富士山の噴火史
富士山は、過去に何度も噴火を繰り返してきた活火山である。周辺一帯は数百万年前から火山活動が活発であった。約70万年前、現在の富士山の位置に小御岳火山が活動を始めた(この頃は南東の愛鷹山の活動も活発であった)。小御岳火山はその後しばらく活動を停止したが、約10万年前から富士山は「古富士火山」と呼ばれる新たな活動時期に入った。古富士火山は爆発的な噴火を起こし、標高3,000mに達する山体を形成していった。古富士火山の時代には火山泥流も頻発した。そして約5,000年前から「新富士火山」が活動を開始。この新富士火山が現在の富士山である。
過去1万年間の噴火活動
富士山は2万年前の大規模な山体崩壊の後、17000年前から8000年前頃にかけて大規模な溶岩を流出し、5600年前から3700年前頃に主火山体を高く成長させる噴火活動となった。その後、3500年前から2300年前頃に山頂部で爆発的な噴火が卓越し、その間の2900年前には南東側へ山体崩壊(御殿場岩屑なだれ)を起こした。2300年前以降は山腹の割れ目噴火である。
有史以降の主な噴火記録
- 781年 - 朝廷編纂の『続日本紀』に、噴火による降灰の記録がある。富士山における最古の噴火記録である。
- 延暦噴火(800年〜802年) - 800年4月15日噴火、降灰多量、スコリア降下、溶岩流。噴火場所は北東山腹。801年も噴火し、降灰砂礫多量、足柄路は埋没、802年に箱根路が開かれた。VEI3。
- 貞観噴火(864年〜866年) - 864年6月に噴火、降砂礫多量。噴火場所は北西山腹。長尾山付近から溶岩流出(青木ヶ原溶岩)、北西に流れたものは本栖湖に達し、また「せのうみ」を精進湖、西湖に二分、北東に流れたものは吉田付近に達する。この溶岩で人家埋没、湖の魚被害。噴火の最盛期は噴火開始約2ヶ月程度まで。
- 937年 - 噴火。噴火場所は北山腹。スコリア降下、溶岩流。
- 999年 - 3月26日、噴火。
- 1033年 - 1月19日、噴火。スコリア降下、溶岩流。噴火場所は北山腹。
- 1083年 - 4月17日、噴火。
- 1435年または1436年 - 噴火。スコリア降下、溶岩流。噴火場所は北山腹。
- 1511年 - 8月、噴火。
- 宝永噴火(1707年) - 12月16日噴火。軽石・スコリア降下。噴火場所は南東山腹(宝永火口)。噴火1~2ヶ月前から山中のみで有感となる地震活動。十数日前から地震活動が活発化、前日には山麓でも有感となる地震増加(最大規模はM5級)。12月16日朝に南東山腹(現在の宝永山)で爆発し、黒煙、噴石、空振、降灰砂、雷。その日のうちに江戸にも多量の降灰。川崎で厚さ5cm。噴火は月末まで断続的に起きたが、次第に弱まる。家屋・農地が埋まった村では餓死者多数。初期はデイサイト、その後玄武岩のプリニー式噴火。江戸にも大量の降灰。噴火後洪水等の土砂災害が継続。VEI5。
三大噴火
富士山の噴火史において、特に大規模だった3回の噴火(延暦噴火・貞観噴火・宝永噴火)は、「富士山の三大噴火」として知られる。宝永噴火以後、現在に至るまでの300年以上にわたり、富士山は全く噴火していない。しかし、富士山は今もなお活動が活発な活火山であり、将来的に再び噴火する可能性は十分にあるのである。