「己の野望の為なら実の子供でも平気で殴れる……それがゴーマだ!」
演:西凜太朗
概要
同作における敵勢力・ゴーマ族の強硬派三幹部のリーダー格。阿古丸とコウの父親でもある。
全身カラビナとベルトを飾ったような衣装に身を包んでおり、右目を覆う眼帯風のリングが特徴。いわゆる前線指揮官に相当するポジションであり、持ち前の優秀な頭脳をもって地球侵略・対ダイレンジャーなど数々の作戦の立案に当たる。
また頭脳面のみならず戦闘能力も非常に高く、「火炎地獄」という技で炎を自在に操る他、妖力や自在に伸びる鉤爪を用いてのオールレンジ戦闘を得意とする。さらに鉄仮面を着けたような戦闘形態へ変化する能力も備えており(この能力自体は三幹部共通のものである)、気力ボンバーを弾き返すだけの力を発揮できるようにもなる。
物語後半で明らかにされたようにゴーマの皇位継承権の保持者でもあり、それ故にプライドや権力欲も非常に高いのだが、その反面一族・組織内における立場は決して高いものではなく、ゴーマ皇帝の側近たる元老院の大僧正リジュ(ノコギリ大僧正)が前線に赴いた際には散々に侮られ、また田豊将軍との指揮権争いにおいても、あわや失脚しかけた事もあった(この時は「6体目の気伝獣誕生の予言」という切り札を提示し、すんでのところで指揮権の保持に成功している)。
性格は極悪非道そのものであり、人間など取るに足らない存在であると見做している。とりわけ愛情というものを侮蔑しており、実の息子であるはずの阿古丸に対してでさえも、終始執拗なまでの敵意を向け反目、遂にはゴーマからの追放のみならず用済みとして死に追いやるまでに至っている。
その阿古丸の最期や、母を亡くし悲しみに打ちひしがれるコウなど、息子たちの悲惨な境遇を目の当たりにしてなお、「何とも思わんな」と一切の感慨もなく平然と言い捨てるなど、物語終盤に至るまでほぼ一貫して、情愛という感情の欠如した人物として描写され続けた。
このような経緯からダイレンジャー、特にコウにとっては最終的に複雑な立場の相手になったが、上記した悪辣な性格やこれまでの悪事もあってか、ダイレンジャーからは最後まで「コウの父親」では無く「倒すべき敵」として認識され、コウにも彼らの配慮により最後まで彼や阿古丸との血縁関係が知られる事は無かった(仮に知ったところで火に油でしかなかっただろうが……)。
他方で、シシレンジャーが自身の幻を作り出した際には思わず呆気にとられたり、思わぬ形で妻と再会し、キバレンジャーことコウが自分の息子である事を悟って一時呆然とするなど、極稀ながらも予想外の事態に弱い面も見せている。
すっげェ~真実
予てからゴーマの支配者となる機会を虎視眈々と狙っていたシャダムであったが、物語終盤において大神龍の襲来により、ダイレンジャーとゴーマとの間で2度目の休戦協定が結ばれると、その条件の一つとして道士・嘉挧がゴーマへ復した事により、自身と同じく皇位継承権の保持者であった嘉翔との間で、次期皇帝の座を巡る決闘に臨む事となった。
気力・妖力の塔の力を受けた嘉翔に一度は圧倒されながらも、他の三幹部らの暗躍もあって嘉翔を下し、この決闘に勝利を収めたものの、事はそう容易には運ばなかった。
直後のゴーマ十五世との謁見において、皇位の継承を要求するシャダムであったが、十五世からは皇帝の証である「大地動転の玉」の譲渡は自分の引退後だと、その要求を拒絶されてしまう。
「だったらたった今引退していただこう」となおも迫るシャダムを、十五世は大地動転の玉の力で吹き飛ばすが、柱の下に転落したシャダムはふらつきながらも立ち上がり、呵々大笑しながら
「ゴーマぁ……まだ何もわかっていないようだな!?」
と告げ、訝しむゴーマ十五世に驚くべき事実を突きつける。
「ゴーマ十五世。元の土に還れ!!」
その瞬間、十五世の体が土と化して崩れ始め、崩壊した手から滑り落ちた大地動転の玉を飛びつくようにキャッチするシャダム。念願であったゴーマ皇帝の座をその手に収め、得意げに真実を語り始める。
「6000年前のあの時……ゴーマ族とダイ族は、死力を尽くして戦い共に滅んだ……その時貴様も本当は死んだのだ!!」
「幸い俺は生き残ったが、復活したゴーマで皇帝にはなれなかった。元老院がうるさくてな! そこで俺は泥で人形を作り、命を吹き込み裏からゴーマを操り続けたのだ! この日が来るのを楽しみになァ……」
ゴーマ十五世、そして他の幹部の泥人形を作り、ゴーマという組織そのものを操っていた黒幕はこの男だったのである。
そして、突入してきた亮、将児、知を前に、大地動転の玉の力を取り込み変身。かくしてゴーマ十六世としてゴーマ族の頂点に立ったかに思われたが…。
それも束の間、
大五「……大神龍だ……!!」
リン「クジャクが言ってた巨大な力っていうのは、このことだったのね……」
土壇場で大神龍が三度飛来し、決戦の場となっているゴーマ宮に対して直接攻撃を開始したのだ。
もはやゴーマの崩壊はほぼ確実になってしまったが、諦めきれないシャダムは「ダイレンジャーを倒せば戦いはゴーマの勝利で終わり、大神龍は地球を去る」と自分に都合良く考え、他のゴーマ達が戦意喪失して逃げ惑う中、亮たちを逃がさず執拗に襲い掛かる。
しかし、外にいた大五、リン、コウが突入し総力戦が始まると思われた直後、嘉翔の魂が現れこう告げる。
嘉翔「聞くんだ、皆。愚かな戦いをやめ、今すぐにここから逃げるんだ。気力と妖力は光と影、正義と悪……この世全てのものが二極から成り立つように、気力と妖力もまた表裏一体。元は一つなのだ」
「一つの力を二つに分け、お互いが争いながら永遠に生きていく。これ即ち人間の宿命なのだ。妖力が滅べば気力も滅び、気力が残れば妖力もまた残る。全てが虚しい戦いなのだ……」
「勝負は永久に付かない……逃げろ! 逃げるんだ!」
争いを止めるよう告げると、天宝来々の玉、大地動転の玉が天に吸い込まれ消失。ダイレンジャーの転身は解除され、シャダムも力を失い元の姿に戻ってしまう。
大神龍の攻撃によってゴーマ宮の崩壊も進む中、狂気と権力欲に支配されたシャダムは妖力を失ってもなお手に入れた王国を手離したくないと玉座へと逃亡するが、亮がそれを追う。
「ゴーマは俺のものだ……俺のものだァァアアアァッハハハハハハーッ! 誰にもゴーマを渡さァァァん!!」
そこに単身で追撃してきた亮ともみ合いになり、その際自分が持ち出したナイフで殺害しようとするが、逆に腹部を刺されてしまい致命傷を負う。たたらを踏んで後退するシャダムだが、その時彼が目の当たりにしたのは、到底信じ難いものであった。
それは自らの足が、手が、そして体が、偽のガラやザイドス、ゴーマ十五世と同じように泥と化して崩れゆく光景だった。
「馬鹿な、コレはッ……一体どうなってるんだ!?俺も……泥人形だったのか……!? 嘘だ……助けテクレ……タスケテクレリョォォォォ……!!」
それを最後に、シャダムは己の死に絶望しながら泥と化して崩れ去った。
崩れた泥の塊の中、ゴーマの破滅を示唆するかのように、怪しく光る目玉一つだけが虚しく転がってた。
己の欲望の為に六千年もかけて暗躍し、自分の子供を切り捨ててまでゴーマの支配者に君臨しようとしたシャダム。
その末路は「全く予期しない形で無理やり戦いの幕を下ろされ、果てには自分自身も文字通りの”傀儡”でしかなかった事実を嘆きながら民すらいなくなった空っぽの城と共に滅びる」という、まさに「因果応報」極まりない、しかしあまりにも呆気ない最期だった……
残された謎
前述の通り「最終話でダイレンジャーに倒されたシャダム中佐」は何者かが作った泥人形であり、少なくとも最終話の彼は、阿古丸とコウの本当の父親である「本物のシャダム」では無かったという事実が明らかになった(身内に対する情愛が感じられなかったのも、泥人形だったからと言えば言い訳はきくか?)。
しかし、だとすれば何時から彼は「本物のシャダム中佐」と入れ替わったのだろうか?そして「本物のシャダム中佐」はどうなったのだろうか?
まず、10歳になる息子たちの存在から、当然ながら彼らが母親の胎内に宿るまでは「本物のシャダム中佐」が活動していた事は確実だろう。「誰かが本物のシャダムを殺害し、彼の計画を乗っ取った」或いは「最終決戦で本物のシャダムは影武者の泥人形と入れ替わり、そのまま逃亡した」と、様々な説がファンの間で上がったが、結局真相は不明のままになっている。
一方で泥人形が崩れた後も眼球が一つだけ崩れなかった事から、あの眼は本物のシャダム中佐のもので、本物のシャダム中佐は既に死んでいる、という説もある。よくよく考えればいくら強い妖力を持っていようと”血の通った人間”が六千年も若い姿を保てるはずがないのだから「寿命を伸ばす為に死ぬ前に自分と同じ姿の泥人形に記憶と人格を引き継がせていた」とすれば多少なりとも辻褄が合うだろう(実際ゴーマに寿命があるのかは不明だが)。いずれにせよ、やはり最初から本物のシャダム中佐は死んでいたという説の方が、ファンの間では有力視されているようである。本物が死亡した後に泥人形の方が生を受けて、シャダム中佐と言う刷り込みを重ねる事で「自分はシャダム中佐」と思い込んだとも推測が出来る。
そして、50年後に復活したゴーマとの戦いが再開されるのだが、その新たなゴーマの首領は未登場であり、またその人物が果たして本当に黒幕であるのかどうかもはっきりしていない。
関連タグ
毒親...ただし、作中の彼が最初から泥人形だったとすれば、当然ながらコウと阿古丸の本当の父親ではない為、その場合は本当の父親である本物のシャダムが、息子達の事を実際にどう思っていたのかは定かではない。ただ、コウの母である妻は彼との対面時に嫌悪感のある反応を見せており、やはり本物も家族に対して非情な人間だった可能性が高い。
血祭ドウコク:戦隊キャラでの中の人繋がり。またラスボスと言う点も共通するが、策を講じず力押しを好み、最後まで堂々と戦い散り際も潔さを感じさせるなど、総大将の肩書きに相応しい人物で、同じ悪のラスボスでもシャダムとは違うタイプのキャラクターである。
キメンボーマ:4年前の戦隊で登場した敵側の人物。こちらも人間の女性との間にハーフの子供をもうけていたが、シャダムとは逆に家族を愛していた。
バラシタラ:後年の戦隊に登場した悪の幹部で、『毒親』であるため『息子の目的が父を出し抜くことになるほど嫌われている』点が共通する。
大魔女グランディーヌ、蛮野天十郎:特撮における毒親繋がり。