概要
フォルクスワーゲン・グループに所属。ドイツの南西部のシュツットガルトに本社を置き、高級車やレーシングカーを製造・販売している。
お金持ちの話題になるとフェラーリと同じくらい名前が挙がるほどの超有名高級スポーツカーブランドであるが、専門的にも精緻な作り込みに定評があり、ポルシェを理想とする自動車開発者は多い。
中でも稀少なリアエンジンレイアウトに、これまた稀少な水平対向エンジンを組み合わせた911は、ポルシェが世界に誇れる伝統であり代名詞である。
ただし近年はカイエン・マカンのようなクロスオーバーSUVの販売比率が大きく、その利益でスポーツカーを維持しているような面もある。
エンブレム(紋章)
中央の跳ね馬は、本社のあるシュトゥットガルト市の紋章から。その外側の左上と右下にあるギザギザした模様はバーデン=ヴュルテンベルク州の紋章に描かれた鹿(の角)を、右上と左下の赤い縞は知を、全体の金色の地色は豊穣を表す麦の色にちなんでいる。
歴史
ロードカー
フェルディナント・ポルシェ博士が1930年(1931年説もあり)に、デザインスタジオとして設立したのが始まりである。WW2時の戦車や、アポロ計画での月面車、トラクター(農機具)などを設計・デザインしていた。フォルクスワーゲン・type1、いわゆるビートルを設計したのもポルシェ博士。
本格的にスポーツカーを設計・製造し始めたのは大戦後で、1948年に356.001を世に送り出した。
この頃から既に「カエルが座ったよう」なデザインであり、6気筒でこそ無いものの4気筒ボクサーエンジンをリアに搭載していた。
911が製造され始めたのは356生産終了後の1965年。
それ以降2020年現在まで8回のフルモデルチェンジをしてきたが、「カエルが座ったよう」と形容される外観と、水平対向6気筒エンジン、RR駆動の伝統は脈々と受け継がれている。
1969年にはフォルクスワーゲン・ビートルのエンジンをミッドシップに積み、他にもビートルのパーツをなるべく流用した914が発売された。通称「ワーゲン・ポルシェ」。
デメリットの多いRR車がメインという車種構成から脱却すべく、'70年代後半から924、928、944、968といったFR車が発売されたものの、ポルシェ社の経営が悪化した'90年代中盤にラインナップから消えた。
替わりに投入した低価格のボクスターの成功によりポルシェ社の経営は好転した。
レーシングカー
創業当時から積極的にモータースポーツに参加し、ル・マン24時間を始めとする耐久レースでは常勝を誇った時期が何度もあった。
1950年代はル・マンの中小排気量クラスを中心に活動し、550スパイダーで強さを誇った。しかし事故も多かった。映画俳優のジェームズ・ディーンも、この車を運転中に事故死している。
そのために、呪われた車扱いされてしまうこともあった。
1960年代は当時もっとも美しいレーシングカーと言われた904、始めて6気筒エンジンを搭載した906カレラ6がタイトルを総なめにした。
904は日本のレース界でも、スカイライン2000GTとバトルを演じたことで有名。
1970年代前半は総合優勝を目指し、水平対向12気筒を積んだ917を投入。圧倒的な早さを見せつけ、現在まで長い間破られていないル・マンでの最長走行距離、および最速ラップタイムを記録した。ただ最低生産台数を力ずくでクリアしたという面もあったため、ル・マンから締め出しを食らってしまった。
70年代後半はスーパーカー世代にはお馴染み934と935を投入し、BMWをはじめ他社の戦意を削ぐほどの常勝ぶりであった。
1980年代は水平対向6気筒ターボ956と962Cがル・マンでもデイトナでも猛威をふるい、先の935と共にポルシェの黄金期を築いた。
こうしたポルシェのプロトタイプレーシングカーはプライベーターにも多数供給され、JSPC(全日本スポーツプロト)などポルシェのワークスチームのいない遠く地域でもタイトルを総舐めにした。
962CはグループCが消滅後にJGTC(現在のSUPER GT)に出走していた。近藤真彦がJGTCで優勝を果たしたのも、この962Cである。
1990年代は、96年〜98年まで911GT1でル・マンやFIA-GT選手権に参戦。96、97年は、ポルシェエンジンのプライベーターが、98年はポルシェのワークスが総合優勝を遂げる。
その後はGTレース一辺倒であったが、2014年、WEC(世界耐久選手権)へ”919 Hybrid”でプロトタイプカーのレースに復帰。水平対向ではなかったが、革新的なV型4気筒エンジンであった。
最近のモータースポーツでは初年度は成績は振るわないのが通例ながら1レースだけとはいえ優勝を飾る健闘を見せた上、2015年には復帰2年目にして2014年までル・マン連勝中だったアウディを破り、17回目のル・マン優勝を遂げた。
2016年のル・マンでは終始トヨタの後塵を拝し続けていたが、終了直前にトヨタが車両トラブルによりリタイア、劇的な逆転優勝を飾る。
翌2017年は2台体制の1台はリタイア、もう1台もトラブルに苦しみ下位クラスのジャッキー・チェン・DCレーシングに総合首位を奪われるが最終盤で抜き返しル・マン3連覇を達成して撤退した。
現在もGT車両でWEC/IMSAに参戦を継続し、多くの勝利を手にしている。
まさに「耐久レースあるところにポルシェあり」である。
フィクション作品中でのポルシェ
- 名探偵コナンの登場人物であるジンは、356Aに乗っている。なおコナンが水平対向エンジンの音を耳で聞き分けて、ジンの車だと判断するシーンもあった。
- 押井守監督の映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」にて劇中に登場した草薙水素の愛車は、901型と呼ばれる911が初めて出た時のモデルである。
- フェルディナント・ポルシェが開発したビートルがナチスの政策に密接に関わっている上にナチスの失脚の影響で戦後VWに暗い影を落としたという歴史的経緯からか、トランスフォーマーのベース車として使用することを「戦争を想起させるからイヤ」と言う理由でVWと並んで拒否している。
- 湾岸ミッドナイトの登場人物である島達也は70年代から80年代まで生産された930型をブラックバードのベース車両として序盤まで使用しており、その後1989年から1993年まで製造された964型をブラックバードのベース車両として使用している。
- レースゲームにおいてはエレクトロニック・アーツのニード・フォー・スピードによく登場しているがEAと独占契約の状態にあったためこの関係から他のレースゲームに登場できない(過去にセガのスカッドレース、スクウェア(現・スクウェアエニックス)のドライビングエモーションタイプSにも登場していた。最近ではマイクロソフトのフォルツァモータースポーツにも登場)。このため、別のレースゲームにはポルシェのコンプリートモデルであるRUF・ゲンバラが登場している。また、この事情から上記の湾岸ミッドナイトの島達也のブラックバードのベース車両が元気版ではRUF RCT(PS3版のストーリー序盤ではRUF CTR)、湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE 3DX+まではゲンバラ 3.8rs(海外版ではゲンバラも登場できなかったため日産・Z33フェアレディZに差し替え)、湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE 4・5ではRUF CTR(5DXでは964モデルをベースにしたRUF RCTが登場したため5DX及び5DX+のストーリー途中からRUF CTRからRUF RCTに乗り換える)として使用している。しかし、2016年をもって独占契約が終了したため、グランツーリスモでは最新作 グランツーリスモSPORTでようやく登場し、湾岸ミッドナイトのほうも湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE 6で登場することが発表された(5DX+までに登場したRUFと入れ替わるかたちとなり、プレイデータ引き継ぎの際はポルシェに差し替えられる)。