概要
青森県の伝承に伝わる妖怪。
本来、イジコ(嬰児籠/エジコ)とは藁や木、竹で編んだ筒状の赤ちゃんを入れておく為の籠の事で、妖怪のイジコはこれが杉林や檜林の木の枝に真っ赤に燃え上がった姿でぶら下がるというものである。
青森県の南津軽郡浪岡町(現在の青森市)~青森市へと向かう行動の途中にある中学校の傍には、かつて沢山の木が生い茂っており、小雨の降る夜更けにそこを通ると、何処からともなく赤ん坊の張り裂ける様な泣き声が聞こえ、振り向くとアカシアの木の上から火の玉の様な姿でイジコがぶら下がり、ユラユラと揺れていたといわれている。
そのほか、ある兄弟が、とある杉林の傍を2人で馬ソリにホロを掛けて、通りかかった時に丁度浪岡町のほど近い神社に差し掛かった際に、今まで元気に歩いていた馬が突然高く嘶き、雪の中に座り込んで全く動かなくなった。
兄弟は馬ソリから降りてみると、神社の蘭の枝にイジコが炎となって燃えており、そのあまりの畏ろしさに、2人は馬を置いて一目散に逃げかえったという
また同県の南津軽郡常盤村(現在の藤崎町)では、とある家の庭には多くのヒノキが植えられていたが、その家の主人が病気になると、庭の木々が音を立てて揺れたかと思うと、庭石が唸り、真夜中になるとヒノキからイジコがぶら下がり、中で赤ん坊が泣いていたといわれ、ある人物が赤ん坊を助けようと木に上ったところ、赤ん坊は笑いかけたかと思うと、あっという間に恐ろしい形相をした化け物の姿に変わり、長くて真っ赤な舌でその人の顔を舐めたという。
この他にも庚申塚の老いた松の木、寺の梅の木、杉林、イチイ、イチョウ等といった必ず木のある場所に出没した事から、木自体と関係があると考えられており、また、一説には妖怪・釣瓶落としに近い存在ではないかとされている。