サモンナイトU:X
さもんないとゆーくろす
サモンナイトシリーズの一つである小説作品。全6巻で完結。
著者は同シリーズのメインシナリオライターでもある都月景(狩)。イラストは飯塚武史(表紙・ピンナップ)および和狸ナオ(挿絵)。
本作とほぼ同時期にリリースされた「サモンナイト5」は「サモンナイト4」から約300年が経過しているが、その間にリィンバウムとそれを囲む世界のありよう、及び召喚術の理や召喚獣の扱いが大きく様変わりしている。
この作品ではその大きな変革の契機となり、『5』では断片的な事項と大まかな経緯が語られるのみにとどまった、上記の6つの世界を壊滅寸前にまで追い込んだ「狂界戦争」の真相を描く。
この性質上、外伝含む歴代シリーズキャラクターが多数登場し、時系列としては『4』本編終了後の約2年後。
名もなき世界の那岐宮市に住む高校二年生の望月命(ミコト)は、両親を早くに亡くし、叔父望月戒(カイ)と二人暮らし。
ある日、高台の公園で偶然見つけた「門(ゲート)」から異世界リィンバウムに足を踏み入れ、以後週末は毎週のようにリィンバウムを訪れていた。
しかしある時、成り行きから帝国軍と戦う事になり、本格的にリィンバウムに居つくようになってしまう。その中でミコトは自身がリィンバウムで生まれた者であり、制錬石を収納する器として造られた人造生命体『制錬者(ストレイジャー)』である事、亡魂を操り、憑依させて彼らが生前備えていた特性や知識を行使できる『追想』の力を持っている事を知る。
時を同じくして、亡魂に新たな肉体を与え蘇らせる『再誕』の力を持つ、もう一人の制錬者レイによって、かつて誓約者(リンカー)や超律者(ロウラー)に倒されたはずの仇敵が次々に甦っていた。再誕した彼らを従え、政変により皇帝を幽閉し摂政を処刑して帝国を掌握したレイは救世皇帝を名乗り、世界の覇権を手に入れるべくリィンバウム全土に宣戦を布告、後の世において『狂界戦争』と呼ばれる戦いが幕を開ける。
- 望月命(ミコト)
本作の主人公。両親を早くに亡くし叔父と二人で暮らす平凡な高校生。ハヤトと同じ学校の一年後輩。ケルト音楽を好んでいつもヘッドホンを付けて聴いている。なぜか過去の記憶が一切なく、いつも不安と違和感を抱いている。交流もほとんどなく、無愛想な性格。
偶然からリィンバウムに足を踏み入れ、その中で自身が『追想』の力を持つ制錬者だと知り、壮大な戦いに関わっていき、戦力的にも人間的にも大きく成長していく。右手に制錬石が埋め込まれており、制御籠手もそちらに着ける。
- 望月戒(カイ)/カイロス・ウォルバング
ミコトの叔父で、翻訳家。どこか他人行儀。
その正体はリィンバウムから名も無き世界に渡った機属性召喚師で、二人の制錬者(ミコトとレイ)の父親側の遺伝子提供者。かつて恋仲であったシャマードと共に制錬者達を造り出したが、彼女の歪んだ思想に付いていけなくなり、研究施設の事故に乗じて幼いミコトを連れ去り名も無き世界に逃亡していた。以降は贖罪の為平穏にミコトを育てていたが、ミコトが能力を暴走させ、名も無き世界でワイヴァーンを召喚させてしまったのを見て、公園に埋めて置いた制御籠手を託す。
- シャリマ/シャマード・リッツァー
知的好奇心旺盛な女性。リィンバウムに迷い込んで来たミコトの事情を知り、彼の為に色々と手助けしてくれた恩師にして診療所の院長。
しかしそれは表の顔で、裏の顔は制錬者達を造り出した霊属性召喚師にして母親側の遺伝子提供者。忌まわしいものとして破棄されたはずの召喚兵器(ゲイル)に改造を加えるなど常軌を逸した天才。倫理観や良心が欠如しており(いわゆるサイコパス)、己の理想や知的好奇心のためなら他者だけでなく自分自身も道具にすることも躊躇わないマッドサイエンティスト。
- デュウ
制錬者達よりも先に、シャリマによって生体兵器として造られた幼い少女。ミコトの命の恩人であり、友達でもある。右目に眼帯がされているが、その下には移植式魔眼兵器が埋め込まれており、光線を放ったりする事ができる。
シャリマに使役されて後継作(弟)のミコトと敵対するが、二人の間で板挟みになり、最終的にミコトを庇って落命。死した後はミコトの願いにより『追想』の力によって彼の守護霊として行動を共にしている。
- レイ
政変によって帝国を掌握し、救世皇帝を名乗る青年。ミコトと対になる器として造られたもう一人の制錬者であり、亡魂に新たな肉体を与える『再誕』の力を持つ。ミコトとは対照的に左手に制錬石と制御籠手がある。
シャリマや蘇らせた歴代主人公の仇敵を使い、何かを目論んでいるようだ。
- 狂界戦争(きょうかいせんそう)
リィンバウム・ロレイラル・シルターン・サプレス・メイトルパ・名も無き世界の6つの異世界を壊滅寸前にまで追い込んだ大戦争。レイが「救世皇帝」となった際、旧王国・聖王国に宣戦布告を宣言した事で勃発した。『5』の時代ではおとぎ話のような形で語られている。
『4』までの各世界が抱えていた問題が一斉に爆発した結果とも言え、伝聞によればこの戦争により全ての種族はあわや滅亡が避けられない程の大打撃を受け、エルゴの庇護とも袂を分かつ事になった模様。
以降リィンバウムの結界は取り払われ、四界とは一部で繋がり、自由かつ対等な立場で往来が可能になった。後世ではこれを「響融化」(アストレイズ)と呼ぶ。これにより結界を超えて発動するそれまでの召喚術(後世では「服従召喚」と呼ばれる)は使用できなくなり、召喚する者とされる者が対等の立場で「響友(クロス)」あるいは「召喚盟友(サモンクラスタ)」となる誓約を結び発動する「響命召喚」が召喚術のスタンダードとなった。
- 制錬者(ストレイジャー)
制錬石を宿した者の呼称。「制錬石の器」とも言われる。亡魂を操る力を得る。カイとシャリマによって創造された人造生命体。ミコトは「追想の制錬者」、レイは「再誕の制錬者」と呼ばれる。
- 亡魂
リィンバウムとそれを囲む四界において、転生の輪(魂の輪廻)から外れ、ただ世界を彷徨うだけの存在。制錬者は手に埋め込まれた制錬石を用いる事でこれらを操れる。
- 制錬石(せいれんせき)
制錬者の手に埋め込まれている宝石。『1』での魔王召喚の儀式で砕け散ってしまったサプレスの「エルゴの欠片」を、シャリマが儀式跡にて執念深く拾い集め、様々な方法で加工して生み出した。死者・亡魂にまつわる事柄を改変・操作する能力がある。ミコトの石は紺瑠璃色、レイの石は赤紫色。
- 制御籠手
制錬石が埋め込まれている手に装着する事によってその力を制御し、より強力な力を発揮する事が出来る道具。ミコトの場合は籠手そのものが変化する事もある。
- 影法師(ズィルウ)
「再誕の制錬者」レイの「再誕」の力で、力の低い亡魂が仮初の肉体を与えられ、半分実体化した状態。
「サモンナイト6」にも同名の用語が登場しているが、こちらとは無関係。
幕間 -Dies Irae- - (Web限定公開の短編)
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