メンソレータム
めんそれーたむ
「メンソレータム」とは、ロート製薬が製造・販売する、OTC医薬品(一般用医薬品)の外用薬を含めたスキンケア商品のグローバルブランド名であるとともに、1990年代からは自社の海外拠点として、各国の現地法人の社名にもなっている。
もともとは米国メンソレータム社(以下「メ社」。旧称ユッカ社)が1894年に開発した塗り薬の商品名としてスタートし、同社もしくは、同社とライセンス契約を結んだ会社が製造・販売していた。
日本では、1920年に設立された「近江セールズ株式会社(現・近江兄弟社)」が輸入販売を始めたのが始まりで、同社はやがて日本における「メンソレータム」製造・販売権を取得し、国内製造販売を行う。「リトルナース」の商標権も、このとき取得している。
近江兄弟社は1974年12月24日に倒産し、再建のためにメンソレータムの製造・販売権をメンソレータム社へ返還し、「リトルナース」の商標権もメ社へ売却したが、翌年に大阪市に本社を構えるロート製薬が日本における「メンソレータム」専用使用権(製造・販売権)を取得した。ロートは後に技術・資本でも提携し、1988年にメ社を買収し傘下に収め、商標と経営権をも取得、自社の海外拠点にした。ロートによるメ社買収は、飽くまでもメ社サイドからの申し出によるものである。
現在メンソレータム・ブランドの商品は大きく分けて、(1)リップケア、(2)その他外皮薬、(3)スキンケア、(4)紳士向け商品があり、発祥となる「メンソレータム軟膏」は(2)に属す。
(1)のリップケアは、ロート製薬が「アップダウンクイズ」「おもしろ博士クイズ」「クイズダービー」といった1社提供番組を多数抱えていた時期に「薬用リップスティック」「キャンパスリップ」のCMがよく流されていた。
(2)は外用鎮痛消炎薬「メンソレータムのラブ」(この「ラブ」は「刷り込む」を意味する英語の"RUB"にちなむ)や、痔の薬「メンソレータムのリシーナ」などのグループ。
(3)はヘアケア、紫外線対策などのグループ。
(4)は薬用シェービングクリームなど。ちなみに薬用シェービングクリームは、発売された当初のCMではメンソレシェーブの通称で呼ばれていたという。
ところで、ロート製薬は2021年6月8日、同じ大阪の千里中央に本社を構え、痔の治療薬「ボラギノール」を製造している天藤製薬の株式の2/3を取得し、子会社化することを発表した。痔の薬はロート製薬自らも前述のリシーナを製造販売しているが、併存か、統廃合するかの詳細は未定。
このメンソレータムのロゴマークといえば、何といってもマスコットキャラクターでもある「リトルナース」(メイン画像)であろう。リトルナースには「家族の優しさ」「奉仕」という意味もあるという。
初代は、1917年から1920年代末ごろにかけて、メンソレータム社が雑誌広告および金属容器に使用していたキャラクターである。メ社によると、創業者アーネスト・ハイドの孫をモデルにしてつくられたという。この初代リトルナースは右向きの顔で描かれていた。
現在使われている2代目は、近江兄弟社が日本でメンソレータムの販売権を持っていた時代、商業デザイナーの今竹七郎がデザインしたものといわれ、こちらでは左向きになっている。この2代目リトルナースは、かつて天才子役として世界的に人気のあった女優シャーリー・テンプルがモデルではないかとの説が広まっている(初代にもこの説があるが、テンプルは1928年生まれであり、初代リトルナースとは時代が合わない)。
一時、UFOキャッチャーなどのプライズとしてリトルナースのぬいぐるみなどが出ていたこともある。
またリトルナースのロゴは、メ社がロート社の海外拠点になっているといういきさつから、ホンコン・台湾などで販売されている海外版新Vロートなどの「いわゆるメンソレータム・ブランド以外」の商品にもつけられているのが特徴(ちなみに中華圏ではメンソレータムを「曼秀雷敦」と称する)。
蛇足だが、前述の近江兄弟社はすでに大鵬薬品工業の資本参加などで再建を果たしており、以前まで利用していた生産設備を活用し、「メンターム」を販売した。こちらではギリシア神話のアポロン神(癒しの功徳もやってます)をモチーフにした「メンタームキッド」が、製品パッケージに描かれている。