概要
どこかに白い毛が混じった馬の毛色。成長すると白っぽくなる。
肌は黒い場合が多く、灰色に見える。
馬の毛色は14種類(鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、青毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、佐目毛、河原毛、月毛、白毛、粕毛、薄墨毛、駁毛)、うちサラブレッドには8種類(鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、青毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、白毛)ある。サラブレッドの各毛色は各項目を参照。サラブレッドに見られない各毛色について極めて大雑把に言えば、佐目毛は象牙色系(薄クリーム色系)の毛色、河原毛は亜麻色系の毛色、月毛は黄白色系(濃クリーム色系)の毛色、粕毛は他の色に白い毛が混じって白灰色っぽくなる毛色、薄墨毛は他の色が薄灰褐色がかった色になる毛色、駁毛は白いブチ模様(白班)が胴体に出る毛色である。このうち粕毛や薄墨毛の馬は個体によっては全体的に若い葦毛の馬にも似た色になるが、葦毛と違って加齢によって白い毛が目立って増えることが無く、白くなることはない。
芦毛は他の毛色で生まれるが、毛の色素細胞(メラノサイト)の分裂が異常に早く、細胞分裂の回数の限界を超えて死滅し、毛根部でのメラニン色素の産出が止まることにより、白い毛が増えていく。
白くなる速度には個体差が大きく、競走馬ではカレンチャンやエイシンヒカリのように現役を終えてから白くなったものもいる。
競走馬における芦毛馬の多くはグレイソヴリンという種牡馬を祖先に持つものが多い。
日本では軍馬需要から馬産が行われた経緯から遠目に目立つ芦毛が忌避され「芦毛馬は走らない」とされていたが、そもそも芦毛がサラブレッド全体の7%程で母数が少ないわりに、70年代にはメジロアサマ等の八大競走優勝馬、ホワイトフォンテン等の活躍馬を輩出しており、80年代末のオグリキャップとタマモクロスの活躍以降、このジンクスは過去の物となっている。
芦毛馬に多い病気として悪性黒色腫(メラノーマ)が挙げられる。シービークロスやハクタイセイ、ヤマニンアラバスタはこれが原因で命を落とした。
ちなみに馬が好む毛色は芦毛が多いとされる。ミスターシービーは芦毛相手に種付けする時はイチモツの張りがいつもより段違いでやる気を見せたとか、ウインバリアシオンは芦毛の牝馬相手には明らかにやる気が違うなんてエピソードが残っている。
中には牡だろうが牝だろうが芦毛にしか発情しないなんていうマイノリティーな馬も居るとか……。
代表的な芦毛の競走馬
- ネイティヴダンサー:アメリカの馬。22戦21勝という輝かしい成績と芦毛から「グレイ・ゴースト」と呼ばれていた。種牡馬としても大活躍し、子孫にはオグリキャップの他ミスタープロスペクターやノーザンダンサー等がいる。
- メジロアサマ:芦毛で初めて天皇賞を勝った馬。感冒の治療薬の副作用で生殖能力が極端に低かったが、メジロ牧場代表の北野豊吉はメジロアサマの子で天皇賞を獲ることに執念を燃やし、19頭しかいない子の中から天皇賞馬メジロティターンの輩出を果たした。
- ホワイトフォンテン:現役時代は「白い逃亡者」の異名で一部のファンから人気を集めた。かつて中山競馬場で開催されていた日本最長距離ステークスを制しているが、この時の勝利タイムがあまりにも遅すぎた事(4:46.1)が災いし、同年を以て日本最長距離ステークスは廃止された。日本経済賞(現日経賞)連覇の他に毎日王冠、アメリカジョッキークラブカップと重賞4勝を記録。種牡馬入り後は1986年皐月賞5着のアサカフォンテンを、母の父として第1回東京ハイジャンプ2着のマイネルタスクを送り出した。1996年に老衰のため死去。
- プレストウコウ:芦毛初のクラシック(菊花賞)を勝利した馬。しかし菊花賞ではアイドル的な人気を誇ったテンメイ(母は天皇賞と有馬記念を勝った名牝トウメイ)を破ったため「銀髪鬼」と呼ばれヒール扱いされた、同期の他の馬とまとめてTTGやマルゼンスキーの噛ませ呼ばわりされたなど、やたらと不憫なエピソードが目立つ。産駒に東京ダービー馬ウインドミル(芦毛)、オグリキャップの笠松競馬時代のライバルマーチトウショウ(芦毛)がいる。
- シービークロス:後方からの追い込み戦法を取り「白い稲妻」と呼ばれた。種牡馬としてはタマモクロス、ホワイトストーン等を輩出。
- メジロティターン:メジロアサマの子で天皇賞を親子制覇した。子に天皇賞馬メジロマックイーンがいる。
- メンデス:ホモ結合型の芦毛遺伝子を持つ種牡馬で産駒は全て芦毛に出ることで知られた。仏国供用時はリナミックスを輩出したが、日本ではヴァイスシーダーとハシルショウグンを出すに留まった。
- スダホーク:GⅠ勝ちこそないが、同世代のミホシンザンやシリウスシンボリなどとクラシックを争い、古馬になってからも度々好走したシルバーコレクター。
- ホーリックス:ニュージーランドの馬。第9回ジャパンカップ(1989年)では追い込んできたオグリキャップをクビ差抑え、2.22.2のレコード勝ちをおさめた牝馬。寂しがりだったため馬房に鏡を設置して仲間だと思わせていた、オグリキャップが食事を止めて彼女を見つめていたなどとエピソードが豊富。
- タマモクロス:シービークロスの息子で赤青のメンコがトレードマーク。「白い稲妻」の二つ名も父から引き継いだ。天皇賞春秋連覇を達成し、JRAに移籍した直後のオグリキャップに幾度となく立ちはだかったライバル。
- オグリキャップ:「芦毛の怪物」にしてアイドルホース。笠松競馬場からJRAに移籍し、大きな社会現象となった。クラシックには登録していなかったため出走できなかったが、彼をきっかけに追加登録制度が設置された。妹のオグリローマン(こちらも芦毛)が桜花賞を制覇している。
- ウィナーズサークル:史上初にして唯一の芦毛の日本ダービー勝利馬。唯一の茨城県産のダービー馬でもある。一方、89世代は古馬混合GⅠは1990年の宝塚記念を勝ったオサイチジョージだけという、「谷間の世代」という評価。ウィナーズサークルも菊花賞後の骨折の療養から復帰出来ず、古馬とは未対戦のまま現役生活を終える事になった。
- メジロマックイーン:メジロティターンの子で天皇賞(春)2連覇を達成したステイヤー。初の賞金10億円を達成し、顕彰馬にも選出された。種牡馬としては振るわなかったが、母父としてはステイゴールドとの組み合わせ(ステマ配合)で成功している。
- ハクタイセイ:芦毛馬初の皐月賞馬。ハイセイコー産駒。アイネスフウジンをクビ差差し切って、6連勝で父のハイセイコーに続く皐月賞父子制覇を成し遂げたが、日本ダービーではアイネスフウジンに敗れ5着。
- ホワイトストーン:シービークロスの子。GⅠは制覇できなかったが、王道レースを走り続け、シルバーコレクターと呼ばれた。皐月賞ではスタートでよれて隣りのアイネスフウジンに接触し8着に終わった。産駒アローウィナーが南関東牡馬クラシックの一つ東京王冠賞(現在休止中)を制しGⅠ馬の父となった。母父はプレストウコウ。
- ホワイトアロー:良血ながら脚元に問題があり不出走のまま種牡馬入りしたベストブラッドの代表産駒。現役時代に金杯・西(現京都金杯)と愛知杯を制しているが、その愛知杯で芦毛のメジロマーシャスとの1-2フィニッシュを飾っている。
- ビワハヤヒデ:クラシックを分けあったBNWのBにしてナリタブライアンの兄。レース中に故障した天皇賞(秋)以外は2着以内という非常に優秀な成績を収めた。「顔がでかい」と度々イジられたが、現役中に顔だけ先に白くなっていた。
- ファビラスラフイン:フランス生まれ。エアグルーヴを下して初代秋華賞馬に輝いた他、4歳(現3歳)牝馬としては初のジャパンカップ連対に入った。現役時代はとても黒く、一見して芦毛とは思えないほどだった。
- セイウンスカイ:強豪98世代の皐月賞と菊花賞を制した二冠馬。逃げ馬でもあり、特に菊花賞ではペースを自在に操り、グレード制が導入されてからは初の逃げ切り勝ちをしている。
- アドマイヤコジーン:2歳で朝日杯FSを勝利したあと故障したが、6歳時に安田記念を勝利して復活した。GⅠ再勝利では一番長い間隔を持つ。
- クロフネ:アメリカ生まれ。芝とダートの二刀流で活躍した。馬名はクラシック競走が外国産馬に解禁されたことにあやかっているのだが、「白いのにクロフネ」と珍名馬扱いされることもあった。種牡馬としては短距離路線で活躍する牝馬が多い。
- ヒシミラクル:低人気でGⅠを3勝した馬。「ミラクルおじさん」やプール調教嫌いのエピソードでも知られる。
- カレンチャン:クロフネの娘。全盛期のロードカナロア(厩舎が同じ後輩でもある)に唯一GⅠで勝利したスプリンター。気性が良く主戦騎手である池添謙一騎手の癒し扱いされることがあるが、馬社会では序列に厳しいボス馬だった。現役時代は黒かったが引退後から色が抜け始めている。
- スノードラゴン:10歳まで短距離重賞を走り続けた馬。黄色いシャドーロールがトレードマークのため通称「バナナ師匠」。
- ゴールドシップ:メジロマックイーンの孫。二冠馬(皐月賞と菊花賞)、芦毛最多のGⅠ勝利(6勝)、初の宝塚記念連覇や阪神大賞典3連覇などの輝かしい記録を残すも、出遅れや顔芸などの奇行で記憶にも残った馬。芦毛馬としてのG1勝利数、獲得賞金共にトップ。「不沈艦」「ゴルシ」「白いの」などと呼ばれている。
- エイシンヒカリ:フランスと香港でGⅠを制した逃げ馬。現役時代は黒っぽくパドックで顔芸をするなど気性難だったが、引退後は白くなり大人しくなった。
- ラニ:アメリカ生まれ。母は低人気で天皇賞(秋)を勝利したヘヴンリーロマンス(母の出産後輸入された)。UAEダービーを制した他、日本調教馬として初めてアメリカ三冠の全てに出走した。他の馬に喧嘩を売る、ラチを蹴り壊すなどの気性難で通称「クレイジーホース」「ゴジラ」。ゴールドシップとは芦毛・気性難・大柄・まくり戦法などと共通点が多い。
- アエロリット:クロフネの娘。「隕石」を意味する名前の通り快速の逃げ足が特徴。高速ペースを作り出し何度かレコードにも貢献している。
- ウインブライト:国内のGⅠでは勝てなかったが、香港でGⅠを制したほか中山競馬場の重賞を多く勝利している。目の上がなかなか白くならなかったため、太眉扱いされることも。
- オメガパフューム:こんな名前だが牡馬。東京大賞典4連覇を成し遂げ、大井競馬場で大活躍している「大井の帝王」。一方で「JBCクラシック4年連続で2着」という珍記録も残している。
- ノームコア:クロフネの孫でクロノジェネシスの姉。マイル戦線で活躍したほか、香港で有終の美を飾った。
- クロノジェネシス:クロフネの孫でノームコアの妹。姉とは対照的に白くなるのが遅かった。ゴールドシップ以来の宝塚連覇を達成したほか、牝馬初のグランプリ3連覇を成し遂げた。
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白毛:こちらは生まれつき色素が少なく白い毛色である。肌はピンク色なので輝いて見える。