概要
体はぷにぷにして柔らかく、細かな皺と瘤が満遍なく生えている。その表皮の触感はビロードと似ているため、英語は Velvet worm(ベルベットワーム)と呼ばれている。
頭部の正面には1対の太い触角、口の奥には鋭い牙のような顎が格納される。触角の付け根に小さな単眼、頭部の左右には粘液の噴射口がある。
長い胴部の両筋に数多くの短い脚(葉足)が並んでいる。脚の先端には肉球のような構造と、2本の小さな鉤爪が生えている。目立たないが、末端には丸みを帯びた短い尾がある。
別名は「有爪動物」(ゆうそうどうぶつ)、学名「Onychophora」は「爪を持つ者」の意味で、脚の爪に因んで名付けられた(別にこれがカギムシの決定的な特徴ではないが…)。
湿潤な環境を好み、夜行性で滅多に見られない。顔の左右から粘液を噴き出した獲物を絡め取って食べる捕食者である。繁殖は卵生、卵胎生、完全胎生と様々。
中央~南アメリカ、南アフリカ、東南アジア、オセアニアなどで局所的に分布する。
分類
現生の動物の中ではクマムシ(緩歩動物)や節足動物(クモ、甲殻類、昆虫など)に近縁、共に「汎節足動物」に分類される。
カンブリア紀には「葉足動物」という汎節足動物の古生物のグループが栄えて、カギムシ・クマムシ・節足動物はいずれも祖先がそこか派生したと思われる。カギムシが「生きた化石」と呼ばれているのは、その先祖と思われる葉足動物の特徴(特に表皮と脚)を色濃く残していたからである。
葉足動物の中では、アンテナカンソポディアが特にカギムシの祖先に近いと考えられ、太い触角や脚の肉球状構造がよく似ている。
葉足動物のハルキゲニアからカギムシと似た爪の多重構造が見つかり、これを基にハルキゲニアをカギムシの祖先に近いとする説もあるが、確実性が低い(この特徴は他の葉足動物での有無は不明のため、別にカギムシ特有でなく、単にもっと古い共通祖先の名残の可能性が充分ある)。
ちなみに
生物学者出身のエログロ漫画家蜈蚣Melibe氏が「恋人が魔法でカギムシに変えられても元に戻さなくていい」と証してかつてファンロードで話題となった生物である。