魔界都市ブルース
まかいとしぶるーす
美貌の人捜し屋(マン・サーチャー)、秋せつらを主人公とした怪奇アクション小説。
せつらの呼び名から通称マン・サーチャー・シリーズとも呼ばれる。
短編集とは別に長編も出版されており、菊地秀行の代表作に数える人も多い。
繁栄を誇った新都心・新宿は謎の大地震・魔震(デビル・クエイク)に遭ったことが原因で妖獣が棲み、異能の犯罪者集団や暴力団の巣食う『魔界都市〈新宿〉』へと変貌した。
西新宿で老舗煎餅屋『秋せんべい店』を営む美青年・秋せつらは、本業の傍ら人捜し屋も経営していた。
せつらの指先から妖糸が繰り出される時、彼は悪を断つ"非情の魔人"に変身する。
彼が見た『魔界都市』に住む人々とは・・・・
秋せつら(あき せつら)
本作の主人公。
「影さえも美しい」「再現不可能」とされる絶世の美貌を持つ青年。
四季を問わず黒いコートを着ている。通称漆黒の天使。
西新宿の老舗煎餅屋「秋せんべい店」を営む側、副業に人捜し業「秋ディスカバー・マン(DSM)センター」を営んでいる。人探しの腕前は新宿一と評判が高い。
武器は細さ1,000分の1ミクロンのチタン合金製の糸、通称:妖糸(ようし)。不可視の糸は装甲すら容易く引き裂き、縛り上げた相手に地獄の苦しみをもたらす。また空中での足場にしたり、探索に用いたりと、万能の働きを見せる。
どこかとぼけた『僕』と、冷徹なる魔人『私』の人格を持つ二重人格者。
旧新宿区役所跡に建設された「メフィスト病院」の院長。通称魔界医師。
『魔界都市〈新宿〉』『魔宮バビロン』にも登場するが、設定や容姿は微妙に異なる。
白衣の代わりなのか、常に白いケープを着用している。魔界都市最後の希望であり、立ち位置は常に中立。
せつら同様美貌の持ち主。せつらが天使の美貌ならメフィストは神の美貌と評される。
が、自分の患者に危害を加える者に対して性格は冷酷そのものなのでしばしば白い悪魔と称される。
おしなべて女を嫌悪しており、神の失敗作と言い切るほど。一方で「私」の方のせつらに懸想している。
せつらの『依頼』に協力する事もあれば、間接的に敵対する事もある。
彼を主人公とする外伝小説『魔界医師シリーズ』が上梓されており、漫画化作品が月刊コミックジーンにて隔月連載された。
夜香(やこう)
戸山住宅の「陽気な住人」こと大陸系吸血鬼達の長。
幼い頃は倫敦に留学しており、『夜叉姫伝』で祖父の「長老」が死亡したのを受けて長の座についた。
背中に巨大な蝙蝠の翼を持ち、空を飛ぶ事ができる。人のそれとは違う「気」(鬼気)を打ち込んでダメージを与える「魔気功」を操る。
また相手の目を見る事で意識を支配し、血を吸う事で下僕にするという古風な手法も用いる。
吸血鬼ならではのタフネスを備えており、傷つく端から即再生する。不意打ちを受けて灰になった時も、使い魔である蝙蝠達に血を集めさせる事で程なく復活した。
せつら、メフィストと共に〈新宿〉を(事実上)統べる「三魔人」の1人。通称青の貴公子。
外伝小説ではよく屍とコンビを組んでいる。意外と人づきあいがよく、敵に対してさえ紳士的な態度を崩さない。
彼を主人公とする外伝小説『夜香抄 魔界都市プロムナール』がある。
屍刑四郎(かばね けいしろう)
出会った犯罪者の背筋を凍らせる「凍らせ屋(スパイン・チラー)」の異名で畏れられる新宿署の刑事。
185cmを超える長身にドレッドヘア、刀の鍔の眼帯、花柄のコートという風体。コートの花柄プリントは剥がす事で高性能爆薬になる。
犯罪者に対しては徹底的に苛烈。特に非のない通りすがりのヤクザを平然とぶちのめし、犯罪者と認識すれば、それが上司であろうとも容赦しない。
一方で刑事としての職業意識は高く、犯罪者の逮捕よりも一般市民の保護を優先する。また後述する人形娘には優しい。一言で言うと「正義感のある殺人鬼」。
全長30cmにも及ぶ巨大リボルバー「ドラム」の早撃ちと、あらゆる武術の原型とされる古武術「ジルガ」で戦う。
また予知能力の域に達する勘の鋭さに加え、著しい肉体の衰弱と引き換えに物質透過能力を発揮する異能も有する。
彼を主役とする『凍らせ屋』シリーズがある。
外谷良子(とや よしこ)
〈新宿〉一のネットワークを持つ「ぶうぶうパラダイス」を経営する情報屋。
情報屋としては新宿一。調査能力が非常に高く、知らないことはないと評される。
50貫(200キロ)とかなりのデブだが、デートの予約は3ヶ月先まで埋まっている。
情報屋以外にも様々な副業をこなしており、彼女が新宿区長選に立候補した時にはひと騒動持ち上がった。
モデルはかつての菊池氏の担当編集者。
ガレーン・ヌーレンブルグ
高田馬場の魔法街に住むチェコ随一(=世界随一)の魔法使い。
高田馬場魔法街の指導者的存在。戸山住宅の長老と同じく、今や世界屈指の魔道都市となった〈新宿〉に溶け込む事に重きを置いていた。
『夜叉姫伝』にてせつらを庇い、死亡。
トンブ・ヌーレンブルグ
姉であるガレーンを頼って新宿へと訪れた魔法使い。自称「チェコ随二(=世界随二)の魔法使い」。
姉が亡くなった後、魔法街にそのまま住み着く。自称は伊達ではなく、操る魔法は過去改変が可能な領域に達する時間遡行にさえ及ぶ。
超越的だったガレーンと異なり、強欲で銭ゲバ。しかし一方で義理人情を解する所はあり、不承不承せつら達を助ける場面はあった。
外谷に負けず劣らずのデブ。二人が出会った時には「どっちが正しいデブか白黒つけようじゃないか」と喧嘩になった。
人形娘
ガレーンが作り上げたアンティークドール風の精緻なオートマトン(自動人形)。身長は1mほど。
当初は「笑えるようには造られていない」設定だったが、時を経て微笑を浮かべられる程度には変化が生じてきた。
ガレーン仕込みの魔法や黄金製の髪の針、毒のある薔薇を武器に戦う。人形であるが故に精神支配を無効化でき、破損しても水晶製の脳が無事であれば修復が可能。
ガレーンの死後はトンブに仕えているが、割と慇懃無礼かつ辛辣。他にもメフィストの事を「藪医者」呼ばわりするなど、見た目に反してかなり毒舌。また製作者に似てやや潔癖のきらいがある。
せつらを慕っており、ある事件ではせつらの中に潜む「第三の人格」を止めるきっかけとなった。
たまにレストランでアルバイトをしており、大鴉と共に文字通り飛び回りながら注文を取る姿は「空飛ぶウェイトレス」として店の名物となっている。
『ラビリンス・ドール―魔界都市迷宮録』では主役を張る。
大鴉
ガレーン・ヌーレンブルグによって作り上げられたエーテル体のカラス。
人語を解し、常に人形娘と行動を共にする。
曽祖父は高名な詩人の詩に登場したらしい。
鳴き声は「Nevermore(またとなけめ)」。
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