概要
『機動戦士ガンダム0080』第4話で、ペガサス級強襲揚陸艦「グレイファントム」を母艦としたスカーレット隊は、ガンダムNT-1受領のためにサイド6リボーコロニーに駐留していた。
しかし、ガンダムNT-1の奪取もしくは破壊という任務を受けたジオン軍特殊部隊「サイクロプス隊」のMSケンプファーが強襲、これを迎撃するためグレイファントムはスカーレット隊を出撃させた。
スカーレット隊のMSはジム・スナイパーⅡ、量産型ガンキャノンといった当時の最新鋭かつハイスペックな機体揃いであった。
…のだが。
出撃から降下する間にケンプファーに片っ端から撃墜されてしまい、降下に成功したジム・コマンドも背後から狙撃され撃墜、たったの数分間でスカーレット隊は全滅してしまったのだ。(再生時間上は出撃から全滅の報告まで1分と経っていない)
しかも撃墜された機体がコロニーの市街地に落下し、さらに被害を拡大させていた。
いくら相手が高性能MSのケンプファーでパイロットが熟練者のミハイル・カミンスキー(ミーシャ)であるとはいえ、最新鋭MS揃いでありながらたった1機のMSに瞬殺されるというあんまりな醜態を晒してしまったのである。
この有様から「伝説の出落ち部隊」「スカーレット隊(笑)」などと言われるようになった。
なぜ彼らは出オチとなってしまったのか
交戦規則の問題
サイド6は中立を宣言しているコロニーで、当然コロニー内や領宙内での戦闘は南極条約で禁じられている(※1)。
しかし一年戦争末期、敗色が濃くなったジオン公国側は何としてでもガンダムNT-1を奪取もしくは破壊することに必死で最早南極条約を遵守していられるような状況ではなかったため、ケンプファーで戦闘行為を行ったと思われる。
だが地球連邦軍側は勝利は時間の問題であり、南極条約を遵守する必要があった。
それに中立コロニーであるサイド6で戦闘行為を行えば、サイド6の行政や住民から反感を買ってしまい、外交上不利になってしまうことは容易に想像できよう。(後にコロニー内しかも民間人のいる中での戦闘を描いたシーンでは、流れ弾での死傷や、機体を爆発させた事よる被害が生じた描写がある)
そのためスカーレット隊は最新鋭機揃いでありながらむやみに発砲することが出来ず、条約なんぞ知ったこっちゃないケンプファーに蹂躙されてしまったと言える。
実際、『0080』第4話劇中でスカーレット隊が発砲する描写は無い(しかし撃墜された衝撃で弾が暴発した事はあった)。
加えて、事前に展開しているのならばともかく、交戦地帯へと降下して展開となると空挺降下と同じリスクを負う事となる。
コロニー内という事もあって航空優勢の確保がされていても、近接航空支援は事実上不可能であり、地上部隊による前線の形成、降下ポイントの確保、降下地点への誘導、敵情報の伝達といった支援が一切ない状態で目隠しで降下となれば大損害が生じるのは当然となる。
後述するSDガンダムバトルアライアンスでは、コロニーへの被害を抑える事を指示されるスカーレット隊が描写されており、上記の事情を思わせるフォローが入った。
ただし連邦側も新型MSの開発をサイド内で行っていたことからも、条約違反をしていたことには違いなく、サイド6側がそれをまったく感づいていないとは到底考えられず、サイド6も実質的に違反に加担していたとも言える。これはそれほど時間の違わないホワイトベース隊の入港時に、ホワイトベース側からの修理や補給の申し入れは、条約違反であるから出来ない、とサイド6側が言っていることを見ても明らかである。とはいえ、ジオンが条約違反を理由にコロニー内で即座に戦闘行為をして良い理由にはならない(少なくとも中立条約破棄の通告無しでの攻撃などあり得ない)。
練度の問題
上述の事情を考え武器の使用に躊躇したとしても、出撃目的が敵の迎撃だったことを考慮すれば、「盾を構える」「即応しやすい隊形を維持する」「降下中は迎撃されないように常に動き回る」など一定の対策を取るべき状況ではあり、それ以外にも「弾速が遅いジャイアント・バズやシュツルムファウストを回避できてない」「殲滅対象たるケンプファーを捕捉どころか、発見すら出来ていない」等の描写から、スカーレット隊の練度が著しく低かったのではないかという指摘もある。
母艦がサラミスやマゼランといった旧式艦ではなく最新鋭のペガサス級のグレイファントムで、しかも当時最新鋭であり、一年戦争中では傑作機と言われる量産型ガンキャノンや連邦軍最高の量産型MSジムスナイパーⅡを複数所有など、重要な扱いをされている部隊であるのは間違いないが、戦略上の重要性と個々の練度は別である。
更に言えば、創作上では「最前線で歴戦のエリートや精鋭部隊が最新鋭の機体を受領する」という展開はよくあるが、現実では「輸送する側は途中で破壊・下手をすれば鹵獲される危険がある最前線に運ぶリスクがある」、「受領した側からすれば最新鋭で逆に不慣れ、更に言えば主力だった物と操作方法も整備方法も部品も違うので、パイロットも整備士も混乱」と、かえって双方に多大な手間をかけることになるため、新型機は再編成・新編成された部隊に回されるケースが多かった。また、老い先短いベテランをわざわざ最前線から引き抜いて再訓練するよりも、余計なクセがついておらず、今後の成長も見込めるだけでなくその後も長く働ける新人に新型機をあてがうという采配はこれまた現実でもよくあること。
任務内容に関しても「中立地帯であるサイド6に隠された基地でニュータイプ専用MSであるガンダムNT-1を受領する」といえばいかにも重要任務っぽいが、言い換えれば「戦火から遠い後方の基地に荷物を取りに行く」という簡単なおつかいである。
スカーレット隊の所属機は大部分が遠距離戦闘を主眼とした機体であり、護衛や警備任務には適切とは言い難いのだが、「近場で訓練・哨戒をしていた部隊についでにおつかいをさせることにした」とすると辻褄が合う。
そもそもが(様々な後付けで変わるとはいえ)ジム自体の本格的な配備開始が11月後半頃という考察もあり、それを基にすると実機では最長でも一月程度の習熟期間しか無いことになり、いくらエリートと言えども新人と変わらない練度しかないと思われる。
加えてコロニー内の戦闘となると、中心部から回転する地平面に降下という経験のないどころか想定していない状況であり、まだ出回り始めたばかりの機体となればプログラムも未成熟で機動が制限されてろくに回避もできない、という可能性もある。
ただスカーレット隊との戦闘の結果ケンプファーは貴重な弾薬を消費してしまい、遠距離装備を早々に破棄することになっただけでなく、このことが響いてケンプファーはクリスチーナ・マッケンジーが搭乗したガンダムNT-1に接近戦を挑んだ末、ガトリング砲で撃破されてしまった。
このことを考えれば、スカーレット隊の全滅は決して無駄ではなかったと言えるだろう。
余談
ジム・スナイパーⅡは後にアニメ本編の扱いの悪さを払拭するかのように、ゲーム作品で大活躍の場が与えられたことで再評価され、結果的にMGで一般発売されるまでに汚名返上している。
MGジム・スナイパーⅡの組み立て説明書においては、グレイファントムのMS小隊でスカーレット隊とは別にディープブルー隊が存在していることが後付けで設定された。
スカーレット隊が量産型ガンキャノン1機とジム・コマンド3機、ディープブルー隊が量産型ガンキャノン1機とジム・スナイパーⅡ3機の4機編成とされている。スナイパーライフルを携えた機体は劇中に登場しなかったが、このジム・スナイパーⅡはグレイファントムから降下せずに、艦上でケンプファーの狙撃を試みるも断念したディープブルー隊の1機と設定された。
ただし劇中では引きの作画のみだが、コロニー戦仕様のジム・コマンドと同じクリーム色とブラックのツートンに塗装されたジム・スナイパーⅡも確認できる。
ゲームにおいては、SDガンダムバトルアライアンスにもスカーレット隊が登場。
歴史データの歪むブレイク現象により、リボー・コロニー内に別の時代から紛れ込んだプルーマが暴れる事態となった為に出撃し、対処にあたっている姿が見られる。
またデータ修正が行われたルビコン作戦当日においては、ブレイク現象の余波…という名のゲーム都合によりケンプファー以外のジオン機が市街地に現れた為、こちらも原作通りに出撃している。
またこの時プレイヤーもスカーレット隊の一員として歴史データに介入しており、NPCのスカーレット隊が全滅してもプレイヤー機は生存している為「スカーレット隊、全滅!…あ、いえ、一部隊のみ残存!」という通信が入る。
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ビルケナウ:似たような扱いを受けたモビルアーマー。しかもこちらはスカーレット隊と違い、敵に大量過ぎる塩を送っただけで本当に何も残せていない。