マイネルファンロン
まいねるふぁんろん
生年月日 | 2015年2月19日 |
---|---|
英字表記 | Meiner Fanrong |
性別 | 牡→セン |
毛色 | 青鹿毛 |
父 | ステイゴールド |
母 | マイネテレジア |
母の父 | ロージズインメイ |
生産 | ビッグレッドファーム(北海道新冠町) |
馬主 | サラブレッドクラブ・ラフィアン |
調教師 | 手塚貴久(美浦) |
戦績 | 48戦5勝[5-5-3-35] |
獲得賞金 | 2億177万円 |
ステイゴールドの事実上のラストクロップ世代の一頭。
直接のステゴ産駒が徐々に現役から少なくなっていく中、2015年生まれの産駒としてはアフリカンゴールドと共に平地の重賞戦線で走り続けたベテラン馬であり、「ファニキ」の愛称で親しまれた。2024年にアフゴが引退した為、ステゴ産駒のJRA平地重賞馬としては最後に残った馬と言っていい存在となった。
「ファンロン」は中国語で「繁栄」の意味。
3歳下の半妹に2021年のオークス馬・ユーバーレーベンがいる。ユーバーレーベンの父はステイゴールド産駒のゴールドシップのため、いわゆる「4分の3きょうだい」と呼ばれる血縁。
重賞制覇まで
2017年9月デビュー。2戦目の未勝利戦で初勝利を挙げる。
2018年にはスプリングステークスで3着に食い込み、いまだ1勝・収得賞金400万円の立場ながら優先出走権を得て皐月賞に出走。しかし、エポカドーロの13着に大敗。
以降は自己条件でコツコツ昇格を狙う路線に切り替え、4歳になった2019年4月の湾岸ステークス(3勝クラス・中山芝2200m)を制してオープン入り。
が、その後はしばらく伸び悩んだ。オープン入り直後こそ2019年函館記念で2着に食い込んだものの、その後は重賞制覇どころかたまーに掲示板に乗るのが精一杯であった。
この頃までは、逃げ・先行の戦法で走っていた。
2021年新潟記念
ファンロンは実績も薄く前走の函館記念は14着大敗、それでいてハンデも55kgと軽くはなく、17頭立ての12番人気という評価だった。
ただ、鞍上はこの年の春に半妹のユーバーレーベンをオークス優勝へと導いたミルコ・デムーロが初めて騎乗していた。
だがスタートで出遅れ。人気薄の逃げ先行馬が8枠16番のスタートから出遅れ……普通はもうこの時点で半ばレース終了お疲れさん、である。
しかしミルコは無理に位置を上げずそのまま後方に控えさせ、末脚勝負に賭けた。
新潟の長い最終直線、各馬が進路を求めて広がり横一列、どの馬が勝つのか全くわからない激しい叩き合いとなった。(ハンディキャッパーのお見事な設定と言うほかない。)直線を向いた段階で15番手付近だったファンロンは外へ外へと導かれ、気がつけば外ラチ沿い。横一列に並んだ他馬をまとめて差し切り、2年5ヶ月振りの勝利で重賞初制覇を果たした。
その後
この新潟記念の勝利以降、中団以降に控えて展開が向くのを待ちつつ、差し一発を狙うスタイルに転換。
好騎乗で重賞馬へと引き上げたミルコや、同じステイゴールド産駒ウインブライトの主戦であった松岡正海が乗ることが多くなった。
展開ガン待ちスタイルのため、ダメな時はあっさり負けるのだが、2022年初戦のアメリカジョッキークラブカップでは2着に好走。タイトルホルダーがレコード勝ちを収めた宝塚記念でも超高速展開の中5着に粘るなど、ステゴ産駒らしく年齢を重ねて存在感を発揮するようになってきている。
8歳になると流石に歳なのか入着も厳しくなってきたが、なんとこの年で障害入りが計画されているらしく、障害飛越の練習をしていることが判明した。飛越はなかなか上手いらしく、一度脚をぶつけて休養に入りかけたもののすぐに回復したのでそのまま練習を続行しているという。
そしていざ障害入りへ。初戦は本馬が障害物に用心する様子が見受けられ結果は8着。二戦目では雨で振っていた影響か最終直線の芝とダートの切れ目の部分で転倒してしまい、ファンロン自身は膝を擦りむいたものの一人で完走して帰ってこれる程度の軽症だったが、鞍上の蓑島騎手は胸部を負傷する怪我を負うことになった。
その後は平地に復帰し中日新聞杯、中山金杯、小倉大賞典とコンスタントにレースに出走するも振るわず、リステッドやオープン競走でも入着も叶わなくなるなど流石に衰えが目に見えてきてしまう。
そして、2024年9月に競走馬登録を抹消。今後は乗馬になりセン馬になった。
その後はリトレーニングの後に新潟競馬場で誘導馬となるようである。
彼の引退でこれにより現役のステゴ産駒はJRAの平地競走から姿を消しJRAでは障害馬の3頭のみに、後は地方競馬の5頭しかいなくなった。
- 半妹のユーバーレーベンとは、所属も同じサラブレッドクラブ・ラフィアンかつ、同じ手塚貴久厩舎の先輩後輩。外見も青鹿毛でそっくりである一方、右目の輪眼(いわゆるディクタスアイ)をギョロギョロさせた鋭い気性のファンロンに対し、大変おっとりした性格のユーバーレーベンと、性格的には好対照らしい(下の動画は2022年夏休み中のファンロン・レーベン兄妹と家族たち)。
- 2021年8月31日、2015年の皐月・ダービー二冠馬ドゥラメンテが、急性大腸炎のためわずか9歳で亡くなり、共に二冠を達成したミルコ・デムーロは大きなショックを受けたまま週末の新潟競馬場での騎乗に臨んでいた。そして日曜メインの新潟記念でファンロンを勝利に導き、ドゥラメンテへの弔いの勝利を挙げた。
- 新潟記念で人気薄からの重賞初勝利について、競馬ファンたちは「さすが妹をGⅠ馬に導いたデムーロだ」と感心していた。しかし当のミルコはファンロンに初騎乗するにあたり過去のレース映像で勉強していたものの、血統表の母馬をよく見ていなかったためにユーバーレーベンの兄だと知らずに乗っていた。「同じ手塚厩舎のメンコだし、なんだか雰囲気が似ているなあ」と思いつつ騎乗したという。レース後の取材で記者から「ユーバーレーベンの兄ですが、似ている所はありますか?」と質問され、そこで初めて兄妹だと知ったとのこと。
- 2022年5月、実に皐月賞以来4年ぶりのGⅠ出走となる天皇賞(春)に出走。これまでずっと1800~2200mで走っていたところ、一挙に1000m延長という挑戦だった(結果は6着)。このためレース前にSNS上では「3200m走ると知らされていない」「次走がGⅠだとは知らない」「サイコロで出るレースを決めてる」などと言われ、「またしても何も知らないマイネルファンロンさん」というネタ画像が投稿されていた。また、ネット上ではこのような悲喜こもごもなネタに富んだ様子から「マイネルファンロン兄貴」、略して「ファニキ」と呼ぶ人も多い。
- 様々な形でファンから親しまれているマイネルファンロンであるが、一方で現代競走馬としては異常な治癒回復力を持つことでも知られている。通常、競走馬の負傷というのは数か月、最悪年単位に至り、そのために引退を余儀なくされた競走馬も珍しくない。だがマイネルファンロンは治癒に数週間かかるような怪我を数日で快癒するということもあるという。この特徴は間違いなくステイゴールド由来の特性で、事実母父ロージズインメイの産駒はステイゴールドのみならずゴールドシップなども多くいるが、高い能力の代償か脚部不安に悩まされることも多く、ユーバーレーベンもそれで引退を余儀なくされている。最終的には衰えを理由に引退するという理想的な引き際を見せたその姿は最も穏やかな競争生活の幕引きであり、ある意味ではマイネルファンロンは父ステイゴールドと同じく『理想のクラブ馬』といえるのかもしれない。
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