概要
男と生まれたからには誰もが一生に一度は夢見る『地上最強』
しかし、強者となった果てに辿り着くのは輝かしい未来とは限らない。
常勝無敗、己の腕っ節一つで全てを手に出来、何の困難も無く意志を実現出来てしまう。
俺TUEEEとなるところであるが、それも度が過ぎると苦痛でしかなくなる。
無敗から来る破滅願望、人生への退屈から生まれた切な言葉がこれである。
作中でこの言葉を放ったのは最凶死刑囚5名だけであるが、範馬勇次郎も後にこの言葉に強く共感していた。
特に絶対強者として君臨する勇次郎は明確に自身の人生に退屈で辟易していた事をモノローグで語っている。
腕っ節一つで全てに手が届いてしまう、何をやっても簡単に達成出来てしまい挫折や障害が一切無い。
梃子摺る事に梃子摺るという悲劇から、自身の退屈を紛らわせられる強者を探し求め、遂には己の退屈を凌ぐ為に刃牙を産ませるに至った。
度を超えた強さは苦痛でしかないという、昨今で言う俺TUEEE系への時代を先取ったアンチテーゼとも言える価値観である。
全てを出し尽くして満足したスペック
余計な横槍で勝者を守った経験と、戦略的撤退と意地で敗北を拒み続けて、負けていないのに見苦しい自分と向き合い、勝利という檻から解放されたドイル
敗北を認めても報復して負けていないと取り繕い、烈から自分が勝利していないと思い知らされて、精神崩壊したドリアン
無力化され、手も足も出来ないまま痛めつけられる暴力の恐怖を植え付けられ、敗北を知ったシコルスキー
敗北を認める認めないの問題を無視して最強の男に敗北を押し付けられた柳
それぞれカタルシスも、勝利でも苦いこと、負けを潔く受け入れられない見苦しさ、戦いの恐怖やより強い者がいる現実との直面など、敗北の味を読者にも見せていった。
余談
多くの読者から「敗北を知りたいなら勇次郎に挑めよ」という辛辣な声が上がったが、勇次郎は社会的には住所不定無職であり、気分で世界各国を飛び回る事もあり神出鬼没。
基本的に徳川やストライダムを経由しないとコンタクトをとる事が出来ない。
おまけに「強者は挑まれるもの」というスタンスを持つ為、下手に呼び出そうものなら徳川やストライダムまでとばっちりを受ける可能性がある。
そもそも徳川は勇次郎を最強と認めているものの、闘士としてはやや煙たがっている端があり、最大トーナメントでも勇次郎抜きで開催し、乱入して来た際には止めに入っている為『自分のお気に入りの闘士vs最凶死刑囚』を観たがっていた徳川に勇次郎を呼ばせようとしても拒否される可能性が高い。
ストライダムに至ってはもろに米軍人であり、お尋ね者の最凶死刑囚が自発的にコンタクトをとるのはリスクの高さから避けるだろう。(軍人とのコネを持つドイルはコンタクトをとっていた)
また、勇次郎の存在は基本的に国家機密であり、そもそも存在が認知されていない。
情報通のシコルスキーや日本国内の裏の武術家である柳は噂程度には認知していたが、ドリアンやドイルは話題にも出ず、スペックに至っては刃牙を指して「日本に地上最強の男がいるから来日した」(意訳)と語っており、真に地上最強である勇次郎の事は知らなかった模様。