MSM-04 アッガイ
全高:19.2m(17mとする資料もあり)
本体重量:37.9t
全備重量:97.2t(98tとする資料もあり)
ジェネレーター出力:1,870kw
スラスター推力:109,600kg
センサー有効半径:不明
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者
アカハナ
イワノフ
クラフト
マジソン
ラムジ
ノルト・キスノ
ベルデ・キスノ
----
ゴッグ、ズゴックといった水陸両用モビルスーツが、高性能だがコストの高騰化という問題があったため、主にジェネレーターをグレードダウンさせて低コストで生産性を高めた水陸両用機として設計された。
MSとしては初めて複座式コクピットを採用し、水陸両用MSの訓練用として用いられた。
生産性を高めるため、既存機体のパーツを流用されている。
胴体部基本フレームや熱核反応炉はザクⅡのものを、航行用部材やクロー部はゴッグのものが使用されたといわれる。
ズゴックより後の開発着手だったが、パーツの流用によってアッガイの開発は順調に進み、先行して開発されたズゴックよりも先にロールアウトしたため、より若い型式番号となっている。
アッガイにはザクⅡJ型の熱核反応炉が2基搭載されている。水中航行時には1基の使用で十分だが、戦闘時に大パワーが必要とされたことが2基搭載された理由である。
そして熱核反応炉1基のみで可能である航行は、排熱量が軽減され熱センサーに感知されにくくなる副次効果を生んだ。この低排熱量が軍部に注目され、機体全体に電波吸着剤を塗布し、
湿地帯での迷彩効果に優れるダークブラウン系に塗装するなど、機体のステルス性を高めさせた。
運動性は高く、陸戦用MSと比較しても遜色が無い。
水中よりも湿地を中心とした陸上における機動性が高く評価され、ジャブロー攻略用のアッグガイ、ジュアッグのベースとして用いられた。
武装
:頭部105mmバルカン砲×4
機動性を維持しつつ隠密行動をとる必要性からやたらと武装を増やすことはできず、
コスト面からもバルカン砲が選択されたと思われる。
ただし105mm口径もあるので、一斉射撃時の威力は侮れない。
:6連装ロケットランチャー
基本は左腕先端部に搭載されたミサイル兵器。
偵察用のアッガイには大火力の兵装は搭載できず、この関係から搭載可能兵装は自衛的なもの。
左腕部ロケットランチャーもそのひとつだが、橋などの堅固な構造物を破壊するだけの威力はある。
障害物を破壊しての爆風などで敵機のカメラを撹乱し敵の判断を鈍らせて逃走するのが本来の使い方なのだろう。
:クロー(アイアンネイル)
基本は右腕先端部に収納された金属爪。爪のブレードは6本。
スライド伸縮式(フレキシブル・ベロウズ・リム)の腕部の効果もあって攻撃範囲は広く、意表をついた格闘戦が可能。
:メガ粒子砲 or 機関砲
クローと同じ右腕部先端に搭載。1砲門のみだが、
ジェネレーター出力の高さからビーム兵器が使用できる。
メガ粒子砲ではなく、実体弾の機関砲を搭載したタイプも存在する。
※両腕の兵装バリエーション
基本は「右腕がクロー&メガ粒子砲、左腕がロケットランチャー」だが、
ジャブロー投入の機体は実戦でクロー装備タイプにも関わらず、両腕より6連装ロケットランチャーによる攻撃を行っており、
切替でクローとロケットランチャーを入れかえる機構をもった機体もあったようである。
これら両腕の武装はユニット化による交換が可能となっているようで、機体により右腕の武装をメガ粒子砲としたもの、左腕または両腕にクロー装備にしたものなど仕様の異なるものもあった。
劇中での活躍
『機動戦士ガンダム』では第30話に登場。
シャア・アズナブル率いる特殊部隊が連邦軍本部ジャブローへ破壊工作のため潜入する際に使用された。
潜入後ハッチから降りる際にアカハナの機体を除く各機に2人ずつ搭乗していたのが確認できる。
破壊工作に失敗し直ちに撤収を図るも、ガンダムの執拗な追撃を受けて潜入した4機が残らず撃破される憂き目に遭った。
なお劇場版『哀・戦士編』ではガンダムとの直接交戦は無く、脱出中に背後から61式戦車にコクピットを直撃されて1機(アカハナ機)が撃破された。
安彦良和氏のコミック版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、「土木作業用にも適した旧型MS」という設定になっており、むしろ同作でザクの原型として登場した「モビルワーカー」に近い機能を持っていた。また、腹部の帯状の装甲が前方に倒れ、股間部のハッチから兵員が乗降するためのタラップとなる機能が加えられ、1機あたりに搭乗できる人数も増えている。
作中でジャブローにおいて撃破されたのはアカハナ機だけであるが、「シャア・セイラ編」の冒頭で「逃げたのはズゴックだけ」と連邦軍調査部隊が言っていることから、他の機体も撃破されたものと推測される。
他にも岡崎優の漫画の冒険王版ではシャア・アズナブルが搭乗。ジャブローでガンダムをあと一歩のところまで追いつめたが、ウッディ大尉によって阻止される。
『機動戦士ガンダム第08MS小隊』では、
右腕部を破損したアッガイが、カレン・ジョシュアが搭乗する陸戦型ガンダムと交戦。
カレン機の頭部を破壊し、善戦するも撃破されている。
本作品に登場するアッガイはデザインがアレンジされている。
曽野由大の漫画『機動戦士ガンダム アッガイ北米横断2250マイル』では、キスノ兄弟が搭乗しキャリフォルニアベースを目指して北米大陸を横断する物語が描かれた。
『機動戦士ガンダムΖΖ』ではサイド3のコロニー・タイガーバウムにてスタンパ・ハロイ所有の機体にハマーン・カーンが搭乗し、ズゴックを駆るジュドー・アーシタと交戦した。ハマーンが機動性の高いアッガイの性能をフルに引き出している。
名手が乗れば名機たり得る証明の一瞬である。
この機体は両腕がクローで、ホバリングも出来る。
スタンパ邸内の他の機体と同様、コクピットのリニアシート化など、独自の改良が加えられていた模様。
『機動戦士ガンダム アッガイ北米横断2250マイル』では、学徒兵のノルト・キスノとベルデ・キスノ兄弟が陥落の憂き目にあったケープカナベラルからキャリフォルニアベースまで本機で移動している。この旅の途中、マゼラ・トップを野球のバットにして敵爆撃機群を叩き落としたり、ブレイクダンサーのような動きで格闘戦を展開してジムやガンタンクを倒したり、1機がもう1機をボウリングの様に投擲して敵の61式戦車で「クリスマスツリー倒し」を実現したりなど奇想天外な活躍を見せるところもある(こうして見ると、地上に投入されたジオン軍MSの中で本機はザク以上の名機と言えるかもしれない)
なお、頭部のバルカン砲は今のところ初代の第30話で短時間確認されるのみである。
癒しキャラ・萌えキャラ化
現在では上記の設定がどうでもいいとばかりに「萌え人気機体」としての地位を確立した。
2009年5月の静岡ホビーショーで「招き猫アッガイ」や「木登りアッガイ」など
30体以上を出展した模型クラブ代表は、かっこよいイメージが固まったガンダムに比べ
愛嬌があるアッガイには改造の余地が充分にあると語った。
また、ガンダムファンで知られる橋爪紳也は、
『愛らしいキャラクターに溢れて育った本放送を知らない世代が、アッガイの魅力を再発見した』
と分析している。
1980年代
劇場版第2作『哀・戦士篇』のパンフレット裏表紙に掲載された、
安彦良和氏のイラスト「小さな防衛線」での「体育座りポーズ」により、『最もかわいらしいモビルスーツ」としてファンの間で認知されるようになった。
またイラスト中で2頭身にディフォルメされたことから、元祖SDキャラとも呼ばれる。
ガンプラ発売以前のガンダムファンは女性が多く、「最初にファンになってくれたのは模型マニアではなく彼女達だ」と富野がコメントしている。
最も女性に受けるメカはアッガイだという認識があったようだ。
1/100プラモデルには上記の事実を示すかの様に、
「あたまでっかち」「涎掛けのような胴体」「蛸のような口」、「小さな子供を思わせるような姿」といった、兵器とは思えない妙なセールスポイントが記されている。
なお、平成以後の設定変更によってアッガイはガンダムより背が高くなり、体型の差もあって二周り以上大きい巨体で、対峙した画像をみると「かわいい」とは言いにくくなった。
(先述の「第08MS小隊」における陸戦型ガンダムとの交戦シーンなど顕著である)
1990年代
1994年のアーケードゲーム『機動戦士ガンダム EX-REVUE』に登場し、今度は「いじられキャラ」としてのイメージが決定付けられる事となる。
他の登場モビルスーツに比べ非常に弱いとされたが、その一方で挙動が非常にユーモラスである。特に際立っていたのが勝利ポーズで、他のMSが銃を掲げたり、剣を振ったりするのに対して、アッガイは「くるくるハッフンどすこい」と通称される、全く異質のものだった。
これにより、コメディリリーフとしての方向付けが固定化された。
また、漫画『いけ!いけ!ぼくらのVガンダム!!』(ことぶきつかさ著)に
登場する「アッガイファイト」の影響も大きい。
『機動武闘伝Gガンダム』の「ガンダムファイト」のパロディ「アッガイファイト」を描いたこの作品で、
アッガイは一気にアニメファンに浸透することとなる。
このパロディシリーズは『新機動戦記ガンダムW』をも巻き込み、結果「ファーストガンダムを見たことは無いがアッガイは知っている」という女性ファンが増えるという現象を作り出した。
また、この漫画の影響からか、後にゲーム『SDガンダム GGENERATION』ではシャイニングガンダムの設計にアッガイが必要となるケースも出るようになり、更に続編『SDガンダム GGENERATION-F.I.F』のガンダムファイトEXモードでは、『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュが大幅に改造強化されたアッガイに搭乗している。
その他、プレイステーションの対戦格闘ゲーム『ガンダム・ザ・バトルマスターII』での登場機体の一つでもあり、その挙動は非常にコミカルなものである。
2000年代
近年アッガイの知名度が向上したのは、
2001年のアーケードゲーム『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』によるものが大きい。
このゲームのバージョンアップ版が稼働され、稼働から2ヶ月経ったころに「鹵獲モード」の存在が明らかになった。
稼働当初は連邦はジオンのモビルスーツを、ジオンは連邦のモビルスーツを選べなかったが、
鹵獲モードを開放することで敵軍の機体が使えるようになり、敵軍のモビルスーツはカラーリングが変わっているという要素もあった。このモードで選べる連邦軍版アッガイのカラーリングが「ドラえもんに似ている」という声が高くなったこともあり、ドジだけど愛らしい、いわゆる萌えキャラとしての側面も持つように見なされていった。
またその一般普及には漫画家・大和田秀樹の
『機動戦士ガンダムさん』がその先鋒を担っている。
ちなみに『ガンダムさん』ではシャア・アズナブルとララァ・スンが
「昔はアッガイ好きと言っただけで変人扱いされたものだ」
「良い時代になりましたね」
という会話をしている。
さらには作中では住民皆アッガイの「アッガイ谷」という地名も登場している。
----
その後、アッガイを萌えキャラとして扱った二次創作物が同人誌やインターネット上で次々と発表され、萌えキャラとしてのイメージに拍車をかけた。
最近では『機動戦士ガンダム 戦場の絆』にてジオン所属のプレイヤーでマッチングした4人全員(8人プレイが実装された以降は場合によっては8人全員)がアッガイを選び、そろってミサイル発射などコミカルな動きを楽しむという、通称「アッガイ祭り」で盛り上がる事もあり、
バンダイナムコゲームスの担当者も驚きとともに好意的に受け止めている。
2009年にアーケード稼働の3D対戦アクションゲーム
『機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダムNEXT』にはシャア専用ザク、ドムに次いで3機目の同タイトルジオン機体として登場。
ゲーム中でのアッガイの兵装には「アッガイ隊同時攻撃or呼出」なるものがある。
:アッガイ隊 同時攻撃
本体の横に同機体(アッガイ)が2機並んで出現、同時に頭部バルカン一斉射撃。
:アッガイ隊 呼出(特に注目していただきたいアクション)
※この兵装はレバー入れとの同時入力で攻撃内容が大きく変化する。
上入力…同機体が複数で標的へ走り、ヘッドスライディング(空中だとキックになる事も)する。
横入力…同機体が標的へ向かって走って接近、到達すると3連格闘でボコボコに叩く。
下orニュートラル入力…同機体がジャンプ、当たった対象に抱きついて移動速度を遅くする。
これらのアッガイ隊を駆使すれば「対戦エリア中に沢山のアッガイがいる」という、
アッガイ好きにはたまらない状況を作ることも可能である。
[nicovideo:sm8202536]
ゲームセンター向け案内資料では、
・見開きで前作からの追加機体が一定の方向を向いているが、
アッガイだけは逆の方向を向いている
・その見開き面の右下でアカハナがポツリと登場している
・裏面でカプルやデスティニーガンダムなどとショートストーリーを繰り広げている
と、制作者やバンダイナムコゲームスの資料作成者たちにも好感をもたれているように見受けられる描写がある。
また、アーケードゲーム雑誌「アルカディア」での攻略記事では他の新規参入組や前作続投組を差し置いて最初に登場した。しかも、同じ新規組のデスティニーガンダムやガンキャノンが1/4ページしか与えられなかったのに対し、アッガイには1ページ分も与えられた程である。
このシリーズの続作となる『機動戦士ガンダム EXTREME VS.』でも、並び立つ主役ガンダムに混じって堂々参戦しており、前作でのアッガイ隊呼び出し攻撃が、かわってジャブロー攻略隊のアッグガイ、ゾゴック、ジュアッグなどを呼び出すものになった。しかし、EXバースト時の一部攻撃においてはちゃんとアッガイ隊が登場する。
一方戦場の絆においては、アッガイが出撃可能なステージでジオン軍側プレイヤーが全員アッガイを選択し出撃するという、「アッガイ祭」が自然発生。
メーカー側が困惑する旨の発言をしてはいるが、同時に好意的な発言もしており、今もよく見かける現象である。
なお萌えキャラとして扱われる場合、アッガイは幼稚園児~小学校低学年程度の女児(幼女)のように擬人化(MS少女)されている事が多い。
また、2ちゃんねる特有の発音の変化により「アガーイ」「アガーイたん」と呼ばれる事もある。恐らく『ガンダム・ザ・バトルマスターII』での自機決定時ボイスからきているものと思われる。
これらの事態(上記には下記よりも先の時事もあるが)がアッガイを表舞台へと引きずり出し、2005年にはマスターグレードキットがリリースされるまでに至った。
一般には「人気は今一つで需要がない」、「マスターグレード化の暁には、5万円位でないと商品化されないだろう」と実しやかに言われていたが、他のMGキットと同等の価格で発売された。
「リアリズムよりもアッガイらしい設計を心掛けた」キットとされるが、内部メカの造型はそれまでのシリーズのノウハウを導入した充実を見せる品となっている。
また、関節の可動範囲も広く取られており、「体育座り」のポーズをとる事が出来る。
この技術は後発のHCM-Proにも活かされ、組み立ての手間なしに座るアッガイが再現できる。
更に2007年にはハイグレード・ユニバーサルセンチュリー版のキットもリリースされ、
こちらでは「不良座り」のポーズをとる事が出来る。