概要
モンスターハンターの世界にて、かつて栄えたとされる「シュレイド王国」に築かれた巨大な王城の遺跡。同国の象徴でもあったと言われている。
往時のシュレイドは現在では「西シュレイド」「東シュレイド」と呼ばれる二大国を統括していた巨大国家であり、栄華を極めていた。
しかしその末期には「謎の大混乱」を迎え、王国は滅亡してしまったと言われている。
加えて現在ではシュレイド城を含めた王都の全てが完全な廃墟と化しており、過去の栄華は微塵も感じられない。
無人の廃城と化したシュレイド城の一帯は、怪しい雲と霧、異様に重苦しい空気がいつまでも立ち込める異様な状態であり、
その空は常に赤黒く、まるでこの世の終焉を示すかのようである。
時に空が晴れ渡ることもあるが、その際は皆既日食と重なるように、大空に黒い異空間への入り口が現れるという異常としか言いようのない現象が確認される。
これらの現象と、王国の「謎の大混乱」についての関係は現状定かではないが、
事実として一帯は立入禁止区域に指定されており、人はおろか動物や飛竜種などのモンスター、果ては古龍たちですら近づこうとしない。
ハンター稼業のまとめ役でもある組織、『ハンターズギルド』は過去に腕の立つハンターを寄りすぐってはこのシュレイド城の調査を依頼したが、
派遣した者の多くはそれを最後に行方不明となってしまったらしい。
一方でかの城で凄惨極まる何か恐ろしい目に遭い、命からがら逃げ帰ってきた者もわずかに居たが、
彼らは恐怖のあまりか、自身の体験した出来事を一切話そうとはしなかったという。
噂では、まるでおとぎ話の龍(ドラゴン)が具現化したかのような、謎めいた恐ろしい存在がかの城に棲みついているという。
他の古龍をも圧倒する凄まじい力を秘め、シュレイド王国に滅亡をもたらした張本人であるとも言われるこの「ドラゴン」は、
やがて
『運命の戦争』、
『運命を解き放つ者』、
『運命の始まり』、
あるいはそれらの意味を包括したモノを表す、とある古い言葉を以てこう呼ばれるようになった。
『黒龍』ミラボレアス、と。
説明
モンスターハンターシリーズの裏ボス、『黒龍』ミラボレアス専用のステージとして登場するフィールド。
「誰も立ち入ったことがない」「立ち入って帰ってきた人は発狂するか引きこもる」というようにほとんど詳細が語られず、ゲーム中で侵入できてもそれについて語られることはない、まるで裏設定のように異物感のあるステージ。
上記のおどろおどろしい設定に違わない、不気味な空模様の廃城である。
フィールド概要
どの作品でも共通してベースキャンプから戦闘エリアへの一方通行である決戦場タイプのフィールドであり、またバリスタや大砲などの攻撃用設備が存在し、さらにはパイルバンカーの要領でモンスターに巨大な杭を撃ち込む強力な設備「撃龍槍」が配置されているのが特徴。
フィールドそのものの外観はシリーズ毎に違いが有り、現在までに3つの異なるマップが使われている。特に決戦の舞台となる戦闘エリアについては、マップによって造形が大きく変わっている。
- 初代「モンスターハンター」から「モンスターハンター2G」までは不気味な空模様に赤く照らされる、城壁で囲われた広大な広場のようなエリア。中央に大きな城門があり、スイッチで鉄柵を下ろすことでその下にいるミラボレアスを挟み込み、短時間拘束できるギミックが存在している。
- 「モンスターハンター4」から「モンスターハンターXX」では西側にバリスタ、大砲などの設備が並んだ戦闘区画のような廃墟の一角。ジャンプ攻撃に対応する段差のある足場や、壊れるまでは一部の攻撃を凌げる柱状のオブジェ等が存在している。
- 「モンスターハンターワールド:アイスボーン」では上記2バージョンの要素を取り入れつつ、独自のギミックも採用した新しいマップが用いられた。詳しくは後述。
設定上、プレイヤーが立ち入っているのはごく一部の区域だけらしい。これら3つのフィールドは設定変更で姿を変えた同一の場所ではなく、広大なシュレイド城のそれぞれ異なったエリアであると考えていいだろう。
ベースキャンプは城内に設けられ、武器庫のような外観で戦闘エリアとは一方通行の通路で繋がっている。王国が健在な時代のものであろうか、錆びついた武器や未だ稼働している撃龍槍が背景として描写されている事も。
『MHW:I』では城の外周を囲むように建てられた石造りの塔、そのうちの一つにベースキャンプが整備されている。今回は調査団と王国の共同戦線であるためか、キャンプ周辺が過去作以上に急拵えとはいえ整備されているのが特徴。特別任務「黒龍ミラボレアス」ではミラボレアスを観察する調査団のメンバーや「将軍」、防衛隊の兵士たちの滞在している姿も描かれた。
今回は物理的に大きく離れた場所にキャンプがあるため、ミラボレアスのいる決戦場には調査団独自の移動手段、翼竜メルノスを用いた移動方法が採用されている。プレイヤーはエリアをゆっくりと回り込むようにして、上空から戦闘エリアに降り立つ。
MHW:I
『MHW:I』の最終アップデートにて、『黒龍』ミラボレアスともども実装。満を持して、なんとストーリー込みで触れられることになった。
作中ストーリーの時点で「ある日を境に一夜で滅んでからずっと立ち入り禁止になった」「それから何千年単位で人の出入りを封じてるがこの度本格的な調査に入る」ということになっているため、過去作におけるプレイヤーの立ち入りなどはギルドの管轄外の出来事か、あるいは黙認されたものと思われる。
戦闘エリアの概形は崩落した巨大な城の残骸を背後にした、無数の瓦礫や狩猟設備が点在する城門前の広場のような形状。設備の種類やレイアウトは『4』を思わせるものに近いが、不気味な空模様に赤紫色に照らされる石畳といった視覚効果は初代〜『2G』のものを思わせ、以前は確認されていなかった新たな設備も加わった独自のものとなっている。
長年野晒しにされていたはずだが、明らかに壊れていないバリスタや大砲は問題なく使用可能。整備を要するが稼働すれば致命打を与えられるお馴染みの「撃龍槍」はもちろん、新たに「移動式速射バリスタ」や、黒龍の大技を防ぎ切る「防護壁」が設置されているなど、当時のシュレイド王国が持つ絶大な技術力が改めて描写された。
一方でこうした迎撃設備を充実させたにもかかわらず、さらにその上にはそれらの設備を防ぐような配置で、急ごしらえの防壁が建造している。そのため、一部設備については戦闘の進行でミラボレアスがそれら防壁を焼き払ってしまうまでは使えない。
- 作中では特に触れられないが、そもそも上記の「防護壁」でさえ防壁部分には扉大の開閉部らしいディテールが見受けられ、元から防衛装備として造られたものではない事がうかがえる。戦闘エリアの下には城内へ続く一本の通路が通っているのだが、もともとここを仕切る門戸だったものを転用し、防衛目的で無理やり上へ引っ張り出す改造がされたものと思しい。
シュレイドの民は優れた攻撃手段に恵まれていたのにもかかわらず「迎撃」ではなく「防戦」を選んだ……否、「防戦」を選ばざるを得なかった形跡があることを調査チームは疑問視する。
そして主人公との戦いで黒龍が見せつけた絶望的なまでの強大さは、往時のシュレイドが圧倒的な国力を持ちながら徹底抗戦を諦めた、その理由をまざまざとプレイヤーに見せつける事となった。
余談
旧シュレイド王国が黒龍によって滅ぼされるに至った理由や、ミラボレアスがなぜかの城に棲み着くようになったのかについては、今なお公式からの明確な情報はなく、依然謎に包まれている。
ボツ案も含め、細かい背景設定まで比較的ユーザーへ明示する傾向が強い「モンスターハンター」という作品においては珍しい事だが、これは「ミラボレアス」というモンスターそのものが背景情報をトップシークレットとする、所謂『禁忌の古龍』として特別な扱いを受けていた影響が大きいだろう。
謎多きシュレイド城の滅亡については、ファンの間でも様々な考察が生まれている。
- シリーズ初期に語られたとある古い世界観設定に絡めた発想で、「繁栄とともに自然への畏敬を忘れて増長してゆき、ついには生態系に悪影響ををもたらすような技術にまで手を出した事がきっかけで禁忌の古龍を呼び寄せたのではないか?」という説が、有力なものの一つとして語られている。
- この設定にまつわる「竜大戦」は作中よりはるか昔、乱獲に怒り狂ったモンスターと人類の間で繰り広げられた壮絶な絶滅戦争であったらしい。あくまで初期の世界観であり、現行の「モンスターハンター」の世界に沿ったものではないとして今は没になったそうだが……武具やアイテム、一部フィールドの情景には、太古の発掘物ながら近未来的な工学技術を思わせる物品が度々登場しているのも、また事実である。
- 世界観としてのハンター業はあくまで自然界のバランスが保たれる範囲での狩猟を心がける存在でもあり、ハンターズギルドの管理外での乱獲や密猟、その他生態系を大きく乱すような行いは重罪として厳しく取り締まられている。その対比として見るならば、かつてのシュレイドが栄華を誇りながらも自然との調和を蔑ろにした結果、滅びの道を辿った……という筋書きは、ハンター達のあり方を肯定するものとして大いにありうるだろう。
- あるいは黒龍の出現はまったくの偶然であって、かつてのシュレイド王国の繁栄に落ち度があったかどうかは、さほど重要ではないのかもしれない。善人だろうが悪人だろうが、災害に巻き込まれれば誰だって命の危険があるように……シュレイド城はそこにいた人々の思想や善悪に関係なく、ひとえに黒龍の気まぐれで滅ぼされたのかもしれない。
- 公式書籍において、ミラボレアスは強大な存在ではあっても破壊を目的として生きている訳ではない、とされた。むしろその行動原理は理解不能であり……ある日突然に現れては一日で姿を消す、文字通りの神出鬼没な存在だと語られている。「人類への断罪者」というミラボレアス像は、あくまで人間側から見た時の主観的なイメージの一つにすぎないのだろう。
- 「一匹の龍が気に入った場所にねぐらを作ろうと思い立ち、そこに暮らしていた小さく邪魔な生き物たち――人間を邪魔だからと追い払った。その様子が凄まじかったので人間たちは龍を半ば神格化するほどに恐れ、ついには「運命の戦争」などと大層な意味を持った名まで与えてしまった」……シュレイド滅亡にまつわる真実は、案外そういったシンプルなものなのかもしれない。