「一つ質問をしよう この地球上で最も強力な毒ガスとは――何かワカるかね?」
CV:二又一成(TVアニメ版) / 江川央生(刃牙道14巻OAD版)
概要
世界各地で同時に脱獄した『最凶死刑囚』の中でただ一人の東洋人。デカブツばかりの最凶死刑囚の中では小柄で、身長は160㎝にも満たない。
「猛毒 柳」の異名を持つ。
空道という独特のファイトスタイルを持つ暗殺者で、獄中で書道に精を出したり茶道を嗜んだりとかなり和風な人物。
かつてはマスター国松の下で修業を積み、後に反目。彼の左手を欠損させている。また、渋川剛気の左目を潰した張本人でもある。
活躍
殺人のために投獄されていたが、ある日「敗北を知る」ために、刑務所の防弾ガラスをぶち破り、看守を殺害して脱獄する。
まずは渋川の元を訪れ、出された茶のためのヤカンを投擲ではなくキャッチしやすい緩いパスで不意を突き、しょうもない嫌がらせの様に勝利。
その後、徳川光成に呼び出され、死刑囚VS格闘家のファイトに参加することを誓う。
ファイト開始後の初戦では、用務員に化けて範馬刃牙の高校を襲撃。駆け付けた渋川と協力して反撃する刃牙に苦戦するも、『空掌』を使用し彼を倒した。パトカーが駆け付けたため、とどめは刺さず逃走したものの、「最大トーナメント」後はじめて刃牙に土をつけたキャラとなり、読者に衝撃を与えた。
しかし、最凶死刑囚としての強さと存在感を放っていたのはこの辺りまでであった。
その後しばらくは都内に潜伏していたが、花山薫に敗れたスペックが老化し、烈海王に敗れたドリアンが幼児退行し、シコルスキーが捕縛され、ヘクター・ドイルが烈・愚地連合軍に敗北するに至り「さすがにヤバい」と思ったのか、再び刃牙を襲撃。「毒手」を用いて、彼に後々まで響くダメージを与えることには成功したものの、色を知って強くなっていた彼に叩きのめされたばかりか、脱獄したシコルスキーと二人がかりでも歯が立たず、挙句花山薫に威圧され、決着すらも出来ずにあっさり逃がしてしまう失態を演じる。
続いて愚地克巳となれ合いを始めたドイルを粛清するためにタンカーに乗り込み、彼を襲撃。毒手で彼の残った眼を侵し、ここでは勝利を収めたものの、腕内に仕込みがあったドイルの腕の切断が出来ずに名刀が刃こぼれしてしまい大損をする(この時、名刀が刃こぼれしたことに気を取られてドイルを取り逃すという失態を演じており、この辺の精神的欠点が次なる戦いで抉り出される)。
そして最凶死刑囚終盤、決着を求める渋川からの果たし状を受け取り、夜の公園に向かったのだが、そこに待ち受けていたのはなんと本部以蔵。
「お前じゃねえよ!」と思いつつも戦闘を開始するのだが、本部は(かつて柳がそうしていたように)武器を使用し圧倒。柳は全く歯が立たないまま、ついには毒手を鎌で切り落とされてしまう。
この時、本部が柳に対して、自身が今まさに武器を使いまくっているにもかかわらず
「磨いた五体以外の何ものかに頼みを置く。そんな性根が技を曇らせる」
とその敗因を指摘したシーンは、当時の読者を(お前はどうなンだよッ!)とおおいに混乱させ、今なお語り草になっている。
これは、もとより武器使用を前提に含めて鍛錬を重ねてきた柔術家としての立場から、徒手空拳の格闘術である「空道」を修めた身でありながら毒手などの外法の技や暗器に頼ろうとする柳の半端さを突いた発言であり、本部としては何ら矛盾のない言葉であったのだが、当時の読者にはいまいち伝わらなかった(後の刃牙道などでの本部の活躍を見てからようやく理解できたという読者も少なくない)。
ともあれ、そういった矛盾を抱えた半端な使い手である柳では所詮、武器の扱いにおいて本部に及ぶべくもなかったというところであろう。
殆ど決着がついたかのような劣勢の中なおも敗北を認めずにいると、今度はなんと範馬勇次郎が登場し、「決着は着いた」と敗北を受け入れるよう促す。
ここで判断能力が鈍っていたのが運の尽きで、柳は勇次郎に対し「勝負を決めるのはあなたではない」と反論してしまった。一理あることは認められつつも、「敗北確定だったくせに生意気な物言いで俺に喧嘩を売った」という理由で逆ギレされてぶん殴られ、顎を叩き割られて一発KO。あえなくお縄となった。
技
空掌(くうしょう)
空道の高等技術で、手の中を疑似的な真空状態にすることであらゆるものを吸いつけて破壊する。簡単に言えば掌を吸盤にしてしまう技術である。
空中を漂う和紙を吸いつけてしまうほどの技量を持っており、不意の接着で相手の行動を制限したり、人体を打てば皮膚を引き剥がし、コンクリートの壁や防弾ガラスさえも割って引き抜いてしまう。「ゆうえんち」では、スパイダーマンのように窓ガラスに貼りついて高層ビルを登坂するという離れ業を見せている。
また相手の鼻と口をふさぐことで、肺の中の空気を引き抜き、掌の中で大気圧を操作して、極度に酸素濃度の低い気体を作り出すことが出来る(本人曰く「この地球上で最も強力な毒ガス」)。この状況下で呼吸すると相手は呼吸困難に陥り即座に失神してしまう。刃牙も一度はこの毒ガス攻撃(?)の前に敗れている。
毒手(どくしゅ)
中国に古来より伝わる、文字通り猛毒の手。正確に計量した猛毒の砂に手を漬け込むことで得る。触るだけで相手を麻痺させ、服毒死させる。
刃牙を倒すには至らずに敗北したものの、あくまでその場では平気だっただけで、遅効で効果が顕れ、さすがの刃牙も危うく死にかけた(その後、大擂台賽編において力技で解毒されている)。
鞭打(べんだ)
相手の身体自体より、表層的にダメージを与え激痛を……まあ要は「すんごい平手打ち」である。
鍛えた身体にも女性の柔肌にも無差別に効果があるが、勇次郎曰く「しょせんは女・子供の護身技」。
暗器
風神鎌という鎖鎌のような武器や、手の内に隠すインドの小型鉤爪『虎の爪(バグ・ナウ)』、日本刀などを使う。
武器有りの戦いになれていなかった刃牙には効いたものの、武器に通じる本部には通用せず、むしろ「武器に頼り過ぎで慢心している」とその性根を批判されてしまった。
実際、少なくとも鎖鎌の扱いについては、決して技量は高くないことがうかがえる(自信満々で繰り出したにもかかわらず、本部がジャングルジムを背にしただけで使用を諦めてしまったが、実際の鎖鎌術は、高い練度での使い熟しと言う条件はあるが、背後に障害物がある程度で封じられるものではない)。
武器相手に慣れていない相手への不意の突き方にはある程度精通しているが、逆に自分にはぬるい。
その他、スペックほどではないかもしれないが肺活量が強いらしく、耳元で息を吐いて相手の脳を破壊することも可能。
複数の武器や暗器を用意した柳だが、空掌と毒手、そこに虎の爪を併用するなど、自身の性質やスタイルからパターンの広がりに至らず、風神鎌もそれを使えばその間に毒を使いにくく、どれも絶妙に噛み合ってない。
そのあたり、武器を使ってこない相手に使う程度でしかなかった柳の甘さが垣間見える。
外伝作品にて
小説『ゆうえんち』
作品のメインキャラに据えられており、捕縛される以前の動向が描かれている。
主人公・葛城無門の師である松本太山(梢江の実父)と戦い、最終的に彼の命を奪うほどの傷を与えた。今作は柳と、師の仇を追う無門との戦いが主軸となっている。
地下闘技場とは別に「蘭陵王」なる人物により開催される賞金総取りバトルロイヤル「ゆうえんち」に参加するため、暴力団「娯楽組」組長を襲撃し、ボディーガードやホステスを盾にしつつ500万円を強奪。これにより娯楽組は事実上壊滅している。
新装版バキ『REVENGE TOKYO』
勇次郎に倒された後に『ゆうえんち』で描かれた末路同様、顎を砕かれ、左腕に義手を付けた姿で収監。しかしその義手はよりにもよってフック船長みたいな鉤爪であり、この時点でヤバいフラグがビンビン立っていた。
柔軟性を持つ強化プラスチック内の独房に入れられていたが、仮病で看守を欺き、病院に送致されることとなった途端に本性を表し、看守5名を虐殺。そのまま逃げ果せてしまった。
余談
筋肉質でありながらも、バキのキャラとして珍しく、座った横姿から下腹が少し出ているのが確認できる。
また、渋川との決闘を待つ際に大量のタバコを吸っていたことから、結構なヘビースモーカーと思われる。
ドイルを襲撃した際に名刀を破損させショックを受けているが、現実においては、超一流の名刀ともなれば億単位の値段がする(最高額は5億円とか)。もっとリーズナブルな刀を使えばよかったのに……
日本人であるが、顔のモデルは俳優のロバート・デ・ニーロとされている。
牢の中で書いていた反省文は達筆で読み取り難いが「小生敗北を知りたく 都へ向かうものなり」と書かれていると思われる。
関連タグ
浦安鉄筋家族:全員柳にそっくりな「柳田家」という家族が登場している