢は旧表記
2000年10月24日に松永幹夫を背に京都競馬場の新馬戦でデビューするも2着。2週間後の同じく新馬戦で初勝利。3戦目のエリカ賞も1.3倍の人気に応えて快勝する。
4戦目は重賞初挑戦となるGⅢラジオたんぱ杯3歳ステークス(現GⅠホープフルステークス)。
2001年(3歳)
NHKマイルカップでは武豊を背に逃げるグラスエイコウオーを差し切ってGⅠ初勝利を飾った。
日本ダービーでは皐月賞を制し三冠間違いなしと言われたアグネスタキオンが屈腱炎によりそのまま引退したため、クロフネ対皐月賞組という構図となったが、結果はジャングルポケットが優勝、クロフネは5着に終わった。
秋シーズンは外国産馬も出られるようになった天皇賞(秋)を目標に調整。
神戸新聞杯(GⅡ)では蛯名正義とコンビを組んだが折り合いがつかず3着に敗れた。
天皇賞に出られる外国産馬は2頭で、その内の1枠はメイショウドトウが当確となり残る1枠がクロフネとなっていたが、直前になってアグネスデジタルが突然参戦を表明したため、獲得賞金総額が下回るクロフネは弾かれてしまう形となった。
結局、天皇賞前日の武蔵野ステークス(GⅢ)に出ることとなったが、これがなんと2着イーグルカフェ(2000年のNHKマイルカップ優勝馬)に9馬身も差をつける圧勝。
勝ち時計は1分33秒3のレコードで、これは芝のレースに匹敵するタイムである。
ちなみに翌日の天皇賞(秋)では、クロフネファンの一部からバッシングを受けながら出走したアグネスデジタルが見事に1着を取り、こちらも大いに株を上げることになった。
実況:青嶋達也
続いて第2回ジャパンカップダート(現チャンピオンズカップ)では前年優勝馬のウイングアローに7馬身差をつけての圧勝でGⅠ2勝目。芝とダート両方でGⅠタイトルを獲った。
その後は翌年のフェブラリーステークスを目標に調整し、アメリカ遠征の話も出ていた。
しかし12月24日に屈腱炎を発症したという報道が流れ、そのまま引退が発表された。
JRA賞では、最優秀ダートホースのタイトルを受賞した。
全10戦のうち4戦でレコードタイムを叩き出し、芝とダートの両方でGⅠタイトルを獲得したが、ダート方面では現在でも最強ではないかという意見もある。
国際的な指標では2001年のインターナショナルクラシフィケーション(現在のワールドベストレースホースランキング)において125ポイントを与えられている。
これは現在におけるまで日本のダートホースへの数値としては歴代最高であり、2023年にサウジカップをパンサラッサ、ドバイワールドカップをウシュバテソーロが勝利し世界最高峰のダートレースを制する快挙を成し遂げたが、それでも前者が120ポイント、後者が122ポイントであることを考えれば極めて破格の評価と言える。
3歳時に騎乗した武豊は「自分にとっても特別な馬の1頭だ」とコメントしている。
調教師の松田は「厩舎を大きくしてくれた功労者。それだけに早くに引退させてしまったことは申し訳なく思う」と語っている。
2002年より種牡馬入り。初年度産駒のフサイチリシャールが朝日杯フューチュリティステークスを勝利すると、その後も産駒が次々と大レースを勝利し、リーディング上位に位置付けられる人気種牡馬となっていたが、2020年7月、高齢を理由に種牡馬を引退。
引き続き社台スタリオンステーションにて繋養されていたが、翌2021年1月17日に老衰のため23歳で死去した。
主な産駒成績
直仔
- フサイチリシャール(朝日杯フューチュリティステークス)
- スリープレスナイト(スプリンターズステークス)
- カレンチャン(スプリンターズステークス、高松宮記念)
- ホエールキャプチャ(ヴィクトリアマイル)
- アップトゥデイト(中山グランドジャンプ、中山大障害)
- クラリティスカイ(NHKマイルカップ)
- ホワイトフーガ(JBCレディスクラシック)
- アエロリット(NHKマイルカップ)
- ソダシ(阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞、ヴィクトリアマイル)
- ママコチャ(スプリンターズステークス)
母の父として
- ノームコア(父ハービンジャー:ヴィクトリアマイル、香港カップ)
- ノーヴァレンダ(父ダイワメジャー:全日本2歳優駿)
- クロノジェネシス(父バゴ:秋華賞、宝塚記念、有馬記念)
- レイパパレ(父ディープインパクト:大阪杯)
- ヴェラアズール(父エイシンフラッシュ:ジャパンカップ)
- イロゴトシ(父ヴァンセンヌ:中山グランドジャンプ)
- スタニングローズ(父キングカメハメハ:秋華賞)
- アマンテビアンコ(父ヘニーヒューズ:羽田盃)
産駒成績は短距離とマイルに好成績が多い一方で、中距離以上のGⅠは2021年現在で未勝利、どころか1800メートル超の芝平地重賞勝ち自体が未だにない……という状況が続いていたが、ソダシが札幌記念(GⅡ、2021年、芝2000m)を勝ったことで「距離の壁」を一つ破ることとなった。
活躍馬が牝馬に偏っていることもあり後継種牡馬に恵まれておらず、父系存続の目途は立っていない。
DAIGOとクロフネ
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