概要
2017年9月25日、アニメ「けものフレンズ」の監督たつき氏がTwitterで降板を告発。これに対し製作委員会はヤオヨロズから制作辞退の申し出があったと報告。
しかしその後のKADOKAWA井上専務の仲裁では「降板」と述べ、他の13社とヒアリングに向かうという「辞退」であれば起こり得ない行動を起こした。18年KADOKAWA株主総会・19年テレビ東京株主総会でも「ヤオヨロズから辞退した」という発言は一切なく、「製作委員会の総意により降板」であるという返答であった。
独占禁止法にも抵触しかねない問題でありながら、公式の出した声明文が虚偽報告が罪に問われる可能性のある株主総会の答弁と食い違っている。
たつき監督の降板報告
「突然ですが、けものフレンズのアニメから外れる事になりました。ざっくりカドカワさん方面よりのお達しみたいです。すみません、僕もとても残念です」※原文ママ
KFPからの公式発表
9月27日、公式サイトのニュースリリースより以下の発表がなされた。
一部抜粋すると、
アニメーション制作会社であるヤオヨロズ株式会社より8月に入った段階で辞退したい旨の話を受け、制作体制を一から模索することになっているのが現状です。
ヤオヨロズ株式会社には、関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用がありました。映像化プロジェクトとしては次回の制作を引き続きお願いしたかったため、情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れをさせていただきましたが、ヤオヨロズ株式会社からは、その条件は受け入れられないので辞退したい、とのお返事でございました。
「ヤオヨロズに情報共有のないままの作品利用があった」「ヤオヨロズから辞退した」と述べており、全てヤオヨロズ側に問題があるとする内容になっている。
名義が「けものフレンズプロジェクトA」となっており、具体的にどの企業の誰が書いたかは不明。
KADOKAWA井上専務の仲裁
10月3日、KADOKAWA代表取締役の井上氏とヤオヨロズ取締役の福原氏により、以下のツイートが投稿された。
- 「けものフレンズ」の件につきまして、KADOKAWAは製作委員会の一出資企業にすぎないことから今まで発言を控えていました。私としても「けものフレンズ」におけるたつき監督の功績は大いに認めております。(1/4)
- この度の騒動にいたるまでの事態を正確に把握してなかったのは不徳のいたすところです。先週ヤオヨロズのみなさんと2回のミーティングを行なう機会を得ました。その際、製作委員会のご意見とヤオヨロズ様のご意見に大きな溝があることが分かりました。(2/4)
- 特に「監督降板」の経緯、版権使用についても認識相違があることと、監督のツイッターでのご発言の真意にはそういったことが積み重なったことが原因であるということが分かりました。そこで私としては、ヤオヨロズのみなさんと今後のことについてどうするべきか相談に入ったところです。(3/4)
- 「けものフレンズ」のファンの皆さまにおかれましては、ご理解のほどよろしくお願いいたします。(4/4)
- ファンの皆様にお伝えする事が遅くなりまして大変申し訳ございませんでした。影響の大きさを鑑みて発表の方法に関して協議しておりました。発表を受けて川上社長、井上専務が迅速にヒアリングして下さり今回の発表に至った事を感謝しています。(1/2)
- この度は皆様にご心配をお掛けしてしまいました。これから話し合いを始めますので何卒よろしくお願いします。(2/2)
「監督降板」「版権使用についても認識相違がある」「製作委員会とヤオヨロズの意見に大きな溝がある」と述べており、この時点でKFPが出した声明と相違が見られる。
同年12月27日、福原氏により2期を外れる事に関しては覆らなかった事が報告された。
2018年カドカワ株主総会
参照元:https://togetter.com/li/1239109 https://michsuzuki.hatenablog.com/entry/2018/06/20/000519
株主総会にて何件か降板に関する質問があり、それについての回答を列記する。
- KADOKAWAは製作委員会出資13社の1社に過ぎず、主導権はない。その上で各社に意見を窺ったが、最終的には制作会社との折り合いがつかず、全社一致で降板という決定に至った
- たつき監督解任というより、制作会社が製作委員会の要望に必ずしもマッチしなかった。たつき監督のツイートの後、私と川上で一緒に制作会社に会って意見や要望をうかがった。製作委員会各社にも個別に話を聞いた。その上で合わないとなった
- いろんな提案をしたが、監督降板というより制作体制の折り合いがつかなかった。もちろん、たつき監督のすばらしい才能と貢献には感謝している。第二期はまだ未定
- KADOKAWAは批判の矢面に立たされたが、特にドワンゴとしては事故に巻き込まれたという認識。尽力したが意見の不一致を埋め合わせることができなかった
- それを声高々に「僕たちは悪くない」と宣言するのも違うと思い、敢えて釈明はしなかった
またTwitter上にて、ドワンゴ執行役員(当時)の栗田氏が「(降板の決定権について)たつき氏とカドカワに認識の違いがあったのか?」という質問に対して「その認識で合っています」と回答した。
9月27日の発表よりは踏み込んだ問答がなされたものの、“意見の不一致”について具体的な内容は一切明かされず(企業間の守秘義務があるため仕方のないことではあるが。これは栗田氏が「言えるなら株主総会で答えてる」と反応している)、騒動を終息させるには至らなかった。
「全社一致で降板」という回答を行い、製作委員会参加企業を回って交渉を行っている為、「ヤオヨロズから辞退」とする9.27の発表とは矛盾する内容となった。株主総会の場で嘘をつくと罪に問われる危険がある為、少なくとも「ヤオヨロズが一方的に辞退した」事はあり得ないと考えられる。
2019年テレビ東京株主総会
株主総会の動画
参加者の株主によるまとめ
https://michsuzuki.hatenablog.com/?page=1561446804
2019年6月25日、テレビ東京の株主総会にて株主から制作途上での一方的な制作からの解任は、独占禁止法禁止事項の「優越的地位の濫用」や、下請法禁止事項の「不当な給付内容の変更」に該当していないかという質疑がなされた。テレビ東京の田村明彦氏は「交代については制作委員会の総意であり、アニメ業界ではままあることと認識している」と回答した。
「製作委員会の総意」だけでは独占禁止法違反(優越的地位の濫用)に対する質疑の回答になっていない。寧ろ違法行為を製作委員会に責任転嫁という、株主はおろか参加企業に対しても非常に心証が悪くなる回答である。
9.27に出された発表通り「ヤオヨロズから辞退」であれば独占禁止法違反疑惑に対する回答として成立する為、明らかに矛盾する内容となった。株主総会の場で嘘を付くと罪に問われる危険がある為、9.27の発表のヤオヨロズからの辞退が正であるなら、罪に問われる恐れがあるにも拘わらず自分らが不利になる証言を行ったことになる。
上記の動画でも解説されているが、
・質問可能数が6問
・関西生コンを概要から削除及び内容の改変、「受注側の一方的な契約解除は下請法・独占禁止法違反では?」という質疑は一切触れず
・延長動議の声を無視
・30分で質疑応答を強制終了
・明らかに不自然な票の集計(延長動議の声を無視して10秒程度で過半数の賛成を確認したとして質疑応答を終了)
など株主総会として不自然なものだった。
(株主総会は何らかの不祥事が無い場合でも基本的に15問程度、挙手する人がいなくなった為に終了ということが当たり前。
不祥事を起こした際のスルガ銀行は怒号の中、3時間22分の質疑応答が行われた)