概説
内燃機関、すなわちエンジンを動力とする小型船艇のことである。
日本では特に、太平洋戦争で運用された「特二式内火艇カミ車(とくにしきないかてい・カミしゃ)」を始め、軍用船艇を指して呼ぶことが多い。
後述する水陸両用戦車・上陸艇はむしろ例外的な存在であり、艦艇に搭載される「装載艇」や港湾などに配備される「雑役船」に分類される輸送・連絡艇などが主。
本来は「うちびてい」と読むのが正しいらしいが、慣例的に「ないかてい」と読まれている。
戦前の大日本帝国海軍では艦船用の内燃機関を「内火機械(うちびきかい)」と称しており、艦船用エンジンの形式名でも「22号内火機械」といったように番号を振って名付けていた。
この事から、内燃機関搭載の小型船艇を内火艇と称するようになった。
特二式内火艇カミ車
大日本帝国海軍が所有していた“上陸艇”の一種。
簡単に言えば「戦車とボートを合体させて水陸両用にしちゃおうぜ」という、どこか悪魔合体臭い代物。
しかし世界的に見れば、第二次世界大戦前後からこうした思想による水陸両用戦車は特段おかしいものではなく、現在のように上陸艇が発達する以前は、渡河作戦など普通の戦車の運用が難しい場面で、強力な火力兵装を運用する手段としてごく普通に考案・運用されていた。
この特二式内火艇も、そうした事情から誕生した特殊艇の一種である。
ベースは九五式軽戦車で、ボートの船体ようなボディで、船底側面にキャタピラを一対取り付け、船体上部には二式軽戦車から流用した砲塔を備えている。
潜水艦による輸送を考慮し、全面を溶接構造に切り替えハッチにゴムシールの取り付けを採用するなど、徹底した水密性の補強を施している。
水上では船艇型のフロートで浮き、上陸時にはフロートを外してキャタピラで走行する二段構え。
兵装は九四式37mm戦車砲または九七式37mm戦車砲、のちに一式37mm戦車砲に換装されている。副砲として九七式車載重機関銃も搭載し、前期では車体前方のみ、後期は後方にも追加されている。
終戦までに150両が製造され、おもに南方の島嶼(小さな群島)地域に実戦投入された。
特に「多号作戦」では、駆逐艦の船体後部を改修して特設スロープを取り付け、搭載・運用できるようにするなど、強行輸送作戦などで積極的に投入されている。
特二式以降、特三式~特五式まで、合わせて四種の特式内火艇が開発されている。
特五式内火艇 「トク」(未完成)