ピエロ左近寺
ぴえろさこんじ
タレ目の中年男性で、時折大阪弁の口調で話す。喫煙家。芸名に「ピエロ」と付いているが、ピエロの化粧はしていない。
表面上はフレンドリーに接するものの、どこかいやらしい笑みをするなどいろいろと不気味な要素がある。
※ここから先ネタバレ注意
実は今回の事件の被害者達と同様、前団長にして師匠であった近宮玲子のトリックノートを狙っていた人物の1人である。
しかしそれだけでなく、他の3人とは違いノートを奪うためなら殺害も厭わないという邪悪な魂胆を持ち、彼女を事故死に見せかけて転落死させるようステージ上部の足場の板に細工を仕掛けた張本人でもある。
現に、そのトリックノートは彼が持っていた。
今回の事件の犯人であることを認めた高遠遙一に「ノートの中身は全部覚えた」とノートをあっさり渡すが、近宮玲子の死を自身のせいだと決定づける証拠がないのをいいことに「(事故は)あくまで偶然でしょ?」と笑みを浮かべながらシラを切り通した。剣持警部を含め皆の怒りを買いながら反省の色も見せることもなく、一たちはぬぐえない敗北感と後味の悪さを抱かされることとなった。
しかしトリックノートを見た高遠は事件解決時に連行される直前、左近寺への怒りを露わにする周囲に対し
「左近寺には、近宮玲子本人が鉄槌を下すでしょう…燃え盛る"炎の鉄槌"を持って…」
と、平然と呟くだけであった。
※ここから先、さらなるネタバレ注意
事件が終息した後、彼は臆面もなくソロマジシャンとしてデビューした。
その際も、近宮殺害の犯人である証拠になりうる自身の行動を目撃していたメンバーのチャネラー桜庭を、助手として法外な報酬で雇うことで不利な証言を防ぐという抜け目のなさを見せていた。
そしてデビュー公演のクライマックスにて一や明智たちも監視する中、手足を拘束された状態で岩のオブジェに入り、鎖と鍵で厳重に施錠し宙に浮いて炎上したところで脱出する「無重力岩 天外消失」というマジックを披露しようとしたが…
「おい!事故だ!開けろ!!熱い!!」
彼が入った岩がステージ上部に浮かび上がった直後、岩が燃え上がり始めたが、左近寺が慌てた様子で騒ぎ出した。
だが、彼自身が前口上で「熱がっても開けちゃわないで」などとおどけていたこともあり、初めは皆マジックを盛り上げる演技だと真剣に受け取らなかったが、あまりに必死に助けを求め続ける様子に会場は次第に不穏な空気になり…
すると突如岩のオブジェが崩壊し、中から火だるまの左近寺が現れ、悶え苦しみながらステージへと落下。
消火器で火は消し止められたが、時すでに遅く左近寺は焼き尽くされ息絶えていた…。
その光景を見た助手の桜庭は、「近宮の呪いだ」と恐怖に慄いていた。
更にその直後、高遠がトリックノートを残して脱獄したことが明智に報告される。
このマジック「無重力岩 天外消失」では、着火材である燐が使用されていた。
常温では何も起きないが、岩が浮上しステージ上部のスポットライトに接近したことで高熱を帯び、想定より早く発火し脱出できないまま焼死するという「欠陥マジック」であった。
左近寺はこの欠陥を見抜けず、またリハーサルではスポットライトがついていなかったため問題なく成功しており、本番になって悲惨な最期を晒すこととなったのである。
このマジックも近宮の遺したトリックノートに書かれたものだったが、近宮は以前から自分のノートが弟子たちに狙われている事に気づいており、万が一盗まれた際の替え玉として手元に持っていた複製ノートにこの欠陥マジックを記入していたのだった。
実は、高遠は近宮からトリックノートの原本を独自に正式に譲り受けており、そちらの方にはこの欠陥マジックは記載されていなかった。
左近寺からノートを渡され一目見た高遠は瞬時にこの欠陥に気づき、復讐劇の最終幕を近宮に譲るためにあっさり身を引いた…というのが真実であった。
ある意味、左近寺こそが金田一の宿敵である稀代の犯罪者「地獄の傀儡師」を生み出す直接の引き金を引いた人物であるとも言え、作品全体において多数の被害者を生み出すきっかけを作った張本人であるとも言えよう。
そして非道な人物の多い『金田一』の歴代被害者の中でも有数の外道であり、その因果応報としか言いようのない悲惨な最期が読者の印象にも強く残っている稀代の悪役である。