(お、俺はとんでもない誰かと、間違われたんだっ!!……)
概要
『ゴルゴ13』の登場キャラ。トップ画像左側の人物。
登場したのはエピソード「間違われた男」であり、一話限りのゲストキャラであるが、エピソード自体の特異性と、本人の何とも憎めないキャラからそれなりの知名度を誇る。
このエピソードはまさに題名通り、スラップスティックコメディの定番である「間違われた男」モノ(主人公がそっくりの誰かと間違われ、間違いを訂正できないままドタバタになる)だが、間違われた対象がよりによってゴルゴであることから、本作の中でも極めて珍しい「ギャグ回」となっている。
エピソードは、見た目がそれなりにゴルゴに似た電動工具の腕利きセールスマン、トニー・トウゴウが商談相手との待ち合わせ場所に到着したところから始まる。
ほどなく現れた商談相手の車に乗り込み、上機嫌で雑談に応じるトニーだが……
実はこの「商談相手」は、同じ場所でデューク・東郷と待ち合わせをしていたギャングだったのである。ゴルゴよりわずかに早く待ち合わせ場所に辿り着いたトニーを「少し早いが」と、本人と勘違いしてしまったのだった。
しかもこのギャング、早とちりな上に本物について詳しくなかったようで、微妙にズレたトニーの受け答えを「さすがゴルゴ13だ」と全て好意的に解釈してしまう。
そしてトニーのほうも噛み合わない部分を営業マンらしい調子の良さで流してしまうので、双方間違いに気づかないまま話が進んでいくが、やがて殺しのターゲットについての具体的な話を始められた段階で、流石にトニーが間違いに気づく。
その際、彼が内心で発したのが記事冒頭のセリフである。
とはいえ、周りは自分を「凄腕の殺し屋」と信じて疑わないギャングたち。今さら「人違いです」などと言えるはずもない。逃げようと機会をうかがうも失敗したトニーは、ついに覚悟をかためてターゲットとその護衛たちに向け、マトモに当たるはずもない銃を乱射する……のだが。
その銃声に紛れて発射された一発の銃弾が、見事にターゲットの眉間を貫く。
トニーの射撃ではあり得ない位置からの銃撃に護衛たちが混乱するなか、依頼主のギャングの手引きで脱出したトニーは、狐につままれた顔でギャングからの称賛を受けるのだった……
余談
- トニーはどうなったのか
物語は上記のシーンで終わっているが、ゴルゴの流儀では「不測の事態で巻き込んだ者」や「仕事の手伝いをさせた者」には十分以上の補償や報酬を支払うため、彼にも多額の迷惑料が振り込まれたものと推測される。
覚えの無い大金の振り込みに目を白黒させるトニーの姿を想像してみるのも良いだろう。
ちなみにゴルゴの有名なマイルールの一つに「自分の偽物の存在」を(たとえ悪意でなくとも)決して許さない、というものがあるが、トニーの場合は「生まれつきの顔」であり、ゴルゴの事を知るわけもなく、そもそもが「そのせいで巻き込まれた純然たる被害者」であるため、特に問題とはしなかったと思われる。
このため「ゴルゴにそっくりな人物」が登場すると大抵はその人物が死亡する(あるいは既に死亡していた)話になるなか、珍しく幸運だった「ゴルゴのそっくりさん」である。
- 思惑通り?
トニーがこの事件に巻き込まれたのは偶然であるが、ゴルゴはこれを「止むを得ず」というよりも、むしろこれ幸いと利用した、と思われるフシがある。
というのも依頼主(の手下)であるギャングは「ボスの命令だから」と終始ゴルゴ(と間違えたトニー)につきまとい、宿泊先をあらかじめ手配しておく、女をあてがう、仕事のやり方を指図する、使用する武器を用意するなど散々にお節介を焼いている。彼らからすれば純然たる好意、世界一のプロへの敬意の表れであっても、こういった扱いをする相手がゴルゴの流儀とまったく沿わないのは明らかである。
(実際、上記の”もてなし“のいずれも、ゴルゴ本人が類似のシチュエーションになった時には取り付くシマもない塩対応で断っている)
依頼人の身辺調査は怠らないゴルゴであるから、事前にこのギャングたちを「現地のサポート要員としては信頼できない」と断じていたとも考えられ、そこに現れたトニーの存在をタナボタとしてお荷物となるギャング達の「世話」を押し付けた、とみる事も出来る。