イカロスの亡霊
いかろすのぼうれい
表向きは難病の根絶を目標に世界中の病院や研究施設に多大な支援をしているものの、その裏ではウイルス兵器を開発しているという、正に死の商人とも言うべき大手製薬企業「ダイダロス」の野望を阻止するために結成された犯罪組織。
冒頭でいきなりダイダロスのビルを民間人がいるのをわかって爆破するなど、その目的は非情なもので手段を選ばない。
最終的にはダイダロスが開発したウイルス・サタンを悪用しようとしたが、かつてそのウイルスが開発された「イカロス島」に上陸した際、メンバーの2人とミドリが感染。後者の恋人であるロックは、彼女の救出及びサタンの免疫抗体を見つけださせる為、ブラックジャック(以後、BJ)に依頼。半ば拉致同然に彼を島に連れて行った。
しかし、終盤になってメンバーの中に裏切り者がいた事が判明。最終的に仲間同士の殺し合いにまで発展してしまう。
BJとキリコは、そんなサタンを巡る大いなる陰謀に巻き込まれていく。
正規メンバー
- ロック
イカロスの亡霊の中心人物。モデルは手塚作品でお馴染みのロック・ホーム。
かつてサタンが開発された島で生まれ、当時優秀な科学者だった両親をダイダロスに見殺しにされた過去を持ち、それ故にダイダロスを憎み、復讐の為にイカロスの亡霊に加入し活動していた。
やがてイカロス島に上陸した際、下記の2人とミドリはサタンに感染したものの、何故かロック本人は感染しなかったが…。
- ピック
銀髪の青年。大人しい性格でロックとダボリングとは違い、無関係な人間を巻き添えにしたことに罪悪感を抱いていた。ロックらとイカロス島を訪れた時にサタンに感染し、キリコに安楽死させられそうになり、苦しみつつもBJに命乞いをするが、最期は彼の手術の甲斐も無いまま肺水腫で死亡。ある意味メンバーの中で最も悲惨な最期を遂げてしまった。
- ダボリング
大柄な青年。本作の冒頭でダイダロスのビルに爆弾を仕掛けたのも彼である。
ロックと共にダイダロスを憎んでおり、「世界を救うと言いながら大儲けを企んでる偽善者」と酷評している。ロックらとイカロス島に訪れた際、ピックやミドリと共にサタンに感染。BJが島に訪れていた時にはすでに末期状態の危機に陥っており、最期はキリコによって安楽死させられた。
裏切り者
- ハカセ
イカロス島の医師。名前は通称で本名は不明。
実はダイダロス側に就いていた裏切り者の一人で、ロック達正規メンバー(及びミドリ)にサタンを注入した張本人(ただし、ロックの体内には密かにサタンの免疫抗体が作られていた為、病状は出なかった)。
終盤ではキリコによって、皮肉にも今度は自分がサタンを注入されてしまい、挙句にはロックに秘密がバレてしまった事で、口封じの為にギルに射殺された。
- ギル
常にサングラスをかけている男性。自動式拳銃を所持している。
ハカセを射殺後、秘密を知ったロックを始末しようとするが、「ポリーに妨害される」、「ゴアに止められた直後にBJに鉄パイプで殴り倒される」、「ロックを射殺しようとするも誤って仲間のギラを射殺してしまう」など、何かと不手際が多い。
その後、ミドリと共に脱出を図ったBJに対して銃撃を行い、止めに入ったキリコにも銃撃して重傷を負わせるが、BJが投げたメスが額に刺さり死亡。彼の死によってイカロスの亡霊は壊滅した。
- ギラ
イカロスの亡霊の紅一点で、金髪のパンクヘアーと吊り目、パープルの口紅が特徴。
ブーメランにもなるナイフを愛用しているが、ゴアの船から海へ飛び込んだBJとロックに追い討ちする際には拳銃を使用しているなど、銃の扱いにも慣れている。
ギルと共に研究所で「サタン」のサンプルを見つけた後でロックを始末しようとするが、ロックを撃ち殺そうとしたギルに誤って額を撃たれて死亡するというあっけない最期を遂げた。
関係者
- ミドリ
ロックの恋人。生物学者。
イカロスの亡霊の非メンバー(BJも「あんたは連中の仲間には見えない」と称していた)だが、ダイダロスの悪事については知っていた(グッドマンによって大学でロックと引き合わせられた事から、彼女もダイダロスと何かしら因縁があったと思われる)。
ロック達と共にイカロス島に上陸した際、ハカセによってサタンを注入されてしまうが、密かにサタンの免疫抗体が含まれていたロックから輸血をしてもらったおかげで、他の2人よりも病状が浅かった(ミドリ曰く「自分と血液型が同じだったのはロックだけだった」とのこと)。
- ポリー
ロックの相棒の小動物。外見はリスとトカゲの中間の様な姿をしている(実際、イカロス島では様々な科学実験を行われていたか、突然変異した未知の生物が数多く生息しており、ポリーもその一匹だと思われる)。
見かけは可愛らしいが、島に上陸したBJ達よりもいち早く獰猛な生物に気付いて威嚇したり、ロックを守る為にギルやゴアに飛びついたりするなど勇敢な一面も見せた。最終的にBJ、キリコ、ミドリと共に島を脱出し生還する。
- ミスター・グッドマン
イカロスの亡霊のスポンサーで、ロックとミドリ同様、ダイダロスを恨む実力者。
白いスーツに仙人を彷彿とさせる白い長髪と眉毛、髭をたくわえているのが特徴。孤児だったロックを拾い、彼とミドリを大学で引き合わせるなど、2人にとって恩人とも言える存在。
しかし、その正体は…。
以後、ネタバレ
実はダイダロスの社長・ゴアが裏で糸を引いていた事が判明(冒頭のビル爆破も、実態はゴアによる自作自演で、「サタンとそのワクチンで富を得るためにはビルなど惜しくもない」と明かした)。
更に彼は、かつてロックの両親と共にサタン開発に関わっており、ロックの両親を死に追いやったのもゴアである(ロックの両親はサタンを悪用しようとするゴアの企みに気付いており、息子のロックの体内に密かにワクチンを残した)。
そしてゴアは「ミスター・グッドマン」と名乗って孤児だったロックを引き取り、大学でミドリに引き合わせる事で、再びサタンを得ようと暗躍したのである。つまりロック達は、最初から自分達の仇とも言える相手の掌で踊らされていたのだ。
やがてゴアは船内にてロックの体内に「サタン」の免疫があると知ると、今まで自分がした事を全て話し、「一緒に世界のトップに立とう」と勧めるが、当然ロックはそれを拒否。
その後、彼はけじめを付ける為に単身で研究所に乗り込み、研究所にて「サタン」のサンプルを見つけた後に起爆装置を作動させたゴアから杖に仕込んでいたナイフで刺されたが、ロックもまたギラから奪ったブーメランナイフでゴアの胸部を刺し、両親の仇を討ったのだった(それでもゴアは辛うじて生きていたが、偶然通りかかったキリコから安楽死させられた)。
やがて致命傷を負いながらもBJの元に戻ったロックは彼に「ミドリだけでも助けてほしい」と嘆願。最後の輸血と手術によってミドリは一命を取り留めたものの、自分はもう助からないと悟ったロックはミドリに対し陰謀に巻き込んでしまった事への謝罪と「俺の分まで生きてくれ」と伝え、息を引き取った。
そして島はサタンごと跡形もなく爆破され、イカロスの亡霊は壊滅。そしてダイダロスの野望も終わりを遂げた。
ポリーと共に生還したミドリは、ロックの死を伝えたBJから「ロックはあんたの中で生きているよ」と諭され、涙を流したのだった。