地上のあらゆる物が宙に浮く!不思議な念力を持つ少年ウリー
その影に寄り添う優しい微笑み…その時、モロボシ・ダンの目が光った!
ウリーがママと呼ぶのは誰だ?
そして、ゲンの銃口の前に立ち塞がるダンは何故?
さぁ、みんなで見よう「ウルトラマンレオ」!!
放送日
1974年10月25日
登場怪獣
超能力星人ウリンガ
あらすじ
ある日、トオルは神社の境内で友人の子どもたちと遊んでいた。すると、百子は赤い服を着た一人の少年がこちらを見ていることに気づく。百子は少年をトオルたちの仲間に入れ、一緒におしくらまんじゅうをして遊ばせるが、少年は苦しみ出し唸り声を上げながらおしくらまんじゅうを抜け出すと、物凄い力を発揮しておしくらまんじゅうを壁まで押し込む。そして手を離すと、反動でみんなは地面に倒れ、少年は誇らしげに人差し指で鼻を擦る。
百子「あなたは誰!?」
少年「ウリーだ!」
百子「ウリー?」
トオル「宇宙人だ!」
カオル「違うわ、だってあたし達と同じよ!」
トオル「でも怪しいぞ…君、どっから来たんだ?MACへ連れて行こう!」
百子「トオルちゃん、およしなさい!」
百子の制止も払い除け、トオルらは集団でウリーに迫る。ウリーは困った表情を浮かべるものの、突如目を真っ赤に光らせた。
トオル「あっ、何だ!?えぇい!」
トオル達が飛びかかると、ウリーは掛け声高く忍者の様に手を組み、強力な念力を発揮した。たちまちトオルらは吹き飛ばされ、ウリーはまた鼻を擦ると念力を発動。灯籠や鳥居までもが浮かび上がり、辺りに砂埃が舞う。ウリーは満足げな笑顔を讃え、逃げ去った。
トオル「待てー!!」
トオルは勇敢にもウリーを追いかける。ウリーは念力で門を動かすが、閉まるより早くトオルが走ってきたため失敗し、追いかけっこが始まった。
ナレーション「とある下町の神社の境内で起きた不思議な事件。既にMACに察知されていた。そしてダンとゲンが現場に急行しつつあった」
マックロディーで現場に急行したゲンとダン。ダンのマックシーバーが示すエネルギー反応から方角を特定し、車を停めて調べようとした矢先2人はウリーと遭遇。しかし2人は彼が宇宙人であることなど知らず、ウリーも2人を一瞬警戒しつつも走り去ってしまう。そこへ彼を追ってきたトオルが現れ、あの子は宇宙人かも知れないと伝える。ダンがマックシーバーを見てみると、強いエネルギー反応が。向こうでみんなが倒されてしまっていると聞いたダンは、ゲンを彼らの救助に向かわせ、自分はウリーを追うことに。
杖をつきつつも追ってくるダンに対し、ウリーは念力で威嚇。工事現場の看板やバケツを浮かび上がらせ、ダンから距離を取るウリー。ダンとウリーはまるで西部劇の決闘の様に睨み合い、相手の出方を伺う。
先に仕掛けたのはウリーだった。念力で桶やバケツ、自転車、果ては通行人まで浮かび上がらせるが、ダンはマックガンを引き抜いて空へ発泡。続けてウリーの足元を狙って撃ち、ウリーは驚いて念力を一瞬解除するがすぐに再発動。車を浮かばせて落としたりなどやりたい放題だが、とうとうダンも杖を投げ捨ててウルトラ念力を発動。辺りの空間が歪む程の対決となったが、やはり歴戦の勇士にしてウルトラ兄弟1の念力使いであるセブンことダンが相手では、さしものウリーも敵わなかった。押し返されたウリーはまたも逃亡を開始。
ウリー「助けてー、ママー!!」
そこへ1人の女性が現れる。それはダンにとっては信じ難い人物だった…
ダン「アンヌ…!?」
それは嘗てダンがウルトラ警備隊の一員として共に苦楽を分かち合い、淡い恋を育んだ女性・友里アンヌだった。
ダンの脳裏に嘗ての思い出が蘇る。あのゴース星人の史上最大の侵略を前に、アンヌと今生の別れをしたあの日の記憶が。
アンヌ「ダン…」
ダン「アンヌ、僕は…僕はね、人間じゃないんだよ…M78星雲から来た、ウルトラセブンなんだ!!」
アンヌ「えっ…!?」
ダン「びっくりしただろう…?」
アンヌ「ううん、人間であろうと、宇宙人であろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの。例えウルトラセブンでも…」
ダン「ありがとう、アンヌ…」
ナレーション「アンヌとは、ダンがまだウルトラ警備隊の隊員であり、ウルトラセブンとして活躍していた頃の同僚だった」
壊れたウルトラアイを取り出し、アンヌを思い出すダン。その時、ダンの視界に謎の光景がフラッシュバックした。
白黒テレビの様な世界でダンは1人、河川敷の真っ只中に立っている。そこへ、和服を着たアンヌと思しき女性がやってきた。ダンを見て微笑むアンヌに、ダンは急ぎ駆け寄る。
ダン「アンヌ…!アンヌ、君はアンヌだろう?」
しかし、アンヌは首を横に振り、背を向ける。しかし、ここまでそっくりな顔で別人であるものか。ダンは諦めずに話しかける。
ダン「何故こんな所にいるんだ、ここは何処なんだ?」
アンヌ?「ウリー?ウリー!いらっしゃい」
すると草むらからウリーが顔を出した。ダンはウリーのもとへ歩き出すが、アンヌの方が早くウリーに駆け寄る。
アンヌ?「ウリー!」
ウリー「ママ!」
ダン「"ママ"?君の子供か?その子は宇宙人だ、君も宇宙人なのか?」
しかしアンヌはダンを見つめるばかりで答えない。するとウリーはまた飛び出してしまい、アンヌもそれを追って行ってしまう。ダンは堪らず再びその名を呼ぶ。
ダン「アンヌ!!」
(場面転換)
ダンは1人、あの下町の道路に立ち尽くしていた。そこへやって来たのはゲン。気がついた時には既に暮れ時であった。
ゲン「隊長!あの子は?」
ダン「あぁ、すまん…見失ってしまったよ」
ゲン「子供みたいに見えますが、相当な奴ですよ…大きな石を、手も触れずにビームで飛ばしたそうですから」
ダン「しかし、何故アンヌが…」
ゲン「えっ?」
ダン「いや、何でもない」
(場面転換)
基地に帰っても、ダンはあのことが頭から離れなかった。窓際に立ち尽くし、考えにふける。様子のおかしいダンを白土と梶田も心配する。
白土「あのままもう2時間だぜ?」
梶田「どうしちゃったのかねぇ…」
白土「おいおおとり、お前と一緒に帰ってきただろ?どうしたんだ」
ゲン「いや、それは僕にもわかんないんだよ」
ダン「ゲン」
ゲン「はい!」
すると、ふとダンがゲンを呼んだ。何かと思ってゲンが答えると、
ダン「出かける、後を頼む」
ゲン「はい」
ダンは行き先が何処かも告げず、基地を出た。ゲンはダンに何かを言おうとするが言い出せず、ダンの背を見送るしかなかった。
(場面転換)
再びあの下町を訪れたダン。その姿はいつものMACの隊服ではなく、渋いスーツの姿だった。橋の上でアンヌを待っていると、やがて彼女が姿を現す。アンヌはダンを見て見ぬ振りをし立ち去ろうとするが、ダンは後を追いかける。
ダン「アンヌ!待ってくれ!」
やがて、2人は港へ移動。ダンの顔を見ずに歩き続けるアンヌに、ダンは笑顔で話し続ける。
ダン「また地球に住むことになって、まず第一に君を訪ねた…しかし君はいなかった、誰も君の行方を知らなかった。あちこち探したよ…必ず何処かに、元気にいてくれるに違いないと思って…会えて良かった、アンヌ!」
アンヌ?「あたしは、アンヌじゃありません…」
ダン「しかし…」
アンヌ「…アンヌじゃないんです…!」
ダン「アンヌ…!」
頑なに自分がアンヌだと認めず、去ろうとするアンヌ。ダンが追おうとすると、同時にマックシーバーが鳴り出す。すぐに出ると、相手はゲンだった。
ダン「モロボシだ」
ゲン「隊長、KDR203地点に異常事態が発生しました!あの子です、あの子がまた騒動を起こしてるんです!」
ダン「よしわかった、すぐ行く!」
ウリーがまた事件を起こした。目を見開くアンヌに、ダンは優しく告げる。
ダン「大丈夫だ、任せておきたまえ!」
(Aパート終了)
解説
『ウルトラマンレオ』の中でも最も解釈が難しいエピソードである。
- 結局この女性はアンヌだったのか、よく似た別人だったのか?(ダンは再び地球防衛を任せられて地球に来た時に真っ先にアンヌを訪ねたが消息が分からず仕舞いだったらしい)
- 仮にアンヌだとしたら、何故宇宙人の捨て子であるウリーの母親になっているのか?
- また仮に別人だとしたら、何故ウリーをダンの様な立派な男の子に育てようと思ったなどと言ったのか?
- 彼女がウリーを拾ったのはいつなのか?
- 彼女が会話の中で「皆があの子を育てるのに反対だった」と言っていたがその皆とはウルトラ警備隊のことなのか?
- なぜこの女性はこれほどまでにダンを拒むのか?
- なぜこの女性はダンと呼ばず、MACの隊長さん、隊長さんと呼ぶのか?
数多くの謎を残したまま物語は完結。結局本当の意味でダンとアンヌが再会を果たすのはULTRASEVENX最終回となる。
また、この話題になるとよく名が上がるウルトラマンゼロとの関係も不明。
尚脚本にははっきりアンヌ本人と書いてあったそうな。
ちなみにパラレルワールドである平成ウルトラセブンではアンヌは海洋学者と結婚し、実子を設けている。その子供の名は「ダン」と名付けていた(元カレの名前を子供に名付けるというのもアレだが)。
この話のベースになっている「狐がくれた子」という題名の童話は実は存在しない。平安時代に安倍晴明の両親となった人間の男と狐の女の話である『信太妻』と1971年に公開された勝新太郎主演の『狐のくれた赤ん坊』がモデルになっていると言う説がある。『金太郎』で良かったのではないかと言ってはいけない。
何気にゲンもダンも初見でウリーが宇宙人だと見抜けていない。
本作で唯一ダンの私服が見られるエピソードでもある。また、「ウルトラセブン」の要素があるエピソードもこの話くらいのものである。
ラストを始め所々でセブンのbgmが使われ、この話が「セブン」の続編である印象を強めるのに一役買っている。