概要
当て馬とは、馬の種付けの際、牝馬の発情の有無および状況を調べるために用いられる牡馬である。
種牡馬が種付けするための安全確認要員で、種付けは出来ない。
当て馬のお仕事
試情板と呼ばれる仕切りを隔て、当て馬に牝馬の背中のにおいを嗅がせる。
その行動で牝馬にしっぽの上げ下げや排尿などの発情兆候があるかどうか、または蹴る・叫ぶなど暴れ出したりしないかをチェックする。
牝馬は発情していない場合、牡馬に近寄られることやそれすら嫌がるので仕切りを蹴ったり、いなないたりして拒否する。
(例外:その年に子供を産んだ馬の種付けの場合、パニックにならないよう子供を同伴させる。しかし母馬は仔馬を守るためなのか、たとえ発情していようと発情兆候を隠すことがある。)
牝馬が「その気」になっていれば当て馬も興奮するのだが、彼らのお仕事はあくまでも安全確認。
本命と種付けに行く牝馬を見送り、当て馬は交尾させてもらえず次の牝馬をチェックする。
当て馬の意味
この行為は種牡馬の時間および体力の消耗防止、そしてなにより種牡馬の体と生命を守るため行われる行為である。
なぜこんなことを?と思われるが、先述したとおり発情していない牝馬は攻撃のため蹴ってくる。馬の脚力はとても強く、本気で蹴飛ばされたら屈強な牡馬でも命にかかわる。
もしも一回で種付け料何千万を稼ぐ大切な種牡馬が蹴とばされて絶命したならば、それはもう種牡馬の牧場・牝馬の牧場、場合によっては競馬界にとっての大損害である。
なので、普通は当て馬が種付けすることは無い。ただし例外もあり、他の種牡馬の都合であるとか予算の都合上のピンチヒッターを当て馬が務める場合や、ストレス発散のため当て馬に種付けさせる事例がある。
そしてその結果生まれた馬が活躍する事例がわずかながら知られている。その最たる例が1988年のオークスを制したコスモドリームである。
当て馬になる馬
当て馬として選ばれる牡馬は、基本的に現役を引退したものの種牡馬として成功しなかった牡馬である。
筋骨隆々としていて体格も良い、人間と馬両方の目線でイケメンな馬が選ばれる傾向にあるとされる…と思われがちだが、実際はそうでもない。
心が広かったり我慢強かったりと紳士的な牡馬が当て馬を務める。条件が合えばポニーも当て馬になれる。
有名所では、現役時代は噛みつき魔だったシンコウウインディ。産駒こそ振るわなかったが、生産者も絶賛するプロの当て馬としてスタリオン(種牡馬の牧場)に留まり第二の馬生を送っている。噛み癖も甘噛みになったそうだ。
転じて
本命ではないものを比較対象や調査用のダミーとして扱う行為、あるいはその対象。
ネットスラングで、恋愛漫画で主人公に振られる異性がこう呼ばれることがある。(説明は後述)
ビジネス
契約先をあらかじめ内定している状況において相見積を出す行為、および内定以外の会社のこと。
野球
先発投手が不明の状況において適当な選手(当番予定の無い投手など)を先発メンバーに入れておき、実際に打順が回った際に適切な選手に交代する行為、あるいはその選手。偵察メンバー、偵察オーダーという表現が一般的。
指名打者に使うというミスがプロ野球で2回発生している(1982年阪急ブレーブス、2011年広島カープ)。
企画
何らかの企画において数合わせや本命の企画を引き立たせるために、採用される見込みの無い企画をおいておく行為、あるいはその企画。
ただし、その「本命でない企画」が採用される事例も存在する。(『超時空要塞マクロス』や『レディレディ!!』、『クレヨンしんちゃん』はその例である。)
創作物(少年漫画)
少年漫画(バトルもの、能力もの)などで主人公が成長するにおいて目標の手前に座して序盤の壁となる対抗(敵・ライバル)キャラ。特に限られた立場・順位を目指すにおいて、互いに争い合う(時に憎み合う)立場となる者。
あるいは主人公が場面となる現地に到着・活躍する前に何らかの事情で敵と対峙して奮闘する(のだが、結局は力及ばずに敵に負けてしまい主人公に後を託す、ないしは託さざるをえなくなる)キャラ。いわゆるかませ犬。
創作物(恋愛)
恋愛漫画などで、カップルを盛り上げるためだけの振られ役に選ばれるキャラの例え。※
主人公がこのポジションの場合は、バウムクーヘンエンドと呼ばれる。
一度も恋愛関係になったことがないキャラ、片思いの設定がないキャラに使うのは誤用。
※二次創作のカップリングにおけるA×B←CやC→ABなどのCにあたるキャラもこう呼ぶ。好きなキャラをこのCのポジションに当てはめられて気分が良い人はあまりいないので扱いには注意が必要である。