時に忘れ去られた者は、静かに滅びを受け入れろ。
この世において全ては仮初めの客……
概要
菊地秀行の伝奇SF小説、及び小説を原作とするアニメ作品。
第一作刊行の1983年から30年以上経っているが、未だに新作が刊行され続けている長寿作品である。
単行本では天野喜孝による美麗かつ幻想的な挿絵と表紙が、更に花を添えている。
西暦12000年代を舞台とした遠未来の物語であり、ゴシックホラーとウエスタンとSFとファンタジーが混ざり合った、独特の世界観を形成している。
後続の『吸血鬼』ものを始めとした様々な創作に、多大な影響を与えた作品である。
ストーリー
それまでの文明がリセットされた遙か未来、人類は「貴族」と称する吸血鬼達によって、食料として隷属させられていた。
彼らの超常的な能力と科学力、そして不老不死の特性から、人類は反攻すら出来ず、長き苦渋の時代を送った。
だが全盛期には宇宙にまで進出した「貴族」にも種としての寿命が訪れ、緩やかな滅びを迎え、絶対的な支配者の座から降りつつあった。
人類から追われる側になったとはいえ、都市部を離れた辺境において「貴族」の脅威は依然健在であり、人々は吸血鬼を狩る者――「吸血鬼ハンター」を求めた。
これはその「吸血鬼ハンター」の中でも凄腕の実力を持つ男”D”の数奇な物語である。
登場人物
- ”D”
CV:塩沢兼人(OVA、カセットブック)/田中秀幸(劇場吹替え版)
吸血鬼ハンターを生業とする凄腕の剣術使い。
鍔広のトラベラーズハットを被り、背には長剣を差し、胸に青色のペンダントをさげた黒衣の美青年。
サイボーグ馬に跨り、旅をする。
人間と吸血鬼の間に生まれたハーフ「ダンピール」。
ダンピールは陽光の下でも活動でき、吸血鬼の特性として超人的な能力と治癒力、貴族に対する抵抗力を持つ。故に吸血鬼ハンターとしては最適とされるが、吸血衝動に負けて被害を出すケースも知られており、人間からも吸血鬼からも忌み嫌われる存在である。
冷静沈着にして動じる事はおよそなく、何処までもストイックな性格。
一方である少女からは予想外の反応を返されて「慌てる」という「奇跡」が起きた事もあり、冷酷無比で無感情という訳ではない。その証拠は、大体物語のラストで見る事が出来る。
全ての貴族の原点にして頂点である「神祖」の子。
貴族と人間の融合を求めて数限りない実験を繰り返し、膨大な失敗作を生み出した中で唯一の「成功例」とされる。
CV:永井一郎(OVA、吹替え版ともに)
Dの左手の掌に寄生する人面疽。
目鼻口を備えており、口が軽く皮肉屋。無口なDの代弁者をつとめるが、口が過ぎる時はDに握りつぶされる事もしばしば。
また異常現象の解説を行う、非常においしいポジションにある。
土を食い、水を飲み、風や炎を吸い込む事で四大元素を自在に操り、Dのサポートをこなす。
アニメ
吸血鬼ハンターDはOVA、劇場版と過去2回アニメ化されている。
- OVA版『吸血鬼ハンター"D"』
1985年発売。シリーズ第1作をベースに葦プロダクションが制作。劇場公開もされ、アメリカではヒットした。
しかし当時の技術では世界観を遍く表現したとは言い切れず、原作者にも不満の残る結果となった。
- 劇場版『バンパイアハンターD』(英題:Vampire Hunter D: Bloodlust)
1999年、シリーズ第3作「D-妖殺行」をベースに川尻善昭監督によって制作、前作の成功も踏まえてアメリカで先行公開された。
2001年、日本でもそのまま英語版が公開され、DVD発売の際に日本語吹替え版も制作されている。
本作は「セルアニメの芸術」と呼ばれるほどにクオリティが高く、ストーリー・世界観・雰囲気全てが原作にマッチしていたため、原作者からの評価も高い。(ただしその結末については少し思うところがあった模様)
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バンパイアハンターD(表記揺れ)