シコルスキー(バキ)
ばきのしこるすきー
壁面に目立った突起がなくとも、僅かな錆、或いは傷のようなものがあればそこへ指を引っ掛け、そのまま100mもの垂直の壁を登りきることが出来る。
クライミングのプロ曰く「出来る出来ないは別として、もし登りきるのであれば、天井につけられた指先程度の大きさのナットを摘み、その状態で短編小説を悠々と読み切るぐらいの力が必要」
「でもそれが出来るのって人間じゃない」と評されている。
指の強さの限界は描かれておらず、ビルの数十階から転落しても壁面を引っ掻いて僅か数mのブレーキと段差で止まる。スプリンクラーを摘んでぶら下がり、ジャックの怪力で引っ張られても全くズリ落ちすらしないなど、その力は文句無しに化物の領域にあるだろう。
それに準じて握力も強く、中指の第二関節を突出させた状態で拳を握り、高速で拳を振ることで突出した部分で相手を切り裂くという通称「カーヴィングナックル」という技を得意としている。
切れ味はえげつなく、顔面をやすやす切り裂き脚を切って立てなくさせたりできるレベル。
腕を振る速度や手首の角度を調節して単純な打撃として繰り出すこともできる模様。
指に限らず単純なパワーは凄まじく、推定100kgはあろうバーベルの端を掴んでバットの様に振り回し、160kgのジャックをタックルで闘技場の柵まで押し切るなど相当な怪力の持ち主。
またその他にもドロップキックも得意としており、劇中ではトドメなどに多用している。
身のこなしも相当なものであり、俯せの状態から跳躍して胴回し回転蹴りを放つ、2mを優に越えるジャックの頭部にドロップキックを打ち込んでそのまま身を翻して着地し、即座に追撃に転じる事が出来るなど、あの克巳にも劣らぬ運動神経を見せている。
あまり気付かれていないが身体の頑強さも目を瞠るものがあり、刃牙の剥き出しの金的への蹴りによる睾丸破裂を除けば、あのオリバやジャックの豪打が直撃しても骨折や歯の欠損も無いなど、シリーズ全体を通しても指折りに頑強である。
看守達の評価であるが「純粋な闘争でガーレンが勝てるわけがない」と言われるまでの身体能力の持ち主。このため、脱獄が発覚したときは真っ先にガーレンの保護に看守たちが向かったほどだった。
他の死刑囚よろしくキタナい手も用い、落ちていた灰皿、ガラス片、画鋲、釘など利用できるものは平然と利用する。
とはいえ他と比べれば幾分自身の身体能力やスキルを駆使した戦いをし、奇襲・騙し討ち・凶器攻撃・泣き落としなど日常茶飯事のバキワールドの中では良心的。
なお、彼が狙った強者は金メダリストのガーレンやプロレスの猪狩、あるいは裏の世界で有名なバキと勇次郎など、名が売れている相手を選んでいるため、実は元アスリートで思想の違いから事件を起こして収監され、甘い思想でありながら名を馳せ浮かれているトップアスリートへの恨みや表舞台で輝けなかった腹いせや八つ当たりが絡んでいるのでは、と推測されている。
プロレスについて知識がある様な発言をしていることや、ファイトスタイルが何処かプロレスに近いところがある事から、元々はプロレスラーだったのではないかと考察される事もある。
「シコルスキーの身体能力は特別中の特別」と評されており、もし悪事に手を染めなかったらロシアにいくつもの 金メダルを渡していたとまで言われる。
収監中にはよく本を読んでいる描写があり、それによるものか中々に情報通で外伝も含めると博識で知的なタイプと思われる。
そこから来る頭の回転の早さや相手の戦力分析にも長けており、敵の戦力分析や状況に合わせた戦術の切り替えにも長けているが、敗北を知らないがために自分に対する評価はどこまでも高く、自己分析は正確に行えていなかった。また、自分以上の怪物を知らない事も、拍車をかけている。この欠点が彼を破滅へと導くこととなる。
戦果が芳しく無い事から、多くの読者に『弱い』『雑魚』などと辛辣な評価を受け気味であるが、パワー、スピード、スタミナ、テクニック、タフネス、知識量とどこをとっても高水準であり、刃牙シリーズの中でも珍しいオールラウンダータイプと言える。
ある日「敗北」を知りたくなったシコルスキーは鏡のようにツルツルな100mにも及ぶミサイル発射孔を指の力だけで登りきるという神業を披露して脱獄。
大雪原を突っ切って通りすがりざまに『ロシアの英雄』アレクサンダー・ガーレンを襲撃。ガーレンにトラウマを植え付けるほど叩きのめして一路日本に向かった。
日本に着くや否やデビュー前の柔道出身のプロレスラー・舘岡を襲撃、「ヨーイドンさえしてくれれば十分に暴れてやる」と豪語する舘岡にヨーイドンをくれてやり、一方的に痛めつけてみせた。
「『ヨーイドン』でしか走れぬものは格闘技者とは呼ばぬ 試合とは読んで字のごとく、あくまでリハーサルに過ぎない」
「リハーサルは何度やってもリハーサル 本番ではない」
大切な新人ファイターを潰され怒った猪狩完至に攻撃されるが、咄嗟に灰皿でガードして拳を潰し、ドロップキックをぶちかまし、顔を切り刻んでトドメを刺し勝利。
その後は徳川光成の引き合わせで地下闘技場へ案内され、格闘家との対決を誓わされた。
その後は復讐に燃える猪狩とその部下2名に襲撃されるがあっさり返り討ちにし、土下座で謝罪する猪狩に対し「図が高い」と「土下寝」を返し、バーベルやらダンベルやらでボコボコにして死んだフリをする猪狩に放尿し、不意を突くべく飛び起きた猪狩の首を切り裂き重症を負わせ、その場を立ち去った。
この直前には地下闘技場の戦士たちの顔を思い浮かべながら「全員食っちまうのもいい」と不敵な笑みを浮かべるなど、強者としての抜群の存在感を持っていた。
ここまでが絶頂期であり、その後彼の壮絶な転落人生が始まる。
その後、範馬勇次郎に依頼されて不服ながらも松本梢江を襲撃し、拉致。
本気の範馬刃牙と闘う為の算段であったが、地上最強の生物たる勇次郎にも勝負を挑もうとし、直後に乱入したビスケット・オリバに止められ、一触即発の空気となる。
「幸運ダ… 地上最強ト地上最自由 コノ二人ト同時ニ戦ウチャンスナド、二度トナイト断言デキル!」
が、到着した怒り狂う刃牙と戦闘になり、ビルから蹴り落とされるが、お得意の指の力で壁面に掴まり、そのまま軽々登りきって戦線復帰。
「ラウンド2ゥ〜♪」
その後驚愕する刃牙にガラスの破片、画鋲などで翻弄し、ドロップキックをぶちかますと中々の活躍を見せる。しかし直後に警察が到着したためビルから飛び降りて逃走した。
…ここまではまだ良かったが、この後から徐々に転落していくことになる。
逃走した先の廃墟で水浴びをしていた所を刃牙に襲撃され、服を着ようとするも止められ、会話中に蹴られ、何故か全裸の状態でバケツで視界を遮られた上でボコボコに殴られ、更に思いっきり剥き出しの金的を蹴り上げられ股間から大量出血。挙句乱入してきたビスケット・オリバにカーヴィングナックルを見舞うも、まったく通用せずラリアットを喰らいハデに窓からぶっ飛ばされ、そのまま警察に引き渡され捕縛、御用となってしまう。
これでおとなしくなったかに思えたが懲りずに脱獄、怨嗟骨髄に染み渡る刃牙と戦うため、柳龍光と刃牙の戦闘に乱入し、柳の提案で二人掛かりで刃牙に立ち向かうも、運悪くその時の刃牙は童貞を捨て超絶パワーアップ中。柳共々びっくりするぐらい歯が立たず軽くあしらわれ、花山薫の干渉もあり逃げられてしまった。
その後猪狩の謀略にかかってジャック・ハンマーに出くわし、公園で公衆便所へ連れていかれ戦闘開始。
2mを超えるジャックとの身長差を埋めるため天井のスプリンクラーを自慢の指の力で掴み、ぶら下がった状態で戦闘するという芸当を見せるが、ジャックにスプリンクラーごと引っぺがされダウン。
それでも巨体のジャックが不利となる電話ボックスへもつれ込み、滅茶苦茶に痛めつけるが全く歯が立たず、電話ボックス内の総質量ごと真上にぶっ飛ばす威力のアッパーをモロに貰い、激闘の末に失神させられ地下闘技場に送り込まれる。
衆人環視の中、過去にプロレスラーへ吐き捨てた「試合はあくまでリハーサル、本番ではない」という言葉をそのまま返される形になり、最後の意地を見せてジャックへ襲いかかった。
「ダヴァイ(こい)ッッ!!」
持てる技術を総動員して襲い掛かるが軽くいなされてしまい、挙句ジャックはガイアにバトンタッチ。
ガイアの環境利用闘法(砂のぶちまけ攻撃、カモフラージュによる擬装攻撃)に金的、目潰し等メタクソにやられ、更に目も見えない状態で十秒ごとに攻撃されるという拷問じみた責め苦を喰らい、とうとう恐怖から絶叫。自ら敗北を認め、完全に敗北した。
「俺の負けだァ~ッ!! 許してくれェェ〜〜!!」
日本での敗北後、ロシアの刑務所に収監されており、房内では寝る際に壁を摘んで寝るなどの鍛錬をしており、持ち前の握力をさらに鍛えている描写が「REVENGE TOKYO」にて描かれている。
バキ外伝 ガイアとシコルスキー
そして「敗北を知った者にのみ与えられる権利がある」とリベンジマッチの宣言し、再度脱獄して再び東京に来襲…どころか、妙にほのぼとした日常を描く刃牙シリーズスピンオフ作品の『ガイアとシコルスキー〜ときどきノムラ 二人だけど三人暮らし〜』が月刊チャンピオンで連載されている。
自らに敗北を与えたガイアの住むアパートを訪れて勝負を挑んだ。が、ガイアのペースに乗せられて上手いところ挑戦をはぐらかされてしまう。結局ガイアの隙を見つけるという名目で四畳半のアパートの部屋に居座る事になり奇妙な同居生活が始まった。
元々本編でも一般人には手を出していない(梢の誘拐は勇次郎が絡んでいた)、何でもありのファイトスタイルであるものの基本的に真っ向からの勝負を好むなど、作中でもまともな部類の感性であることからか、非戦闘員には危害を加えずむしろ人の良さが出ており、銭湯で三助の老人の夢の富士山登頂を叶えるべく、彼をおぶって銭湯の絵の富士山の壁をその握力で登頂する(2人とも素っ裸なのはシュールだが)と言う本物以上の登頂体験という粋な礼をして見せた。また、ボルシチが得意料理であり、隠し味のリンゴは母親直伝らしい。母親は家政婦として働いていたらしく、その母親の影響で掃除も得意であり、落書きだらけの刃牙の家周辺も見事に綺麗に磨き上げた(ただし数日で落書きし直されて元に戻った)。
ノムラのことをガイアの別人格ではなく、「ガイアによって整形させられ仕立て上げられた影武者で、不要時には監禁されている」と勘違いしており、不憫に思ったのかあれこれと世話を焼く人の良さを見せた。
なお、人が良過ぎて、どうして死刑囚になった?と読者から疑問が湧き、ロシアの指導者に逆らったからとシャレにならない考察もされ始めた。
とは言え、シコルスキーもガイアの元で穏やかな日常を過ごすことに疑問を抱く事もあるが、それで出て行ったら敗北を意味する、と変な意地を張っている。
後にかつて叩きのめしたガーレンも加わり、共同生活はより奇妙なものになっていく・・・。
このように、シコルスキーと言えば「ヘタレ」「弱虫」「雑魚」などといったマイナスイメージばかりが付きまとうが、実力は決して低いわけではない。
恐ろしいまでの握力に加え、人体を引き裂く「尖った拳」を持ち、蹴りで救急車のドアを叩き潰し、更に人類の反射神経を越えた速度の拳を掴んで止められる刃牙にすら視認できないほどの短距離移動速度を持つなど、対戦相手の組み合わせが悪すぎただけで実際はかなりの強キャラなのだ。上には上がいるだけで。
ちなみに、その対戦相手とは
勇次郎→作中最強
オリバ→作中トップクラスのフィジカルを持つ第3部序盤ラスボス
刃牙→主人公
ジャック→当時の勇次郎に迫る超肉体の第1部ラスボス
ガイア→刃牙をほぼ一方的に仮死まで追い込んだ幼年期編ラスボス(勇次郎を除いて)
これは酷い。
そりゃへたれて「許してくれェェ〜〜!!」と悲鳴を上げるのも仕方ないというものである。
また、「敗北を知りたい」を謳う死刑囚達の中で、唯一本当に地上最強に向かっていく気概があった事は評価するべき点だろう。
ちなみに、梢江を誘拐した際に勇次郎との会話から推測出来るが、シコルスキーは誘拐に関しては「自分の流儀じゃない」と否定的であり、梢江を下着姿にしたのは逃亡を防ぐ為と思われる。(現実でも、客を下着姿にして逃亡を防ぐという手が詐欺等に使われる)
つまり、シコルスキーは梢江には特に手を出していない。
それどころか誘拐時にも口を塞ぐだけで、説得して紳士的に連行しようとしており、攻撃しようとしたのも事前に忠告してからである。
逃亡時にも、梢江の母親は倒れはしているものの無傷であり、死刑囚でありながらもかなり常識的な性格をしている。
しかし、刃牙はかち込んで下着姿の梢江を見るや否や勘違いしたのかブチギレる。
シコルスキーがご機嫌で入浴中の時に襲撃し、空気を読まずに会話中に蹴り、何を思ってか剥き出しの金的を蹴り潰している。(ちなみに、自分で潰しておきながらドン引きしている)
指示通り拉致したばかりに、刃牙の勘違いで玉を潰されてしまったのだ。
哀れ……
おまけに、しゃしゃり出て来たオリバにぶっ飛ばされるわ、散々である。
後に血管ビキビキで「ふしゅる…」と言いながら乱入するのも無理は無い。
容姿、ファッション共に中々のもので、刃牙シリーズのキャラの中でもハンサムな方である。
それによるものか、外伝ではガイアと共にファッションに興じる話が描かれて、当初は渋々付き合っていたものの段々と楽しんでいた。
素材が良いだけあって何を着ても様になり、シコルスキーファンは一見の価値あり。
最凶死刑囚の中でもドイルと並んで若い外見であるが、シコルスキーが外伝で園田に「若い」と言われたり、子供に「お兄ちゃん」と言われる一方、ドイルはやや老け顔のチンピラに「オッさん」呼ばわりされている。
その為、最凶死刑囚最年少はシコルスキーの可能性がある。