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パンサラッサ

ぱんさらっさ

2017年生まれの日本の現役競走馬。主な勝ち鞍はドバイターフ(GⅠ・2022年)、中山記念(GⅡ・2022年)、福島記念(GⅢ・2021年)。逃げ馬として知られる。
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プロフィール

生年月日2017年3月1日
英字表記Panthalassa
香港表記本初之海
性別
鹿毛
ロードカナロア
ミスペンバリー(IRE)
母の父モンジュー(IRE)
生産者木村秀則牧場(北海道新ひだか町)
調教師矢作芳人栗東
主戦騎手菱田裕二、吉田豊など


2017年3月1日生まれの日本の現役競走馬(20世代)。戦績は2022年10月30日現在で23戦6勝(国内22戦5勝、海外1戦1勝)。

父ロードカナロアは短距離GⅠを6勝し、「龍王」の異名で知られる日本競馬史上屈指の名スプリンター。母ミスペンバリーは凱旋門賞馬モンジュー産駒のアイルランド産馬で、日本で調教された後未勝利のまま繁殖入りした。本馬はその7番仔に当たる。

馬名は古ギリシア語で「全ての海」を意味する言葉で、かつて地球の陸地が巨大な一つの大陸(パンゲア)だった時にそれを取り囲んでいた大洋を指す。ハワイの海神カナロアの名を持つ父からの連想である。

性格/強み

  • 性格

逃げ馬は他馬を怖がる(ツインターボカブラヤオー)、他のどの馬よりも前を走らなければ駄目だと思い込んでいる(ダイタクヘリオス)等、気性面で何かしら問題を抱えていることが多い。
パンサラッサはそれらとは少々事情が異なり、調教中に身体能力の高さもあり調教師を何人も振り落としたりパドックやレース後に首を前後に振り回したりと、一言で言うならば「やんちゃ」な性格の持ち主である。だがレース中は特に問題も起こさず蹴り癖等も無いためやんちゃではあるが気性難というわけでは無く、本格化前の3~4歳前半時には怪我に悩まされた事もあり性格に反してやや虚弱な体質の持ち主だった。
一方で雑音は苦手な一面があるようで、ある時栗東トレセンで車の往来音に驚いてしまい、矢作調教師の愛弟子である坂井瑠星騎手の車を破壊しそうになったという。
また矢作調教師などによると、デリケートなサラブレッドには珍しく遠征が好きらしい。馬運車に乗る時はいつも足取りが軽い他、遠征先でも飼い葉の食い方が変わらないとのこと。

ちなみに、遠征(お出かけ)大好きなことや、実際には行われなかったが天皇賞(秋)前のインタビューで落ち着きすぎているとスタートからの行き脚が悪くなるので、あえてスタートの前に大観衆の前でメンコを外してテンションを上げる。という作戦が明かされたことから、競馬ファンからは「陽キャ」と例えられることもある。

そんなパンサラッサの厩舎での愛称は「パンくん」。自分がそう呼ばれていることも認識しているようで、大阪スポーツの記者が「パンくん」と呼び掛けたところ馬房から顔を飛び出したという

  • 強み、レーススタイル
最大の特徴と言えるのが2021年秋以降に確立された逃げ、それも大逃げのレーススタイル。
過去の有名な大逃げ馬を例に上げると、サイレンススズカ「道中少し息を入れることによる二段構え」ツインターボ「他馬を自身の破滅的ペースに巻き込んだり人気薄を利用して道中息を入れる」といったスタイル等が思い浮かぶが、パンサラッサが確立した大逃げスタイルは、「序盤から一定のハイラップを刻み続け、終盤減速しても粘り続ける」という、これだけ見ると非常にシンプルなもの。

だがそのハイラップは1F(200m)あたり11秒前半台、それが1000m以上継続するのが本馬の特筆するべき点。このラップはマイル1600下手をすればスプリント1200に匹敵するほどで、パンサラッサの得意距離とされる1800~2000の序盤から刻むラップとしては明らかなハイペース。追走しようとした他の逃げ馬達はその破滅的でこそ無いが逃げとしては明らかに速い絶妙なペースに付いていけず、息を入れる暇も無く道中突き放されてしまう。この父ロードカナロアから継いだ高いスピード能力によるハイラップに加えて、本馬はコーナリングが得意という最内経済コースを通れる大逃げにマッチした強みを持つため、後続馬が最終コーナーまでに距離を詰めるのは非常に困難。

「そんな逃げをすれば前述したツインターボのように終盤逆噴射するだろう」と思うかもしれないが、パンサラッサは母父モンジュー由来のスタミナなのか終盤に入ってもそう極端な失速を起こない。この粘る大逃げがこの馬の最大の特徴といってよい。
長い直線でも適正距離内であればしぶとく脚を使うことができ、さらに並ばれた場合でも競り合おうとする等、道中刻んだラップに反して異様と言っていいほど終盤でも泥臭く粘る。

そして最終直線時には自身が作り出したハイペース消耗戦に強制的に巻き込まれた逃げ・先行馬は軒並み沈没し、差し・追込馬もハイペースにより十分に息を入れられないせいで満足な末脚を出せず、パンサラッサ自身は減速しつつも十分なリードを利用してゴールしてしまう。
他の馬からすれば放置すれば道中息を入れられたり、物理的に届かないセーフティーリードを稼がれる可能性があり、かと言って競り合いにいけば終盤沈んでしまうため、シンプルながら対処が難しいレーススタイルと言っていいだろう。

さらに関係者が「水掻きがついてるかのよう」とも表する重馬場巧者でもあり、重めだったり洋芝コース上のレース成績も良好。
札幌記念がわかり易いが、このような重馬場では距離を極端に引き離すような事はしないが絶妙なハイペースで後方の足を消耗させにかかる。

そもそも逃げ馬でも道中多少緩めて終盤の直線勝負に挑むのが基本の現代競馬において、「ほとんど道中減速しないで他馬の意を介さず、終盤は切れ味は皆無だが稼いだリードと根性で粘る」という小細工抜きの大逃げを博打では無く戦略として確立させているのは日本競馬史全体においてもかなり異端と言える。

弱点はコーナーが少なく最終直線が長いコースだと自身の強みを押し付けづらく詰められる可能性が高くなる点と、坂ではさすがに失速が顕著な点というところ。後述のドバイターフや天皇賞(秋)ではこのあたりが良く分かる。
(それ以外にも逃げ馬の割にスタート自体は並という欠点もあるがパンサラッサの場合は道中緩めないために結果的に大逃げになるという特殊なレーススタイルであり、前の馬に付いていくサラブレッドの性質上2番手が釣られやすく一種の罠として機能するためある意味強みとも捉えられる)

だが得意距離(1800~2000)内におけるパンサラッサを捉えるのはそう容易な事では無く、本格化したとされる2021年秋オクトーバーから天皇賞秋(2022年10月)に至るまでの成績は2000m以内はGI戦線含めても全連対(着外となったのは明らかに適正距離外だった有馬記念(2500m)や宝塚記念(2200m)のみ)、そして勝ち鞍も海外GⅠ1勝(同着)、国内GⅡ1勝、国内GⅢ1勝を収めており、その実力は折り紙つきの逃げ馬と言えるだろう。

戦績

2~3歳(2019~20年)

2019年9月、栗東・矢作芳人厩舎からデビュー。新馬戦にはロータスランド、2戦目にはアカイイトがおり勝ち上がりを逃す。また、デビュー当初は後の大逃げスタイルも確立していなかった。3戦目の未勝利戦で勝ち上がり。

12月にはホープフルステークスに挑み、初めて先頭に立っての逃げ切り狙いを図る。最終直線まで先頭を保ったが力尽きて後の三冠馬コントレイルにつかまり、6着に敗れた。

2020年も年始からもたつきが続き、クラシック三冠路線に乗れず。
6月に条件戦で2勝目を挙げ、7月にラジオNIKKEI賞(GⅢ)で2着に食い込んだことでオープン入り。

4歳(2021年)

オープン入り後はなかなか勝利が遠く、一時はダート転向も図られた。2021年4月の読売マイラーズカップ(GⅡ)では、直前に左前肢跛行(何らかの故障による歩行異常)が見つかり競走除外。約半年の治療休養に入ることになった。

逃げスタイル確立

10月、オクトーバーステークス(L)で復帰したパンサラッサは、単機の大逃げを敢行し逃げ切り勝利。レーススタイルを確立したのはこの時からと言える。

11月、福島記念(GⅢ)では菱田裕二を鞍上に高速ペースで大逃げを打つ。追走する先行勢をスタミナ切れに追い込んで脱落させ、差し勢は遠すぎて届かない。2着に4馬身差の快勝で、重賞初勝利を挙げた。

福島競馬場での逃げ切り勝ち、そして青い勝負服。90年代前半に愚直な大逃げでレースを盛り上げたツインターボの姿が重なった競馬ファンは少なくなかったらしく、「令和のツインターボ」のワードがSNS上で飛び交うことになった。
レース内容も、前半1000mを57秒3(1993年七夕賞のツインターボは57秒4)、勝ち時計1分59秒2(ツインターボ1分59秒5)とよく似た逃げ方であった。

年末には有馬記念に挑み、果敢に先陣を切る。本家のツインターボより長く粘ったが、流石に今まで2000mまでしか経験のない中で中山2500mは厳しかったか、ツインターボと同じ13着に敗れた(ただし13頭中の最下位だったツインターボと違い、パンサラッサは16頭立て中の13着だった)。

5歳(2022年)

2022年中山記念(GⅡ)から始動。2番人気に推され、1000m57秒6で逃げて自分のレース展開に持ち込み、2馬身半差の快勝。1番人気ダノンザキッドの出遅れがあったとはいえ見事な逃げ切りで、重賞2勝目を挙げた。

次走は初の海外遠征となるドバイターフ(GⅠ)を選択。大阪杯に出て欲しかったという声もあったが、ドバイターフは中山記念と同じ1800m、平坦なコース、枠順の有利不利が少ないなど、パンサラッサにとってはむしろ大阪杯より好条件な部分もあった。

本番では抜群のスタートを切って先頭を逃げるが、戦前に宣言していたほどの大逃げにはならず、「タメ逃げ」に近い形となった(矢作調教師は「ナイターを気にしたのか、思っていたほど行かなかった」とコメント)。それでもかなりのハイペースで、1馬身のリードを保ったまま最後の直線に突入すると先行勢は脱落していく。代わって外から前年度覇者のロードノースが追い縋り、更にその外からは差し切り体制に入ったヴァンドギャルドが馬群の只中から脱出して猛烈な勢いで追い上げ、三頭並んでゴール板を通過。長い写真判定の末、ロードノースとの同着優勝となり、GⅠ初制覇を成し遂げた。
タイムは1分45秒77。ジャスタウェイのレコードには0.2秒及ばなかったが、そもそも今まで1分45秒台に達した馬はジャスタウェイしかいなかった
自らそれだけのハイペースを作りながら逃げ粘ったパンサラッサ、同着という形で史上初となるドバイターフ2連覇を成し遂げたロードノース、ゴール前150mまで馬群に飲まれていたにも関わらずハナ差3着まで粘ったヴァンドギャルド。歴史的な名勝負と言っていいだろう。

次走は欧州を転戦してイギリスのロイヤルアスコット開催を目指すプランがあったが、国際情勢を鑑みて帰国することになり、凱旋レースとして宝塚記念(GⅠ)に出走。距離の不安もあり、オッズはヒシイグアスに次ぐ6番人気となった。
序盤はやや出遅れ両隣に挟まれた上、抜群のスタートを切ったタイトルホルダーと競り合う形となるも、1コーナーに入ろうかというところでスッとタイトルホルダーが競り合いを諦めた事でハナを取り、いつも通りの大逃げをうつ。
競り合った結果1000m通過がなんと中山記念と同じ57.6秒、その後もほとんど緩める気配が無く、結果全馬が消耗し中団以下にいた馬も脱落するほどの凄まじいペースを作り出した。パンサラッサ自身は4コーナーまで粘るも、タイトルホルダーに早めに抜かされ残り1ハロンからも他馬から次々と抜かされ8着に敗れた。「大逃げで後続のスタミナを摺りつぶす」のがパンサラッサの戦い方だが、タイトルホルダーの持つ3000m以上のレースを逃げ切る無尽蔵のスタミナには通用しなかった。思えば最初の先頭争いでタイトルホルダー側はあっさり引き下がった事も含めてまんまと釣られてしまったとも取れる。こうなれば後続も足を溜めるどころかついていくのが精一杯であり、阪神コースを得意としたタイホに展開を支配されたと言える。
とは言えタイトルホルダーがレコードタイム(2分9秒7)を叩き出す立役者となり、不利な展開で残り1ハロンまでかなりの粘りを見せての8着(9着のステイフーリッシュとは3馬身の差があった)ということもあり、実力は示せたと言えるだろう。
また上がり3ハロン37秒4は中山記念のときと比べて0.1秒遅いだけであり、ガス欠というよりはGⅡ級の相手までには通用する逃げが、GI級の相手(それも2000m以上の中長距離を主戦場とする馬たち)には通用しなかっただけとも言える。
ちなみにレース中に関西テレビの岡安譲アナウンサーが放った、
「スタコラサッサとパンサラッサ」
という実況は多くの競馬ファンのツボにハマった。

その後は札幌記念へ出走。
連覇を狙うソダシ、ダービー馬マカヒキ、オークス馬ユーバーレーベンなど強豪揃いのレースとなった。
スタートでは一度ユニコーンライオンに先頭をとられかけるが、内から前に出て逃げの体制を取る。今回は大逃げというわけにはいかなかったのでもうダメか…と見せかけて実はこのレース、洋芝かつ連日の雨により馬場状態は稍重となっていた。実はこれまで重馬場で好成績を上げてきたパンサラッサにとっては有利な状況であり、後続は脚をとられて次々と撃沈、最終直線はこの悪路を耐え抜いたもう一頭の逃げ馬ジャックドールとの叩き合いに。ジャックドールがわずかに前に出たところで粘りったものの差し返しとはならず、接戦の末の2着。とはいえ他の馬には先着しており、ジャックドールに抜かれた後もどうみてもバテバテなのにキッチリ食らいついてクビ差2着となったので、GI馬の意地は示せたと言える。

5歳(2022年) 天皇賞(秋)

そして秋の大舞台天皇賞(秋)へ。
宝塚記念以来のポタジェ、前走につづきジャックドール・ユーバーレーベンと再び対決となり、さらに前年のダービー馬シャフリヤール、3歳馬からは皐月賞馬ジオグリフ、皐月・ダービーどちらも2位とあと一歩の接戦を繰り広げたイクイノックス、それ以外も出走馬全てが重賞勝利馬という強豪揃いの対決となった。

レース直前:「逃亡者」は誰か?

前述の通り出走馬いずれも有力な事に加えてパンサラッサ、ジャックドール、バビットと逃げ馬が複数頭居た事もありハイスピードな展開と誰がハナを取るか?も注目となった。
また、直近の秋天はミドル・スローペースが多い(というより長い最終直線と坂等の要因でハイペースだと潰れやすい)中で、パンサラッサを筆頭に強烈な逃げをする馬のハナの取り合いとなればサイレンススズカシルポートなど過去の秋天の強烈な逃げが引っ張るレース展開の予想もSNS等で予想された。
出走前の実況でも

24年の時を超えて、大逃げで秋の天皇賞制覇という喜びを分かち合おう!3番はパンサラッサ
~ラジオNIKKEIアナウンサー 大関隼氏による実況~

などと馬の名前こそ出さないが露骨に意識したコメントをしている。

そんな中パンサラッサ陣営はというと、前2走でダッシュが付かず敗北した反省からメンコを外すタイミングを早めテンションを上げさせるなど出だしの対策を講じていた。当初の予定ではスタンドの前で外す予定だったが、近走よりピリ付いていたため、ゲート入り直前に外していたのをゲート裏輪乗りの時点で外す程度の変更となった。

レース開始:たったひとりの逃走劇

ゲートが開いてスタートが切られる。スタート直後にヨレてポタジェと衝突するものの悪くないスタート。出脚を効かせて前に出るとコーナーワークで競りかけてきたノースブリッジを離し大逃げに出る。
向こう正面に入ると競り合ったノースブリッジも逃げ馬のジャックドール、バビットも番手に落ち着き他の馬もペースを落としていく中でパンサラッサはそんなことお構いなしにペースを上げて突っ走る。実況が順位を振り返っている間にも一人だけリードが1馬身、2馬身、3馬身…どんどん開き、遂には集団を横から撮っているパトロールカメラから一頭だけ見切れてしまう。1000mを通過する頃には10馬身以上のリード、その動きに観客からもどよめきが出始めた。

「最初の1000m――57秒4!57秒4という超ハイペース!パンサラッサの大逃げだぁああ!!」
~フジテレビアナウンサー 立本信吾氏による実況~

そして1000mラップタイムはなんと57.4秒!宝塚記念以上の超ハイペースな上に、それはかつてサイレンススズカ1998年の同レースで叩き出したタイムと全く同じだった。単独で後方をどんどん突き放していくその走りとラップタイム表示と共にこれに気付いた観客も少なくなかったらしく、どよめきが大歓声へと変わった。

最終コーナー~ゴール:「逃亡者」は大欅の先へ

「さぁパンサラッサ、欅の向こうをもう通過して、これだけの逃げ!これだけの逃げ!!」
「"令和のツインターボ”が!逃げに逃げまくっている!!」
「後ろは届くのか!?後ろは届くのか!!?このまま、逃げ切るのか?!"ロードカナロア産駒"パンサラッサ!」
「"世界のパンサラッサ"の逃げ!!残り400mを通過しています――!」
~フジテレビアナウンサー 立本信吾氏による実況~

大逃げ馬としての先駆者が超えられなかった第3コーナーの大欅の向こう側を易々と抜け、4コーナーカーブから直線に入った時点のリードは実に20馬身以上!このレースぶりに1987年ニッポーテイオー以来の逃げ切りなるかとスタンドは騒然となる一方、パンサラッサは吉田豊のムチに応えて粘りに粘り200mを切ってもなお5馬身以上のリードを保っていた。
というのも矢作調教師は「直線の長く差し勝負になりやすい府中であれば逆に大逃げを仕掛けても後ろは付いて来にくく、理論上前半57秒台後半59秒台で走れば勝てる」と読んでおり、(パンサラッサの走り自体はそれほど普段と変わらないのだが)まさしくその読みに近いレース展開を作り上げたのだ。



しかし逃げ切るかと思われたラスト200m、後方からイクイノックスダノンベルーガジャックドールが末脚を発揮し一気に猛追。一方パンサラッサは距離適性ギリギリと言う事もあり残り100m付近で失速しだす。それでも逆噴射ではなく粘り続けるが、最後の最後ラスト50mでイクイノックスの豪脚に屈する形で1馬身差の2着に惜敗した。それでもダノンベルーガの猛追はクビ差で退けており、長い直線の府中で、坂を駈け上がって、それでもなお3番手以下を封じ切った逃げの矜持を感じさせる2着であった。
惜しくも敗れたとは言えここ数十年の府中2000mの天皇賞(秋)において逃げて上位3着に食い込めた馬は数えるほどしかおらず、連対(2着)に入ったのもあのミス・パーフェクトことダイワスカーレットのみであるため大健闘の2着と言えるだろう。
あまりにも衝撃的な走りをしたため、レース直後のTwitterトレンドでは勝ったイクイノックスよりも先にパンサラッサの名前が挙がる事態になった。

ちなみに、ラストの上がり3Fタイムは「36.8秒」だったのだが、イクイノックスの上がりは「32.7秒」でその差はなんと4秒。換算すると約20馬身でありG1において1着と2着の間でここまで上がり差が出るのは前例が無く、まさしく究極の「逃げvs差し」の勝負であった。

なお、サイレンススズカ号と同じペースで前半走った上にレース完走したことで代償が心配される声もあったが、レース翌日ですら怪我どころか何の異常も見つかっておらず、怪我に悩まされたクラシック時代とは打って変わって驚くほどの頑丈さを見せていた。

香港カップ



年末は香港カップに招待されており、短期放牧を挟んで出走。ジャックドールとは3戦目、他にもジオグリフ、レイパパレ、ダノンザキッドと12頭中5頭も並ぶ日本馬の1頭として参戦した。
オッズは3番人気。香港現地の猛者ロマンティックウォリアー、鞍上が武豊となったジャックドールに次ぐ形となった。日本での人気の高さもあるが、シャンティン競馬場が洋芝コースに対し、この2頭は同じ洋芝上だった札幌記念で叩き合いを見せている事もあり十分勝ちは期待できた。
スタートに出遅れたものの第一コーナーまでには前に出たが、リードは1馬身程度といつもの大逃げとはいかなかった。最内を曲がって最終直線に出たが既にリードが殆ど無い状態ではどうする事も出来ず馬群に沈み、10着と大敗。この距離で着外となるのは初の出来事であった。
距離があまりなかったのは札幌記念と変わらないものの、いつもの粘りが全くみせられなかった。
遠征好きで今回も機嫌がいい様を見せていただけに一体どうしたのか。ドバイや秋天の激走によって海外勢からもやべー奴と認識されており、マークを受けていたのもあるだろうが、それにしてもあっけなさすぎる負け方である。陣営も原因がよくわからないらしく、レース後に矢作調教師も「らしさがありませんでした」とコメントを残している。

12/20に次走はサウジカップ、なんとダート1800mの海外G1への挑戦が発表された。重馬場が得意かつ過去にはダートも経験しているパンサラッサだが、過去に出たダート戦である師走ステークスは11着の惨敗。日本の砂地とキングアブドゥルアジーズ競馬場のウッドチップを混ぜ込んだダートでは条件が違うが、どちらにしてもG1となれば険しい道となる。しかし前年に「アメリカのダートは芝も走れる馬なら勝てるのではないか」という考えの元、マルシュロレーヌをBCディスタフへ送り込み、展開が味方したとはいえ本当に勝ってみせた矢作調教師の判断ということもあり、注目を集めている。
もし勝利すれば日本調教場初の海外で芝ダート両G1制覇(片方は日本という例はアグネスデジタルが居る)となるが、果たして。

その他

異名の数々

本格化した後の大逃げという個性的なレーススタイルから、本馬は様々な2つ名で呼ばれている。
福島記念を制した直後は、勝ち方があまりにもそっくりだったことから令和のツインターボと称され、次走の有馬記念でも「適性距離外ながら人気投票により出走→レース道中は先頭で大逃げ→4コーナーで撃沈」といったこれまた本家を彷彿させる潔い走りを見せたことで一時定着した。この呼び方は2022年の天皇賞(秋)においても実況から呼ばれる等、この馬の走りを一言で表現する2つ名と言える。
しかしながら、2022年に入るとその本家ツインターボがなし得なかったGⅡ、更には海外GⅠのドバイターフを制したことから、もはや「令和のツインターボ」に収まる器ではないと認識されるようになり、の二つ名を襲名する形で世界のパンサラッサと称されるように。
その一方、天皇賞(秋)ではあのサイレンススズカを彷彿とさせる大逃げおよび完全に一致の1000mラップタイムから、「逃げて差す」本家とはまた別の走り方ながらも「24年前の夢の続き」と称されている。実況の立本氏もレース直後の振り返りで「57秒4ですか…」とタイムに言及しつつハイペースになった展開を語るなど、名前こそ出さなかったが想起するものがあった事がうかがえる。また、競馬の総合ポータルサイトnetkeibaの公式Twitterアカウントも「24年越しの大逃げ成就!」という文言を準備していたとレース後にこぼしていた(該当ツイート)。
過去の大逃げ馬を重ねた二つ名もまだまだ増えそうである。 

なお、これまで数々の名実況を繰り出してきた関西テレビアナウンサーである岡安譲は「令和のツインターボ」という呼称を自身も使うこともあるものの、天皇賞秋2022の名レースを機に封印したい旨をこぼしていた(外部リンク)。
上記の立本氏の実況も最初は過去の馬にも関わる呼び名を出しつつ最後は「世界のパンサラッサ」という彼自身の異名へとつなげるという印象的なものとなっている。

名勝負メーカー

大逃げを覚醒させた後のパンサラッサのレースは、レーススタイルそのもののド派手さも相まって見ごたえのあるものが多い。
大逃げというスタイルからハイスピードなレース展開を作るため、パンサラッサ当人の勝敗を問わずレコード更新を発生させるレースを多く生み出している。
そんな状況でパンサラッサを相手取る馬は生半可なスタミナや立ち回りではスタミナを摺りつぶされてしまうので、必然的にラストスパートでは的確なペース配分とそれを成し遂げる地力を発揮して食らいついてきた馬と、その追撃を振り切ろうとするパンサラッサの対決を見せる事となる。
事実、2022年宝塚記念、札幌杯、秋天の結果を見ると掲示板入りした馬はほぼ人気上位で埋まる堅い結果となっている。順当といえば順当だが、ペースを保てない馬はスタミナをすり潰されてしまうのもこの結果の一因だろう。
さらにスタミナ切れでバテバテの状態になりながらも前述の「粘る大逃げ」を発揮するためあっさり抜き去られて沈むような負け方はせず、札幌記念でのジャックドールとの叩き合いのように後方からの猛追にギリギリまで粘り続けている。距離が長いレースで力尽きかけてもブービーにはならずにキッチリゴールにたどり着くなど、タダでは負けない底力で「最後まで勝ちにいく」レースを見せてくれるのもパンサラッサの魅力と言える。
特に2022年秋天はド派手な逃げvs驚異的な末脚というわかりやすい構図と過去のレースを想起させる展開により当年屈指の名レースとの評価も少なくない。

吉田豊と大逃げ

大逃げ覚醒後のパンサラッサの主戦騎手となった吉田豊氏だが、彼は1998年の秋天にてサイレントハンターに騎乗、サイレンススズカが故障するまでは2番手で走っていた。
つまり彼はサイレンススズカ自身に乗っていた武豊を除けば、最も近くであの悲劇を目撃していた人物でもあった。
24年という月日を経てパンサラッサを相棒に彼自身が秋天で大逃げを披露したが、向こう正面からはパンサラッサに任せて走っていたという。
このような因縁と状況の中で1000mのラップタイムやパンサラッサ以外がスローペースだったことによる強烈な引き離し、ラスト100mほどまでは失速する事なく粘り続けて2着でゴールしたその姿から、「あのレースでスズカが故障しなかったら」と二つのレースを比較するファンも少なからず発生した。
勿論パンサラッサとスズカには縁が無く、同じ逃げ馬とはいえレーススタイルも異なっているため一概に比べるわけにはいかないが、多くのファンを魅了した馬であることは(ツインターボも含めて)同じと言える。

箱根のパンサラッサ?

そんなこんなで2022年の競馬を彩ったパンサラッサだが、年明け2023年1月2日に突如としてTwitterトレンドに急浮上した。
というのもこの日開催された箱根駅伝の1区(スタート直後)で学生連合の新田楓選手が派手な大逃げで先頭に立った後、3位でタスキを繋げたのだ。(ただし学生連合はオープン参加なので参考記録)
その流れもあっという間にガス欠ではなく粘り続け、終盤で明治大学の富田峻平選手と駒澤大学の円健介選手が差という流れがパンサラッサが走った秋天の流れと酷似していた事からネタになった。



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第166回天皇賞
ツインターボ…こちらも福島と中山の重賞を勝利している逃げ馬。 
サイレンススズカ…「『』を相棒に大逃げスタイルを確立したG1馬」という共通点を持つ。最期のレースとなった秋天の1000mのタイムがパンサラッサのそれと全く同じだったこともあり、レース後にTwitterでもトレンドに挙がった。 
ジャックドール…同時期に活躍し実際に対決もした逃げ馬。こちらは先頭を取りつつも終盤までじっくり溜める「逃げて差す」スタイルでありパンサラッサとは真逆の逃げ戦術。 
タイトルホルダー…こちらも同時期に活躍し実際に対戦した逃げ馬(対戦成績は2戦0勝)。急→緩→急とペースを切り替えて脚を溜めつつ逃げ切るまた異なる逃げ方を行う馬であり、無尽蔵のスタミナと合わせて世代最強の称号を勝ち取った。

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