概要
人々は世界中を開拓し、未知の土地や海域は残りわずかだった。それは北極海にも言えることである。しかし、北極海の最北端、そこにはまだ誰も見たことがない秘密境が存在していた。その秘密境には巨大な金鉱や炭鉱などの資源が眠っていると言う。
193X年、北極探検船「北斗丸」や戦艦「高千穂」、練習戦艦「天城」、砕氷艦「千鳥」がその秘密境を発見•開拓すべく日本を出撃した。しかし、これと同時にA国とB国も秘密境を我が領土とすべく、強力な探検艦隊を覇権していた。ここに秘密境争奪戦の幕が上がる。
登場人物
小川寛
本作の主人公で13歳。城南中学1年生にして、剣道や植芝武道の達人であり、探検船「北斗丸」の水上機「春鳥」号の操縦もできる。探検船「北斗丸」に乗り込み、秘密境を目指す。
小川明
寛の父親であり海軍少佐。探検船「北斗丸」の船長を務めており、昔は呂号潜水艦の艦長でもあった。諸事情により、探検艦隊の提督できる勝山中将とは仲が悪い。
勝山一郎
勝山一枝
本作のヒロインで、勝山少将の御令嬢。身長150にも満たない少女でありながら、二等飛行士の免状を持つ。寛と仲は良いが、父親同士の対立により、複雑な関係である。
明智三郎
北洋で漁業をしている漁船の船長。喧嘩っ早く、柔道四段の腕を持つ。ボローキンの略奪から助けられため、「北斗丸」と共に愛船「海神丸」で、秘密境探検に同行する。
橋元久太郎
「高千穂」に乗り込む二等兵曹、勝山家の執事の令息。そのため、一枝の自慢話をすることが多く、寛を自慢する明智とは対立することが多々ある。
A国(アメリカ合衆国)
マッデン
戦艦「ライオン」に乗り込み、探検艦隊の提督を務める。階級は中将。日本艦隊に秘密境の場所を発見させ、それを横取りしようと企む策略家だが、部下の命を重んじる面もある。
ドース
マッデンの副官で、「ライオン」の艦長を務める。階級は大佐。日本人を劣等民族とみなし、部下の命よりも軍や国家の面子を考える。
スミス
潜水艦「黒鯨」の艦長。階級は中佐。寛に降伏させられたことを聞いて、動揺を隠せない様子。
サム
「ライオン」に乗り込む二等兵曹。「ブル兵曹」のあだ名を持つ粗忽者,乱暴者で、世界選手権を狙うほどの腕前を持つが、寛の植芝武道であっさりと倒されてしまう。ブルと言ってもハルゼーではない。
マーシャル
A国太平洋艦隊の司令官。日米開戦に伴って奮戦したが、最後は高千穂率いる連合艦隊の前に降伏した。
B国(ソヴィエト社会主義共和国連邦)
エニセイ
戦艦「マラー」に乗り込み、北洋艦隊の提督を務める。北洋での戦闘では世界一と呼び名が高いが、勝山やマッデンほど優秀ではない。
ゲー•ボローキン
砲艦「イワン」の艦長を務めるユダヤ人。卑怯、小心者という屑で、北洋漁業をする日本の漁船から略奪行為をしていた。ボロ金の蔑称がある。
その他
ジェーン海軍年鑑193X年版にて「高千穂」を称賛する記事を執筆し、掲載していた。実在の人物。
登場艦艇
大日本帝国
高千穂
本作の主役艦で、北極探検のため建造された。詳細は高千穂級戦艦を参照のこと。
北斗丸
北極探検船で、排水量わずか2,000トンの帆走船。武装は6インチ砲と水上機2機。カタパルトを搭載する。
天城
排水量19,500トンの練習戦艦で、マッデン艦隊に撃沈された。武装は14インチ砲6門、6インチ砲16門、5インチ高角砲4門、8センチ高角砲4門で、最大速力は18ノット。
千鳥
排水量22,000トンの運送艦で、マッデン艦隊に撃沈された。武装は6インチ砲4門、5インチ高角砲4門、カタパルト1基で、最大速力は20ノット。
実在の明治19年に行方不明となった防護巡洋艦。
実在の浦風型駆逐艦。犬吠埼沖合まで「北斗丸」の護衛を行った。
信濃
第○艦隊旗艦の戦艦。詳細不明。
A国
ライオン
北洋艦隊を編成する戦艦。詳細は戦艦ライオン•アマゾン•アンデスを参照のこと。
アマゾン
上記参照のこと。
アンデス
上記参照のこと。
黒鯨
北洋艦隊を編成する潜水艦で、日本に捕獲される。詳細は潜水艦黒鯨を参照のこと。
イーグル
排水量2,000トンの水上機母艦で、捕獲された黒鯨に撃沈された。武装は6インチ砲6門、5インチ高角砲10門、カタパルト6基と水上機28機で、最大速力は21ノット。
パイロット
排水量3000トンの砕氷艦で、日本に捕獲された黒鯨に撃沈された。武装は8センチ高角砲4門、カタパルト1基、水上機2機で、最大速力は20ノット。
マルコ・ポーロ
マーシャル提督が座乗するA国太平洋艦隊旗艦を務める戦艦。詳細不明。
B国
マラー
B国北洋艦隊旗艦の戦艦。詳細は戦艦マラー•ダントン•ナチョナーレを参照のこと。因みにマラーはマラートと同じ意味である。
ダントン
上記参照のこと。
ナチョナーレ
上記参照のこと。
シベリヤ
排水量3500トンの砕氷艦で、「高千穂」に捕獲される。しかし、損傷が酷かったため、放棄された。特徴はソライト爆破装置を搭載していること。武装は5インチ高角砲4門、カタパルト1基、水上機2機で、最大速力20ノット。
イワン
ボローキンが座乗するオホーツク海を警備する砲艦。排水量1500トンで武装は5インチ高角砲3門。日本漁船から略奪行為を行っており、漁師からは「海の狼」と呼ばれる。
単行本
「新戦艦高千穂」(大日本雄弁会講談社1936年2月)
「新戦艦高千穂」(講談社1970年)
「少年小説大系 第17巻」(三一書房1994年2月)
「新戦艦高千穂」(真珠書院・パール文庫2013年11月)
本の内容・評価
少年倶楽部で連載されていた時期(1935年7月-1936年3月)という情勢からか登場人物から国粋主義的なセリフが見られる。そのため、一番新しいパール文庫では「海洋軍事国家主義小説」と紹介されている。
しかしながら「少年少女の冒険」「超兵器の軍艦」「未知の領域への冒険」……といった要素は宇宙戦艦ヤマトやふしぎの海のナディアといった現代の名作アニメにも色濃く見られるものであり、ただの「戦前の海洋冒険小説」という枠組みでは囚われない魅力を今でも放っている。
レッドサン_ブラッククロスでは本作の戦艦高千穂をモデルとした「高千穂級戦艦」の「高千穂」と「穂高」が登場している。