概要
田亀源五郎のノンケ向けゲイ漫画。 『月刊アクション』で、2014年から2017年に連載。単行本全4巻。
昔疎遠になったまま亡くなってしまった家族を通して繋がるファミリー物。題材こそ同性婚やゲイを中心としているが、主人公も社会も普遍的で、人と人との関わり方や、家族のあり方、それらを取り巻く日本の環境を繊細に描いていく。
田亀源五郎といえば男同士のハードなカラミで知られているが、本作は一般向け漫画ということもあってそうした描写はなるべく控えられており、そっち方面がよっぽど苦手あるいは嫌いな人でない限り、ノンケであってもそれほど抵抗なく読めるつくりになっている。
むしろ、現代日本に未だ蔓延る(本作の場合は男性同士の)同性愛や同性婚に対する根強い偏見や差別を(過度に陰鬱にならない程度に)鋭く切り込んだストーリーへの評価は高く、昨今のLGBTに対する相互理解の機運の高まりもあり、「ゲイに興味があるわけではないが、時節柄無知・無関心でいるわけにはいかない」と考えている人にはおすすめの一作である。
第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
あらすじ
弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家にカナダ人の男マイクが訪れる。
弥一はマイクが来たことをきっかけにゲイの義弟との距離感や亡き弟との思い出、娘の友人関係など様々に葛藤して悩んで行く。
主な登場人物
折口弥一
演:佐藤隆太
娘の夏菜(後述)を男手一つで育てるシングルファーザー。
高校の時両親を事故で亡くし、唯一の肉親である弟とは仲が悪かった訳ではないが、彼からのカミングアウトを切っ掛けに大人になるにつれ疎遠になった。
そんな自分の弟と結婚したというカナダから来た義弟との距離感・付き合いに悩むが、共に生活するうちに相互理解を深めていき、ゲイをはじめとする同性愛や同性婚に対しても一定の理解を示すようになる。
いささか押しの弱い面が目立つが、人間的にはごく普通の善良な人物である。
マイク・フラナガン
演:把瑠都
弥一の弟リョージと婚姻関係にあったカナダ人男性(カナダでは法律で同性婚が正式に認められており、異性婚との区別も無い)。
立派な顎鬚を蓄えたガタイの良い白人男性だが、その外見とは裏腹にとても礼儀正しく、気遣い上手で明るく優しい好人物。
ゲイであることを隠してはいないが過度にアピールすることも無く、何事も弁えて行動できる紳士的な人物だが、いびきがうるさいのが玉に瑕。
また、ふとすると先月死んだばかりの夫のことをまだ引きずっているところもあり、気丈に振舞ってはいるがやはり寂しさは隠しきれない模様。
折口夏菜
演:根本真陽
弥一の娘で小学生。弥一の元を訪ねてきたマイクとすぐに打ち解ける。
年相応に純粋無垢であり、世間体を気にしない単純な考えは無意識に弥一とマイクの間を取り持っており、両者の歩み寄りに大きく貢献している。
折口涼二
弥一の双子の弟。10年前に海外へ行き、先月カナダで亡くなった(死因は最後まで不明)。
高校生の時にゲイであることを兄にカミングアウトしており、極端に関係が悪化したりはしなかったものの、兄弟の間に距離が出来てしまっていた。
弥一とは見た目そっくりだが、性格は異なっていた模様。