概要
本来は300年前当時の機械化思想による戦争の無人化・効率化によって、「敵を倒す」事を基本コンセプトとして開発された機動兵器である。
しかし、進み過ぎた機械化思想の果てに「人を殺す」を基本コンセプトに変貌、忠実に暴虐の限りを尽くす殺戮兵器へと変貌した。
モビルスーツを超える機体サイズと、レールガンの直撃でも傷一つ付かないナノラミネートアーマーによる堅牢な装甲、ビーム兵器を始めとした豊富な武装を備えている。
機体名称は主天使ハシュマルに由来し、そのシルエットは鳥や翼竜を彷彿とさせる。
尚、ハシュマルと言う名称は「多数量産された同型機の中の一個体名」であり、機体の通称ではない。
外部からの操作を必要とせず、機体自らが状況を判断し、独自に戦闘行動を取る無人機であり、良心の呵責に悩まされる事無くそのコンセプトを成し遂げる事が出来る。
行動原理も基本コンセプトに忠実であり、戦闘では敵機のコックピットを執拗に攻撃する他、人口密集地への攻撃を優先的に行う。
また、モビルワーカーに似た無人随伴機「プルーマ」を多数従えての物量戦をも可能とし、本体にもマイクロウェーブによるエネルギー供給機能を備える。
運用に人間が介在しない為、状況に応じて資材を奪取、消耗品である燃料や修復材料等を調達する判断力を持ち合わせており、プルーマを使い本体の修復・補給を行う事でメンテナンスフリーを実現している。
ガンダム・フレームを始めとする厄祭戦時代のモビルスーツは、これらモビルアーマーに対抗する為に開発された物であり、その為モビルアーマーはモビルスーツの存在を「敵」と学習・認識している。
ハシュマル等のモビルアーマーを撃破する事は困難を極め、戦時中はこれを撃破した者に「七星十字勲章」が授与された。
ギャラルホルンでは当時の勲章の数によってセブンスターの席次が決定されており、その影響力は彼らの子孫達にも受け継がれている事から、モビルアーマーの存在が如何に脅威であったかを知る事が出来る。
同じタイプの機体が複数あるとされ、天使の階級では中の上と示されているように(天使の全9階級中、ハシュマルが属する主天使は第4位)、厄祭戦時のMAの中での強さはハシュマルも「上の下」または「中の上」程度の強さだった模様(ハシュマルは主天使の中の上位であり主天使を率いる、とされる)。劇中で大いに暴れまわったハシュマルをも上回るMAがまだまだいたという厄祭戦がいかに常軌を逸した過酷なものだったかが窺える。グレートメカニックではハシュマルが地球で作られ火星に移動してきた個体であることが語られた上、ハシュマルおよび同型機は地上戦用とのことで、厄祭戦において何らかの手段(外付けユニット等?)で宇宙を移動してきたと思われる。
モビルアーマーが殲滅された事で厄祭戦は終結したが、それから300年後、火星のハーフメタル鉱山で複数のプルーマやガンダム・フラウロスと共に休眠状態に陥っていた機体が鉄華団によって発見された。
鉄華団は発見された機体の対処についてマクギリス・ファリドに協力を仰ぎ、マクギリスも機体の調査の為に火星に赴くが、この行動を謀反と捉えたイオク・クジャンが発掘現場にモビルスーツ部隊を展開。
その際、一番近くに居たイオクのレギンレイズのエイハブ・ウェーブに反応し再起動し、イオク隊を全滅させ、火星各所の拠点にも甚大な被害を及ぼした。
その後も発掘現場に近い人口密集地であるクリュセを目指すが、それを阻止すべく行動した鉄華団も間に合わず途上にある農業プラントが壊滅、最後は三日月・オーガスの乗るガンダム・バルバトスルプスとの激しい戦闘の末に撃破された。
尚、残骸は大破したバルバトスルプスの改修の為に使用されている。
作中でクリュセを目標にするかのように移動するが、300年前から時が止まっているMAは300年後の火星の状況に対応していない。
その最たる例が農業プラントの一幕で、イオクからの攻撃で進路変更するまでMAは人口密集地である農業プラントの存在に気が付いていなかった。
それでもMAがクリュセに向かうのは、300年前もその方面が人口密集地であった事を示している。
本機の制御は頭部の下に設置された、制御中枢ユニットのみに一任されている為、これを破壊する事で全機能を停止する。但し、その難易度は「ハシュマルの猛攻と数多のプルーマを潜り抜けてユニットを防護するナノラミネートアーマーごと粉砕する」と言う至難極まるものである。
機体データ
全長 | 35.2m |
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本体重量 | 49.8t |
動力源 | エイハブ・リアクター |
武装 |
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武装
頭部ビーム砲
頭部に搭載された高出力ビーム砲で、アニメ劇中で唯一使用されたビーム兵器。
一射のみで地形を変える程の圧倒的な威力と射程を誇り、民間設備に着弾した場合の被害は甚大。
しかしながら、高い耐ビームコーティング効果を持つナノラミネートアーマーに対してはさしてダメージは与えられず(但し、ビーム自体の熱によるナノラミネートアーマーが施されていない火器への引火・爆発に伴う破損は発生する)、対モビルスーツ・対艦用兵器としての意義は低い。
装甲に弾かれても流動体のように拡散し、周辺にも被害を及ぼす。
発射口下には制御中枢ユニットがあり、機体の制御系などを司る重要部位が集中する弱点にもなっている。
上記の威力の割に運用が容易な兵器のようで、劇中では直接的な効果が低い対MS戦闘においても、牽制目的で多用されていた。
以上の点から逆説的に、このビーム砲は対人殺戮の為だけに装備されているといえ、ハシュマルを虐殺兵器たらしめる最大の特徴とも言える。
ナノラミネートアーマーに対する敢えての発射行為も(特に劇中での農業プラント付近の様な、人間が多数いるエリア近くにおいて)、アーマーによって拡散したビームによる周囲の建造物、あるいは逃げ遅れた人間への二次被害を狙ってのものであると思われる。
腕部クロー/運動エネルギー弾射出装置
腕部に備えられた大型クロー。
中央部には運動エネルギー弾とその射出装置を備え、遠距離の敵にも即座に対応する。
運動エネルギー弾は弾自体が推力を持つ。
使用しない場合は機体両舷のバインダーに格納される。
超硬ワイヤーブレード
機体背部にワイヤーで連結された後尾ブレード。
阿頼耶識システムの反応速度に追随出来るだけの攻撃速度と、装甲を易々と貫通し、モビルスーツを一振りで撃破出来る攻撃力を併せ持ち、更にワイヤーはあらゆる方向にしなやかに可動する為、ムチのように振っての攻撃が可能。
ワイヤーは微量の電流を帯電させる事で粘性を得る特殊合金で精製されているが、その精製技術は厄祭戦後ロストテクノロジーとして扱われている。
接近する敵MS等を迎撃する為の近接武装であり、阿頼耶識システムを解放したバルバトスルプスにも追いつく程の驚異的な速度で攻撃する。
ハシュマル大破後は先端の形状を変更した後に、バルバトスルプスに移植された。
プルーマ
ハシュマル等のモビルアーマーに付随する無人攻撃オプション。「プルーマ」とは伊語で「羽」の意。
モビルアーマーからマイクロウェーブを受信する事によって稼働するが、ある程度の自律性も備える。逆に指揮管制機であるハシュマルが機能停止してしまうと、連動してプルーマも行動不能となる。
防御力こそ低いものの、機体出力は並のモビルスーツを上回り、サイズはモビルワーカーと同等。
モビルアーマーは機体内部にプルーマの生産プラントを持ち、時間と物資の許す限りプルーマを生産する事が可能であり、これを展開する事で物量戦に対応する。
但し、両者のサイズ差や形状を考えるとハシュマルが本体内部でプルーマを生産する事は無理がある。実際に監督とメカデザイナーとの対談にて、デザインした鷲尾直広氏は「特に機能性を考えてデザインはしなかった(=ハシュマルがどうやってプルーマを生産しているかの設定は特に無い)」、「別に外付けの製造ユニットが存在しており、生産する時だけ合体したのでしょう」と語っている。
機体が収集した周辺データをモビルアーマーへ転送し、そのデータを元に下された指示に従い行動を行う他、プルーマにもモビルアーマーを修復する為の機能が備わっており、同時に敵地からの補給資材の回収の役割も担うなど、巨大で小回りの利きにくいモビルアーマーの死角を補う手足として稼働する。
武装は内蔵型レールガンと機体後部の大型ドリルであり、戦闘時にはMSのコクピットを執拗に狙う傾向があると劇中で言及されている。
立体物
HG IBO1/144
クタン参型同様大型キットとして2016年に発売された。
ABS素材やポリキャップは一切使われていない、PS素材のキットとなる。
本キットにはハシュマル本体の他プルーマが一機、ビームエフェクト、運動エネルギー弾2本、機体本体用の大型台座、超硬ワイヤーブレードとプルーマ共用のスタンドが付属。
HGガンダム・バルバトスルプス用の新型太刀も付属するが、クタン参型と違ってガンダム・バルバトスルプス本体は付属しないので注意。
劇中と比べると少々小柄だが、それでも大型キットにふさわしく迫力はなかなか。
肩アーマーに腕部を収納すれば差し替え無しで飛行形態を再現可能。
運動エネルギー弾とビーム発射はパーツ差し替えで再現できる。
超硬ワイヤーブレードは太いリード線によってしなやかに動き、保持力も十分高い。
自立させることもできるが、重量もそれなりにあり手の軸に負荷がかかるため素直にスタンドを使った方がいいだろう。
プルーマは単色成形なので色の足りない部分は塗装しよう。
余談
本機の登場により、P.D世界のガンダムは『モビルアーマーを“狩る”存在』である事が判明したが、実はこの関係性がエイハブ・リアクターの開発者「エイハブ・バーラエナ」の名前に暗に示されている。
彼の苗字「バーラエナ」は羅語で「北極鯨」を意味するが、そこから『白鯨』に登場する巨大鯨モビーディックが連想出来る(※但し、こちらはマッコウクジラであるが)。
これと上の名前を合わせる事で、『狩る者』エイハブ船長(=ガンダム)と『狩られる者』モビーディック(=モビルアーマー)と言う、互いに相反し合う存在がリアクター開発者の名前から浮かび上がって来るのである。
機体の一部(特に頭部の下のパーツ)にはガンダムバルバトスの第4形態の両肩、両足・ガンダムバエルの肩側面パーツにも同じマークが確認できる。
また、アプリ「鉄血のオルフェンズG」では、カニの姿をしたモビルアーマーが登場する。
疑問
劇中で猛威を振るったハシュマルだが、ハシュマルを始めとしたMAは厄災戦争の原因となったに関わらず、認知度は異常に低い。
セブンスターズの一角であるイオクに至っては、脅威の認識すら出来ずに部隊を壊滅させてしまった。
また逆に一兵士でしかないジュリエッタが知っている事に関しても疑問が抱かれている。
この事例についてはファンからは様々な考察が出されているが、ハッキリした事は不明である。
なお現在、メタ要素込みで最も有力な説は『イオクをヘイトタンクにする為にジュリエッタも知っている事にした』である。
また、この回でイオクを焚き付けた挙句に自分は何もせずに帰って行ったガエリオには当然ながら非難が出ている(イオクとジュリエッタを見殺しにしたも同然である為。仮にイオクが死亡したらラスタルにどう責任を取るつもりだったのだろうか)。
後年になってリリースされた外伝作品『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズウルズハント』にて、イオクが部下からモビルアーマーについて説明を受けるシーンがあるのだが、イオクは部下の話をきちんと聞いていなかった上に、『ウルズハント』の時系列が一期と二期の間である事を踏まえると、どうやら忘れてしまったようだ。
この事から、ジュリエッタの言う通りモビルアーマーに関する知識はギャラルホルンの兵士なら知っていて当たり前で、イオクが知らなかったのは単に彼が無知なだけだった事が窺える。(ただ、そうなると今度はモビルスーツに乗ったままハシュマルに近づこうとするイオクを何故部下たちは止めなかったのか?という疑問が生じてしまう)
ただこれらの疑問もも300年前と昔のことが理由であるかもしれない為一概に設定の矛盾や問題があるとは限らないので注意されたし。
例えば昔のことなので認知度が下がり(現代人が戦争や兵器について詳しく説明できないように)、知識はあっても経験が伴っていないため危険度も軽くみてしまうなどと言える。
例として「所詮は300年前の遺物」とイオクが言っていたあたり一般的な認識として正しく脅威を測れていないと推察される。
そして当のジュリエッタも『友軍無しでの単騎討伐を目論む』等、イオクを笑えない有様であった。
SDガンダムでは
SDガンダム外伝シリーズ
新約SDガンダム外伝 新世聖誕伝説では月の悪と呼ばれる機重奇神ジークドミヌスと言う名前で登場し、機械の鎧・エイハブメイルを使ってギャラルホルン帝国を操っていた黒幕であった。
太古の昔、異世界から現れてギャラルホルン帝国を掌握し最強の騎士得るため、改造実験を行い悪魔(表向きには精霊)の魔力を宿した機械の鎧・エイハブメイルを使いギャラルホルン帝国を操り月の王国セレネスに戦争を仕掛けたがマクギリスの意識が悪に染まらず、エイハブメイルのガンダム達を操る呪いを解き、解放。エイハブメイルのガンダム達を率いてジークドミヌスに反旗を翻した。月の王国セレネスの王子ネオガンダムが操る超機甲神ガンジェネシスの決死の戦いにより体を撃破され精神体へとなりギャラルホルン帝国の人々は、全滅した、その後月のネットワークに憑依してデータに残っていたギャラルホルン帝国の人々を機械人間へと蘇らせ司令官ラスタル(正体は、メタルモンスター子バグが人間に擬態した姿)を傀儡にギャラルホルン帝国を復活させ大戦時の機甲神建造時のデータを元に建造した奇甲神を使って、新たなボディのデータを集めていた。
そしてスダ・ドアカワールドの新たな神である守護神サンボーンの力を機甲神伝説に出てきた紅き月(その正体は、太古の昔ジークドミヌスが作り上げた月に偽装したスダ・ドアカ侵攻用ユニット)の光で封じ従機兵(デ・ドール)を再起動させオズワルド騎士団の騎士リーオーと騎士エアリーズとザビロニア帝国のザクトパスをリベンジモンスとして蘇らせジークドミヌスは、奇甲神デルガイヤーとして現れ、ギャラルホルン帝国の皇子マクギリスを操り仮面の騎士としてリンクして戦闘で備蓄された戦闘データにより超奇甲神クレストガンジェネシスに変化させる。
クレストガンジェネシスとの戦いは太陽騎士ゴッドガンダムから授かったゴッドソードを装備した機甲神エルガイヤーによって撃破に成功。
しかしデルガイヤーの部分は生きており鎧闘神戦記に暗黒卿マスターガンダムがエルガイヤーを除く5体の機甲神を奪い操っていた影響がまだ残っていた機甲神ギガンティスが暗黒機甲神ダークギガンティスに変化し、4体の機甲神を仮面の騎士が操りバルバトス達との戦いの中、奇甲神デルガイヤーが戦闘データを取り奇甲神オービターミリオンに強化される。
だが騎士バルバトスに託されたサンボーンのパーツが覚醒しその力で浄化された機甲神ギガンティスと4体の機甲神の攻撃を受けると撤退した。
この時エレメンタルパワーのデータを取っており、そしてバグラスタルギガが超機甲神ガンジェネシスRに倒された後紅き月と合体しラクロア城をヴィーンゴールヴ界に取り込む。
ジークドミヌスの機械能力によってヴィーンゴールヴ界は、ラクロアの記憶を再現しかつてのモンスター達をヴィーンゴールヴ界に生息するモンスター達で再現(ゴブリンザク⇒サイクロプスグレイズ、スケルトンドーガ⇒スケルトンレギンレイズ、ストーンズサ⇒ゴーレムガルム・ロディ、クラブマラサイ⇒クラブシャルフリヒター、)し、ラクロア王国の歴史に名を残す者たち(騎士ガンダム、騎士サザビー、ブラックドラゴン、暗黒卿マスターガンダム )を月のモンスターメタル・バグの擬態能力で奇甲兵として作り上げ、サタンガンダムの居城ジオンブラック城をグラズヘイム城に再現した。
ジークドミヌスは、そこで奇甲神のパーツを再構成してガードモンスタープルーマを守護に鉄血騎士達を待ち構えていた。最終決戦時に五つのエイハブメイルの力を一つに集結させて鎧に宿る悪魔の力を極限にまで高め巨大化した鉄血魔神ガンダム・バルバトスルプスによって一度は撃破されるが、怨骸騎士ジークドミヌス(モチーフは、レギンレイズ・ジュリア)となって甦る。
最終的にクーデリアの持つペンダントの力によって機重奇神ジークドミヌスの残骸を取り込みバルバトスのエイハブメイルが変化した甲鉄騎士ガンダム・バルバトスルプスレクスによって完全に打ち倒された。
正に1人アリアンロッドというキャラ設定がされており
敵としてのラスボス:ジュリエッタ・ジュリス
物語としてのラスボス:ラスタル・エリオン
怪物達の親玉:イオク・クジャン(MAを復活させたという所から)
主要キャラを洗脳:ガラン・モッサ
機械関係の操作:ヤマジン・トーカ
と全ての要素を統合している。
ガンドランダーシリーズ
こちらでは『魔獣ヘイムダル』の名で登場。
ガエリオポジションのクルガングレイズと合体しアイアンドラゴンや邪鉄王クルガングレイズとなる。
気持ちは分かるがヘイムダルでこれを、合体後でこれを連想してはいけない。