概要
この記事では『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』及び『ポケットモンスター ブラック2・ホワイト2』に登場するイッシュ地方の神話・伝説について記述する。
レシラム・ゼクロム
イッシュ地方の神話に登場する伝説のポケモン。イッシュを一瞬にして荒廃させたという。
建国伝説
一匹のドラゴンポケモンが双子の英雄と共に新しい国を造り、人とポケモンは幸せな日々を過ごしていた。しかし、ある日双子の英雄は真実を求める兄と理想を求める弟に別れ、どちらが正しいかを決めるべく争いを始めた。
双子と共に歩んできた一匹のドラゴンポケモンはその体をレシラムとゼクロムの二つに分かち、レシラムは兄の、ゼクロムは弟の味方についた。
二匹は元々同一の存在故、争いは激化するばかり。どちらが勝つとも言えず、ただただ疲れ果てていった。双子の英雄も、この争いはどちらかだけが正しいのではない…そう言って争いを収めた。
しかし、英雄の息子達が再び争いを始めたことで、レシラムとゼクロムは炎と稲妻でイッシュを滅ぼし、姿を消した。
海底遺跡の伝承
かいていいせきを参照のこと。
イッシュ地方の民間伝承
聖剣士の伝説
その昔、人間たちが起こしたとされる争いによって森(現在のセッカの湿原)が火災に遭った。
そんな中、テラキオンが怪力で瓦礫を退かし、ビリジオンは持ち前の素早さでポケモン達を救助した。コバルオンはその主導者として森からポケモン達を逃し、聖剣士は戦さの原因となった人間達と勇敢に戦い、人間達はようやく矛を収めたものの、聖剣士達は人間への信用を失って導きの間、思索の原、試練の室へと去っていった。
ケルディオは戦に巻き込まれて親から逸れた所を聖剣士に引き取られたポケモンであり、修行を付けられて聖剣士を凌ぐ才能を発揮するようになるが、冒険心が芽生えたのか世界中を駆け巡っているという。
サンギタウンには聖剣士が立てた誓いを岩に刻んだ『誓いの林』という場所がある。
いにしえのうた
カフェ『憩いの調べ』における流しの歌手によると、母親から『いにしえのうた』やメロエッタの伝説を聞かされていたらしい。
それによるとメロエッタはメロディを奏で、軽やかなステップで人々に癒しを与えていた存在であったが、世界が悲しみに包まれて以来、その素敵なメロディを忘れてしまい、『赤い靴』も失われたとの事である。
また、別の伝承ではメロエッタのメロディは作曲家達に多大な影響を与えたとも云われている。
豊穣の社の伝説
かつてのイッシュ地方では霊獣フォルムのボルトロスとトルネロスが天災をもたらし、人々を苦しめていたが、ある時、霊獣フォルムのランドロスが彼らを鎮めたと伝えられている。豊穣の社には御神体として対象を本来の姿に戻す「うつしかがみ」という神器が祀られているが、彼らを制御するためのものなのか、霊獣フォルムと化身フォルムはどちらが本当の姿か…などなど謎は尽きない。
なお、豊穣の社の老人が子供だった頃の話と語られており、他の伝承と比べて歴史が浅い伝承である。
カゴメ昔話
カゴメタウンの裏にある大きな穴「ジャイアントホール」を作ったのは大昔に降ってきた大きな隕石だと言われており、その隕石には恐ろしい化け物が潜んでいたという。
化け物は夜になると凍えるような冷たい風とともに人里に現れ、辺りを凍てつかせては人やポケモンを取って食らうと恐れられていた。
そのため、昔の人は町を塀で囲い、夜間の外出を禁じる町の掟を定めた。
『BW2』ではこの化け物の正体についてNPCが「キュレムの ことだったらしいな」と話す。
謎
イッシュ地方の神話・伝説にはかなり謎が多い。
・リュウラセンの塔の存在
このリュウラセンのとうはイッシュ建国前から造られていたらしくどのような理由で造られたかは一切不明。分かっているのはゼクロムとレシラムに深い関わりがあることくらいである。
・キュレムの存在
デオキシスやムゲンダイナなど隕石の中に潜んでいたポケモンは他にもいるが、キュレムは一匹のドラゴンポケモンがゼクロムとレシラムの二匹に分かれた際に脱け殻として残った存在とも言われており、カゴメ昔話の通り「隕石に潜んでいた」のだとすると謎が多い。
「隕石の衝突が原因でただの脱け殻だったキュレムに命が宿った」のではないかと想像することもできるが、特にそれを裏付ける証拠は今のところ存在しない。ついでに「一匹のドラゴンポケモン」の姿も未だに不明である。
・イッシュとカロス
イッシュとカロスは何かと対になっていることが多い。イッシュでは建国にまつわる伝承に対してカロスは滅びにまつわる伝承が伝わっている。また、イッシュは準伝説が多いのに対してカロスは全くいないなど。パルファム宮殿ではゼクロムとレシラムの像があったり、モブからカロスとイッシュは何らかの交流があったことを聞ける。いずれにしても詳細は不明である。
元ネタについて
イッシュ地方はアメリカがモデルであるにもかかわらず、世界中の伝説や物語などから引用されたと思しき要素が非常に多い。
これは恐らく、アメリカが多民族国家である事に則ったものではないかと思われる。
建国神話
イッシュ三龍の関係や分類は陰陽思想における太極図に由来している。
参考までにゼクロム(黒陰ポケモン)、レシラム(白陽ポケモン)、キュレム(境界ポケモン)となっており、彼らがパーソナルカラーとは異なる色を冠したバージョンに出現するのは陰中の陽、陽中の陰という概念が太極図にはある為、さしたる問題ではない。キュレムのパーソナルカラーがグレーとなっているのも、陰(-)と陽(+)の間に位置する『0』の存在だから。
いにしえのうた
メロエッタの歌でインスピレーションを与えたという設定はイギリスの民間伝承における、芸術家に才能を与えるとされる妖精リャナンシー、軽やかなステップを刻んだという設定は死ぬまで踊り続ける少女が登場するアンデルセン童話の『赤い靴』が元ネタと思われる(わざわざ『赤い靴』にも言及している)。いにしえのうたを忘れるとステップフォルム(=踊り)からも解放される為、そこからこの童話に結び付けられたものと思われる。
豊穣の社の伝説
トルネロスとボルトロスの容姿から風神・雷神の伝承がベースになっているものと思われるが、ランドロスのみ司る権能が『豊穣』である為、オリジナルの存在だと思われる。
一応、日本には『地震雷火事親父』という諺があり、火事に相当するポケモンはいないものの、全員『やきつくす』という技を覚える為、こちらが元ネタになったという線もある。
霊獣フォルムのモチーフは鳥型・龍型・虎型である事から四神ではないかと言われているが、玄武がいない為、やはり推測の域を出ない。
ポケモンレジェンズアルセウスで登場したラブトロスの霊獣フォルムが玄武モチーフであるとされ、四神は推測の域を出て、決定的となった。
聖剣士伝説
三剣士と彼らに付随する剣士で構成される物語という設定から、元ネタはフランスの小説三銃士だと思われる。コバルオンがアトス、ビリジオンがアラミス、テラキオンがポルトス、ケルディオがダルタニャンとなっている。
海底遺跡の伝承
王が聡明で勇敢な人物で、ポケモンと話す能力を持っていたとされている為、旧約聖書におけるソロモン王の伝承が元になっているものと思われる。
ソロモン王は知識の探求に貪欲な男で、天使や悪魔といった人外を使役したり、動植物と会話したという伝承が残っている。
一説にはこの王はNの先祖ではないかと云われており、彼の名前にある『ハルモニア』はギリシャ神話の調和の女神を指す言葉だが、ソロモン王の名前の意味も『平和の人』を意味する。