概要
主な勝ち鞍は安田記念(2015年)、マイルチャンピオンシップ(2015年)、香港マイル(2015年)、チャンピオンズマイル(2016年)、天皇賞(秋)(2016年)、香港カップ(2016年)。
2015年の年度代表馬・最優秀短距離馬。
プロフィール
生年月日 | 2011年3月2日 |
---|---|
英字表記 | Maurice |
性別 | 牡 |
毛色 | 鹿毛 |
父 | スクリーンヒーロー |
母 | メジロフランシス(母父:カーネギー) |
生産者 | 戸川牧場(日高町) |
馬主 | 吉田和美(ノーザンファーム) |
調教師 | 吉田直弘(栗東)→堀宣行(美浦) |
競走成績 | 18戦11勝 |
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ヒーロー列伝
最強最速の進化伝説
No.78「モーリス」より
名馬の肖像
覚醒の予感
ある朝、私は気づいた
全身を満たす力に
昨日までとは違う自分に
それが今日、確かなものとなった
明日からも私は
上昇していくだろう
過去の私を知る者が
想像できないほどの
はるかな高みへ
そんな予感がするのだ
≪「名馬の肖像」2018年安田記念≫
来歴
2011年(0歳)
3月2日、戸川牧場にて誕生。戸川牧場は1960年の創業だが、所有する繁殖牝馬8頭という小規模牧場で、母のメジロフランシスはメジロ牧場が解散した際に譲られた未勝利馬であった。メジロフランシスの子は勝負根性に欠ける馬が多く、その点を考慮してスクリーンヒーローの種を付けることとなった。戸川代表は「(祖母に)ダイナアクトレスを持っているスクリーンヒーローをつけたかった」と語っている。
戸川牧場で育てられた当初は大人しく目立つ所はなかったという。しかし、メジロフランシスの血統を辿ればモガミ、フイディオン、モンタヴァルと気性難を抱えた種牡馬が多かった。
2012年(1歳)
コンサイナー(競りに係わる業務を生産者に代わって請け負う業者)の高昭牧場からサマーセールに上場され150万円で大作ステーブル(新冠町)に落札された。
2013年(2歳)
北海道トレーニングセールの公開調教でゴール前2ハロン21秒8を計測したのが評価され、ノーザンファーム(安平町)に1,050万円で落札され、ノーザンファーム代表・吉田勝己の妻、吉田和美が馬主となった。栗東の吉田直弘厩舎に預けられる。
馬名のモーリスはフランスのバレエ振付師、モーリス・ベジャールから。モーリスはこの頃から気性難の兆候を見せはじめた。
10月6日、内田博幸騎手を鞍上に京都競馬場の新馬戦(芝1400m)でデビューし、2歳コースレコードで勝利。
11月9日、ライアン・ムーア騎手に乗り替わり、京王杯2歳ステークス(GⅡ)で重賞に挑戦するが、カラダレジェンドの6着に敗れる。抽選に漏れ、朝日杯フューチュリティステークスへは出走できなかった。
12月23日、川田将雅騎手に乗り替わり、万両賞(500万下)で1着。オープン馬となる。
2014年(3歳)
1月12日、内田博幸騎手に乗り替わり、シンザン記念(GⅢ)に出走するがミッキーアイルの5着に敗れる。
3月23日、川田将雅騎手に乗り替わり、スプリングステークス(GⅡ)に出走するがロサギガンティアの4着に敗れる。
5月10日、京都新聞杯(GⅡ)に出走するがハギノハイブリッドの7着に敗れる。
5月31日、浜中俊騎手に乗り替わり、白百合ステークス(オープン)に出走するがステファノスの3着に敗れる。背腰に痛みが出たため休養に入るが、その間に美浦の堀宣行厩舎に転厩。この転厩が契機となり、翌年からの活躍が始まる。
2015年(4歳)
1月25日、フランシス・ベリー騎手に乗り替わり、若潮賞(1000万下)に出走し1着。
3月7日、戸崎圭太騎手に乗り替わり、スピカステークス(1600万下)に出走し1着。オープン馬に復帰する。
4月5日、ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)に出走し、レースレコードで重賞初勝利。
6月7日、川田将雅騎手に乗り替わり、安田記念(GⅠ)に出走し1着。スクリーンヒーロー産駒として始めてのGⅠ勝利、グラスワンダーから親子三代のGⅠ勝利となった。
秋は毎日王冠(GⅡ)からの始動を予定していたが疲れが抜け切れず、マイルチャンピオンシップ(GⅠ)へ直行することになった。
11月22日、ライアン・ムーア騎手に乗り替わり、マイルチャンピオンシップに出走。危なげなく勝利し、史上6頭目の春秋古馬マイルGⅠ二冠となった。
12月13日、香港へ遠征し、香港マイル(GⅠ)に挑戦。前年の優勝馬エイブルフレンドに次ぐ2番人気に推される。レースでは好位から抜け出す競馬で1着。2015年を無敗の6連勝で締め括った。
2016年(5歳)
1月、2015年度のJRA年度代表馬と最優秀短距離馬に選出された。短距離馬の年度代表馬獲得はタイキシャトル、ロードカナロア以来3頭目となった。
3月、ドバイターフへの挑戦が予定されていたが疲れが取れず回避。香港のチャンピオンズマイル(GⅠ)に挑戦することとなる。
5月1日、香港に遠征。ジョアン・モレイラ騎手に乗り替わり、チャンピオンズマイルに出走。圧倒的な1番人気に支持され、これに応えて2馬身差で勝利。
6月5日、トミー・ベリー騎手に乗り替わり、安田記念に出走するがロゴタイプの2着に敗れる。連勝は7でストップした。
8月21日、ジョアン・モレイラ騎手に乗り替わり、札幌記念(GⅡ)に出走するがネオリアリズムの2着に敗れる。2年ぶりの2000m以上への挑戦だったが重馬場に泣かされ、逃げ馬を捉えきれなかった。レース後、年末の香港カップ(GⅠ)出走を最後に引退することが発表された。
10月30日、ライアン・ムーア騎手に乗り替わり、天皇賞(秋)(GⅠ)に出走し1着。2000m以上のレースでの初勝利であった。
12月11日、香港に遠征し、香港カップに出走。やや出遅れたが、逃げたエイシンヒカリを直線でかわし、2着に3馬身差をつける完勝であった。日本調教馬としては史上2頭目の海外GⅠ3勝を挙げた。
2017年(6歳)
1月、2016年度のJRA特別賞を受賞した。年度代表馬はキタサンブラックに譲った。
1月15日、中山競馬場で引退式が行われた。社台スタリオンステーションにて種牡馬となった。オフシーズンにシャトル種牡馬としてオーストラリアで繋養されることも発表された。
種牡馬として
2017年より社台スタリオンステーションにて供用されている。また、現役時代から海外に強かったこともあり、秋シーズンにはオーストラリアのアローフィールドスタッドへシャトルすることが通例となっている(2020年はCOVID-19流行のため渡航中止)。
産駒は総じて前進気勢に富む反面、血統に由来する気性難を多く示しており、長い距離やスローペースに耐えられず掛かってしまうことが少なくない。活躍は1200~2200mのレースに集中しており、ハイペースでの戦いを得意としている。芝での活躍馬が多いが、カフジオクタゴンをはじめダート馬もいくらか輩出している。
また、シャトル先のオーストラリアでも活躍を見せているのも大きな特徴であり、特に初年度産駒のヒトツはシドニー二冠を含むGⅠ三連勝の大活躍を見せ、日本産馬に先立ってモーリスの後継として種牡馬入りした。
主な産駒
GⅠ競走勝利馬(太字はGⅠ競走)
- ピクシーナイト:シンザン記念、スプリンターズステークス(2021年)
- ヒトツ:ヴィクトリアダービー、オーストラリアンギニー(2021年)、オーストラリアンダービー(2022年)
- マズ:アローフィールド3歳スプリント、ドゥームベン10000(2022年)
- ジェラルディーナ:オールカマー、エリザベス女王杯(2022年)
- ジャックドール:金鯱賞、札幌記念(2022年)、大阪杯(2023年)
重賞競走勝利馬
日本産
- シゲルピンクルビー:フィリーズレビュー(2021年)
- ルークズネスト:ファルコンステークス(2021年)
- ノースブリッジ:エプソムカップ(2022年)、AJCC(2023年)
- カフジオクタゴン:レパードステークス(2022年)
- ラーグルフ:中山金杯(2023年)
- ノッキングポイント:新潟記念(2023年)
- ディヴィーナ:府中牝馬ステークス(2023年)
- シュトラウス:東京スポーツ杯2歳ステークス(2023年)
- テクノゴールド:九州ダービー栄城賞(2023年)
- マテンロウスカイ:中山記念(2024年)
オーストラリア産
メジロ牧場との縁
戸川牧場の代表者夫妻はかつてメジロ牧場で働いており、そこで出会って結婚し、代表は妻の実家の戸川牧場を継ぐことになった。
https://uma-furusato.com/winner_info/83314.html
モーリスの母・メジロフランシスは元々、メジロ牧場が所有していたが、メジロ牧場廃業の際に戸川牧場に譲渡されることとなった。
夫妻は旧メジロ牧場の土地と設備を引き継いだレイクヴィラファーム代表の岩崎伸道とメジロ牧場で同僚で、岩崎代表もモーリスの活躍に喜びの声をあげている。
モーリスが2016年秋の天皇賞を制した際に戸川代表が、「メジロの血の入った馬で2000メートルの天皇賞を勝ったのはおそらく初めてだと思うのでうれしいです」と語っている。
https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=1731671&year=2016&month=10&day=31
余談
- 現役時代はゲート内で暴れて出遅れたり、道中かかって折り合いがつかない事が多かった。
- 普段は大人しく人懐こい。オーストラリアでの繋養先のアローフィールド・スタッドからもスタッフと仲良さげにしている様子が報告されている。
- 戸川牧場の戸川代表の長男は元西武ライオンズ所属のプロ野球選手だった戸川大輔。モーリスの活躍について球団広報を通じて喜びのコメント送る一方、「モーリスの方が稼いでる」と野次られたこともあり比べられるのが嫌だったと当時を振り返っている。
- ドゥラメンテとサトノクラウンは堀厩舎で1年下の後輩。サトノクラウンは2016年の香港国際競走に参加し、モーリスと共に勝利をあげている。