ベイリー家
べいりーけ
ユーフランやクールガンの出自であるディタリエール家が属する一族(クラン)。
かつての戦乱の時代、それを招いて対立していた各国の王家に困り果てた守護竜たちが、その監視役として力を与えて任じた一族。ベイリーとは「法(律)」を意味する。代々、守護竜より「竜眼」という守護竜の力(の一部)を宿した瞳を与えられ「竜爪」という実体のある魔力刃を出し武器として扱う加護を有している。
王家の監査役として、その権力に対し牽制の役目を持つ家柄である事から時に「影の王家」とすら呼ばれる事がある。ディタリエール家は「法官長」として国の法律運用の最終決定権を扱う事で、その役目を果たしているが、その在り方は国によって異なる上、どの家がベイリー家であるかは国家によっては秘匿事項である事も多い。また「ベイリー家」の者にとって「真の仕えるべき王」とは、自らに力を与えた守護竜そのものであり「自らの属する人間国家の王」は「仮の王」に過ぎないものである。
ベイリー家の「竜眼」と「竜爪」は基本的には血統継承であり生まれつきの資質によって発現具合が異なる。そのためベイリー各家の継承はその発現の高さによって決まる。しかし、まれに守護竜より直接、加護を賜るケースがあり、その方法でベイリー家の義務と力を得た者は「始祖」と呼ばれる。フランは第五部(書籍6巻)でセルジジオスからこのパターンで爪を貸し出されて「始祖」となっている。
ちなみに守護竜の感覚として人間に爪を貸し出す事は「ちょっとくすぐったいぞ」くらいの感覚のようだがフランいわく「ものすごく痛い」らしい(実際に爪を渡された際、フランは血涙を流した上に激痛で意識不明となった。フランのケースはもとより母国の守護竜であるアルセジオスの力を持っていたので二つの異なる力が体に入ったせいで余計に負担になったのだが)。
上述のようにフランの家であるディタリエール家が法官長としてベイリー家の役目を果たしている。
緑竜セルジジオスの「ベイリー家」はドゥルトーニル伯爵家であった事が第五部で明らかにされている。しかしドゥルトーニル伯爵家は辺境伯として人社会のシステムに組み込まれてしまっている(王家の監視・監査という役目を十全に果たせていない)ためベイリー家としての加護を失いつつある、とされている。
そしてフランが「守護竜の愛し子」ファーラの守護を目的にセルジジオスより直接「竜爪」を貸し出された事で「始祖」となったため、改めてライヴァーグ男爵家が(のちのちの陞爵を前提として)立てられる事となった。本来はこの男爵家の設立はベイリー家とは関係ない(フランとラナが開発し普及させた竜石道具の発展に対する功績による。そのため現状でも「ベイリー」そのものは名乗っていない)ものだったが、ドゥルトーニル家の加護の弱体化やフランが爪を賜った事情などから事実上の新たなベイリー家として機能するようになっている(フラン自身にその気は無く、むしろ面倒臭がっているのだが)。
黄竜メシレジンスのベイリー家は王家の護衛(近衛)を受け持っているクラリエ家が担当している。現当主のハノン・クラリエはベイリー家であると同時に「守護竜の愛し子」でもある。
赤竜三島ヘルディオスにおいては、ベイリー家はもはや機能していない、とフランは判断している。おそらくは早々に族長一族に取り込まれて(あるいは、その逆で早々にベイリー家であった一族が族長の立場を簒奪した可能性もあるが)加護を失っている。
この事からフランがファーラを守るため一時的にヘルディオスにおける「ベイリー家の役割」を代替する事となった。