ナイト・オブ・ザ・ラウンドテーブル
ないとおぶざらうんどてーぶる
誕生まで
現生人類よりはるか昔、遥かに高い文明を持った「真の人間」たる「真人」が栄えていた時代があった。
しかしその文明は、使い手の精神を蝕む混沌の力を持ったクリスタルによってもたらされた。
混沌の力はついに世界全土を飲み込むまでになり、神は自身の力と引き換えに混沌の力を押し戻し、その際にクリスタル使用地域である真人たちの居住区域も破壊され、多くの真人たちが死亡した。
そんな真人たちの中に、「ここで死んでたまるものか」という執念で、生き延びようとした者たちがいた。
彼らは、混沌に蝕まれた真人たちが作った呪われし施設「七大驚異」の1つ、「タルファ・パラサレオ(現:ファロスの地下迷宮)」に立てこもり、自分たちにある術を施す。
その術とは、自らをアンデッドとするものだった。
しかも単なるアンデッドとは異なり、ファロスの地下迷宮そのものを、自分たちの命の本体にした。
この迷宮は、混沌に蝕まれた真人が作ったものだけに、混沌の力を無尽蔵に抽出できるものであり、それを自分たちの生命力にしている以上、無尽蔵の生命力を持つ不滅の存在になれる。ただし、その代わりに彼らはここから出られなくなってしまった。
活動と代償
こうして破壊から生き延びた彼らは、目論見どおりにアンデッドの頭目になったが、イスカンダールの時代にある事件が起こる。
イスカンダールはモンスター溢れる世界を平定して人間が住みやすい世界に変える戦いをしていた。そしてイスカンダールが目をつけていたのが、龍族とアンデッド族であったため、彼らもその標的だった。
無尽蔵の生命力を持てる彼らに怖いものなどないはずだったが、イスカンダールは驚くべき方法で対処を図ってきた。イスカンダールの仲間の魔術士アリス・アンブローシアによって、迷宮そのものが魔力制御され、力を迷宮内部に封印されてしまい、外にいる無数のアンデッドたちを支配できなくなった。
そればかりか、迷宮に流れ込む生命力が、ほんの少しではあるが、徐々に徐々に減り始めた——それは、無限の時間を生き延びようとする彼らにとって、それは間違いなく「いつか訪れる死」であり「決して放置してはならないもの」。
アリスの魔力は非常に高く、封印バランスも完璧であった。数百年経過しても制御が崩れることはなく、時を追うごとに死への恐怖にさいなまれ——
ついに、彼ら12人のうち1人がしびれを切らした。
自分の身に危険が及ぶこともいとわない、強引な封印破壊。これにより、封印のバランスは崩れ始め、再び迷宮の外にいるアンデッドを支配できるようになった。
だが、その代償は、あまりにも大きすぎた。本来ならばとっくに寿命が尽きていた時期をはるか通り越して生きてきた彼らは、生命力が一定以下になると存在が崩壊する。
すなわち魂そのものが破壊され、文字通り存在自体が消滅した。
死との戦い
メンバーの1人を文字通り永遠に失った彼らは、1つの事実を知ることになった。
無尽蔵のはずの生命力も、外部からの干渉によって尽きる可能性があるということ。
そして生命力が尽きてしまったら、失った1人と同じ運命を辿るということ。
そこで、彼らは次の手を考え始めた。それは、生命力を抽出する手段をもっと多く用意することだった。
イスカンダールによって倒された龍族の始祖「ドラコ・アルケイオス」の心臓が、イスカンダールによって分割・封印されている。アンデッドたちにとっては本来苦手なエネルギーだったが、特殊な方法で加工することにより、アンデッドにも取り込める力となる。この心臓を収集すれば、生命エネルギーの補充は当分安心だろう。
また、長い命を求めて吸血鬼の力を求めてきた老人クライド・ブラックストームからは、その魔力エネルギーを生命力の維持に利用できると考えた。
こうして生き延びることを目的にいっそうの活動をする彼らだったが、自分たちが存在するためだけの目的で世界中から生命を吸い尽くすことも厭わないありようは、ファロスの地下迷宮に「混沌の本体」とも呼ぶべきカオス・ルーラーが出てくるには十分な動機だった。
人間がこの先、生き延びるためにはカオス・ルーラーの出現を食い止めなければならない。だが彼らを倒すには、エネルギー源を同じ真人によって遮断する必要がある。
真人はすでに大多数が滅んでいるので、探すのは困難を極めた。しかし、奇跡的な生き残りである銀の少女がパーティに加われば、不可能が可能になる。そして銀の少女がいれば戦いを挑めるようになり、戦いの火蓋は切って落とされ、その末に銀の少女の手で生命力を断たれて完全消滅するに至る。
ちなみに彼らは、当時のことをまったく覚えていない模様(たとえば「滅びし神とは何者?」と訊いてくる)。唯一、同じ真人である銀の少女を見た時に、漠然とした懐かしさをかろうじて感じた程度(それでも「なぜか懐かしい」という反応で、具体的にはやっぱり何も覚えていない)。施術した時点で、生きる執着以外の全てが希薄なものとなっていたようだ。
ほかの人間たちを見ても「生気吸い尽くしてくれよう」と言うなど、もはや、ほかの存在を「奪い取りたい生命力」としてしか認識していない。つまり、もともとの自我は完全に吹っ飛んでいる。生き延びようとしたら自我が吹っ飛んで完全消滅と隣り合わせになったのは、なんとも皮肉なもの。消滅していようがいまいが、もはや手遅れである。
11人のうち10人が順番に戦いを挑んでくる連続バトル。
それは、休む間もなく次々と襲ってくるボスラッシュそのものである。単にそれだけならいいのだが、残った最後の1人が残りの10人の怨念を集めて「ファントム」に強化され、異様なLP攻撃力を持つ「ブラッドソード」や、石化攻撃「トリプルゼロ」でたやすくパーティを窮地に陥らせる。
それまでのシナリオとは洒落にならないほど難易度が高く、主人公選択時に警告文が掲載されているほど。マイス編ではこれが最終ボス戦の前座だというのだからたまったものではない。
▲これが最後の1人「ファントム」。最後の最後まで「永遠に生き続ける」ことを語っていた。
彼らは、世界を災厄に陥れた大きな原因の一つである七大驚異に直接関わりながら、今も生き延びている真人である。つまり、ほぼ唯一「七大驚異のことを知っている人物」ということになる(イスカンダールでさえその全貌は知らない)。しかし彼らは主人公にとって敵対者(というか餌という認識)なので、その知識を語ろうとはしなかった(ついでに言うと当時の記憶など微塵も残っていないので語れない)。
七大驚異が本来は歪な文明の成れの果てであることを語れる人物は、彼らの他に誰も存在しない。しかし彼らが語らない以上、作中で七大驚異の真実の全貌を語るものも、またいないのであった。