概要
原作小説
『カット&ペーストでこの世界を生きていく』とは作者:咲夜による最強スキルを手にしてしまった少年の苦悩と喜びを綴った本格ファンタジー小説。小説投稿サイト小説家になろうにて連載中。だったのだが‥‥(詳細は後述)。
ツギクルブックスより書籍版が刊行。
イラスト担当はPiNe(ぱいね)(1、2巻)、乾和音(3巻、4巻)、茶餅(5巻)、オウカ(6巻)、眠介(7巻)と頻繁に変わっている。
紆余曲折を経て第7巻で完結。
コミカライズ
集英社ヤングジャンプコミックより2018年5月30日より連載。漫画:加藤コウキ。
ダッシュエックス文庫より現在は漫画版第5巻が発売中。
ニコニコ漫画にてWEBで読める(下の外部リンク)。
原作小説と比べると、少なからずアレンジが加えられている。
あらすじ
成人を迎えると神様からスキルと呼ばれる技能を1つ~3つ得られる世界。15歳を迎えて成人したマインは、「カット&ペースト」と「鑑定・全」という2つのスキルを授かった。一見使い物にならないと思えた「カット&ペースト」が、使い方しだいで無敵のスキルになることが判明。 チートすぎるスキルを周りに隠しながら生活することに苦悩するマイン。そこへ突然王女様がやって来て、事態はあらぬ方向に進んでいく。
スキル「カット&ペースト」で成し遂げる英雄伝説、いま開幕!
登場キャラクター
マイン・フォウトゥーナ
本作の主人公。『鑑定・全』と『カット&ペースト』の2つのスキルを授かる。
幼いころに両親を亡くした、心の優しい狩人見習いの少年。
『鑑定・全』は相手のステータスを見ることができ、『カット&ペースト』は様々なものを切り張りできるという解体や修理向けのスキルだが、二つを組み合わせることで「『鑑定・全』で見た相手のステータスからスキルを『カット&ペースト』することで敵を無力化したり、カットしたスキルを自分にペーストして強化できる」ことが判明。突然チート能力を得てしまう。
アイシャとシルフィードと結婚したことで身分上は貴族となり、「フォルトゥーナ」という姓を持つようになる。
後に、亡き母ユキノが異世界(現代日本)からの転移者であることが判明している。
つまりマインは異なる世界間の住人同士のハーフとなる。
アイシャ・ローレル
本作のヒロインの一人。元B級冒険者で冒険者ギルドの名物受付嬢。「聖弓のアイシャ」の二つ名を持つ実力者で冒険者ギルドを退職してマインの伴侶となる。実は名家のしがらみから抜け出す為に家出同然に実家を出た貴族令嬢でもある。
シルフィード・オーガスタ
本作のヒロインの一人。オーガスタ王国の第一王女。愛称はシルフィ。常に冷静さを保っている美少女で「姫騎士」の二つ名を持ち、後にアイシャと共にマインの伴侶となる。
なお彼女の母親であるガーネット王妃はマインの母ユキノの親友でユキノ同様に異世界(現代日本)からの転移者であり、シルフィを含むガーネット王妃とファーレン国王との間に生まれた子供達は全員マイン同様に異なる世界間の住人同士のハーフとなる。
アルト・オーガスタ
オーガスタ王国第一王子でシルフィの兄。かなりのシスコンだが凄腕の剣士。
シルフィと結婚するマインを見定めるために模擬戦を挑み、レベルやスキルではるかに上のはずのマインを実戦経験の差だけで圧倒した。それでも最後まで諦めなかったマインを義弟と認め、武術の師となる。彼もまたファーレン国王とガーネット王妃との間に生まれた子供のであるため、異世界間の混血児となる。
フランツ・ワークス
オーガスタ王国、第一騎士団の団長。ある任務のため、第一騎士団から国王直属の近衛騎士となる。
わっふる
神獣フェンリルの子供。好奇心旺盛で、人の頭の上に登るクセがある。マインに命を助けられる。名前の由来は鳴き声が「わふー」だから。
訃報と事実上の打ち切り、そして……
なろうでの連載中に咲夜氏が脳出血で倒れ、長期休載を余儀なくされてしまい、退院後も体に麻痺が残り、長期療養のために不定期更新となっていた。
咲夜氏はそのような状況でも連載を続けていたが、病気の後遺症によるものか、誤字脱字が増え、それをきっかけとした誹謗中傷も多く、特に後者に咲夜氏も心を痛めており、2018年末にしばらく休載することをなろうで公表。その後、2019年1月に3月をめどに連載再開すると発表していた。
しかし、連載が再開することはなかった。
同年2月、ツギクルブックス及びダッシュエックス文庫から、
という発表があり、作中での伏線の多くが残されたまま未完となってしまった。
小説家になろう投稿作品をはじめとするネット小説の中には誹謗中傷を受けるものも少なくはないが、本作は作者が病気に苦しみながらもなんとか続けていた作品であり、上記の通り心無い言葉に傷つきながらももう一度再開しようとした矢先でのご不幸による事実上の打ち切りというあまりにも悲しい幕切れとなってしまった。
※死因に関しても、公式発表では明言されておらず、おそらく後遺症の悪化と思われるが、発表直後には一部ファンからは「誹謗中傷を苦にしての自殺ではないか?」という説を述べる人もいた。
願わくば、このような結末を迎える作品が今後少しでも減っていくことを祈るばかりである。
まさかの復活
書籍版については5巻発売時点で連載のストックはまだ残っているので続刊の可能性は残っていたが、今後続刊が出るか打ち切りになるかの公式発表は一切されておらず、4巻及び5巻にあとがきや「お知らせ」的な記載もないため不明のままとなっていた。
それからしばらくは続報はなかったが、2020年にツギクルブックス編集部から
「遺族に確認のもと、残された原稿と生前話されていた内容をもとに続巻の刊行を決定」
と発表とともに6巻が刊行された。
6巻以降はツギクルで刊行されている金貨1枚で変わる冒険者生活の作者である天野ハザマ氏が引き継ぐことになり、2021年3月に刊行された7巻で完結した。
これにより、著者は咲夜氏と天野氏の連名になっている。
なお、6巻あとがきによると、「皆の納得のいく形で送り出せたのか」と悩む天野氏にツギクル側から名前を伏せることも提案されたが、話を受けた以上は堂々と名乗ることにしたとのこと。
一方のコミカライズの方は加藤氏が咲夜氏の逝去後に「完結を目指して連載していく」とのコメントを出しており、ストーリーや設定などにアレンジを加えながら連載を継続している。
関連タグ
風の聖痕 ゼロの使い魔 レイン‥‥本作と同様に完結前に作者が病死し未完となったライトノベルの一例。
ただし、ゼロの使い魔は作者が遺したプロットをもとに他の作家が引き継いで完結という本作に似た経緯をたどっている。
※一応記すが、ゼロ使にせよ本作にせよ、このような形で未完のライトノベルが復活するというのは
- 原作者の生前の遺志か遺族の意向
- 原稿やプロットが残されているか
- 引き継いだ作家が作風を壊さないか
- 何より復活を望む読者の声
などと越えるべきハードルが多いため、かなりのレアケースである。