概要
全身にかゆみを伴う湿疹が繰り返し起こる病気。皮膚のバリア機能の遺伝的異常により、皮膚に炎症が起こりやすくなることで湿疹が出る。
アトピー自体はなんらかのアレルギー反応というわけではない(アレルギーとして起こる皮膚炎は蕁麻疹などがある)が、アトピーを発症している場合アレルギーによる喘息や鼻炎(花粉症など)、皮膚接触性のアレルギー(金属アレルギーなど)も出やすい。何らかの菌やウイルスが原因の感染症でもなく、アトピーの人と同じ場所にいたり、肌や着ていた服に触れたりしても、湿疹が伝染するようなことはない。
多くは乳幼児のうちに発症する。アレルギーが起こりやすい体質の人は、アトピーを皮切りに、成長するにつれて食物アレルギー、喘息、鼻炎…とまるで行進するように症状が現れることから「アレルギーマーチ」と喩えられる。
症状としては、強いかゆみがあるのが最大の特徴である。かゆみに耐えられずかきむしってしまい、皮膚が傷ついたり乾燥したりすることでさらにかゆみが悪化するという悪循環に陥りやすい。湿疹が出る→掻いてしまう→皮膚が荒れる→また掻く…という流れを繰り返すうちに、皮膚が硬く厚くなる「苔癬化」が起こる。
空気の乾燥やストレス、皮膚の洗いすぎ(逆に不潔にすることによる菌の増殖)、汗、服の布の刺激(アクリルなどの化学繊維、天然繊維だとウールなどを苦手という声が目立つ)が湿疹およびかゆみの原因となる。夏のほうが汗をかくので辛いという意見もあれば、冬のほうが乾燥しやすいので辛いという意見もあり、またその間の春・秋も花粉などのアレルギーで体調を崩しやすいため、1年中気を遣っているという人が多い。
掻きむしることで皮膚に傷ができ、そこから菌が入り込んで感染症を引き起こしてしまう危険性がある。特に、ヘルペス(単純性ヘルペスウイルス)など皮膚のウイルス感染症が悪化しやすい傾向にある。
また、寝ている間に無意識に掻いてしまうことも少なからずあるため、ケアも兼ねて寝る際に手袋や靴下を着用することも対処法として挙げられている。
基本的には、ステロイド配合の軟膏、抗ヒスタミン剤、免疫機能を調整する薬などでかゆみを抑えつつ炎症を治す治療が行われる。
現状では根治する方法はないものの、薬の服用で症状をある程度抑えることは可能であり、これに加えて乾燥と肌荒れを防ぐスキンケアも重要である。
小児期に発症したあとも改善せず、成人期まで移行することも少なくないため、長期的な視点で治療に取り組む必要がある。