「ヒロインに生まれ変わったわたし! 攻略対象の男の子は、みーんなわたしのものっ!!」
………そんな風に思っていた痛い時期が、わたしにはありました……。
クッソ、マジ始末してぇ! あの頃のわたしっ!!
誰か、あの頃のわたしを殴れ!! いやむしろ殺っちゃって! それでも当時のアレが直ったとも思えないけれど! むしろ追放されたけどっ!!
追放先で乗ったのは、なんと続編の当て馬ルート!
現れた新たなヒロインは、攻略対象全員からの溺愛を狙い、わたしを目の敵に!?
というか彼女の行動、過去にわたしが故国でやらかした事そのまんまやんけ!
痛い! 痛い!! 心当たりがありすぎて(精神的に)痛すぎるっっっ!!!(号泣)
「(追放された、元)転生ヒドイン VS (痛行動全力全開、絶賛現役)転生ヒドイン 」開幕!?
自分の痛すぎる過去に苛まれながら。自らの過去の姿に生き写しの新たなヒロインの有り様に悶絶しながら。
「今日もわたしは元気ですぅ!!(キレ気味)」(というかヤケクソ)
作品概要
フルタイトルは『今日もわたしは元気ですぅ!!(キレ気味) ~転生悪役令嬢に逆ざまぁされた転生ヒロインは、祝福しか能がなかったので宝石祝福師に転身しました~』となっている。
フルタイトルは30文字を越えているためpixivタグとしての使用は不可能。本記事のタイトルないしは「今日もわたしは元気ですぅ!!(キレ気味)」の表記をメインタイトルとして使用する。
ゆえに通称(略称)は「今日キレ」あるいは「わたキレ」。
作品履歴
著者の手により2019年10月から同年12月までノベルアップ+にて公開(連載)された作品。
のち推敲版(修正版)が小説家になろう、カクヨムなどにノベルアップ版から2~3ヶ月程度遅れる形で投稿連載された。
書籍などの商用版作品はこちらの推敲版がベースとなっている。
2021年4月2日にKラノベブックスf(講談社)より書籍化された。同レーベル(従前のラノベブックスではなく、ラノベブックスの中でも「女性向け」として特化された「ラノベブックスf」というレーベルとして)のローンチタイトル(創刊作品)のひとつである。挿絵イラスト(キャラクター原案)は藤 未都也。全1巻。
また同年同月19日より2022年11月14日までpalcyおよびpixivコミックにて木乃ひのき作画による漫画版が連載されている。連載枠はpalcyでは「palcyオリジナル」、pixivコミックでは「Palcy×Pixiv異世界」。漫画版の単行本はKCXシリウス(ただし編集担当は少年マガジンエッジだった。なので漫画版は男性向け少女漫画としての位置付けをされていた事が解る)より全3巻で出された。
作品内容
いわゆるライトな和風ハイファンタジーの世界観を土台とした悪役令嬢ものおよび追放もののひとつ。ただし主役となる悪役令嬢が、既に別の悪役令嬢にざまぁされる結末を迎えて人生が詰んでしまった転生ヒドインであるという特徴を持つ作品。
さらに悪役令嬢となってしまった転生ヒドインが、様々な紆余曲折の果てに自らの特技を活かした(地味な裏方の)専門職に就き仕事に邁進する職業ものファンタジーの側面もあり、一方でその挙句に別の転生ヒドインから目の敵にされた結果として自らのかつての行いを猛省して自らの人生と真摯に向き合い、改めて"人として"その愛情を育み直す、いわゆる更生の物語(更生もの)ともいえる作品。
また、全体的なデザインコンセプトは和風だが、登場人物の名前は洋風という、ミスマッチなコンセプトを打ち出している作品でもある。
和風ファンタジーが土台とはいえ、その実は和洋折衷のチャンポン状態でメインキャラ以外は洋装である事も珍しくなく、むしろ本作における和風要素はなんちゃって和風の向きが強い。
あらすじ
ある時、前世において大好きだった乙女ゲーム「風鳴る大地」のヒロインであるルナリーゼ・フォトンに転生していた事に気付いた主人公は、そのヒロインポジションに胡座をかいて転生ヒドイン化。自ら「ヒロイン」を自称して現実との解離に気付かず、のちのちには気付きかけても目を背け、痛い行動を繰り返すヒロインモンスター(ヒロインシンドローム患者)となってしまう。その挙句「風鳴る大地」の攻略対象たちおよび悪役令嬢であるアンリミリア・ステヴァーから逆断罪を仕掛けられて追放されるに至る。
この現実を受け入れられないルナリーゼは「もしかしたら隠しキャラ(冒険者)ルートに入ったのかもしれない」と一縷の望みをかけて冒険者となる。しかしルナリーゼは最下級の癒しの魔法(治癒ではない)である「祝福」しか取り柄がなかった。その事はすぐに冒険者たちに知られ学園からの追放という大恥も相まって、冒険者たちからも「無能」の烙印を押されバカにされまくる日々を送る。
ところがそんな日々の中でルナリーゼは冒険者ギルドの近くで人が行き倒れている現場に遭遇。その人物の求めに応じて「祝福」をかける事となり、その効果でかの人物は体調を持ち直す。が、なんと行き倒れていたのは「風鳴る大地」の続編である「風鳴る大地~八つの種族の国王様~」の攻略対象である狼の獣人クロエリード・セタンダであった。
クロエリードから「祝福」の腕を見込まれたルナリーゼは彼から「我が国にて、祝石(魔法石の一種)を作る職である『宝石祝福師』にならないか」と誘いを受けてしまう。が、この誘いにルナリーゼは大いに焦る。
実は「風鳴る大地~八つの種族の国王様~」には、前作のプレイデータを読み込める機能が存在しており、そこに「風鳴る大地」プレイングにおける「ノーマルエンド(みんな友達で終わる友愛エンド)」ないしは「プレイヤー追放型バッドエンド」のプレイデータを読み込ませるとルナリーゼが続編のライバルキャラ(清純派悪役令嬢・当て馬キャラ)としてヒロインに立ちはだかる仕様になっていたのである。
「当て馬になんか、なりたくない!」
誘いを断ろうとしたルナリーゼだったが、クロエリードによって様々な言い訳その他をコンマ秒で論破され外堀も一気に埋められ、結局はクロエリードの勧誘を飲まざるをえなくなってしまった。かくてルナリーゼは続編の舞台、ベルクレス共王国にて宝石祝福師として働く事となった。
「なってしまったものは仕方がない。もうヒロインだなんだと騒ぐのはやめて、一介の祝福師として真面目に仕事に打ち込み、世に何も残さぬ一般人として生きよう。人の恋愛事情に首を突っ込んでる場合じゃないし。当て馬になってしまうなら、なってしまうで仕方がないけど、それならそれで新たなヒロインの邪魔を絶対にしないよう慎ましく生きよう」
世の無常を悟りきったルナリーゼは、色恋に背を向けて真面目に仕事に打ち込む事を誓って生きるが、やがて、その頑張りや磨いた職能をクロエリードから評価され、事ある毎に彼から宝石祝福師として頼りにされるようになる。
そして仕事の成果の褒美として、共王国の学園の入学パーティーへの出席を許される……が、そのパーティー、実は「風鳴る大地~八つの種族の国王様~」のオープニングイベントであった。そしてルナリーゼはパーティーの現場で続編のヒロイン(プレイアブルキャラクター)であるローゼンリーゼ・アリンフィーゼと出会う。
出会ったローゼンリーゼは、攻略対象となる王様たちに対して、あまりに馴れ馴れしく、またルナリーゼには敵意バリバリであった。その様はルナリーゼには心当たりがありすぎた。なにしろローゼンリーゼが自分にしている事は、かつて自分がアンリミリアにやった事だったのだから。そう、なんとローゼンリーゼもまた転生ヒドインと化していたのである。
クロエリード推しのローゼンリーゼは問答無用で彼に手順を踏むことなくアタックを繰り返すが、そんな彼女の有り様にクロエリードは怒り心頭でストレスをいや増す事に。そんな彼をルナリーゼは部下の祝福師として、また彼から恩を受けた者として、彼の人としての在り方に真摯に向き合い頑張って理解して支えようと努める。
だが、そんな状況の中でルナリーゼはクロエリードがローゼンリーゼになびかない事に安堵を覚えていた事を自覚する。ルナリーゼはクロエリードに無自覚な親愛を寄せていた。その事に気付いたルナリーゼは自己嫌悪に陥る。
「故郷で自業自得の果て追放され、あんなに酷い目に遭ったのに。同じ間違いを繰り返さないために、もう恋なんてしないと心に決めてクロエ様に与えて下さった祝福師の仕事に身を捧げようと決めたのに。
それなのにわたしは懲りずにクロエ様を思慕している。なんてひどい。自分は何も変わっていないじゃないか。わたしはなんてひどい勝手な女なんだろう── 」
嫌でも涌き出るクロエリードへの思慕。その一方で過去の自身のバカ行動を完コピしているローゼンリーゼ。その様はルナリーゼにとって黒歴史をまざまざと見せつけられているに等しく、いろんな意味で痛かった。
さらに、そんな状況に苦慮する中、ルナリーゼは共王国に人間の国からの使節としてやってきたアンリミリアと再会。ローゼンリーゼのおかげで自らの愚かさを身に沁みて理解していたルナリーゼはアンリミリアにガチ土下座で詫びを入れ、彼女から赦しを貰う事になる。
そして実は「風鳴る大地シリーズ」の超ヘビーユーザーであった前世を持つアンリミリアから恐ろしい事実を教わる事となる。
続編「風鳴る大地~八つの種族の国王様~」には、ヒロインのデッドエンドがある。そして続編ヒロインの破滅は、そのまま、この世界の終焉に直結する。それを回避するには、続編ヒロインのローゼンリーゼが、シリーズのヒロインにのみ許された権能である「星祝福(ステラ)」に目覚め、この世界の聖女である「星祝福の乙女」となる必要がある
さらにアンリミリアからは「わたしたちはキャラクターじゃなくて"心"のある人間。それだけは忘れないで」と元気付けられてルナリーゼは自分の思慕を前向きに捉える事もできるようになる。
それらを全て呑み込んだルナリーゼは、大好きになった、この世界を救うため、嫌でもローゼンリーゼの愛を目覚めさせて「星祝福の乙女」へと導かねばならなくなったのであった。
登場人物
主要人物
- ルナリーゼ・フォトン
- 本作の主人公にして転生ヒドイン。乙女ゲーム「風鳴る大地」の「ヒロイン」である「ルナリーゼ・フォトン」に転生した転生者……だったのだが、その事にフィーバーして胡座をかいて暴走した挙句「人の話を聞かずに妄想に更ける痛い女」扱いされて乙女ゲームの舞台である風蒼国の魔法学園からの退学・追放処分を喰らう羽目に。退学後、家からも勘当を喰らって食いつめた挙句、冒険者となるが能力がしょぼく退学や勘当の事も知られて他の冒険者たちからも敬遠され、ギルド併設食堂の給仕係をする羽目になる。
- ギルドに担ぎ込まれた隣国の王、クロエリードから「祝福」の魔法が使える事を見込まれ、魔物から取れる魔石の障気を除去して祝福を与えて「祝石」(魔法石)へと精製する仕事である「宝石祝福師」へとスカウトされる事になる。
- 現世においては「風鳴る大地」の「ヒロイン」であり、辺境において勃発した魔物の大群の襲撃において、傭兵団を率いてこれを鎮圧した冒険者大英雄フォトンの娘。ただし本人は前世での事もあり、脳筋で父権的かつ冒険バカ(かつ特訓バカ)の父親の事は超!大嫌い。病弱な母親がおり、原典ゲームでは母を早くに亡くしているが、現世では前世にて培った介護技術で母を回復させて、それを回避している(この成功体験によって得た自信も「わたしには知識チートができる!」という勘違いを起こさせてヒドイン化を加速させてしまった)。
- 前世はアラフォーのパート主婦。父権的な父親から無理矢理結婚相手を押し付けられて実家から追い出され、その結婚相手は「お前の家(親)の面子を立てる(恩を着せる)ために、わざわざ結婚して『やった』のだ」「パートをしているなら自分と子どもの食い扶持や子育ては自分でなんとかしろ、わざわざ生活費なんか入れない(パートをする事で旦那の稼ぎを露呈させて家の恥を曝し旦那のメンツを潰した)」として無理筋を嵩に着て通すモラハラ浮気DVの常習犯で、せっかく育てた息子たちも(父親は子どもたちには自身のヒドさを隠して「良い父」のように振る舞い、それを否定する材料は完全に隠し露呈しそうになれば詭弁を弄して正当化したため)父親のコピーになって母親をバカにしまくり、さらに義両親の介護もワンマン状態で押し付けられ、さらに義両親の遺産は夫の弟妹に横取りされた上で夫にソレを詰られてしまう。それらのせいで最終的に鬱になって首を吊ったという無為な人生による悲惨な最期を迎えている。それだけに転生当初には、いわゆるヒロイン願望がとても強く、ヒドイン行動は実はその反動であったりする。
- 白狼王 クロエリード・セタンダ
- 風蒼国の隣国、獣人の国「ベルクレス共王国」に君臨する「八王」のひとりで、共王国の北領「白狼領」を統治する領主。重低音のキく渋いイケボイスを持つ、俺様でクールな眼鏡男子。人間アレルギーの持ち主だが「祝福」が使えるルナリーゼにはアレルギーが出にくい。
- 乙女ゲーム「風鳴る大地」の続編「八つの種族の国王様」の攻略対象のひとりで、メインヒーロー枠のひとり。攻略難易度としてはシリーズ最高難易度を誇り、その攻略には努力と謙虚を主軸とした、かなり繊細なフラグの洗い出しに基づくルート立て(いわゆる解析プレイあるいは死にゲープレイ)を必要とするとされる。演者は超重低音ボイスで知られる有名声優だったらしく好感度MAX時における超渋い声で甘えプレイをしでかしてくる様は、多くのユーザーの腹筋と腰を砕きまくったと言われる。
- ミールーム
- ベルクレス共王国白狼領の宝石祝福師助手職にある、アライグマの獣人。とはいえキャラデザは、かなり獣側に寄っており、獣人と言いながらも実質は二足歩行のアライグマ。ちなみに結婚適齢期のセンシティブな女の子であったりする。実質、本作のマスコット的なお方。
共王国の八王
原作では設定だけ出されて出番をバッサリ切られた続編攻略対象の皆様。それぞれの領を治める王様たち。それぞれ作画者ノリノリで描かれた漫画版のおまけ四コマでキャラを深掘りされ、結果として漫画版では原作よりも圧倒的に存在感マシマシとなった。
- 獅子王 ジルレオン
- 戦牛王 ケルティニス
- 雷鷹王 ファルニード
- 荒鰐王 マグラス
- 斬鮫王 ジェイル
- 賢熊王 ベアゼル
- 狂虎王 アーガ
風蒼国
- アンリミリア・ステヴァー
- 王太子アストル
共王国の魔法学園
- ローゼンリーゼ・アリンフィーゼ
- リル
その他
- アツマー・ルゴ
外部リンク
関連タグ
追放悪役令嬢の旦那様:同作者作品。同じく「星祝福(原始星/ステラ)」の概念が登場している。また同作に登場する国家である紫竜ディバルディオスと(獣人こそ登場しないが)文化背景が似ているなど共通の概念がそこそこある。