概要
『七味撫子うのん』とは、宮尾岳の漫画作品。
『月刊アニメV』で1993年4月号から1994年1月号まで連載された。全10話。
1994年4月に学研ノーラコミックス(A5判)から単行本全1巻が刊行されている。
ちなみに作者は本作について「おとぎばなしを書きたかった」としている。
ストーリー
四国は香川県から東京に出て来た琴平コンペイは、東京で主流を誇る、たまり醤油に昆布と大海魚でダシをとり、コシも欠片も無いグデグデ極まる「黒つゆのうどん」にカルチャーショックを受けて憤慨し、大暴れの末に東京の食べ物を食べる事が出来なくなり餓死寸前へと陥っていた。
しかしコンペイは、偶然入ったうどん店「さぬきうのん」で、自身が求めていた讃岐うどんに出逢い、その味を絶賛して惚れ込む。すると、コンペイは「さぬきうのん」の店主・讃岐カト吉から自身の「孫娘」である「讃岐 うのん」の入り婿になって欲しいとお願いされる。
うのんは実は、うどんの妖精であり、一日三回カト吉の打つ「讃岐うどん」を食べないと消滅してしまう存在だった。さすがのカト吉も既に高齢の域。毎日のうどん打ちも厳しく、うのんのためにも後継者を求めていた。その条件は「うのんを維持できる讃岐うどん」の味を正しく理解できる者。コンペイはまさにその条件に当てはまる「うどんの神に認められた証『うの印』を持つ男」であったのだ。
当初コンペイは自らには荷が重いとして、その話を辞するつもりであったが、直後にうのんを自家の嫁にと企む禅林寺学園の理事長、禅林寺樹豪が巻き起こした騒動と彼の強引なやり口に義憤を爆発させ、結果として自ら「うのんの夫」を名乗り「さぬきうのん」の讃岐うどんを守るため禅林寺一族と激突する事となった。
かくてコンペイはうどん店「さぬきうのん」の後継者としてカト吉に弟子入り。うのんとともに、彼女に降りかかる様々な問題を解決していく事になる。
コンペイとうのんの忙しい毎日が、こうして始まった。
登場人物
さぬきうのん
讃岐 うのん
うどんの神が、独り身の讃岐カト吉に授けたうどんの妖精。
心優しく素直な性格ではあるが、ちょっと天然。入り婿となったコンペイに対し「だんな様」と呼ぶ。
一日三回うどんを食べないと、消滅してしまう。また、うどん以外の食物は口にできない。そのため、コンペイが学校にうどんを作るための道具を一式持ち込み、彼女のために昼はうどんを打って振る舞っている。
頭のひょうたん型の髪飾りの中には、七人(七味)のうどんの神が入っている。それぞれ(どっかのライダーみたいに)うのんに憑依することで彼女の能力を伸ばしたり、性格を変えたりして、うのんをサポートする。
最終回で人間と化し、七人のうどんの神と別れ、コンペイの目前で降って来た雪を口にした。
名前の由来は「讃岐うどん」から。
琴平 コンペイ
両親を亡くし、親戚に頼るために東京へ出てきた中学生。
うどんには強いこだわりを持ち、黒い汁のうどんばかりで辟易していたところ、偶然「さぬきうのん」を見つけて入店。うのんに出会い、店のうどんに満足する。
そのまま店に泊めてもらい、うのんが妖精である事を聞き、彼女を支えるためにとさぬきうのんの二代目になる。
正義感が強く、うのんの事を次第に大事に思い、身体を張って彼女を支えていく。うどんを作る腕前は、最初は素人同然ではあったが、うのんは喜んで口にしていた。のちに少しずつ、腕前を上げていく。
うのんとともに中学に転校するも、彼女に「だんな様」と呼ばれ、婚約している事も知られた為、当初は白い目で見られた。
学校の昼食は、コンペイが道具を一式持ち込んで、学校でうどんを打ち、うのんに供している。
最終回で、戻って来られるか分からない試練を受けるうのんを見送り、必ず帰ってくる事を信じ続けていた。
名前の由来は「香川県仲多度郡琴平町」および「金毘羅権現・金刀比羅宮」から。
讃岐カト吉
「さぬきうのん」の初代店主。独り身の老人で、ある日に「孫でもいればな」と独り言をつぶやいた時、それを聞き入れたうどんの神からうのんを授かった。
コンペイをうのんの入り婿にするのみならず、うどん職人の弟子として、自分の店の二代目にすべく、住む場所のない彼を迎え入れた。
コンペイの事を婿として認めているが、清い交際をすべきと考えており、深い仲になる事までは許していない。そのため、夜這いしていると誤解した時には、「この色ガキが!」と怒って追い回した。
(この事があった次の日、うのんは学校にて級友たちの前で「だんな様、よばいってなんですか? お爺様が言ってました。あと『色柿(いろがき)』がどうとか」と悪意なしにコンペイにたずねたため、更なる誤解を生んでしまった)
名前の由来は香川県に本社を持っていた、県内で初めて讃岐うどんの冷凍食品化を成功させた冷凍食品会社である「加ト吉」(現・テーブルマーク)から。
禅林寺一族
禅林寺 樹豪
私立禅林寺中学校の理事長。以前うのんに助けてもらったことをきっかけに、息子達への嫁にしようと画策している。カト吉とは知り合い。
色々と画策した事がすべて失敗したため、最後には店に直接出向き「息子の嫁になって下さい」と面と向かってお願いしようとした。
禅林寺 一葉
樹豪の長男で禅林寺中学校の教師。
禅林寺 双葉
樹豪の次男で禅林寺中学校の体育教師。
禅林寺 三葉
樹豪の三男で禅林寺中学校の技術家庭科教師。
禅林寺 四葉
樹豪の四男で禅林寺中学校の二年生。
コンペイとうのんとは同学年。当初は樹豪に言われてうのんに近づくも、本気で好きになってしまい、うのんにアプローチしていく。金や家柄を自慢するイヤミなところがあるが、うのんに対する想いは本物で、彼女の為なら何でもしてあげたいと考えている。
上記の、うのんが「よばいってなんですか?」とたずねた時には、コンペイが襲ったものと勘違いし、殺意めいた気迫とともにコンペイを追いかけ回した。
当初はうのんの事をうどんの妖精だとは知らず、信じてもいなかった。しかしうのんが試練を受けるため姿を消した後、コンペイの口からうのんの素性を聞かされる。
うのんが戻って来れなくなるかもしれないと聞いて「なぜ行かせたんだ!」と泣きながらコンペイの事を殴りつけるが、うのんの事を信じるコンペイの真意を知り、身を引く。
用語
禅林寺中学校
うのんとコンペイ、四葉が通う中学校。
なお、劇中には登場しなかったが、「魔物ハンター妖子」に登場する神崎あづさは、この学校に通っており、うのんたちとは同級生という設定。