同名のボーイズラブゲームは「ダブルクロス(BL)」を参照。
概要
昨日と同じ今日、今日と同じ明日。世界は繰り返し時を刻み、変わらないように見えた。
――だが、世界はすでに変貌していた――。
ダブルクロスは、株式会社F.E.A.R.制作のTRPGシステム。通称DX。
2001年発売の初版から2度の版上げを経て、現在は3rdエディションが好評発売中である。
デザイナーは矢野俊策。
いわゆる現代超能力バトルを行うのに大変便利な世界観と設定を持っており、特殊能力をかなり自由に組み合わせて幅広いキャラクターを作れる事から、プレイしやすく、スタンダードな現代モノのTRPGの一つとして認知されている。
また、文庫のTRPGリプレイが多く刊行されて人気となった事もあり、日本TRPG冬の時代を終焉させる一翼を担ったと言える。現在でも版上げによるバージョンアップやサプリメントの追加、リプレイの発売などが行われているメジャー・タイトルの一つ。
設定
今よりほんの少し進んだ近未来の現代社会が舞台。
ある事件により、レネゲイド(背教者という意味。”自然の摂理に背いている”ことから名付けられた。)と呼ばれる未知のウィルスが蔓延した世界で、人外の超能力を得た超人オーヴァードとなってしまったプレイヤー達が自らの帰るべき”日常”を守る為に戦う姿を描いた現代異能もの。
守るべき日常の象徴として他者との絆を表すロイスと、ロイスを喪失することで変化し、昇華された際に強い力の源となるタイタスという2つのコネクション概念によって作品テーマが表現される。
力を使えば使うほど、他者との絆を失えば失うほど、日常には戻り難くなる(=ゲーム的な死=キャラクターロスト)構造になっている。
シンドロームとブリード
オーヴァードは扱う能力の系統によって13種類のシンドロームに分類される。
プレイヤーはそのうち1つから3つまでを組み合わせてブリードを決定し、キャラの能力やイメージを形作る。
ブリード
2つのシンドロームを合わせ持った基本形となる「クロスブリード」、
シンドロ-ムを1つだけにすることで能力の幅は狭いがその分特化した性能を持つ「ピュアブリード」、
オプションとして3つ目のシンドロームを選択し、汎用性に優れた(器用貧乏でもあるが)「トライブリード」の三種類がある。
シンドローム
初版でのシンドロームは9種類。その後初のサプリメント「デモンズ・シティ」でオルクスが、更に2ndでモルフェウスとバロールが、3rdのサプリメント『インフィニティコード』でウロボロスが追加され、現在は計13種類となった。
エンジェルハイロウ
光を操る能力。感覚に優れ、光の屈折率を変えて姿を消したり、レーザーによる攻撃も可能。
名前の由来は「天使の輪」。
ブラックドッグ
電気を操る能力。電撃や磁力操作の他、電気信号の制御により機械の操作にも優れ、
機械の身体を持ったサイボーグなキャラクターを作ることもできる。
名前の由来は雷を纏うと言われる空想上の魔物から。
ブラム=ストーカー
血液を主とした体液を操る能力。別に吸血鬼になるわけではない。
己の血から武器を作り出す、血(HP)を消費して攻撃力を上げる、敵の血(HP)を吸収することなどが可能。
また、「従者」と呼ばれるキャラクターを作り出すこともできる。
名前の由来は吸血鬼『ドラキュラ』の作者から。
キュマイラ
肉体を強化する能力。筋力を増強してケタ外れの怪力を発揮したり、鉤爪を生やしたり、皮膚を硬化させたり、
絶大な力を持つ獣人に変身したりできる。
名前の由来はギリシャ神話に登場する架空の幻獣キマイラから。
エグザイル
肉体を変化させる能力。キュマイラが「剛」ならこちらは「柔」。
体を伸縮自在に柔らかくしたり、自身の姿そのものを作り変えたり、液体状になることも可能。
名前の由来は日本神話においてその異形から追放された神、ヒルコから転じ、追放者=Exileの名が付けられた。
ハヌマーン
神経速度の強化と、それに伴う細胞の高速伸縮から起こる「振動」を操る能力。
加速した神経によって超スピードの行動が可能になり、スピーディかつアクロバティックな戦闘を得意とする。
また、振動=音を操ることで、超音波攻撃も可能。
名前の由来はインド神話における神獣ハヌマーンから。
サラマンダー
熱を操る能力。高熱や炎の攻撃に加え、負(マイナス)の熱=冷気や氷も操る。
名前の由来は炎の精霊である火蜥蜴、サラマンダーから。
ノイマン
脳、及び思考能力の強化。平たく言うと天才になる。
味方に的確な指示を飛ばしてサポートしたり、思考制御によって精密な射撃や機械のように的確な行動が可能になる。
名前の由来はノイマン型コンピュータで有名な数学者から。
ソラリス
体内で化学物質を精製する能力。毒による攻撃や、薬による味方の強化・回復が主なサポート型だが、
幻覚物質を操ることで、全シンドローム中唯一の精神攻撃が行える。
名前の由来は登場人物たちが奇妙な幻覚に襲われるSF映画『惑星ソラリス』から。
オルクス
「領域」を操作するという特異な能力。
周囲の空間に自身の「因子」を組み込むことで一定の範囲内のあらゆる物を意のままに操ることができる。
主に地形や植物、動物、そして人間などを操るエフェクトを使う。
「場」を支配するという能力からサポートを得意とする。
名前の由来はローマ神話の冥府の王『オルクス』から。
モルフェウス
物質練成能力。質量保存の法則を無視して、身の回りの物から武器や防具、乗り物などを作り出せる。
また、錬成の過程で生み出される砂を操って戦うことも可能。
名前の由来はギリシャ神話の夢と変化を司る神『モルフェウス』から。
バロール
魔眼と呼ばれる黒い球体を媒介に重力を操る能力。
自分の身を軽くしたり、敵の動きを遅くしたり、小型のブラックホールや斥力による障壁を生み出したりと攻防に優れる。
また、ほんの少しだけ時間を操ることも可能。
名前の由来は見たものを死に至らしめる「邪眼(魔眼)」を持つというケルト神話の魔神、『バロール』から。
ウロボロス
小説版にてその存在を仄めかされ、2010年9月発売のサプリメント『インフィニティコード』にて正式に追加された十三番目のシンドローム。他のシンドロームを「喰らって」その力を吸収する。
データ的には他のシンドロームのエフェクトのコピー&アレンジ能力の他、敵にダメージを与えることで発動する自己強化など。
また、「影」を操る能力もある。
名前の由来はギリシャ語で「尾を飲み込む蛇」を意味する象徴『ウロボロスの蛇』から。