提督の決断
ていとくのけつだん
光栄(現コーエーテクモ)が1989年から2001年にかけて制作・発売した戦略シミュレーションゲーム。海外では『P.T.O.』(Pacific Theater of Operations)のタイトで発売されている。シリーズ計4作が制作された。
提督の決断
1989年、PC-9801向けに発売。
その後FM-TOWNSやPC-8801、X68000、MSX2、スーパーファミコン、メガドライブに移植された。
艦名が足りなくなるため架空の艦が(史実の命名規則に則って)登場するのはこの頃から。また、エセックス級にすぐ艦名が再利用されたアメリカの戦没空母は、あとから登場するエセックス級の方がハルナンバーのみの表記になる。II以降はハルナンバー+艦名になったので、重複しないようになっている。
陸軍が海軍の意見に反対してくるのはこの頃から。もっとも、陸軍だけで済めばまだ良いのだが…
なお、本作は後年の新型ハードに移植されたり、復刻版のリリースも行われていない(コーエーのサイトからも第1作だけが抹消されている)。
これはゲーム内の要素としてCS版以外は核兵器が作れてしまったこと、兵員の疲労回復コマンドの仕様と名称、三國志や信長の野望にある「物資を強制的に集めてくるコマンド」の存在といった国際問題に直結しかねないデリケートな部分にまでシステム的に踏み込んでしまった部分があるため。そのため、このシステムだけは続編に引き継がれることはなかった。
提督の決断II
1993年、PC-9801向けに発売。
その後Windows95、FM-TOWNS、スーパーファミコン、セガサターン、PlayStationに移植された。
2人対戦プレイができるようになっており、PC版ではパソコンを共有するだけでなくパソコン同士を直接ケーブルで接続することでも対戦プレイができた。スーパーファミコンでも対戦プレイが可能。世界地図も広くなり、アメリカ東海岸への侵攻も可能。その分テンポは悪くなったという評価も。
陸軍がことあるごとに邪魔をしてくるのはこの頃もで、日米どちらを選んでも陸軍との間は険悪。そのため陸軍や外務省といった勢力との折衝も重要になってくる。なお、パワーアップキットはPC-9801のみ発売された。
提督の決断III
1996年、PC-9801向けに発売。
その後、Windows3.1、95~Me、MacOS、PlayStation、セガサターン向けに移植されたが、海外版はリリースされなかった(そのため、『P.T.O.III』は欠番である)。様々なパッケージ替えが行われたのも特徴で、廉価版がデジキューブから発売されたこともある(本体のみだが、パワーアップキット導入は可能)。
前作同様2人対戦プレイがPC版のみ可能。水中、水上、陸上、空中という概念が導入された。また、制空権や制海権の概念があり、補給に影響する。
陸軍は今回は邪魔をしてこなくなり、陸上戦力として活動したり司令官に陸軍の人間も登場するようになった。プレイできるのは最大で1952年までで、それまでに勝利条件を満たせないと、日米両国が長い戦争に疲弊してしまい、両勢力が戦争の継続を断念して講話して終戦、という形で強制終了するようになっている。
なお本作は中国語版が存在し、天津市のコーエーの子会社で制作されていたのだが、当時日中の歴史問題で関係が悪化していた時期でもあり、いろいろと物議を醸してしまった。また、中国では海外の下請けでのソフト開発の場合でも当局に内容を届け出なければならないという規則があるのだが、当局に無許可だったことも問題となり、コーエーに罰金と収益の没収という処罰が科された。
Windows版はNT系ではそのままでは動かないが、互換モードのあるXP以降の場合、95か98/Me互換に設定し、256色モードにすれば動作する。プログラム自体は32ビットのため、64ビットのWindows10以降の新しいOSでも同様の設定をすれば動かせるが、本体のセットアッププログラムも互換モードに設定しないとインストールできないため注意が必要。
パワーアップキットはWindowsで単独パッケージとして発売されたほか、コンシューマー移植版では、パワーアップキットの内容が初めから適用されたバージョンが「with パワーアップキット」の名前で発売されている。それまでの史実シナリオのほか、7つの架空シナリオと史実シナリオが追加される。
- 白紙開戦計画:もし、開戦時何も作戦が決まっていなかったら…というシナリオ。文字通りすべてが白紙状態で、艦隊すら編成されていないので、自分で艦隊編成や作戦目標を決めたい人用のシナリオ。
- 最高技術達成:最初から技術MAXでスタートする。すべての新兵器が使えてしまう。
- ロンメル軍団征東:もし、アフリカ戦線でドイツが勝利し、インドに進出していたら…というシナリオ。ロンメル軍団のほか、ビスマルク級の戦艦ティルピッツ、空母グラーフ・ツェッペリンがインドに進出しており、ドイツの勢力圏になっている。
- 日英同盟再び:もし、第一次世界大戦後も日英同盟が破棄されなかったら…というシナリオ。日英蘭豪の枢軸と米独伊の連合での戦争となり、日米の立ち位置及び同盟国が史実と逆になる。
- 1941ソ連参戦:もし、1941年の日米開戦時にソ連が(日ソ中立条約を無視して)対日宣戦布告していたら…というシナリオ。日本側を選んだ場合、初期状態でソ連が敵勢力になっている。
- 奇襲失敗:もし、真珠湾攻撃が失敗していたら…というシナリオ。日本がミッドウェー海戦より早く南雲機動部隊及び南雲忠一提督を失った状態で開始される。
- 大和3番艦竣工:もし、ミッドウェー海戦で日本が負けなかったら…というシナリオ。空母を失わなかった日本は、大和型3番艦「信濃」を戦艦として竣工させ、4番艦も完成間近になっている(名称は候補名の一つ「紀伊」になる)。初期状態で大和型戦艦が信濃まで完成している状態で開始される。
提督の決断IV
2001年、Windows2000・XP向けに発売。
コンシューマー移植版はPlayStation2のみ。
太平洋から全世界を舞台に戦場が拡大し、選択可能な陣営も日米以外にイギリス(と、オランダ・オーストラリア)とドイツ(と、イタリア)が選択できるようになった。戦略目標が拠点制圧から制海権確保に変わったので、短時間での攻略が可能になった一方、陸軍が登場しなくなった。
それまでの路線から大幅に方針を転換し、仮想戦記的な性格を強めた。しかしこの方針転換は賛否両論分かれてしまい、以降シリーズの展開は行われなくなっている。一応、艦これのヒットを受け株主総会で株主からコメントを求められたことはあるようだが。