概要
日本語の慣用句の一つで、「ある家/部屋に入りたくないという気持ちがあると、入り口の敷居という部分(門や戸の地面/床側のパーツで、通常、ほとんど高さはない)がまたげないほど高くなったように感じ、中に入ることが出来ない」という、心理的な抵抗感をあらわす表現。
行きにくい。入りづらい。気後れがする。(心理的に)難しい(と感じる)。
応用について
元々抽象的な比喩表現であることから、様々な例えに用いる事が可能である。
(蛇足ではあるが、この程度の応用が「意味の変化」「言葉遣いの変化」と呼べるかは疑わしい。)
行動・経験への応用
何かの行動をとる事、始める事を「行く、入る、踏み出す、踏み込む」といった言葉で表現する事があるが、
こうした抽象概念としての移動/越境行為にも用いる。
言葉の意味が変わったわけではなく、本来の「入りにくい」という意味が保存されているのが分かる。
例:
「ラグビーの道に入る(ラグビーをやり始める)」
↓
「ラグビーって敷居が高いよね(ラグビーって始めるのが難しそうな気がするよね)」
高さの増減
敷居の高さを強調したり、逆に抑制する事により、心理的な抵抗感の強さの幅を表現する事ができる。
高さを用いる例えである以上、当然「上げる」「下げる」という変化の表現も可能。これも比喩として元々あった性質だと考えてよく、言葉の意味の変化ではない。
例:
「敷居がすごく高い」
「ちょっと敷居が高い」
「最近は敷居が下がった」
誤った誤用説について
本来は「不義理や不面目があって行きにくい」といった心理的抵抗が原因で通いづらくなる、といった意味である。
明鏡国語辞典は、旧版では「高級さや上品さにひるんで近づきにくい、とっつきにくい」といった用法を誤りとしていたが、第三版では新しい用法として〔新〕と表示され、注釈で「転用」と記載された。現時点で最新版の三省堂国語辞典第八版や三省堂現代新国語辞典第六版でも、誤用の注記なしで語義区分としてその語釈が記載されている。
※ちなみに、「高級さや上品さによる通いづらさ」を表現する場合は、「ハードルが高い」が適切である。
広辞苑第七版の変更点について
ネットニュースやビジネス系キュレーションメディア、ライフハックサイトなどで「敷居が高い」の誤用が扱われる場合、しばしば広辞苑の七版に「高級だったり格が高く思えて、その家・店に入りにくい」という語釈が追加された事に触れて
「誤用も使う人が多くなれば定着し、辞書の内容も変わっていきます」
といった内容の解説がつく場合があるが、この様な解説は誤りである。
広辞苑の一部編者は講演などを通じて不義理と関係ない文脈での用例を1940年代まで遡って確認している事を明かしており、
広辞苑第七版の語釈は誤用の定着を認めたものではなく「昔からあった使い方をより詳しく書いた」という方向性のものである。
ちなみに…
「自分の立場や身に付けているものが不相応で気が引ける時」や「店が高級すぎたり上品すぎたりして自分には不相応だと感じる時」に使う表現には、「ハードルが高い」「二の足を踏む」を使うといい。
関連イラスト
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