屍人(しびと)とは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)が開発及び発売したプレイステーション2用のホラーゲーム「SIREN」シリーズに登場する不死の存在である。
概要
作品によってその位置づけは異なるが、いずれも「人が死ぬと屍人になる」「(特殊な方法を使わない限り)何度でも復活する不死の存在」という共通項が見られる。
SIRENにおける屍人
「神」の一部となる過渡期の人間。
人間が赤い水を含んだ状態で死亡した後にサイレン音によって目覚めるか、体内に摂取した赤い水の量が一定を超えると屍人化する。
同じ行動を延々と繰り返す、単純な陽動に引っかかるなど知性の面では人間に劣るが、銃の腕前は異常なまでに正確で、しかも弾数が無限である(流石にリロードはする)。SIRENの「どうあがいても絶望」な難易度の一因となっている。通称ゴルゴ屍人。
一定ダメージを与えるといったん動かなくなるが、時間が経過すれば再び動き出す。たとえ首を切断したり身体をバラバラに解剖しても、常軌を逸した再生能力で治癒してしまう為、「神」の力を使わない限り完全に倒すことは不可能である。
また、人を襲う理由として、屍人から見れば人間の方が化け物に見えており、恐怖により襲ってくる。(屍人発生のきっかけと神と一体化する過渡期であることを考えれば恐らく「人食いの化け物(と本能的にわかる存在)が辺りをキョロキョロと見渡しながら村を闊歩している」に等しく見えていると思われる)
という説と、屍人には世界が素晴らしいものに見えており、この素晴らしさを分かち合うために人間を襲い、屍人化させようとする、という説がある。
後者ならばものすごいありがた迷惑である。
屍人化には2つの段階があり、まず1回目のサイレンで半屍人と化し、2回目で「海送り」という赤い水の海へ入水する行動を取り、3回目で海から上がる「海還り」を経て完全な屍人となる。以降、海送りと海還りを繰り返し、様々な形態へと変化する。最終的に準備が整った屍人はそのまま赤い水へ溶けていき、神の一部となる。
しかし志村晃一を始めとする一部の強靭な精神を持つ屍人は、完全に怪物と化すこと、赤い海に還ることを拒否し、まだ生きている人々を襲わないよう自らを拘束し、長きに亘ってサイレンや不死の苦痛と戦い続ける切ない話もある。
- 半屍人
屍人化の最初の段階。まだ辛うじて人型を保っている。体内には血液の代わりに赤い水が満たされており、目からは不要になった血液が絶えず流れている。海送り・海還りを経て、犬屍人、蜘蛛屍人、羽根屍人、頭脳屍人のいずれかに変化(進化?)する。
人間だった時の記憶がうっすらと残っており、独り言を呟いたり食事や家事のまねごとをしたり生前の行動を繰り返す者も多い。扉の開け閉めや鍵の施錠などを行えるほか、武器を持っている個体も多い。
場合によっては自分が化け物と化している事に気付かないまま家族の元へ行き拒絶され、そのショックで発狂、完全に変化という悲劇が起きることも。
- 猟銃屍人
半屍人のうち、狙撃銃を装備している個体の通称(オフィシャルな呼称ではない)。
本作の狙撃銃はエイムさえ合っていれば必ず命中する仕様のため、CPUである屍人が使うと長射程かつ必中のぶっ壊れ武器と化す。さすがに威力や射程はプレイヤーが使うものより低く設定されているが、それでも1発喰らえば瀕死である。
さらに高台や狭い通路など理想的な立ち位置に陣取っているうえ視認距離もやたら長いため、不意に見つかると逃げ切るのは困難。
ただなまじ良い狙撃ポイントを取っているだけに、視界ジャックによってプレイヤーの『眼』として利用されることもある。
なぜ田舎の小さな村にこれほど銃があるのか疑問だが、放棄されたままの防空壕があるようなのでそこから調達してきているのかもしれない。
- 頭脳屍人
後述の犬、蜘蛛、羽根を総括する屍人。姿は人間のそれに近いが、頭部はナマコやフジツボなどの海洋生物が付着した特徴的な形をしている。そのグロテスクな姿にショックを受けたプレイヤーも多いのか、みんなのトラウマ入りを果たしている。
戦闘には長けておらず、人間を見ると逃げ出してしまう(という設定だが、ネームドの頭脳屍人は全員例外なく好戦的である)。頭脳屍人を倒すとその近辺にいる犬、蜘蛛、羽根も行動不能になる。
作中で「ブレイン」とルビが振ってあるため「ブレイン」が公式の読み方であるようだが、いまいち浸透しておらずそのまま「頭脳屍人」と呼ぶ人が多い。
- 犬屍人
女性だけが変化する形態。常に四つん這いで、頭に角のようなものが生えている。
前足(手)から攻撃力の高い打撃を繰り出してくる。リーチは短いのでタイマンなら避けやすい。
平地だと移動が速いだけといった感じだが、高いジャンプ力で段差を登れるため入り組んだ地形だと脅威になる。
音に敏感だが視力はやや弱い。
人間としての自我や知性は完全に失われており、ドアを開けることすら出来ないため、室内に閉じ込めることが可能。屋内ステージで出てくることはあまりないが。
- 蜘蛛屍人
男性だけが変化する形態。四つん這いで頭が上を向いているため、一見するとブリッジのような姿勢をしているように見えるが、実は首がねじ曲がっている。さらに頭頂部には蜘蛛の複眼を思わせる目がついており、ここでプレイヤーを視認する。
天井や壁を伝ってプレイヤーの死角から攻撃できる。
視野は広いが見える距離は短い。天井に貼りついている蜘蛛はライトを消してしゃがめばやりすごせる。
音に対して非常に敏感であるため、閉所では慎重な移動が強いられる。一方で移動が遅めなので広い場所であれば走り抜けてスルーすることも可能。
また復活がわずか8秒と非常に早い(一部ステージでは例外あり)。屋内ステージで出てくることがほとんどなので、(犬屍人と同じく)ドアを開けることができない点を生かして封印するのが基本の対策となる。
- 羽根屍人
昆虫の顎がついた顔や、甲殻類がそのまま下顎についたような顔をもち、トンボのような4枚2対の羽根を背に持つ屍人。
例外なく拳銃または狙撃銃を所持しており、空中からプレイヤーを探知して攻撃を仕掛けてくる。空中にいるので視野が非常に広く、こちらからは近接武器が届かず銃がないと倒せない強敵。攻撃精度も高い。
SIREN2における屍人
人間の死体に「屍霊(しりょう)」がとりついた存在。屍霊は光に弱いため人間の死体をシェルター代わりに利用しており、屍人も屍霊が利用する死体を増やす為に人間を攻撃する。
一定のダメージを与えると屍霊が身体から抜け出し無力化できるが、しばらくすると新しい屍霊が入って復活するためこちらも倒すことは不可能。ただし、前作の屍人ほどの不死性は無い為、(設定上は)爆弾などで肉体を完全破壊して滅する事も可能。
知能は人間より劣るとされるが、中には視界ジャックを駆使して特定の人間を執拗に追跡する個体、車を運転する個体、挙句の果てには屍人同士で恋愛する個体など前作より賢い個体もいる。ごく稀に異様な俊足を誇る個体もいる。
武器を持たない個体の攻撃手段は噛みつき。相変わらず狙撃屍人も登場しており射撃精度も上がっているが、本作では屍人から武器を奪えるようになったので、武器を奪ったうえであえて打撃武器を拾わせる事で弱体化させる事も可能になった。
「闇人」とは源を同じくしながらも敵対しており、ゲーム後半では彼らとの生存競争に敗れて登場しなくなってしまう。作中でも屍人と闇人が争う場面があるシナリオや、屍人を操作して闇人と戦うシナリオが存在する。また、ゲーム前半で屍人だった死体がゲーム後半では闇霊にとりつかれて闇人になっているというシチュエーションもある。
SIREN NTにおける屍人
ほぼSIRENの屍人と変わらないが、いくつかの変更点が見られる。
NT屍人の知能は異常に高く、屍人同士で会話も行う。
- 蜘蛛屍人
男性だけでなく女性も存在するようになった(犬屍人は登場しない)。四肢が捻じれ、胸部が盛り上がりグロテスクさが増した。
犬屍人が登場しないので壁を登るだけではなく、屋根まで登る様になりもの凄い速さで急接近するようになった。
- 羽根屍人
羽根は背中からではなく、頭頂部と眼球から生えているほか、長い舌を持つ。男性限定でよく見ると後頭部に悲しげな顔が浮き出ている。
銃による攻撃だけでなく、プレイヤーを掴んで空中へ連れてゆくなど攻撃のバリエーションが増えた。改造散弾銃を持たせると脅威性が格段に増すので間違っても持たせてはいけない。
- 怪力屍人
犬屍人が登場しなくなった代わりに、新規に追加された屍人。コロネのような大きく白い肉体と、不釣り合いなほど細い手足が特徴。海外版での名称は「Maggot(蛆虫) Shibito」。元ネタは蚕の幼虫とのこと。
ゲーム中では中ボスに近い形で登場することが多い。その名の通り恐ろしい怪力であり、捕まると即死する羽目になる。正攻法ではまず倒せないほどの耐久力を誇る(倒せたとしても秒で復活する)。ちなみに扉の開閉も出来る。
- 頭脳屍人
NTの屍人のモチーフが一貫して「虫」になったため、海産物ではなく虫のような頭部を有する。中にはただの肉塊にしか見えないもの、顔だけが肥大化したものなどより特徴的なものも存在する。
関連タグ
以下の関連イラストには、グロテスクな描写及びネタバレを含む絵があります。閲覧の際はご注意下さい。