概要
2021年6月、オンライン小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載を開始。作者は月夜乃古狸氏。『カクヨム』でも掲載。
後にPASH!ブックスから書籍化。既刊4巻。イラストはうなさか氏が担当。
コミックPASH!よりコミカライズが連載。既刊2巻。幹藻ねずみ氏が作画を担当。
母親から虐待を受け、学校でも虐めを受けていた少年が、実は誘拐された日本有数の資産家の孫と判明したことで生活が一転し、祖父や使用人達から甘やかされ愛されながら新しい生活を始める学園ドタバタコメディ作品。
あらすじ
母親とその愛人からの虐待、同級生からのいじめを受けていた少年・井上達也の前に、ある日弁護士を名乗る女性が訪ねてきた。
実は、自分は母親と思っていた誘拐犯に誘拐された資産家の孫“西蓮寺陽斗”であることを明かされる。
その日を境に少年の生活は一変していく。ようやく出会えた孫をどこまでも甘やかそうとする資産家の祖父・皇重斗。
幼く見える少年の容姿に庇護欲をかき立てられ、全力で甘えさせようとする使用人達。どんなに辛くても、苦しくても生きていればきっと転機が訪れる……。誰よりも辛い思いをしてきた少年が、これ以上ない幸せに囲まれる学園ドタバタラブコメディ!
登場人物
皇家
西蓮寺陽斗(さいれんじ はると)
主人公。
小学生の様に小柄で童顔な少年。心優しく他者を思いやれる善良な性格。非常に謙虚な態度と小動物のような愛くるしい見た目によって可愛がられたり、溺愛されることが多い。ちなみに、執事の和田が陽斗の身体を洗った際、「(見た目に反して)なかなかご立派なモノをお持ちでした」と報告している。
日本有数の資産家・皇家当主の娘夫婦の間に生まれる(姓は父方の方)が、1歳半の時に当時ベビーシッターとして雇われていた明子によって誘拐され、その後は発見されるまで、井上雅美(明子)の息子の「井上達也(いのうえ たつや)」と名乗らされる。
それからは明子や愛人達にほぼ毎日虐待され、家事とバイトを強いられていた。小柄な体躯は成長期に満足な食事を与えられなかったためであり、所持品は買い与えられず学ランも貰い物で工面、身だしなみを整えることすら許されなかった。学校でもその境遇からいじめの標的にされ、一部を除いて誰も助けず見て見ぬふりをされる。それでも自分を気遣う一部の生徒や教師、バイト先の人々等の支えもあって腐らずひたむきに頑張っていた。
中学3年の秋頃、高校への進学を許されず、諦めて働きに出ようと考えていたところで彩音から自分の本当の素性を知らされ、皇家に帰還する。実家に戻った当初は生活が大きく一変したことに戸惑っていたが、自分に優しくしてくれるみんなに報いるため、受験勉強を経て上流階級の子女が多数通う黎星学園高等部に編入する。
進学当初は皇家との関係を隠していたこともあり、外部進学を蔑視する一部生徒からは幼い容姿も相まって毛嫌いされていたが、生徒会での活躍を通して徐々に認められていく。
皇重斗(すめらぎ しげます)
日本で絶大な影響力を持つ皇家の当主で、陽斗の祖父。茨城県に大規模な邸宅を構えている。
厳格な風格を持ち、敵対した者達には容赦ない制裁を与える一方で、14年ぶりに戻ってきた陽斗にはかなりの爺馬鹿。あまりに度が過ぎる溺愛っぷりに和田や彩音達から諫められることが多い。
孫のためならば権力の乱用も辞さず、「井上達也」だった頃の陽斗と関わった人物の内、彼を支援していた者には間接的な金銭面での報恩を、虐げていた者には法務省や文部科学省など官公庁に圧力をかけ社会的抹殺レベルの報復を行っている。
渋沢彩音(しぶさわ あやね)
皇家の弁護士兼メイドの女性。
本編開始から数ヶ月前に、遺伝子検査の技術者から皇家の血縁者と思われる人物が特定されたことで、誘拐された陽斗と断定され、確実に本人と裏付けるために入念な調査を行っていた。
陽斗を保護し皇家に連れ帰って以降、陽斗専任のメイドの一人として、率先して彼の世話をしている。
あまりにも爺馬鹿が過ぎる重斗に諫言するツッコミ役でもある。
霧崎湊(きりさき みなと)
皇家の心理カウンセラー兼メイドの女性。
陽斗専任のメイドの一人。
相葉裕美(あいば ゆみ)
皇家の看護師兼メイドの女性。
陽斗専任のメイドの一人。
和田(わだ)
皇家の執事。
久代比佐子(くしろ ひさこ)
皇家のメイド長。
大山辰敏(おおやま たつとし)
皇家の警備班の班長。
角木杏子(すみぎ きょうこ)
皇家の若手女性警備員。
西蓮寺葵(さいれんじ あおい)
陽斗の母親で、重斗の娘。故人。
陽斗が誘拐されたことに酷くショックを受けて体調を崩し、誘拐から4年後に失意のまま心労で亡くなってしまう。
西蓮寺佑陽(さいれんじ ゆうひ)
陽斗の父親。故人。
重斗の下で働いており、その縁で葵と結婚したが、陽斗が生まれる前に事故で急逝している。
黎星学園
四条院穂乃香(しじょういん ほのか)
陽斗のクラスメイト。
皇族とも縁のある名家の令嬢で、陽斗の高校初めての友人となる。
天宮壮史朗(あまみや そうじろう)
陽斗のクラスメイト。
歴史ある企業の次男坊。公明正大。
都津葉セラ(とつば セラ)
陽斗のクラスメイト。
皇家の関連企業の子女で、校内における陽斗のサポートを任されている。
武藤賢弥(むとう けんや)
陽斗のクラスメイト。
皇家の関連企業の子息で、校内における陽斗の護衛役を任されている。
鴇野宮薫(ときのみや かおる)
陽斗のクラスメイト。書籍版からの追加キャラクター。
女子だが制服を改造し男子のように振る舞っている。
小坂麻莉奈(こさか まりな)
黎星学園の新任教師で、陽斗たちのクラスの副担任。
陽斗の高校受験直前に家庭教師として皇家に雇われており、その報酬として黎星学園への就職を斡旋してもらった。
「井上達也」の関係者
佐藤明子(さとう あきこ)
陽斗を誘拐した皇家の元ベビーシッターで、全ての元凶。
当時は生まれたばかりの陽斗の世話を任され、真面目に働いていたため皇家に信頼されていたが、実際は恵まれている葵を妬んで陽斗の誘拐を企てる。葵が陽斗を残して外出して使用人や警備が手薄となった日に陽斗を連れ去り、ついでに大金と高価な貴金属を奪って失踪。重斗の影響力を考慮すれば国外逃亡は無理と判断し、ある程度栄えた地方都市で人の出入りもあり、さらに関東からも遠く離れており自分の過去と何の接点もない熊本県を逃亡先に選んだ。
潜伏中は「井上雅美(いのうえ まさみ)」と名乗り、夜の仕事をしながら達也(陽斗)を家事やバイトで酷使し、時には憂さ晴らしで愛人達とともに虐待し続けていた。
誘拐から逃亡後の生活などの入念な計画を立て、血液検査などから身元がバレるのを恐れて(同時に虐待を隠すため)極力達也に健診などをさせないようにするなど、非常に慎重かつ狡猾に潜伏し続けていたが、14年後についに居場所がバレて逮捕される。
その後、司法に圧力をかけた重斗により、取り調べや裁判をスキップした超法規的措置により表向き死刑執行済みとされ、拘置所からとある倉庫に愛人達とともに移送された後、テレビ電話越しに重斗と対面する。必死に謝罪と命乞いをするも、娘を(間接的だが)死に追いやられた上に孫の人生を深く傷つけられた彼に許されるはずもなく、海外の裏社会の権力者に奴隷として売り飛ばされた。
また、陽斗を虐げていた歴代の愛人たちも一人残らず捕まって同様に人権を奪われ、臓器ドナーとして利用されるという末路を辿った。
藤堂英治(とうどう えいじ)
達也(陽斗)を虐げていたいじめっ子達のリーダー格。
父が地元を地盤とする国会議員で、その権威を振りかざして学校でも我が物顔で振舞っていた。1年の時から達也をいじめの標的にし、暴力と暴言を加えていた。
しかし、3年の冬に陽斗が皇家に戻ったことで悪行が明らかになり、私立高校への推薦入学が決まって余裕を見せていたところに、仲間共々私立高校の合格を取り消された挙句に父が収賄容疑で逮捕されたことで権力を失ってしまう。
その後、急いで公立高校の受験に取り掛かるも、すでに2月の半ばを過ぎて推薦合格が決まってから碌に勉強していなかったことで受験に失敗し、家のゴタゴタもあって進学が絶望的となってしまう。卒業式の時は、まるでかつての陽斗のようにボロボロな風貌となっており、生まれ変わった陽斗を見て憎悪し、卒業証書を受け取った彼に怒声を浴びせて飛び出そうとするが教員達に連れ出されて退場する(漫画版では卒業式の下りはカット)。
その後、何とか通信制の高校に進学するが、名士の子息として好き勝手していた反動で周囲の目は厳しく、ほとんど引きこもりのような生活を送っている。
青山(あおやま)
達也(陽斗)が通っていた中学校の男性教諭で、2年の時の担任でもある。
自分が目に掛ける生徒には内申を上げたり推薦入学を推す一方、気に入らない生徒には不当に内申を下げるなど、自分本位で生徒の成績を左右する最低教師。
当初から達也を毛嫌いして成績に関係無く内申を最低にし、一方で国会議員の息子の藤堂には依怙贔屓し、彼ら主導の達也へのいじめも見て見ぬふりするどころか達也に非があるように責め立てて藤堂達を助長させて貶めていた。しかも漫画版では自身の担当である英語の授業では教室から追い出す描写があり、陽斗が英語に苦手意識を持ってしまう原因にもなっている。
当然、事の顛末を知った重斗の逆鱗に触れたのは言うまでもなく、学校教育のトップから再教育プログラムを受けるように命令(事実上の罷免)され、しかも重斗の根回しで碌な企業への再就職が出来なくなった事実と達也の本来の素性を伝えられ、抗うことが出来ない存在を敵に回したという事実に愕然とする。
仕方なく再教育プログラムは受けたものの、反省どころか達也に対する逆恨みを見抜かれて結局免許は取り消され、それに加えてこれまでのモラハラに耐えかねた妻からも離婚を突きつけられる。その経緯もあって卒業式には姿を見せなかった。
なお、陽斗のいじめを認知しながら放置した校長や教頭を筆頭とする教員数人も降格・減給などの処分を受け、碌に対応しなかった教育委員会と児童相談所の担当者も処分を受けることとなった。
宮森若菜(みやもり わかな)
達也(陽斗)の中学校のクラスメイトの女子。
実家は小さな町工場を営んでおり、叔父は新聞社に勤め、姉は報道番組のアナウンサーをしている。
報道関係に努める親族が居ることもあって国会議員の息子である藤堂にも強く出ており、虐められている達也を何度も庇っていた。それを知った重斗によって実家の町工場が大手自動車メーカーから好待遇の契約を交わすことが出来た。
赤石美也(あかいし みや)
達也(陽斗)の中学校の女教諭。達也が3年の時の担任。
産休に入った教諭の代わりの臨時教師。少々ドジなところがあるが、生徒のために一生懸命に考えてくれる良い教師で、容姿の良さから男子からの人気が高い。
多くの教員が冷淡な態度を取る中で、唯一達也を心配し親身に接しており、彼が進学できるように色々助力しようとしていた。
陽斗が三学期から実家に帰る事情を一足早く知っており、彼女もまた重斗によって県内の私立中学に本採用が決まって正式に教師となり、再会した陽斗に抱き着く程感謝した。
大沢浩二郎(おおさわ こうじろう)
大沢静恵(おおさわ しずえ)
達也(陽斗)のバイト先の大沢新聞販売店の社長夫妻。達也のことを「達坊」と呼んで他の従業員共々可愛がっていた。
当初、今よりも小柄な達也から働かせてほしいと頼まれたことに困惑しながも、事情をくみ取って特別に許した。一方、彼が母親から虐待を受けていることを察しており、給料も毟り取られることを予想して実際より低く賃金を伝え、残りをいざという時に備えて別で保管していた。
虐待をしている母親と愛人達から達也を何とか助けれないかと従業員達とよく思案しており、中には養子に迎えたいと考える者もいた。
後に達也が誘拐された資産家の孫と判明し、陽斗が実家に戻る前にお別れの挨拶に来た際、本当の家族が信用できるか不安を抱きつつも彼に連絡用のスマートフォンとボーナスの給金を渡し、いつでも味方であることを伝えて彼を見送った(スマートフォンは後に陽斗自身の名義に変更して使用されている)。
その後、重斗によって販売店に大口の契約依頼が殺到して繁盛することとなる。
香田夫妻(こうだふさい)
達也(陽斗)の配達先の住宅の夫婦。
先天性の心臓疾患の難病を抱える小学生の息子・隆がおり、一年ほど前に配達している達也を見かけ、息子の姿と重なって気に掛け、販売店に問い合わせて事情を知り、彼を憐れんで契約して配達してもらう。
達也が配達に来るたびに何かしら差し入れをし、怪我をしている時は本気で心配していた。
その後、重斗によって日本有数の名医による息子の手術が決まり、しかも夫の方は部長への昇進が決まった。息子の手術は無事に成功し、順調に回復に向かっている。
門倉光輝(かどくら こうき)
達也(陽斗)の小学校の同級生で、彼が皇家に戻ってからも当時の名残で「達ちゃん」と呼ぶ。ガキ大将だが、曲がったことが嫌いな性格。
ランドセルすら与えらないほどみずぼらしい姿の達也をいじめから守り、一家で達也の手助けをしていた(陽斗の家事スキルは光輝の母から教わったもの)。
小学校卒業後は家の都合で引っ越したが、父・光昭が知人に騙されて多額の借金を背負う羽目になり、生活が非常に困窮してしまう。中卒で働くのを覚悟していたが、小学校の頃の陽斗を守ってくれていたことを知った重斗が裏から手を回して借金の清算(とついでに騙した知人の確保)をし、さらに父の好待遇の職場とタワーマンションの高層階の5LDKの一室を与えられる。
陽斗がこれまでの恩人たちを集めた食事会で再会して以降、重斗に協力して西蓮寺夫婦(陽斗の父方の祖父母)の本性を暴いたり、長期休暇時の旅行などに唯一外部参加するなど、「井上達也」に関わった人達の中で特に出番が多い。